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鬼才青年の物語  作者: 黒金 翔
第一章 少年編
2/5

第1話 第一章『覚醒』


※注意※

この作品には以下の要素が含まれます。


・残酷な描写。

・出来る限りリアルに仕上げた戦闘描写。

・出来る限りリアルに仕上げた設定。

・男主人公

・貴族物語

・いずれはハーレム


以上の要素が大丈夫で

「そんな事より作品を読ませな。」


「んな事良いからあくしろよ」


「先進んで良いかい?急いでるんだ」

という方は先にお進み下さい。

前述した要素が苦手、無理という方は遠慮無くブラウザバックして頂いても構いません。この作品は読む人を選ぶ作品ですので無理をなさらずに。


それでは、本編開始です。


中国避けの天安門。


─────────

推奨OP曲 真山りか Liar Mask(tvsise,ver)


─────────


…………ザァァァァァァァ


雨の音がする。


「(雨の……音…?此処…は?)」


瞳を開けた。其処には上品な細工の施された天井があった。


此処は何処だろうか。時代は……何時だろうか。


部屋を見渡す

ベッドも部屋も広く、一般家庭以上に豪華だ。

恐らく裕福な商人の家か貴族の家だろう。

内装からして……文明、時代的にはかつての中世に相等するだろう。


ベッドの横にある机の上には短剣とフォールディングナイフ、懐中時計、四角い金属片がある。

短剣、フォールディングナイフ、懐中時計、金属片には綺麗な紋様や装飾が施されている。美しい。非常に高価な品だろう。刃物類は抜いた所かなりの業物の様だった。

金属片はよく見た所かつて居た世界のライターに近い物だ。だが何らかの魔術的反応がある。

服装は……礼服。それも貴族と思わしき物。しかも白手袋まで履いている。

この体は……貴族の者か。


「また…か。()()()だ?」

高音の声。少年の声。

これが俺の声か……

やはり……

「やはり…俺は()()…。仕方ない……この体の記憶を…グッ!……これ…は?」

何度か経験した痛み。

情報取得の痛み。


()()()()により俺は何度かこの痛みを経験した事がある。頭を戦槌で殴られる様な痛みを感じると共に流れてきた記憶を辿る。

……どうやら生まれた直後俺は魂を防壁で保護し、意識を閉じたらしい。だが俺の身辺警護をする気だったのか使い魔が勝手に出ていってしまっている。

その後俺の魂の劣化コピーの様な物が肉体を動かしていたらしい。精神防護が甘かったのだろう。恐らくそれが引き金となり防壁の隙間とも言える場所から情報が漏れ、劣化コピー人格が形成されてしまったのではないだろうか。

だがその人格も壊れてしまったらしい。

俺が意識を取り戻したのもそれが原因の様だ。

人格破損の原因は……母親の死?

声や肉体から察するに年齢的には10歳以下か。

……人格が壊れても可笑しくは無いな。


もう一度眠るか?だが、今回の様にまた仮人格が壊れるのも面倒だな。それに……流石に無いとは思うが【()()()()されてこうなった可能性も……

その場合このまま眠ってもまた叩き起こされるだけか……

もし俺の考えが正しいのであればもう一度封印し直した所でまた同じ様な事になるだろう。

…このまま生きるか……


記憶を辿ろう。

生まれた直後母親らしき人物に何かの術を掛けられている様だ。

この術式は……高度な隠蔽術式と封印術式か。

掛けられている部分は…瞳と……。もしかして……



生まれは……ブランデンブルク帝国の男爵家?

ブランデンブルク帝国……聞いた事の無い国家だ。

ブランデンブルクという地名に聞き覚えはあるがそれは()()()()()()の時の事。


確か最初の時はドイツ連邦共和国の州名の一つだったか。州都はポツダムだったと記憶している。


ブランデンブルグ帝国は()()の俺が所属していたユーラシア帝国の領土の1/40の面積に相当する国土を持っている。旧帝都も領土内に入っている。というか帝都跡が現在の首都でもある様だ。跡地に建国したか……

首都はブランデンブルグ、だがそれは名称だけで地理的に言うと最初、二度目でのベルリンに相当する場所だ。


成程、領土はかなりの広さだな。

ブランデンブルグ帝国のヴァイマル新男爵家という所に生まれたらしい。

名はジークフリート。……不吉な名だな。

正式名称はジークフリート・フォン・ヴァイマル。

年齢は8歳…だが精神的には90超えか?

