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5日後

 

 時刻は朝の9時。本来ならばとっくに登校していなければいけない時刻なのだが、俺は

いまだベットの中で惰眠を貪っていた。普段ならば一応不良のはしくれとはいえ、時間は守るようにしているのだがもはやその必要はない。なぜならば、学校側から長期間の停学を言い渡されたからである。

 あのあとたくさんの先生たちに捕まった俺は、職員室に連れていかれ、長期の停学が決定した。あの状況だけみたらなぜ退学にならなかったのか不思議なくらいではあると思うのだが、どうやら御手洗が庇ってくれたらしい。俺としても、ああなってしまった理由はなんとなく話したくなかったので、基本的には黙秘権を行使させて貰っていたのだが、そんな俺に対し御手洗は「話せるときがきたら話してくれ」とだけ言い、そして御手洗以外の教師からはゴミ虫を見るような目で見られながら、学校から退散した。

 倒れていた二人があの後どうなったかは誰も話してはくれず、まぁ俺からも聞きもしなかったのだが、それでも気にならないかと聞かれればウソになる。ウソにはなるが、それを確かめる手段も人脈もないので、どうしようもない。

 ベッドの横の時計を確認する。時刻は10時。まだ午前中か。早く時間よ経ってくれ。と思いながら瞼を閉じる。寝ているときだけは、余計な事を考えなくて済む。そして必要なことすらも、考えなくて済む。

その時、まだまだ眠るつもりだった俺の足の指に、突然何かが噛みついた。それも甘噛みなどというそういった類のものではなく、マジ噛みだ。マジのバウンティングだ。

 「いてぇーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!」

 「がぶがぶ」

 俺に噛みついていたのは、近所に住む一歳年下の葉月くんだった。一見すると女の子にしか見えないルックスをしているので初めて会ったときはビックリしたが、それでも立派な男の子だ。女の子扱いは、あまりされたくないらしい。

 「お前なに噛みついてんだ!ふざけんなベッドから降りろ!」

 「二年生になったからって偉そうにしやがって。この今日から俺は野郎!」

 「突然金髪にしたからって、それはやめろ………」

 俺の金髪にしたのには何か重大なきっかけがありそうに見えて別になにもない。そういう意味はで俺は立派な今日から俺は野郎だった。

 「お前何学校サボってんだよ。ただでさえ成績がばかみたいに悪いんだから出席ぐらいはちゃんとしろよ」

 「それを学校に行っていない人間には言われたくはない……」

 今俺の足に噛みつきながら悪態をついているこの少年。名前は双葉真智というのだが、いわゆる不登校で、本人に言わせれば「今の時代、学校に行く意味はない。なぜなら、必要な情報はすべてスマホで手に入るから」だそうだ。その後、学校に行く必要性を話し説こうとしてやったが、自分より若いとはいえはるかに優秀な人間に対して弁舌で勝てる筈がなく、悟りの速さにだけは自信がある俺は

それからこの少年に対し、えらそうな事を言おうとはしなくなった。そもそも俺は劣等生だ。不登校の優秀な人間と、欠かさず登校する劣等生とではどちらが偉いか、不真面目かなどということは特に比べる意味が無く思えた。

 「僕は別にそんなところにぶら下がらなくたって生きていけるからいいんだよ。でもお前はそうじゃないだろ。無能で不器用の癖に個性発揮しようとしてんじゃねぇ!」

 そう叫ぶ双葉の顔は、どれだけ怒り狂おうと美少女にしか見えない。朝一でこんなことを言われたら普通なら腹がたって仕方がないのだろうが、双葉の外見が一見美少女だからであろう、腹は立たない。

 「うちのおふくろに聞いてないのか?俺は今停学中だ。登校する権利ははく奪されている。あと俺のベッドから降りろ」

 「そんなんわかってるさ。わかってるからこそ嫌がらせで言ったんじゃないか」

 「お前最低だな………」

 顔で得してるよ、お前は。

 「まぁ、よって今俺がするべきことはせいぜい家事ぐらいだ。言うなれば俺の身分は主婦見習いと言ったところだ」

 「目玉焼きも焼けない人間が何を言ってるんだ……」

 そういいながら双葉はベッドから降りると、

 「おばさんもう仕事行っちゃったから、僕が朝ごはん作ってあがる。ほら、しっかり立って」

 と俺の腕を引っ張り、そして立たせた。棋王一日ベッドから起きなかったので、足がぐらぐらする。でも、腹はすいていた。

 


 朝食、というかブランチとして出されたトーストオン目玉焼きを、まるでパズーの如く平らげて、牛乳で流し込む。そこでやっと気持ちが落ち着いた。やはり空腹と気持ちの張りは、どこかで繋がっているらしい。

