表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
991/1337

989 Side 東の狂人と南の豚

「バルフォン様! 南征公シギュラルド様、お連れいたしました!」

「入れ」

「ブホホォ。久しぶりだな東征公よ」


「キシシ、よく来た南のぉ」

「わざわざ呼びつけて、何の用だ? 西征公の動向についてか?」

「西のがどうした?」

「シードランをほぼ手中に収めたことで、水竜艦も手に入れたはずだ。これで制海権はほぼこちらのものと言ってもよい。例の計画の最終的な打ち合わせをせねばならぬだろう?」


「キシシ。それはまた今度だ。俺も南のも、準備が整ったとは言い難いからなぁ。だろう?」

「では、例のハエどものことか?」

「ハエ? どちらのことだ? 赤騎士どもか?」

「違う。妙に強い爺と、半蟲人の傭兵団のほうだ。仲間を解放するようにと触れ回りながら、時には武力行使も辞さん」


「南部領内は、随分とやられているみたいだなぁ? キシシシ」

「ブフン。神出鬼没なのだ。必ず領内に協力者がいる。まずはそいつらを炙り出さねばならんだろう」

「なんなら手を貸してやろうか?」

「ブフゥゥ。いらん。どうせ、あの薄気味悪い人造超人とやらだろう? 制御もできん戦力を生み出してどうする」


「キッシッシ! クランゼル、シードラン、ベリオスに続き、ゴルディシアでも良いデータが取れた。我が研究の真の完成も間近だ! それに、薄気味悪さはお前のアンデッドも大概だろうよ!」

「アンデッドほど使い勝手がいい兵はおらんぞ? 無駄口も不満も文句もなく、魔力が続く限り永久に動き続けるのだ。それに、死人の埋葬費も浮く。ブッフォッフォ! まさに得しかないわい!」