いや、今までの経験上肉体に精神が引っ張られて若くなるか……感情制御が上手く行くか心配だな。

俺は長男だが側室筋で、正室の子供に次男である俺の腹違いの弟、アヒム。もう一人の側室の子供に長女である腹違いの妹、シャルロッテが居る。

もう一人の側室はシャルロッテが二歳の頃()()しているらしい。

俺が継ぐかアヒムが継ぐかどちらになるかは分からないが血筋を重んじるのであればアヒム、長男である事や能力的に見れば俺か。

面倒だな。皆には悪いが俺は家を出た方が良いのではなかろうか。……家を出よう。


3歳頃からかなり教育を受けている様だ。

【魔術属性】は…【基本属性】が【火】【水】【土】、【派生属性】が【炎】【氷】【金属】。

この歳で派生属性か……

ん?【特殊属性】???……

そして【概念属性】という物まである。

だが内容が開示されていない。

瞳と共に()()()()()()()な。

【魔力量】はかつての1/200か。この歳にしては破格だな。それに肉体の可能性や魔術的才能はこちらの方が前世より高いな。

前世では属性が【火】属性、【水】系統、【土】系統だけだったのだが今回は特殊な物が追加されている。因みに前世では【火】属性は【炎】属性に派生しなかった。

この事からも分かる。それにこの歳で上位属性まで……だがこれは俺が表層に出て来てからの様だ。

前での技能も少しは扱えるのだろうか……


剣術やその他武術もこの歳だと十分過ぎるだろう。そちらもかなりの才だな。

7歳頃から母親の体調が悪くなり現在は故人となっているらしい。様々な思い出が流れてくる。優しく、美しく、そして強い女性だな。心も清そうである。だが心を読める訳では無いので印象通りかは分からないが。

母は病の様だったが何か違和感を感じる。

最近亡くなった様だが葬儀が行われた記憶が無い。

近日中の記憶が無い。精神が壊れたからか?丁度部屋にカレンダーがあったので見てみた。今日は3月21日…そしてカレンダーに書かれている葬儀の日は…今日。

マズイ!3時から火葬と書いてある。場所も書かれていた。そして部屋にある置き時計は2時45分を示している。

急ぐか。何故俺は眠っていたんだ?誰か起こせよ。

流石に息子が出ないのは対外的に不味いだろう。


着替え終えていた様なので机の上にあった物を素早く身に付け火葬する墓地へ走る。


─────────


推奨BGM L'arc en ciel 虹


─────────

家を走って出た。

走りながらフォールディングナイフの刃を展開し右手の指に滑らせ少し斬った。刃を仕舞い、ナイフを仕舞った。

人指し指の爪の先端から血が滴り落ちる。

そして指で左手の白手袋へ()()()()を書き始める。


─────────




─────────

墓地に着いた。

雨でズブ濡れだが気にしない。

傘を差した喪服の集団へ近づいた。

中央に父が居る。

「父上!」

父へ声を掛けた。


「ジークフリート!起きたのか!まだ休んでいて良かったんだぞ!」

「母上の葬儀です!僕が参加しないなんておかしいでしょう!」

「だが……」

「それよりも火葬は?…もう終わってしまいましたか?」

「いや、まだだが……」

「その役目、…僕にやらせては頂けませんか。」

俺は父に頭を下げ頼んだ。

この事で今後多少目立つだろうが俺の母への手向け。それぐらいはしたい。自分でも分かる位感情的になったなこの体で覚醒してから。


「お前…どうする気だ!お前がやらなくとも「僕に!!……僕に…どうか!」

俺は父の言葉を遮りそう言った。


「……いいだろう。だがどうする気だ?お前、火属性系統は持っていない筈だろう?」

どうやら持っていない事にされていたらしい。もしや俺の魂が覚醒するまで無かったのか?