 「調べさせてもらったよ。今回の事の顛末を」

 流し場で俺が食べた後の皿を洗いながら、双葉がそう言った。

 「今回の事の顛末ってなに」

 「お前がなぜ停学になったのかだよ。いままで悪ぶったりすることはあったけど、本当に何か事件を起こしたことなんか無かっただろ。だから変だと思ったんだ」

 洗い物を終えた双葉は、正面の椅子に座ると俺の目をジッと見つめてきた。こいつは本当に目がでかい。怖いくらいだ。

 「別に……喧嘩ぐらいいままでだってしてただろ」

 「いままでのは喧嘩だんていわない。ただの小競り合いさ。今回の相手はガチものの武道家で、しかもその相手をぶっ倒したときたもんだ。そりゃ騒ぎにだってなるし停学にもなる」

 「倒したっていうかね……」

 倒したというより、結果的に倒れただけだ。     

 実力的なことをいえば、俺とあの男には圧倒的な差があった。最初の右のパンチを躱された時点でそのことには気が付いていた。気がついてはいたが、だからといってそこから引けるような状況でもなかった。腕は引いたけれど。それがあの結果を招いた。

 「学校ではかなり話題になってるみたいだよ。あの木下健吾が、変なヤンキーにやられたってさ」

 「木下健吾って誰よ」

 「だから兄さんが倒した合気道部の主将だよ。木下って男は、実戦で合気道を使える数少ない人間だったらしいよ。豊秋の学校の空手部だったり柔道部だったりの人間とも立ち会って、勝ってるらしいし」

 「あの男、そんな名前だったのか」

 知らなかった。名前も知らない男とあんな風になるなんて人生は分からない。

 「勉強も出来るし、見た目もかっこいいし、

超有名だよ。知らないなんてキミぐらいじゃない?」

 「名前は全然知らなかったな……」

 意識的に情報を遮断していたのかもしれない。アイツが俺の恋敵だとして、そんな男の情報は好んで耳に入れたいものではない。

 「ほんと情弱……」

 「うるさい」

 「その理由は友達が少ないから」

 「やめてくれ」

 「まぁ、でも僕はキミが悪いとは思わないよ」

 罵倒されていたところで、いきなりそんなことをいわれたので吃驚した。

 「今回お兄ちゃんに悪かったポイントがあるとしたら、おばさんを心配させたことくらいだね。心配させて、泣かせた。母親を心配させたり泣かせたりすることは、あまり褒められるような行為じゃないよ」

 あと僕も心配した、とぽつりと付け加えた。

 そんなことを言う双葉はとても可愛らしくて、それこそその性別が男だったらここで押し倒すという選択肢もあったのだろうが、残念ながら双葉は男だから、俺はその言葉に対し「悪かったな。母さんにも謝るよ」と返すことしか出来なかった。

 「わかっているならよろしい」

 そういうとにこりと歯をだして笑った。確かに悪いことをした。どんな理由があれ、結果として起こしたのは唯の暴行事件だ。

 「あの二人はあれからどうなったんだ?」

 俺が気になっていたのは、そこだった。あのあとすぐに連れていかれ、そして停学処分を受けた俺はあの後に二人がどうなったのかを知らなかった。こうやって俺がのうのうと生活をしている以上、まさかあのまま目を覚まさなかったなどということはなかったのだろうが(希望的観測)それでも心配だった。

 「あぁ、ピンピンしてるよ。一日だけ休んですぐに登校を再開した筈さ」

 「そうか………」

 「お兄ちゃんを悪者にして、あの二人は悲劇のヒーローとヒロインさ。そこにどんな事情があったかなんて関係ない。事実、木刀で暴れまわった不良が二人の優等生を打ち倒した。かわいそうな二人。でも、あの二人ならこれからも頑張れるね!…………なんてオチがついた感じ」

 「わかりやすい敵がいたほうが、物語はつくりやすいもんなんだよ」

 俺はあのとき、目の前で自分の好きな女を壁に投げつけ、打ちつける木下という男に対しむかついてそして殴りかかった。そこに至るまでのモチベーションはどうあれ、先に喧嘩を売ったのは俺だ。だから俺が悪いというのは仕方がないし、それは事実だと思う。ただ、あそこでああいう風に動いて、一之瀬を守ろうと動いて結果として何か事態が好転したのか、という思いはある。何も変わっていない気がするし、停学になった以上俺は学校に行くことが出来ないので、またああいう状況に二人がなったとして間に入ることも出来ない。身動きが取れない。そういう意味では最悪の状況だといえる。

 「このままでいいの?」

 「このままってどういう意味?」

 「このまま誤解されたままでいいの?って意味」

 「……誤解かどうかは、お前にはわかんないだろ」

 俺はこいつに細かい事情の一切を説明をしていない。個人的な恋愛事情なんて人に話すべきものではないと思ってるし、俺自身他人の恋愛事情に興味をもったことなんてないからだ。まぁ、今回の事態は恋愛事情なんて枠をはるかに超えていてただの暴力事件と世間的には捉われているのだろうけど。