「まるで西ののようなことを言うなぁ?」

「ブフン! 守銭奴よりはマシだ!」


「それに、文句がない? アレらは違うだろう?」

「奴らとて、所詮は他の不死者と同じよ。契約で縛っておるからな!」

「ネームレスと言ったか? あれを契約で縛れるとは思えんが?」

「バハハ! 新型の術式よぉ。浮遊島の資料を無駄にせずにすんだわ」


「ほう? それは面白そうな話だぁ」

「それに、奴らが崇める聖母はこちらの手の内だ。契約がなくても逆らわんさ」

「キシシシ。理性あるアンデッドどもの母体となる、特殊なアンデッドだったか?」

「うむ。この世で唯一、子を産むアンデッド。ああ、赤剣のシビュラの、母親とも言える存在でもあったな」


「シビュラか! キシシシ! あれはいい! あれこそまさに超人よ! 研究所が潰されたのは痛手であったなぁ。まあ、データは引き上げたからいいが」

「ブフゥン……。我が領内にあったおかげで、今でも儂が主導した研究だと思われておるのだぞ?」

「それは済まんな。だが、共同研究だったのだから、仕方ないだろう?」

「赤騎士どもに恨まれる身にもなってみよ。それに、赤剣騎士団は研究所の生き残りどもが多く所属している。奴らが何をするか分からんのだぞ?」


「例の傭兵団の後ろにいる者たちの1つは、確実に赤剣騎士団だろうな。であれば、長引きそうだなぁ」

「ブッフゥ。宰相の犬どもが! せっかくアレッサへの侵攻を狙っておったというのに……。まずは領内の平定が先だ!」

「キッシッシ。いつでも手を貸すぞ?」

「例の計画のためにも、早々に潰さねばならんな。それで? いい加減呼び出した理由を教えろ。儂も暇ではないのだぞ?」


「呼んだ理由は、お前に頼まれていたゴルディシアの廃棄神剣の話だ」

「進展があったのか! アンデッドはあの大陸には入れんからな。手出しができんかったが、ようやくか!」

「違う」

「ブフ? だが、話というのは廃棄神剣の事なのだろう?」


「ああ。廃棄神剣の話ではあるが、進展があったわけではない。いや、事態が進んだと言えば、進んだのかもしれんがなぁ」

「……何があった?」

「まずは、金喰剣・オーバーグロウスだが、破壊された」

「な、なんだとっ! 神剣には及ばんといえ、廃棄神剣だぞ! しかも、長年に渡って力を溜め込んだ! それが破壊された? そんな馬鹿な……!」


「本当の事だ。現在の持ち主であった冒険者の女が、上級抗魔との戦いの最中に何かが起き、壊されたと思われる」

「その冒険者が、嘘を吐いているのではないか?」

「半分抗魔化していた肉体が元に戻り、神剣の気配が全くない。まず間違いなさそうだ」

「エビル・イータに続き、オーバーグロウスまで……。それでは、残る廃棄神剣はフォールダウンだけということか?」


「そうだ。だが、そちらも問題が起きた」

「なんだ?」

「潜り込ませていた手の者が、全て消息を絶った」

「なっ! それでは、フォールダウンを追えんではないか!」


「キシシ、これはこちらの落ち度だ。謝ろう。済まんな」

「済まんですむか! 我が最強の兵団の野望が!」

「俺とて、廃棄神剣のデータはぜひとも欲しかったのだ。悔しいのは同じだ。エビル・イータが消息を絶った今、フォールダウンは邪気を操るための唯一の手掛かりだったのだぞ?」

「持ち主とは、協力関係を構築していたのではなかったのか?」


「うむ。あの小娘にこちらの思惑に気づかれたか、元々使い捨てのつもりだったのか……」

「ブフゥン。上手く行かぬものだ」

「キシシシ、全くだなぁ。ともかく、ゴルディシアにいる者たちを動かして動向を探らせる。その情報待ちだ」

「……仕方あるまい。できるだけ急がせろよ?」


「分かっている。それに、神剣の情報はいくつか集めた。後で資料を渡すさ」

「ほう? それは楽しみだぁ。では、こちらからの調査報告も伝えておこう。まずは王の様子からでいいか?」

「なんだ、仕事しているのではないか」

「当然だ。まあ、王は相変わらずだな。政務は宰相に任せて、日々学んでおられる。フン、いい身分であるな」


「王だからな」

「分かっておるわ。儂とて、王を弑逆するつもりはない。だが、あの宰相はいかん。いずれ排除せねば。相も変わらず、コソコソと動いておるしのう」

「キシシシシ! それには同意するぞ! 今更他国と仲良しこよしなどできるか! 我が先祖たちが、どれだけの血を流してきたと思っているのだ!」

「ブフン。その通りだ。そして、最大の障害になりかねん北征公であるが……。相変わらず何も分からん」


「北のはどう動くか予測できんのだよなぁ」

「うむ。だが、奴らは敵にできぬ」

「キシッシ! 北征騎士団ときたら、まさに叩き上げの最強集団だからな! どうすればあれほど精強な騎士を揃えられるのか……。秘訣を聞きたいものだ」

「ブフフ。聞いたことがあるぞ? 朝から晩まで魔獣を刈り続けることを一生続けていれば、誰でも強くなる。だそうだ」


「キシシシシシ! 我よりもよほど狂っておるわなぁ!」

「然り。本人の持つあの宝剣も恐ろしく強い。北の地であれに勝つのは無理であろう。試すことすら愚かだ」

「うむ。それにしても、北のに、赤剣のシビュラに、緋眼のシュゼッカ。ハイエルフのウィーナレーンに、死霊使いのジャンに、ディアボロス直下の悪魔騎士ども。内も外も厄介な者ばかりだぁなぁ」

「いずれ、我が最強の兵団が全てを呑み込む日がくるわい」

「自信満々だなぁ、南の。何か策が?」


「ブフォフォ! いずれ分かる」

「キシシシ、それは楽しみだぁ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
キモオタで草
[良い点] この話で言っている南の最強の兵団が アヴェンジャー達だったら… [気になる点] 或いは隠された施設に… この先すごく気になりますね゜
[気になる点] なんでこいつら揃ってキモオタ口調なんだろう……
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