まぁいい。どちらにせよ今回【火】属性や【炎】属性は使わない。


「見ていて下さい。…そこの魔術師の方々!下がって下さい!」

下がって欲しいと言ったが彼らは戸惑い一向に下がろうとはしなかった。

当然だろう。急に現れた少年が退けと言ったのだから。だが…


「下がってくれ!報酬はそのまま払う!」

この父の一言で彼らは下がった。


さて、これで準備は出来た。

俺は右手でライターを取り出しながら三歩前へ出、足を肩幅に開き立った。

そしてライターを持った右手と手袋を嵌めた左手を前へ伸ばし体の前で交差させた。

右手を下に、左手を上に。

そして魔力を使用し母の遺体が納められている棺を宙へ浮かべた。

この体には負担となる可能性のある魔力の使い方だが、まぁいいだろう。

これで俺の準備も整った。

始めよう。

別れの時だ。


今回挑むのは母への手向けでもあるがこの体における現在の限界を見極める為でもある。

俺は左手の指を鳴らした。

刹那、これを合図として母の棺の周りの魔力が母の棺を球体状に囲む。そこへ大気中の魔力を利用し球体状の魔力内に大気から酸素を精製し充満させた。

普通に焼く分には雨が降っていなければ魔力球はそこまで必要無いのだが……

そして魔力によって俺の手元から魔力球まで大気中の魔力を用いて管を作成。ここにも酸素を精製。

錬金術の一種と魔力操作。

この間僅か0.00秒以下。


最後に俺がライターの火を一瞬付ける、直後に魔力管の手元側を塞ぐ。


炎が魔力球へ向かって行く。

着火後は安全の為に腕を引く。

この動作中に魔力球へ炎が到達する。

到達の瞬間魔力管の魔力球側は解放。

結果、魔力球内に炎が発生。母の遺体が納められた棺が高温の炎で焼かれる。

そして母が骨だけになった後、地面へ魔力球を降ろし、魔力球を解除した。


……悲しいな。まだこんな感情が俺にあったのか。


「(母上……さよ…なら…)」


意識が遠退いて行く。が、頑張って立て直した。

まぁそれでも膝を地面に着けてしまったが。

後ろから使用人達が寄ってくる。だが、俺は振り向きつつ彼らに手を翳し静止する。そして……

使用人達の中でも後方に居た不届者に視線を送る。

殺意を込めた、視線を。

この後、我々は教会へ戻り祈りを捧げた。


─────────




─────────

【3月22日】



チュンチュン


チュンチュン


…………


鳥のさえずる音が聞こえる。


朝だろうか…

目を開けた。


「(…此処…は?)」

俺の意識が覚醒した部屋。自分の部屋の天井が見えた。


「(あの後……どうなったんだったか。」

記憶を辿る。

……意識を朦朧とさせながら風呂に入り早めに眠りについたか。


コンコンコン

「(ん?)」

窓の方から音が聞こえた

…この反応は?……あいつか。

ベッドを降り窓辺へ向かう。

そこには小さく黒い鷹が居た。

名は【シュヴァルツ】。

かつて諜報用に作った使い魔だ。

俺の生誕後勝手に外へ出たのはこいつか……

どうやら俺の中に戻りたいらしい。

俺はシュヴァルツに触れ、俺の中へ魔力として戻した。

刹那、膨大な量の記憶が俺の頭へ流れ込んで来た。

………これにより分かった事がある。


………俺の母である第1側室ブリュンヒルデとシャルロッテの母である第2側室コルネリアの死因は病室ではなかった。

暗殺、否。毒殺だった!