 「何言ってるの。分かるよ。僕には」

 そう答える双葉の表情に一切の含みはない。

 お前は一体何を言っているの?とでも言いたげな表情だ。

 「キミという人間が、人に対して理不尽な暴力をふるわないなんてことは、僕からしてみたらあまりにも明白……というか自明の理すぎて当たり前すぎることだよ」

 そう言いながら手元のコップに入ってる牛乳をごくりと飲み込む。

 俺は驚いた。そう言われて嬉しかった自分に。そしてそれ以上に、そう言われたことでうれしさを感じる程に自分の心がショックを受けていたことに、驚いた。

 「キミは悪ぶっていたりはするけれど、決して悪いことは出来ない。キミが何かを起したときは、きっと周りが悪いんだ」

 俺は少しだけ泣きそうになったけれど、それをごまかすようにコップに残った牛乳を一気にあおる。味がわからないなんてことはない。牛乳の味だ。

 「だからこれからどうするの?って聞いてるんだよ。このままでいいはずがないでしょ。

キミがただ悪人であの二人が悲劇のヒーローとヒロインなんてオチで終わっていい筈がないでしょ。ボクはそんなの認めないよ」

 「でも……どうしていいかが分からない」

 「どうしていいかわからないんだね。じゃあボクが今回の件をプロデュースしてもかまわないかな?」

 プロデュース?

 あまり聞きなじみのない言葉に一瞬はっとする。

 「どういう意味だ?」

 「始まりから終わりまで、そして今回どいういう風に決着をつけるかまで、ボクに任せてくれないかな」

 「…………そうすると、どうなる」

 俺はどうしていいか分からない。分からないから、どうしていいか分からない。そしてその輪は、永遠と途切れることのない気配、絶望感を感じさせた。

 だからなんとかしてほしいという気持ちが、ある。

 「ボクとキミにとって喜ばしい結末が待っている。ボクがプロデューサーでキミが演者さ。」

 そして一言、こう付け加えた。

 「もっとも、キミとボク以外にとってはそれが喜ばしい結末になるかどうかは分からないけどね」

 


 「まずは情報収集をするよ!」

 そう高らかに宣言すると、俺に指をさししめした。

 「どうしていいか分からないときってのはとにかく情報を集めるんだ。どうしていいかわからないという状態の最大の要因は情報が足りないってことだからね」

 「調べるって……何を調べんだよ」

 「決まってんじゃん。木下って男がなぜ一之瀬に対してキレていたのか。そして一之瀬って女がなぜ木下って男に対して、縋るように許しを乞うていたのか、だよ」

 その状況を見たからこそ、俺はああいう風に思いそして行動に移したわけであって。

 しかし俺には、ああいう状況になった要因がなんとなくではあるが当たりがついていた。

 「そんなの、一之瀬と木下が付き合っていたってだけの話じゃないのか。そんで援助交際のウワサに愛想を突かされた一之瀬が、ああいう風に泣きながら許しを乞うていた……って思っていたんだけど」

 俺はあのシーンを見て内心そう感づいていたからこそこんな風に心にダメージ……そしていわゆる失恋のような経験をしたのではなかったのか。そうでなかったとしたら、あれは一体なんだったというのか。

 「それは分からないよ。キミは一之瀬が木下に対して土下座をしながら許しを乞うているところを見た。そしてそれに対し、壁に投げつけられた一之瀬と投げつけた木下を見た…………」

