スカウトされました。
俺が担任の存在に絶望しても、ホームルームは続く。
「今日はあと寮への案内だけよ。ユート君はあとで校長室に来るように。いいわね?」
「嫌で─────」
「じゃあ、寮に案内してもらうわ。入って」
無視かよ!
どうしようもないので、入ってきた人物を見る。
それは、
「こんにちは。案内を務めさせていただきます、生徒会長のマリー・ロッドです」
「マリー会長には案内終了後、ユート君を連れてきてもらうわ」
「わかりました」
ダメだ。どうやっても逃げられる気がしない。
ならばどうするかは決まっている。
「では、行きましょうか」
そう言ってマリー会長は先導し始める。
クラスメイトが席を立ち、ついていく。
カズマも席を立ち、行こうとしている。
「おい、ユート!なにやってんだ、いくぞ!」
「……………ああ」
──────逃げられないならば、言うことを聞くのみ!
☆
そして、寮玄関。
「1階すべての部屋が1年生の部屋です。部屋は2人で1部屋ですから、どの部屋で誰となのかはそこにある3つのディスプレイに書いてありますので、確認してくださいね」
『『『はい』』』
さっそくディスプレイに群がるクラスメイト。
俺も確認しないとなあ……
ぼーっとしていると、近くに来ていた会長に話しかけられた。
「ユートくん、あなたは確認しにいかないんですか?」
「いきますけど、あれじゃ無理でしょう」
もはやスーパーのタイムセール状態なディスプレイ前を見て苦笑する。
会長もそれを見て笑う。笑っても綺麗だな。
ただ、最初見たときほどドキドキはしない。
いきなり攻撃された恐怖でドキドキしてるけど。
「落ち着いてるんですね」
「あれに混ざる勇気がないだけです」
「そうですか」
他愛のない話で時間を潰す。
しばらく話しているとようやく人が減ってきた。
「それじゃ、見にいくので」
「はい」
「腕離してくれます?」
「え?」
本人も気づいてなかったのか、会長は俺の腕をがっちり掴んでいた。
というか、関節きまりそう。ヤバイ。
「あ、あら、申し訳ありません」
会長は俺の腕を離して、恥ずかしそうに目を伏せる。
あー、攻撃される前にこういうところ知りたかったー。
会長を置いて、確認しにいくと、案外早く自分の名前を見つけることができた。
『1026…ユート・ステラ カズマ・フェルト』
なんだ、カズマとか。
よかった。これで部屋の安寧は守られる。
「ユート!同じ部屋だな、よろしく!」
「おう、よろしくな」
カズマと握手。
そのとき、会長の声が聞こえてきた。
「はい、それでは今日は終わりです。それぞれ部屋に戻って、ゆっくり休んでくださいね。ユートくんはついてきてくださいね」
その声にみんながそれぞれの部屋に向かっていく。
「そんじゃ、先行ってるぜ」
「おう」
「ユートくん、いきますよ」
「わかってます!」
ユートと別れ、会長についていく。
校長室までは俺と会長2人きり。
「2人きりですね」
「なんで俺の考えてることが!?」
「あら?ユートくんも意識してくれてたんですか?」
「うぐっ……」
「うふふ」
くっ、さっきから可愛いところ見てるから、攻撃された後でもドキドキする。
「ねえ、ところでユートくん?」
「なんですか?」
「………………なんでこっちを見てくれないんですか?」
それは今そっちを見られないような顔だから。
「まあ、いいです。ユートくん、生徒会に入りませんか?」
「は?」
なんで?どうして?
思わず会長のほうを向く。
「やっとこっちを見てくれましたね」
「あっ」
「スカウトは嘘じゃありませんよ?上限測定不能なんて過去にいませんでしたからね。生徒会の戦力として、あなたがほしいです」
「戦力って……生徒会はなにするところなんですか」
「そうですね、魔法を使っての校内での悪事の制圧と模擬戦のレフェリーが基本的な仕事です。あとは校長から緊急の依頼とかあったりしますが」
「………………………まあ、考えておきます」
「早めにお願いしますね?」
「……はい」
「さ、着きましたよ」
話を聞くことに夢中で校長室前に来てたことに気が付かなかったようだ。
「マリー・ロッド、入ります」
『どうぞ』
会長がそう言って入っていく。
気が重いなぁ……。
「はぁ……ユート・ステラ、入ります」
そう言って校長室に入っていった。