一年間にも及ぶ毒の投与。これにより彼女達は死亡した。

何という事だ。あの時俺が心を閉ざしていなければ彼女達を死なせる事にはならなかっただろう。

この様な事態にはさせなかった。

それを……俺が生きる事が嫌だからという理由で心を閉ざし己を封印してしまった……

()()()俺は重要な時に選択を間違える……


……下手人は……正室、アデーレの実家から送られてきた使用人か……その上は……アデーレの実家、アーベル子爵家か……

アデーレは絡んでいないどころか何も知らされていないらしい。アデーレは優しい性格なのでその様な事はしない。最も、俺の記憶やシュヴァルツの記憶にある限りでは…だが。

奴らアヒムを次期当主にしたいからと言う理由で母上達を殺しやがった……


……消すか。

予想されうる奴らの目的上俺も暗殺対象だ。幸い未だ俺の体に手が及んだ訳ではないが、今までも刺客を差し向けられている。まぁその都度シュバルツが阻止してくれていたらしいが

取り敢えず暗殺者が来た時に対処するとしよう。

それを証拠として使い大義名分を得るか……

一度父上と話がしたいな……


コンコンコン


今度は扉の方から音が聞こえた。


「ジーク様、入らせて頂いても宜しいでしょうか」


小声で訪ねられた。美しい高音の声。少女の声だ。

ガチャリ

……即座に返答しなかったせいか扉が開かれた。


「失礼致します……ジーク様…ジーク様!?」

そこには10代前半の美少女が居た。

金糸のごとき美しい金髪、晴天の空のような綺麗な蒼い瞳。整った顔に10歳にしてはメリハリの効いているプロポーション。

記憶にもあった俺専属のメイド、リゼだ。

彼女は幼い頃、ブリュンヒルデに拾われた没落貴族の元令嬢だ。最も、乳児期に引き取られたため両親の事を覚えていないらしいが。

どうやら俺が起きている事に驚いた様だ。

そんなに俺は寝坊助では無かった筈だがな……


「ご無事ですか!?何か違和感は!?」

すぐさま駆け寄ってきた。


「問題無い。それより父上と話がしたい。重要な話がある。」

「……本当に大丈夫ですか?私は心配です。」

心配する要素が見えん。


「何故だ?」

「何故って…悲痛な表情をされていますし先日までのジーク様の雰囲気とは異なっています……。それに話し方も少し変わられたかと思います。……私は心配です。……もし辛いのであれば私に遠慮なく言って下さい。私が出来る限りの事を致します……」


……中々鋭いな。否。俺が隠せていないだけか。いくら覚醒したばかりとはいえまだまだ未熟だな俺は。確かに前の人格は消えた。俺が1歳の頃から一緒の様だし気づくのは当然か。……だが