 「リフレインしなくていいから。だから今さらそんなわかりきったことを調査する意味もないだろ」

 「いや、キミが見たのはその状況だけなんだ。そこから先はキミが勝手に想像して、勝ってにキレただけなんだよ」

 それは、そうだ。ただそうだとしか考えられないだけで、俺自身がその事実を確認したわけではない。けど、それはそう考えるしかないじゃないか。

 「それがキミの悪いところだよね。本当はそうじゃないかもしれないのに、勝手にそう考えて、行動して、自滅してる。本当にそうかどうかは、分からないじゃん」

 そう言いながら、俺が食べた後の食器を片づけ洗い場へと運んでいく。

 そして洗い物をしながら言う。

 「だからまずは調べようよ。調べてないのに考えたって何か新しいことを思いつくことなんてないよ」

 「調べるのはいいけど、どうやって調べるんだ?」

 洗い物を終えた双葉は、俺の方に振り向くと言った。

 「そんなの決まってるでしょ。捜査の方法なんてはるか昔から決まっていて、それ以上の手段なんて存在しない程に明白なんだよ。」

 そしてこう言った。 

 「捜査といえば古来から足で稼ぐものだと相場が決まってるんだよ」


 「まずは木下の家にいくよ」

 そう言いながら食後のリンゴを剥いている双葉の手元は非常にスムーズだ。

 さっきからコイツは基本的にずっと動いているのだが、動いていないと気がすまなかったりするのだろうか。

 「家に行くって……お前木下の家知ってんのかよ」

 「知らないけど、別に今の時代住んでるところを調べること自体はそんなに難しいことじゃないよ」

 そう言いながらズボンのポケットからスマホを取り出すと、何かを操作する。俺はいまだにガラケーを使っているのでスマホがどれだけ便利なのかというのはよく分からないがこれだけたくさんの人がガラケーからスマホにしたということはきっとそれだけの理由があるのだろう。

 「ツイッターもフォローしたし」

 「木下ツイッターなんてやってるのか!?」

 どちらかと言えば俺と同じような、ネットやスマホなどには疎いタイプなのかと思っていたがどうやらそうらしい。

 「やってるよー。フォロワーもたくさんいるし、自撮り画像もよく上げてるよ」

 「…………マジか」

 俺の考えていた木下像とは全然違う。俺はその段階で、実像と勝手に考えてしまっていたことの差異にショックを受けた。

 俺は何も知らないのだ。何も、知らない。

 知った気になって、いろいろ考えて、勝手に何かを決めつけているのだ。そんな自分勝手なことがあるだろうか。決めつけられる方からしたらたまったものではないだろう。

 「んでんで。上げていた画像から最寄りの駅を特定しました。なので、そこで張っていればかならず現れるから、あとは家の場所まで付ければいいよ」

 「それは世間的にはストーカーと言うのでは?」

 「いや、ストーカーじゃなくて捜査活動だから問題はないよ」

 「問題ないのかな……」

 問題があるのかないのかは分からない、というか分かりたくないので考えすぎないようにする。

 「で、そうやって家を調べてどうすんだ。それだけがアイツがどんな家に住んでるかぐらいしか分からないだろ」

 「でも家も分からないんじゃ、他のことだって調べようがないでしょ。とにかくまずは家を調べて、それからだよ」

 リンゴを剥き、皿にのせてテーブルへ運んでくる。一つつかみ口に入れる。新鮮でうまい。

 「そもそも俺停学中だから、外出してるのバレたらマズいと思うんだけど……」

 「でもこのままじゃどっちみち登校許可は出ないよ。このままずるずると停学は続いてそのまま放校、つまりは退学さ」 

 どっちみち退学になるくらいなら、好き勝手やって退学になった方がお得でしょ、と言う双葉の話を聞いてどこか納得してしまった。

 確かにそうかもしれない。どっちみち退学になるのならば、自分勝手にやってやろう。

 「そもそもキミがいきなり金髪にした理由ってのはそういうところにあるんだとボクは思ってたんだけど。変わる切っ掛けが欲しかったんでしょ?切っ掛けが欲しいけれど、頭が悪くて考え付かなくてなんとなく金髪にしたんでしょ?」

 そうなのかもしれない。理由なんてない、ただ髪を染めてみたかったんだなどと周囲の人間には言っていたがそうじゃないのかも知れない。それまでのつまらなかった俺と決別をするつもりで、そのスタートになるかもしれないと思って髪を染めたもかもしれない。

 「今のキミだって悪くないけど、前のキミだってかっこよかったよ。でも、変わりたいと思ってるならこれがいい切っ掛けになるんじゃないの」

 なんだかんだと理屈をつけて行動しない。好きな女の子がキズつけられたときぐらいしか行動出来ない、そんな俺が変わる。変わろうとする。その気持ちはもっと大事にしてやるべきなのかもしれないと思った。

 「…………そうだな、やってみるか」

 自体が好転するかはわからないけど、とりあえずやってみよう。見切り発車でいい、少しでいいから俺から外に出ようとしよう。

 「じゃあ今日行こう!木下が使うのは笹口駅だから、ここから30分ぐらいかかるんだ。

だから昼過ぎぐらいにここを出れば余裕で間に合うと思うし、ちょっと早く行って張り込む場所を見つけておこう」

 「お前、なんか勢いがすごいな」

 「ボクからしたらキミがのろのろしすぎなんだよ。もうちょっと早く動こうとした方がいいんじゃない?」

 そう言うと椅子から立ち「じゃあまた昼過ぎに迎えにくるからそれまでに支度しておいてね。あと、ちゃんと風呂は入った方がいいよ」と言い自分の家へと戻っていった。

 俺はとりあえず湯船にお湯を張ると、勢いよく服を脱ぎ熱いシャワーを浴びて「ああああああああああああああ!」と叫んだ。

 久しぶりのシャワー、流されるのは身体の汚れだけではなかった。


 「なぁ、この恰好変じゃないか?」

 数時間後、俺たちが訪れたのは原宿だった。

原宿という土地柄に合わせるように、俺たちの服装はまるで普段着ないような、奇抜なものに変えられていた。

 「変だよ。変だけど、尾行するならその場に馴染まないといけないからね」

 双葉が着ているシャツには血走った眼球がデザインされている。ゲゲゲの鬼太郎に出てきたバックべアードを思い出させるようなデザインだ。履いているズボンもゼブラ柄だった。俺が着させられているのは虹色のパーカーに星柄の短パンだ。そして二人ともサングラスをかけている。

