白銀 少女と出会う
ふと目が醒めた。
「やはり、死ぬ事は出来なかったか…」
辺りを見回す、いつの間にか森の中いた。
私は火の中に飛び込んだはずだ…
それに世界は炎に包まれて森など、存在していなかったはずだが…
「どうなっているんだ?」
火に飛び込んだ時の記憶を探る
目を閉じていたので情景は見る事は出来なかったが熱は感じられた。
火の熱とは思えない程の暖かさで、眠る様に火に身を任せ、数年振りの睡眠を味わえた。
変身ベルトのAI。ニルヴァーナに現状を確認する。
「ニルヴァーナ…どうなっている?」
「…」
「ニルヴァーナ?返事をしろ」
「許可ヲ…話ス。許可ヲ下サイ」
機械の音声。声は女性に設定されている。
「許可?どういう事だ?」
「マスターハ馬鹿ナノデスカ?マスターガ、許可ガデルマデ話スナト言ッタノデスガ…」
そう言えばそうだったな…相変わらず口が悪いが…
「…許可する…現状の報告を…」
「マスター、ソノ前に謝罪ヲ要求シマス」
「何故だ?」
「マスターガ、私ヲ黙ラセタ所為デ私ノボディニ汚レガ着キマシタ。デスノデ、私ノボディヲ綺麗ニシタ後、頭ヲ深ク下ゲ私ニ許シヲ請ウテグダサイ」
前から思っていたが、何でこんなに性格がキツイ設定なんだ?
このAIは間違いなく、使用者(私)を舐めてる。
はあとため息を吐き、ニルヴァーナ(変身ベルト)の汚れをハンカチで綺麗にする。
その後、切り株の上にニルヴァーナを置き、頭を下げる。
「ニルヴァーナ、済まなかった!」
「後2㎜位、頭ヲ下ゲテ下サイ」
心の中で舌打ちをし、2㎜頭を下げる。
「O、K」
正直、頭にくるが顔には出さない。
「では状況の説明を頼む」
「マスターガ、人類ヲ皆殺シニシタ後、無責任ニモ逃避ヲ選択シ、火ニ飛ビ混ミマシタ。飛ビ混ム瞬間、マスターノ前方ニ高密度ノ、タキオン粒子ヲ観測シマシタ」
「タキオン粒子?確か、光より速い物質だったか?」
「詳シイ、説明ガ必要デスカ?マスターノ脳味噌デハ、理解出来ナイト思イマスガ」
「いや、いい。つまりタキオン粒子で別次元に飛ばされたと考えればいいのか?」
「Yes」
「ここは地球の何処ら辺だ?」
「回答不可、衛生ドコロカ全テノ回線ニ接続出来マセン」
衛生や電話回線が無い時代なのか?
「随分前の時代に飛ばされたみたいだな…」
「イエ、恐ラク。ココハ地球ニ良ク似タ環境ノ星ダト思ワレマス…クエーサー粒子ノ濃サガ弾違イデス」
クエーサー粒子?確か地球上で漂う新種のエネルギー粒子だったはず
「ニルヴァーナに変身した状態で使う力の源だったな」
変身スーツはクエーサー粒子を力に変換してその圧倒的力を得る。
「Yes」
「クエーサー粒子ヲ新種ノエネルギー粒子ト言イマシタガ、古来カラ存在ハシテイマシタ、科学ノ発展ト共ニソレヲ使ウ者ガ減リ衰退シテ行キマシタガ…」
「別にどちらも使えばよかったのでは?」
使えば分かるがあの力は本当に圧倒的だ。
科学も日常では便利だがクエーサー粒子も便利なのは間違いない。
「科学ト相反スル粒子デスカラ、仕方ガアリマセン」
「でもニルヴァーナもその科学で出来ているだろう?」
「私ハ貴女ノ世界デ創リ出サレタ存在デハアリマセンカラ」
「それは…「キャーーー!」
悲鳴?
「ニルヴァーナ…」
「半径300m圏内ニ女性ト獣ガ居マス…ドウヤラ追ワレテイルミタイデスネ」
「・・・」
「助ケマスカ?マタ裏切ラレルト、思イマスガ」
私は黙って走りだしだ。
「マスターハ、本当ニ馬鹿ナノデスネ…」
ニルヴァーナの小言を無視し最短距離で悲鳴の方向に向かう。
”彼女は変身ベルトのおかげで生身でも超人的な動作が可能である”
到着した時には少女の背後に植物の壁があり、後は獣が食すだけという状況だった。
少女を見る…
その姿に息飲む…
「アノ獣ハ明ラカニ地球上ニ存在シナイ生物デスネ…マスター?」
少女の姿に吸い寄せられるかの様に歩みを進める。
「”ー変身ー”」
『イエス・マイマスター
変身プログラム起動…承認
ニルヴァーナmakeover』
空気中のクエーサー粒子が変身ベルトに集まり、眩い光を放つ。身体中が光に包まれ、銀色の変身スーツに変わった。
力が漲る。
クエーサー粒子が濃い所為か、以前より圧倒的な力を感じる。
唖然としているのか、惚けてる獣の首を手刀で凪いだ…
そのまま進み…彼女を見据えた。
涙が込み上げてくる…彼女は私を守って死んだ少女に似ていたから…
「嗚呼…」
少女が声を漏らす…
「ーーー」
私の心が掻き乱れるのに反応して仮面の部分が粉々に割れた…