「何も変わった訳じゃない。深く考える様になっただけだ。無理なぞしてない。」

恐らく何もかもが前と比べ物にならない位違うだろうがこっちが本当の俺なのだから変わった訳ではない。ただ基本的に何もかもが過激になっただけだ。


「ですが……なら失礼と承知の上で一つよろしいでしょうか?」

「…何だ?」

ギュッ

「…は?」

抱き締められた。


「少し…このままで居させて頂いても宜しいでしょうか?」

俺の頭が胸の辺りにある。柔らかい。良い匂いがする。甘い香りだ。


……少し思考が停止してしまった。……未だに思考があまり出来ていない。……何故だ?謎過ぎる。

特に悲しい訳でも無理をしている訳でも無いと言ったにも関わらず抱き締められた。

……端から見れば俺はそんなに危ういのだろうか。

確かに今までの前世等から全く人を信じてはいないが……。


こんなに優しい彼女が悪人であって欲しくは無いな。だが心が読めないから証明する方法が無い。本当なら突き放すべきだろう。

が。

何故か出来ない。

未だこんな甘さが俺にあったのか……甘さは隙になる。消さなくては……俺に甘さなぞ要らない。

だが未だ甘さだらけ。これではまた殺されかねない。


「私はあなたの前から居なくなったりは致しません。あなたと共に居ます。ずっとです。私を頼って下さい。あなたは独りではないのです。」


「………ありがとう。」

……甘さを捨てなくてはいけないのに何故かこう言うのが正しいと思った。


「…はい。」


─────────


推奨BGM ドヴォルザーク 交響曲第九番ホ短調第四楽章


─────────


「で?話とは何だ?」

あの後リゼは5分程経ってからやっと解放してくれた。

そして今は自宅に居た父、アウレールに話があると言い書斎に来た。

人払いをしてもらい二人きりの状態にした。

そこで俺は自分の目的を果たす為にある提案をした。


「父上…僕を廃嫡して頂きたい。僕はこの家に必要無い……」

俺はそう話を切り出した。


「……は?…何故だ!何を言う!何故お前を廃嫡する必要がある!?お前はヴァイマル新男爵家の長男だ!お前が家を継ぐんだ!そう前々から言っていただろう!」

唐突過ぎた為か大変驚いた表情になった後、険しい表情となりそう言われた。

…ここは強く行かないと……俺は家を出て一人で余生を過ごしたいのだ……リゼには悪いが俺はやはり一人で生きていきたい。


「…僕は側室筋です……血筋の上で言えば僕は次期当主に相応しく無い。それに僕はアヒムに継がせたいのです。他にも奴の方が相応しいと言える点が多く存在しています。故に僕が家を出るべきだという結論を出しました。」

「側室筋だとしてもだ!俺はブリュンヒルデと約束したのだ!お前が次期当主だ!」


そんな約束俺の記憶には無い。生前の母上もその様な意識は無かった。

確か上司はチラリと『長男はいずれ廃嫡すべき』と言っていたらしい。これらを使おう。


「それは確か父上が母上にご勝手に誓った事ですよね?母上からはその様な事は全く聞かされておりませんよ?僕は1人で生きていきます。俺はアヒムの障害となりたくは無い!それに上司の方も俺を廃嫡すべきだと言っているそうですね?言われている通りにすべきかと。」


かなり動揺している。

どうやら効いたらしい。このまま廃嫡となれば良いが……どうだろうか……


「……だがお前は未だ幼い。未だ8つの子供を廃嫡するのは外聞が悪い。それに一人でどうやって生きるつもりだ?」

この様に切り返してきた。


「僕は剣も魔術も扱えます故、冒険者かハンター、職人として生きていこうかと……」

冒険者とはその名の通り冒険を生業とし生計を成す者の事。

世界各国には冒険者のギルドがあり、それぞれ協力し合っている。

主に迷宮と呼ばれる物の攻略や魔物達の討伐等を行う。その他にも様々な業務内容がある。云わば何でも屋だ。

ハンターもその名の通り動物や魔物を狩る職業だ。

この2つの職業は厳密に言うと1つの職業なのだが迷宮攻略や何らかの採集を主にするか動物や魔物の狩猟、討伐を主にするかによって呼び方が分けられている。

どちらも行う中間層と言える人々は冒険者に分類される。

これ実はギルド側公式の分類なのである。

一応傭兵という手段もあるがこれを此処で言っては確実に止められる事が容易に予想されるので言わない事にした。

傭兵をやる位なら騎士団や兵団に入れと言われるだろう。


「魔術と言うと……お前が火葬の時に見せてくれた炎か?魔術師達が絶賛していたぞ?というか職人とは?……お前は俺に内緒で火属性系統を発現させていたのでは無かったのか?鍛治でもするつもりか?」