 確かに奇抜な恰好をしている人間が、普段生活している街よりも多い気がするがだからといってこの恰好はやっぱり悪目立ちしてる気がする。

 「そうだけどよ……。なんか、捕まったりしないかな…………」

 「捕まるわけないでしょ…………」

 そういいながら俺を見る目はどこか冷ややかだ。いや、やっぱりこの恰好は変だと思うんだけどな……。

 「部活終わってからまっすぐ帰ってくるとしたらそろそろだと思うよ。人が多いから見逃さないようにね」

 確かに人の出入りが多い。さすが山手線圏内だ。基本的に中央線から出ない俺からしたらあまり見ることのない光景だ。

 「そっか……。やっぱり人多いんだな。ここらへんまで来ると」

 「キミは普段買い物も地元で済ましちゃうからねぇ。服だってなんだってやっぱこっちまで出てくるとちょっと違うんだよ」

 「そうなのかもしれないが、今着てるような服を普段着にはしたくないな…………」

 これを普段着にするんだったら母親の買ってきた服を普段着にした方がマシだ。

 「まぁキミ身体でかいからね。あんまりこういう服は似合わないかもしれない」

 「じゃあ着せんなや……」

 「だから言ったでしょ。木の葉を隠すなら森の中作戦だって」

 「確かにそうかもしれないが、目立ってたら木の葉だろうがなんだろうが隠れられないんじゃないですかねぇ……」

 「うるさいなー。…って来たよ、来た!」

 駅の入り口を見ると、今まさに木下が改札から出てくるところだった。ひときわ身長が大きいので群衆の中でも頭一つぬけている。

 道場で見たときは分からなかったが、改めてみると雰囲気がある。

 周りの人間とは違う、そこにいるだけで空気がぴりりと張り詰めるようなそんな感じだ。

 「キミ、よくあんなのに立ち向かおうとお持つたね」

 「俺だって素面だったらそんな風には思わなかったさ」

 そう、あの時は素面ではなかった。ある意味で酔っていたからこそのアクションだ。冷静に頭を働かせていなかったからこその行動だったわけだ。

 頭には包帯を巻いていた。まだ木刀が直撃したときのキズが完全には癒えてないのだろう。

 「さぁ、後をつけるよ」

 原宿は駅前こそ人でごった返していたが、少しそこから離れると閑静な高級住宅が立ち並んでいた。

 「高そうな家が並んでるな」

 「ここらへんに住んでる人間なんて、金持ちか悪人に決まってるんだよ」

 「それは偏見じゃねぇかな……」

 そんな風に話しながら、あくまで原宿を根城とする若者のように自然に歩く。奇抜なスタイルも、信条もない人間が自然に歩いたところでそれはここの場所における不自然でしかないだろうが。それでも出来るだけ自然に尾行した。

 木下は寄り道をほとんどしなかった。唯一したのはコンビニでガムを買ったぐらいであとはまっすぐに家へと向かっているようだった。

 「うわ、見ろよ。でっかいお屋敷みたいのがあるぞ」

 「あれこそ悪人が住んでるんだよ……ってあそこに入っていくんじゃん」

 それは大きなお屋敷だった。原宿という土地柄にはまるで不似合な和風のお屋敷。木製の大きい門に、お城のようなデザインの建物。 

そしてその門を木下が開けると、中庭に大きな池があるのが見えた。開けられたのは一瞬ではあったが、池から鯉がジャンプしたのが見えた。

だれがどうみても、どんなふうに見ても、まごうことなく金持ちだった。

本人の雰囲気や風貌からおそらく貧乏ではないことは想像していたが、そんなレベルではない。富豪だ。金もちだ。

「で、ここからどうするかなんだけど…………」

家の場所は分かったが、それでこれからどうすればいいかが分かったわけではない。むしろ相手の強大さを知ってしまい、萎縮してるといってもいい。

「なんか作戦はあるのか?」

「作戦?ないよ」

そんなことをけろっとした表情でいう。

「何一つないのかよ!」

「そもそも相手のことをろくすっぽ知らないのに作戦もクソもないでしょ。大丈夫。作戦なら今考えたからさ」

そう言うと、空を指さしながらニヤリと笑った。

「この壁を越えよう」

 

