生徒会役員になりました。
本日2度目の校長室。
目の前には校長。隣にはマリー会長。
「いらっしゃい、生徒会長、ユート君」
そう言って校長は笑顔で対応してきた。
まあ、そんなことはどうでもいい。
今更だが言いたいことを思い出した。
「あの、校長。一ついいですか」
「ええ、どうぞ」
「じゃあ、言わせてもらいますけど……なんですかこれは!」
ポケットにしまっていた原稿を見せて校長に詰め寄る。
「あら、原稿ね」
「そうじゃないですよ!なんなんですか『アドリブでOK』ってなめてるんですか!あと、会長から襲撃あるなら教えてくださいよ!」
「あら、襲撃だなんて、そんな。ほんのご挨拶ですよ」
「ここは戦闘狂の集まりかなんかですか!」
「それに、ユート君。言いたいことが2つになってるわよ」
「着目してほしいところはそこじゃありません!」
ダメだ。ボケが2人もいると俺1人でツッコミが追いつかない。
俺はため息をついて、紙をしまう。
「あら、持って帰るの?律儀な人ね」
「ほっといてください。ところで、俺とマリー会長を呼んだ要件はなんですか」
「ああ、そうそう。生徒会長はホントに付き添いよ。要件があるのはあなたよ、ユート君」
俺を見据えて校長は言った。
なんか重要な話の雰囲気。
「で、なんですか」
「突然だけどあなたに生徒会役員なってほしいのよ」
「は?」
会長にも言われたことを校長にも言われた。
俺の様子を察したように校長が続ける。
「その様子だともう生徒会長にスカウトされたのね」
「ええ、さっき」
「簡単に言うと生徒たちに対するさらなる抑止力がほしいのよ。『上限値測定不能のやつが生徒会にいる』となると、変に荒事も起こさなくなるだろうし」
なるほど。理解はできた。
しかしなあ……
「別に強制するつもりはないわ。ただそうしてくれると助かるってだけよ。判断はあなたに任せるわ」
「あとは単純に人手が足りないのです。そこにユート君の入学。あなたを勧誘しない理由がありません」
「………………」
校長とマリー会長に事情を説明されて、ある程度理解できた。
俺に向いてるとは思えないが、断る理由もない。
まあ、校長の言い方が若干卑怯だが。
「はあ…わかりました。生徒会に所属します」
「よかった。ありがとう、ユート君」
「ありがとうございます」
「さっき誘われたときも『考えておきます』って言ったし、断る理由もありませんしね」
「じゃあ、要件は済んだわ。今日は帰って休みなさい」
「はい、失礼します」
「失礼します」
俺とマリー会長はそう言って校長室を後にした。
俺たちは並んで寮へと向かう。
「ユート君、ありがとうございます」
「いえ、別にいいです」
「あなたには庶務の席についてもらいます。明日授業のあと迎えに行きますので、待っててくださいね」
「了解です」
業務連絡のような話を終えるころには、寮の前に来ていた。
「それでは、ユート君おやすみなさい」
「お、おやすみなさい」
笑顔でそう言ってくれたマリー会長にキョドりながら返し、俺たちはそれぞれの部屋へ向かった。