自己紹介しました。
入学式が終わり、1-A教室。
そこでは最初のホームルーム活動としてそれぞれ自己紹介をすることになった。
廊下側からスタートし、このクラスはだいたい60~70人。
どんだけ絞ってんだ。
まあ、いいや。俺の自己紹介なんてまだまだ先だ。
『──────です。得意魔法は────』
そんな声が耳に入ってくる。
そうだな。名前と得意魔法だけでいいか。
……いや、得意魔法なかったわ。
そんなことを考えていると、やたら偉そうな声が聞こえてきた。
「よく聞け、下民ども!俺はフリード・ミルド・ガイウス!第七位貴族のガイウス家の長男だ!俺と同じクラスであることを光栄に思うがいい!得意魔法は雷魔法!試験の魔力上限は15400だ!」
そして俺に「ドヤァ」って感じの目線を向けてくる。
うるせえ。なんだガイウス家って、知らんわ。
めんどくさそうなので目を逸らす。
フリードは鼻を鳴らして席についた。
するとカズマが小声で話しかけてくる。
「いやー、貴族の息子とはねー、驚いたわ」
「なんなのあいつ?」
「お前ホント何も知らねえのな。ここじゃこの国での地位も魔力の大きさで決まんの。あいつの家はこの国じゃ上から7番目ってことだな」
「ふーん」
「どんだけ興味ないんだよ、お前」
カズマに苦笑された。
失敬な。なにも知らないだけだ。
『おい、カズマ・フェルト!お前の番だぞ!』
「げっ、やばっ」
先生に促され、カズマが急いで立ち上がる。
ドンマイ。
「えーと、俺はカズマ・フェルト。得意魔法は補助魔法と治癒魔法。魔力上限は9800。よろしくな!」
聞いただけでわかるすげーサポート特化なのな。
カズマの得意魔法。
「ほら、お前の番だぞ。ちゃんと魔力上限まで言えよ。主席の上限は気になるからな」
「…………わかったよ」
カズマに促され起立する。
視線が俺に集まる。やばい、胃がキリキリする。
「俺はユート・ステラ。得意魔法はない────」
『『『嘘つけ!』』』
ホントだわ。なにも使えないわ。
入学式のはモモの指示だわ。
『みんな、静かにしろ。ユート・ステラ。続きを』
「えー」
まだ言うの?別に上限とかどうでもいいだろ。
「はぁ……試験の魔力上限は機械を壊して上限測定不能。まぁ、よろしく」
そう言って俺は席に着く。
当然教室はざわつく。
『上限測定不能?機械壊すって……』
『いやいや、さすがに嘘だろ』
『でも、嘘つく意味あるかな……?』
こんな声がところどころで聞こえる。
ただ、そんなことはまだ可愛いほう。
さっきの貴族様の驚いた顔に困る。絶対めんどくさいわ。
「お前すごいな、ユート!」
「おう、サンキュー」
「これならあの生徒会長の攻撃返せるわけだ!」
「ああ、そっか。地位も魔力で決めるんだもんな」
「そう。生徒会長はこの学校で最強の証拠なんだぜ!こりゃ、お前がそうなる日も近いな!」
「えー」
生徒会長なんて絶対めんどくさい。
だって校長に会う機会が絶対に増える。
つまり生徒会長になったら、俺は校長のオモチャ決定。
それはイヤだ。
今は校長が来ないからいいんだ。俺の安息の場所は教室とこれから行く寮の部屋。いいじゃないか。
『では、みんなの自己紹介が終わったところで担任を紹介する』
教壇に立っていた先生がそんなことを言う。
は?あなたじゃないの?
すると教室の扉が勢いよく開かれた。
そこにいたのは──────
「はい、私が1-A担任兼校長のミリア・カルヴァンスよ」
さようなら、俺の安息の地その1、教室。
周りのやつらは盛り上がるが、俺はみんなが盛り上がるだけ落ち込む。
ツライ……教室でもオモチャなんて……
「なに落ち込んでんだよ、ユート!すげえことじゃん!」
「俺には俺の事情があるんだよ……」
ため息をついて机に突っ伏した。