双葉が提案した作戦はシンプルなものだった。塀を超えて中に入り、なんでもいいから事情を探る。

「これ作戦か?」

俺には作戦なんて大層なテーマをつけるのは憚られるほどに陳腐なアイデアにしか思えなかった。

「あとは状況に応じて動こう」

双葉は俺のそんな言葉に対しまったく介することがない。そして俺の腕を引っ張り、ちょうど門の反対側まで連れてきた。

「ここを超えるよ」

指し示された壁は、おおよそ3メートルほどはありそうな高さの塀だった。

「超えるって……どうやってさ」

それは今から考えるんだよ。といいながら周囲になにか使えそうなものはないかと漁っている。

「俺たちは忍者じゃねぇんだぞ。こんな壁越えられるはずねぇだろ」

俺の全うすぎる意見に対し、双葉がキレた。

「んもー、うるさいな!うるさいな!ボクに意見するんじゃないよ!キミはただいう事を聞いてボクに従ってさえいえばいいんだよ。だいたい文句ばっか言うんじゃなくて何か具体的なアイデアでもだしてみろよ!」

キレた双葉に詰められて、そんな風に言われると俺にも立つ瀬がない、というか言い返す資格がないように思える。確かに文句ばっかり言うのはよくないかもしれない。

 「わかった。文句ばっかり言うのはやめるからもう少し声のボリュームを下げないか?

この恰好にそのボリュームはさすがに目立ちすぎる」

 こいつは昔からキレると声のボリュームが大きくなりすぎる。普段ならばうるさいと注意すればおしまいだが、今はそういうわけにはいかない。

 そう言うも、双葉の怒りが収まることはない。俺に対し怒涛のマシンガントーク、そしてキレっぷりを発揮しまくる。ダメだ、いいかげん目立ちすぎる!

 そんなときだった。いきなり後ろから声をかけられた。

 「おい、片山ぁ!おめぇこんなところで何やってんだ!」

 振り向くと、それはいつぞやのドレッドだった。俺に喧嘩を売ってきて、返り討ちにあったドレッドヘアーとデブの二人組。その片割れだった。

 「お……どうしたんすか?」

 俺は怒り狂う双葉から逃避したい一心でドレッドヘアーの男に敬語まで使ってまじめに対応した。

 「どうしたじゃねぇ!てめぇ、やっと見つけたぞ!」

 そんなことを言われている最中にも後ろで双葉が怒り狂っている。前門の虎後門の狼とはよくいったものだ。まぁこの場合、犬と猫って感じではあるが。

 「ん?お前後ろにいるの誰だ?」

 やばい。気付かれた。相も変わらず後ろで怒っている双葉はこの状況に気付いていないが、ドレッドヘアーのこの男はその状況の異質さに気が付いたらしい。

 「それにお前さ…………。その恰好どうした?着る前におかしいとは思わなかったんか?」

 うるせぇ!と一瞬手が出そうになるがここは堪える。こんなところで騒ぎを起こしたら尾行、調査どころではなくなってしまう。

 「まぁまぁ、、、それよりこんなところでどうしたんです?」

 あんたには不似合な場所ですよ。とは付け足さなかった。いたずらに怒らせることは避けたい。

 「こんなとこって……すぐそこが俺の家なんだよ。だから俺からしたらおめぇみいたいのがここらに要居ることの方がはるかにおかしいんだよ」

 なんと。人は見かけによらないもんだ。このパッと見偏差値30もなさそうな男の家がそんなに金持ちだったとは。

 「あぁそうだったんですね……。まぁ、そのヘアスタイルはお金がかかってそうですもんね」

 「あぁ!てめぇ喧嘩売ってんのか」

 しまった。コイツの家が金持ちということで俺は無意識に毒を吐いてしまったらしい。

 「ていうかおめぇ後ろにいるのは何だ?」

 誰だ、ではなく。何だ、と聞かれた。それも当然か。双葉は俺の後ろで怒り狂っており、ドレッドの場所からは見えない。見えないのに怒り狂う声だけが聞こえたら俺でも誰だ?ではなく何だ?と聞いてしまうかもしれない。

 「いや、腹話術の練習をしてるんですよ」

 「んなわけあるか、どけ!」

 そう言いながら俺を手でおしのけて、ドレッドは双葉を発見した。双葉はいきなり目の前に現れた男に対しても動じない。変わらない。ただまっすぐに、睨む。自分よりはるかに大きな男を前にしてもまったく恐怖心というものは芽生えない。芽生えるそぶりすらない。