やはり勘違いしている様なので一応言っておくか……だが少しは隠すか……


「あれは錬金術の一種です。僕の属性は土属性系統ですよ……」

「何!?あれが錬金術だと?」

「はい。」

「…本当に土属性系統なんだな?」

「はい。そうです。鍛治も良いとは思いますが職人になるのであれば他の物を作ろうかと」

まぁ疑うか……仕方ないだろうな……あんな事普通はしないだろうし。


「……少し考えさせろ。明日伝える……今日は戻ってくれ……」

思案顔となりそう言い放った。

もう用は無い。


「それでは。失礼致しました……」

扉を開け俺は退室した。


─────────




─────────

【3月23日】

翌日。

俺は父に呼ばれ書斎へ赴いた。

昨日の話の後父は出掛けた様だ。

恐らく上司の所に行ったのだろう。

コンコンコン


「失礼します」

「入れ」

返答があったので入室する。



「失礼致します」

そこには父と正室、アデーレが居た。


「座ってくれ」

促されたので一人掛けのソファーに座った。


「……昨日の件だが……お前の言う通りにする事となった。だが時期尚早過ぎる。14まで待て。今廃嫡するのは外聞にも障るし個人的にも…な。」

どうやら上手く事がいったらしい。


「……旦那様、今廃嫡と申されましたか?」

アデーレ嬢は知らされて居なかったらしい。


「そうだ。ジークフリートは14歳になれば廃嫡する。本人からの進言とバーデン伯爵の意見を尊重した。」

この一言にアデーレ嬢は心底驚いた表情を見せた。


「そんな……何故ですジークフリート!どうしたのですか?」

どうしたと言われてもなぁ……


「僕は側室の子であなたの子であるアヒムは正室の子。僕は長男でアヒムは次男。ここまで言えばもうお分かりでしょう。僕は家督争いなぞする気はありません。僕はアヒムにヴァイマル男爵家を継いで欲しい。相続権放棄の証です。」

その一言でアデーレ嬢の顔が凍りついた。


「そんな……それではあなたは……」

「僕は自分で生計を立てる考えがあります故……正直今からでも良いのですが外聞に障りますし。」

「……あなたはそれで構わないのですか!相続権のみ放棄しここに住む事だって!……」

「それでは皆に迷惑を掛けてしまいます。それにこれは決定事項となった。今更変えられませんよ……」

その言葉で彼女は黙ってしまった。

会話が途切れたのを見計らってかアウレールが言葉を発した。


「だが条件がある。」

条件?


「俺に武術で勝つか対等、最低限俺とまともに戦える程度になる事だ。」

その程度か……簡単だな。


「分かりました。何時まででしょうか?」

「13歳になるまでだ。それまでで良い。」

「13歳までとは……もしかして残り一年は職業訓練ですか?」

「良く気が付いたな。その通りだ。」

それなら12迄に勝っておきたいな。

余裕を持たせておきたい。


「……早速ですが三日後に立ち会っては頂けませんでしょうか?」

「何?」

彼の顔に少し表情に怒りが見える。俺みたいな子供には無理だとでも?

否、子供に見えようと俺は計60年程戦場で戦い続けた人間だ。経験なら今の父以上にある。それにこの体とて慣れれば十分に戦える体だ。出来れば早めにアウレールを倒して今後に備えたい。今回は小手調べ程度だがなるべく速く倒しておきたいとは思う。


「いえ……今の段階でどれくらい戦えるか試してみたいのです……」

「そうか……いいだろう。三日後立ち会ってやる。」

「更に一つ宜しいでしょうか?」

「……何だ?」

「もし今後僕の実力が十分だと判断された時、先に冒険者登録又はハンター登録、商工ギルド登録行い働き始めても宜しいでしょうか?」

一人で田舎で暮らすにしても多少金が要る。貯金をしておきたいのだ……

それに今までの恩返しも含め此処を出ていく時に幾らか渡したい……


「……いいだろう。廃嫡したら金が要るだろうしな。貯蓄しておくのも良いだろう……だがしなくとも出ていく時には幾らか渡すぞ?」

それをしては俺が出ていく意味が無い事を解っていないのかこの人は……


「それをしては相続権放棄を行った意味が無いのでは?金銭供与を受けている訳ですし。」

「……良く考えているな……だがこれは親の性とも言えよう。お前に渡さなくとも良いと思う程貯蓄が出来なければ渡すぞ。いいな?」

そうならない様に精々頑張るとするか……


「はい。それで他に用件など御座いますでしょうか?無ければ僕はこれにて失礼させて頂きたく思います。」

「……もう無い。下がっていいぞ。」

「それでは……失礼致しました……お二人ともこの件はご内密にお願い致します。」


─────────


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