ここではないどこか
そこは、闇だった。
上下左右もわからない。闇に覆われた空間。
そして、全方位に広がる美しい星々の光。
数千、数万の数え切れない程の星が輝いていた。青・赤・黄・緑など様々な色の星の光が遠くで瞬いている。
よく見ればそれの光たちはひとつ所に留まらず、絶えず動きながら瞬いているようだった。何故だか、それが星の光ではないと俺は知っていた。
それは命の輝き。
幾千、幾万の者が戦い命を燃やし、そして散っていく光だ。
「どうする?押されているようだけど…。」
男が語りかけてきた。
何も存在しないような闇の中で自分とその男は生きている。男と表現したが、その者は今まで見たこともない存在で、見たこともない者だった。しかし俺はその者を知っていた。
「そうだな○○○○○○。ここらが引き際だな。」
俺は少し笑い、その男に号令を発した。
「部隊を再編成しつつ後退。殿は俺が勤める。最善を尽くして生きて帰るよう全軍に通達。徹底させよ。」
男は「またか」という顔をして、何か言わんとする言葉を飲み込み「了解しました」とため息混じりに応答し、深々と頭を下げた。
「行ってくる。後は任せたぞ。」
男に向けて悪戯をした悪ガキのような笑顔を見せ、俺は光に向かって飛翔した。