 対するドレッドも動かない。微動だにしない。その時間がそこだけ切り取られたようで。

ビデオの停止ボタンを押したような時間がここには流れていた。

最初に動いたのは、ドレッドだった。

「………………………名前を、教えて下さい」

「は!?」

俺のリアクションは正しかったと思う。俺のその反応を聞いた後も、ドレッドは動かない。もしかしたら聞こえてなかったのかもしれない。

「…………人に名前を尋ねるときは、自分から名乗るものじゃないの」

ドレッドの言葉に対する、双葉の対応はこうだった。どこまでも屈しないその態度は尊敬に値するかもしれない。かもしれないだけで、たぶんそんなことはないけれど。

「申訳ない。私の名前は西園寺猛といいます。豊明高校の三年生です。どうぞ、おみしりおきを」

急に態度が軟化した。どうやらドレッドは双葉の見た目にだまされてしまったらしい。

まぁパッと見美少女にしか見えないもんな………。男だけど。

って、こいつ今なんて言った?

「…………待て。お前、今西園寺って言ったか?」

「だからどうした」

俺はここまで来る最中に通過した木下の家にも負けないくらい大きな家の門の横にあった名札を思い出していた。木下の家とは違い

洋風な家ではあったが。どうやらこいつが金持ちというのは本当のことらしい。


 「なるほど、それでお前はこの屋敷に忍び込みたいってわけなんだな」

 事情はかんたんに俺が説明した。このあたりに住んでいる人ならばもしかしたらこの屋敷に入り込む手段だったりを知っているかもしれないと思ったからだ。

 「すいません、双葉さん。あなたの力になりたいのはやまやまなのですがこの屋敷はこのあたりの住人の中でも触れちゃいけない存在として扱われているんですよ」

 触れちゃいけない存在?

 俺がどういう意味かと考えていると双葉がこう言った。

 「なんだそれ。虐めってことか?」

 どうやらドレッドに対して自らが男だというネタバレをする気はないらしい。利用できるものはなんだって利用するつもりなのだろう。

 「いや、虐めならどんなによかったことか。簡単に言ってしまうと俺たちこの一帯に住んでいる住人が虐められているんですよ。虐められているからこそ俺たちから触れることは許されていない。あちら側からの干渉はもちろんありますが」

 「なんだそれ、権力者ってことか?」

 「そうです。それも並大抵の権力じゃありません。ユースとリア社って知っていますか?」

 もちろん俺は分かるし当然双葉も分かるだろう。ユースとリア社とは世界的な薬品系会社の最大手でそこの風邪薬には何度もお世話になっている。

 「その会社を作ったのが、この家の主なんです。一代で圧倒的な成功をおさめ、圧倒的な富、名声、権力を手に入れた。うちもそこそこの金持ちだとは思いますがとてもユースとリア社にはかないません。逆らったらつぶされてしまいます」

 会社とか、経営とかはよくわからない。分からないが、西園寺が本気で怯え、恐怖していることだけは分かった。以前俺に喧嘩を売ってきたときとはまるで別人だ。

 「そうなんだ。でもボクたちはこの家になんとかして入らなければならないんだよ」

 双葉はもう怒りは収まったのだろうか。あっけらかんとそう言い放った。

 西園寺は頭を横に大きく振りながら言う。

 「いや、だからダメですって!!!入る手段だってないですし無理ですよ!」

 「いや、入る方法はある」

 双葉はそう言い切る。

 「これは西園寺くん。キミが来てくれたからこその作戦だ。策略だ。協力感謝するよ」

 それを聞いた西園寺は自分が作戦の一部に組み込まれていることに気付き、一瞬ハッとしたが「いや、だから無理ですって」とより早く頭を振る。

 それを聞いた双葉は西園寺の手を両手で包むようにすると、視線をまっすぐに

 「お願い。西園寺くん。アタシ西園寺くんの協力がないと……」

 と顔を紅潮させながら言った。

 コイツよく自分の事をアタシとか言えるなと思ったが、目的のためなら自分すら省みない。ある意味最高に男らしいやつなのかもしれない。

 「ねぇ……お願い」

 そう言いながら双葉が抱き着くと西園寺はその身体を震わせながら「……よろこんで!」

と絶叫した。アホか。


 その後双葉が提案した作戦は、至極単純なものだった。

 まず西園寺が俺を肩車する。そしたら俺が双葉を肩車する。そうすれば双葉は塀に手が届き俺は西園寺の肩の上に立つことでなんとか塀へと手が届く。この作戦……といえるほどのものではないがこの考えは西園寺の圧倒的な献身が必要不可欠で、双葉を背負うのはまだしも俺を自分の上に立たせるのは本人にとって屈辱的なことでなはいのか。

