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948 神剣騎士と鑑定


 突如現れ、聖国シラードに気を付けろと忠告してきた銀の女。


 どういうことだ? この女の立ち位置が分からん。こちらに敵対する素振りは全くないんだが……。信じていいのか?


「……有益って?」

「強い癒しの力を持つ人間や、血統的に受け継ぐことが可能なスキルを持つ人間。そして、彼の国が特に力を入れて集めているのが、装備者に強力なスキルを与えることが可能な魔道具です」


 やべー、最後のやつ、超心当たりがあるんだけど。多分俺、装備者に与えられるスキルの数なら、世界でもトップクラスだと思う。


 考えてみたら、アルファとの相性が最高過ぎる! 俺とアルファを同時に装備できたら、ちょっとヤバイことになりそうだった。


 絶対知られないようにしなければ。一番気になるのは、アドルをどこまで警戒しなければならないかということだ。


「アドルは、鑑定使える?」


 場合によっては、この大陸にいる間、アドルを避け続けなくてはならないだろう。今すぐにゴルディシアを去ることも、考えなくてはならない。


 フランとしては答えを求めたわけではなく、意見が聞きたかっただけだ。だが、銀の女は断言した。


「それはないかと」

「そうなの? 鑑定便利」


 シラードなら、鑑定持ちの子供を選別したり、攫ってくるくらいはしそうだが。


「便利過ぎるということです。国の暗部や、醜い部分まで知られてしまいますから」


 やはり、国としてはアルファの所持者に対して、警戒も抱いているらしい。


 もし、神剣騎士が革命でも志したら、最悪だ。正面からでも国軍を退けられる相手である。裏切られたら、止めようがなかった。


 だからこそ、国の後ろ暗い情報は与えたくないのだろう。大国なんて、汚い部分がないわけないしね。しかも、シラードは真っ黒っぽいし。


 アドルにも、祖国のために汚れ仕事をやっている程度の認識はあるだろう。だが、もっと裏にある、本当に悍ましい部分は知らないのだと思う。


 そんな人間が、祖国の真の姿を知ったら? 裏切る可能性はゼロではない。もしかしたら、すでに失敗したことがある可能性もあった。


 アルファを使用している際の神剣騎士は、その知覚力が途轍もなく強化されているらしい。何せ、万里を見通すなんて言われるほどである。鑑定スキルを持ったら、ありとあらゆる情報を見破ってしまうだろう。


 様々な危険を考えれば、シラードが神剣騎士に鑑定を与えないという結論に至ったのも無理はない。国にとっては、戦場での強さが重要なのだろうし、兵器は余計なことをするなってことなんだろう。


 それでも、情報を完全遮断することは不可能だと思うが……。他にも色々と対策をしているに違いなかった。


 ただ、アドルの奴が鑑定を持たないなら、安心なのかな?


 俺たちはそう安堵したんだが、実はまだ安心できなかった。


「シラードには、有用な人材を探すための部署があります。今回の遠征にも、鑑定を持った人間が数人同行しているでしょう。彼らにバレないようにしてください。貴女は高レベルの回復魔術を使い、高い戦闘力を持ちます。シラードが欲しがる人材です」

「鑑定遮断持っててもダメ?」

「所持するスキルによっては、鑑定遮断を突破する者もおりますので」


 まあ、俺たちだって天眼のお陰で、鑑定遮断を無視できる場合もある。そこは相手の能力や格にもよるから、確実じゃないけどな。


 それは俺たちにも言えることで、相手が格上の鑑定持ちだった場合、一部のステータスを盗み見られることはあり得た。


 相手の鑑定を防げるようなスキルにポイントを割り振るか? 鑑定妨害や鑑定偽装をスペリオル化するか? だが、それだとフラン自身の鑑定への備えが弱体化する。


 スペリオル化したスキルがフランにも影響を及ぼせればいいんだが……。


 悩んでいると、銀の女が何かを差し出した。一見すると、装飾の無い銀色の腕輪にしか見えない。


「これは?」

「鑑定遮断の効果がある魔道具です。神級鍛冶師ゼックスの作り上げた一級品なので、その効果は保証します。差し上げますので、お使いください」

「……なんで?」

「以前も言いましたが、私はあなたに感謝しています。あなたのお陰で、私は存在意義を失いました」


 この言葉は以前も聞いている。


 オーバーグロウスを破壊した際、何故か礼を言われたのだ。銀の女の存在意義を奪ったと。


 だが、それで感謝される理由が分からなかった。


「なんで、感謝する?」

「……分かりません」

「?」

「オーバーグロウスが消滅した今、私は遠くない未来に活動を停止するでしょう」


 いや、だから、それでなんで感謝する?


「そう理解した時、私は安堵しました。そう、あれが安堵というものなのでしょう。使用者の感情を理解するための、疑似的かつ限定的な感情しか与えられていない私ですが……。私はきっと、壊れたかった。人間風に言えば、死にたかったのです。長い間、ずっと」


 囁くようにそう語った銀の女の顔に、感情の色は全くない。しかし、どこか晴れやかさを感じることができた。


「あなたのおかげで、私は壊れることができる。役目を終えることができる。肩の荷を下ろすことができる。だから、感謝しているのです」


 銀の女はそう言って、深々と頭を下げた。


「……信じる」

『おい、フラン。確かに嘘を言っているようには思えんが……』

(だいじょぶ。この人は嘘言ってない)


 相手がゴーレムであるせいで、虚言の理は仕事をしてくれない。だが、フランは銀の女のことを信じることにしたらしい。


 野生の勘的な物が働いているのだろうか? 神獣化して以来、そういった感覚部分が研ぎ澄まされているようだ。


 差し出された銀の腕輪には、俺の鑑定が通らない。そして、腕輪をフランが受け取ると、銀の女に鑑定が通るようになっていた。


 本当にゴーレムなんだな。だが、彼女の正体が今後バレることになりかねないが、いいのだろうか?


 そのことをフランが訊ねると、銀の女は事も無げに言った。


「どちらにせよ、1ヶ月先に私は動いていないでしょう。であれば、恩人であるあなたのために、力を貸したいのです」

「1ヶ月? 何とかならないの?」

「いいのですよ。延命する方法があったとしても、私はこのまま朽ちることを選ぶでしょう。それが、私の願いなのです」

「そう……」


 銀の女の言葉に、覆せない強い意志を感じたのだろう。フランは何とも言えない顔で、呟くことしかできなかった。


「……ありがとうございます。何か、私にできることはありませんか? なんなりとお申し付けください。もしくは、知りたいことなどは? 例えば、神剣の情報などに興味はございませんか?」

「神剣? 神剣のこと、詳しいの?」

「この大陸にて、過去数千年の間に、特に多く使用されているアルファ、ベルセルク、チャリオット、エルドラド、ガイア、イグニス、クリスタロス、サンクチュアリ、テンペスト、ウィズダムの10本に関しては、観測によってある程度の能力を把握しています」


 その口から出たのは、アルファやベルセルクだけではない。サンクチュアリやウィズダムといった、全く未知の神剣の名前であった。


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― 新着の感想 ―
[一言] もしかして、この大陸から外に出たことが無い、秘蔵や秘匿とは違うけど、局地的にあり過ぎて知名度の低い神剣とかあるのかな。
[良い点] 新たな情報で一気に盛り上がりますね! 銀の女の情報から次はどんな展開に繋がるのか、本当に楽しみです。 [気になる点] ジラードの暗部がどんどん掘り下げられてますね…。 完全に国との敵対は無…
[良い点] めちゃめちゃ有能なゴーレムさんや
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