第2章 襲 撃 1
第 2 章 襲 撃
「司馬君。」
退屈な授業も終わり、今朝の妹の言いつけに従ってスーパーに買い物に行くべく、龍朱は早々に教室を後にしたのだが、靴箱で女性の声に呼び止められた。
「あ~。どなたでしたっけ?」
振り返ると、女生徒2人が立っていた。一人は165㎝ぐらいだろうか、長髪黒髪で色白の美人である。もう一人はその女生徒より少し身長の低いショートカットでかわいい部類の顔立ちなのだが、どこか人を寄付けない雰囲気があった。どこかで見たことのある女生徒なのだが…と思っていると
「二ノ《の》宮美涼と申します。この学校の生徒会長を務めております。こちらが副会長の飯館早紀さんです。ご存知ありませんか?」
丁寧な口調の中に凛とした響きのある声。龍朱の中で、全校集会の時の生徒会長の姿と繋がった。
「あぁ、どうりで。どっかで見た気がしてたんだ。それで、その生徒会長さんが俺なんかに何か用でも?」
「いえ、少しお時間をいただいてお話をしたいと思いまして。」
「いや俺、今から夕食の買い物に行かないといけないから忙しいんだよね。長くかからないならここで聞くけど。」
「少し込み入ったお話を差し上げたいので、ご夕食をご一緒にいかがですか?もちろん。お誘いしたのですから、ご馳走させていただきますが。」
「それは魅力的な話だけど、俺だけ夕食を食べに行ったなんて事になったら、妹にどやされちまうからなぁ。」
「それでしたら、妹さんもご一緒にいかがですか?私は構いませんし。」
「妹も…ですか?俺に個人的な話で無いならいいけど…」
少し美涼が考えていると、笑顔でぽんっと手を合わせた。、
「そうですわ。最近できたヒビノモールで妹さんと貴方のご友人でもある結城君とでお買い物を楽しんでいただいて、その間にお話をすると言うのはいかがでしょうか。その後、館内のレストランでお食事を差上げますわ。」
「遊馬を知ってるんですか?」
「はい、生徒会のお手伝いを度々《たびたび》していただいてますから。」
龍朱は少黙り込み、「ふぅ。」とため息をつくと、
「分かりました。帰ったら妹に相談してみるよ。」
と軽く微笑んで返答した。生徒会長は「そうですか。」と優しく微笑み返した。
「決まったら結城君に連絡をしてあげてください。結城君から私に連絡を頂きますから。」
「りょーかい」と龍朱は校舎を出て行った。
「意外とあっさり話が進みましたね。もう少し疑り深いと思っていましたが。」
早紀は敬意は持っているようだが、淡々と美涼に話しかけた。
「彼はまだ私達を信用していませんよ。」
「ではなぜ受け入れを?」
「妹さんを結城君に預けて、彼と一対一で話をするからですよ。もし、早紀さんと妹さん二人などという条件だったら、理由をつけて断ってきていたでしょうね。」
「妹を人質にとられる事も考えていたと?考えすぎではありませんか?」
「いえ、結城君の話ではそこまで想定して動くタイプのようですね。始めは私も早紀さんと二人の方がよいと考えたのですが、結城君から止められましたから。」
「そうでしたか。」
「結城君の予想では、古藤君も連れてくるだろうという話ですが。」
「それでは…。」
「そうです。私が受けた啓示は現実になりつつあります。早紀さんはあの方に連絡を。」
「分かりました。」
早紀は深々と頭をさげた。
ビュゥ
一迅の風が美涼の髪をなびかせた。
「お任せしましたよ。」
呟いた美涼の隣には、早紀の姿はなかった。