 「いや、双葉さんの願いならば、俺はお前だってなんだって担ぐし木下の家だってこわかねぇ」

 俺を上に立たせ、両足をぷるぷると震わせながらそんなことを言う。

 「お前そんなに惚れてんのか。アイツに」

 そんなことを話しげいると双葉が塀の上に飛び乗った。あとは俺が登るだけだ。

 「ああ!俺は生まれて初めてだぜ。こんなに人を好きになったのは。運命ってのは本当にあるんだな」

 こんな風に顔を真っ赤にしながら、身体をふるふると震わせながら俺たちに対して協力をしてくれている西園寺を見ていると本当は男なのにこんな風に騙してしまっているのがとても心苦しい。俺ですらこんな風に思うのだから当の本人はもっと心苦しいはずだ、と考えていると双葉が

 「早くこっちに来なよ。思いっきりジャンプすればぎりぎり届くよ!」

 そうあっけらかんと言った。

 思いっきりジャンプって言ってもなぁ……それは西園寺の肩を思い切り踏みつける、蹴とばす行為に他ならない。

 俺がどうしようか、と少しばかり悩んでいると「いいぜ、やってくれよ」

 と西園寺は言い、ニヤリと笑った。

 「お前……いいのか」

 そう聞くと、こくりと西園寺は頷いた。

 「早くやってくれ…っ。そろそろキツイんだ」

 わかった、と返事をすると俺は思い切り両足で肩を踏み込み、肩を足蹴りにするようにジャンプした。

 手は、何とか塀の淵に届いた。そして何とか懸垂の要領で塀の上によじ登ると思わず西園寺を確認する。西園寺は肩をさすりながら地べたに座っていたが、俺の視線に気が付くと涙目で親指をグッと突き出した。

 なんて男だ、なんてかっこいい男だ。今度からは西園寺さんと呼ばしてもらおう。

 俺がそんなことを考えていると双葉が横から顔をだし「西園寺くん、ありがとう。ちなみになんだけど、ボク男だから」

 そう言うと塀の中がわへとテクテクと歩いて行ってしまった。 

 お前、ここでそれをバラすのか……。

 恐る恐る西園寺を見ると、西園寺は固まっていた。双葉が男だという事実に、自分がほれこんだと思っていた対象が男だという事実にきっと耐えきれなくなったのだろう。理解不能、そんな表情だ。

 その顔があまりにアホ面だったので俺は西園寺を尊敬するのをやめた。そもそも騙されるのが悪いともいえる。サラバ西園寺。

 そうして俺は双葉の後を追った。


 塀の上から木下の家の庭を眺めると、そこはまるで兼六園を思わせるような豪華絢爛っぷりだった。庭の中央には池があって鯉が何匹が泳いでいるのが見える。パッと見の印象だが、SPのような人間はいないように見えた。

 「さて、ここからどうする……?」

 双葉にそんな風に声をかけるが、その問いかけに対し返事はない。そもそも忍びこむ目的が情報収集なのだ。曖昧にもほどがある。

きっとここから先のプランなどないのだろう。 

 「よし、決めたよ」

 塀の上から屋敷全体を見渡していた双葉が突然そう決意したかのように言った。

 「何を決めたんだ?」

 「これからどんなふうに動くかをさ」

 そういうと双葉はある一点を指さした。

 「ボクの見立てでは、たぶんあそこの部屋にキミと揉めた男の部屋があると思うんだよね」

 双葉が指さした先は、豪華な部屋が連なる中でも、もっとも華やかな装飾をされた一見近寄りがたいような襖をしていた。

 「あんなヤバそうな部屋に入るのか?」

 ぶっちゃけさっきからなるべく考えないようにしていたが、コイツの家はいわゆる極道といわれる家ではないのか。大きな会社をやってるらしかったが、そんなのは外向けの体裁で本当は極道さんではないのか。

 しかしそんな風に考える俺をよそに双葉は

 「ほら、行くよ」と言い塀を降りようとする。しかし高さは3メートル近くある。

 「ほら早く」

 そう言いながら俺の腕を引っ張る。

 「早くってなにが」

 「キミが降りなきゃボクが降りれるワケないだろ。だから早く降りろよ」

 「………………」

 まぁ、それしか方法がないのは分かるけれど。もう少し言い方を考えてもいいんじゃないだろうか。

 俺が降りた後に双葉を支え、そうして俺たちは木下家の敷地に降り立った。

 塀の上からみた景色とは違う、高いところから見るのではないからこそ分かる木下家の広さ。そしてそれを持つに値する財力やそれ以外の力に、俺は恐怖した。普段は不良なんて気取ってるくせに自分の性根はただの気弱な男なのだということを嫌でも理解する。

 そんなとき、手を握られた。

 「何ぼさっとしてんの。行くよ」

 そう言いながら俺の手をひっぱり先導する双葉。この男は、その体躯こそまるで女子のようではあるけれどなんて強いのだろうと思った。

 「なんか金目のものとかもあるかもしれないね」

 わくわくとそんなことをいいながら俺の腕を引っ張る。強いというよりは不感症的な何かなのかもしれない。

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