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900 邪気の出所

 地下のホールで竜人との戦闘が始まった。数の上では負けているが、すぐにこちらが有利に戦闘を進めていた。


 最初の奇襲からの波状攻撃で10人近くが倒され、竜人たちが相当動揺していたのだ。そこに俺とフランとウルシの遠慮なしの魔術が叩き込まれていた。


 ホールとはいえ、やはり地下の狭い空間である。魔術を躱すために十分なスペースもなく、俺たちが連打する魔術が竜人を次々と沈めていったのだ。


 さらにウルシが影から奇襲をかけ、竜人の下っ端たちを無力化していく。一撃で倒せずとも、足を食いちぎられれば動けないからな。


 それに、竜人たちは邪気を放つ青紫の水晶を守らねばいけないらしく、広範囲を巻き込むような大技を使わなかった。


 それどころか、こちらが水晶に向けて放った攻撃を、わざわざ飛び込んできて受け止めたのである。


 それが分かってからは、もう一方的だ。竜人の中でも特に強い男ですら、水晶を庇って倒されていた。


 こちらにも怪我人は出たが、死んではいない。ほぼ完勝と言ってもいいだろう。


「ぐ、貴様ら……。何者だ……」

「お前こそ何者? お前らが冒険者ギルドと獣人会を襲撃したことは分かってる。何が目的だった?」

「……」

「答えろ」

「……ふん!」


 フランが多少激しめに話を聞いたんだが、竜人は口を割らなかった。今話を聞こうとしている竜人のリーダーは生命魔術の使い手で、痛みを軽減しているようだ。


 鑑定すると、忍耐スキルも所持している。そうなると、なかなか話を聞き出すのは難しい。


 名前はメルーバ。ソフィの言っていた、命竜人で間違いなさそうだった。他の竜人たちと同じように、状態が支配となっている。


 また、そのステータスは、相当高かった。戦闘が苦手なんて噂が立つのが信じられないレベルだ。何かの理由によって、急激に成長したということか?


 スキルの中には、見覚えのない固有スキルもある。特に凶悪なのが、竜鳴というスキルだろう。


 竜血に似た能力があり、こちらは血ではなくて魔力に強い属性を乗せて飛ばすというスキルだった。魔術に似ているが、こちらは無詠唱でより強大な力を発揮するらしい。


 竜血よりは効果が低いようで、普通の竜人であれば牽制くらいにしか使えないだろう。


 だが、メルーバは魔力が非常に高い。こいつが竜人化後に竜鳴を放てば、冒険者ギルドの惨状も理解できた。高威力の衝撃波に、生命属性による回復阻害効果だ。


 いったい、どうすればここまで急激に強くなれるのだろうか?


 その辺も含めて色々と知りたいんだが、命竜人はずっとだんまりのままだ。


 すると、フランの力押しの尋問を見かねたのか、ドルーレイたちが声をかけてきた。


「あの、黒雷姫さん? 俺たちが、代わりやしょうか?」

「こういうのは、慣れてるんで」

「そう?」

「へい! 任せてください!」


 ということで、ここは彼らに任せるとしよう。特に、ドルーレイの部下である狸の獣人が頼もしい。何せ、尋問に拷問、心理誘導に催眠と、口を割らせるのに必要そうなスキルを大量に持っているのだ。


 ということで、俺たちは青紫の結晶の確認だ。まあ、見るまでもなく、それの正体には気づいているわけだが。


(師匠、これって……)

『フランも覚えてたか。間違いなく、これは邪水晶だ』

(やっぱり)


 邪水晶は、邪術師リンフォードが儀式に使用していた魔道具だった。これを使って邪神と交信し、凄まじい力を手に入れたのである。


 あの時の水晶と、姿も放つ邪気もそっくりだった。


 しかも、この地下ホールの方が邪水晶の数が多いのである。


「この魔法陣も、あの時にそっくり」

『ああ。儀式の準備が完了してるかもしれん。邪水晶なんて絶対にまともな存在じゃないし、ぶっ壊しちまうか』

「ん」


 フランが俺を構えると、それを見た竜人の1人が呻き声をあげた。尋問中の命竜人ではなく、縛って転がしている竜人の1人だ。


「おい! やめろ! やめろぉぉぉ!」


 半狂乱になって、モゾモゾと暴れ始めた。縛られた状態でも、フランに向かって這いずって近寄ろうとしてくる。


 こいつだけではない。尋問を受けていた命竜人も、他の竜人たちも、同じようにフランに向かって「やめろ!」と叫び声をあげていた。


 その表情は鬼気迫っており、正気かどうか怪しく思えるほどだ。


「うがあああああ!」

「やめろ! やめろぉ!」


 竜人たちの尋常ではない様子を見て、ドルーレイが引いている。


「えっと、黒雷姫さん。その青い水晶は何なんすか?」

「これは、邪水晶。この部屋の邪気の源」

「な、なるほど。こいつらは、それを絶対に守れというような暗示をかけられているのかもしれません」


 それは確かにあり得そうだ。暗示というよりは、支配している者によって命じられているのだろう。


 話が聞けなくなりそうなので、とりあえずフランには俺を鞘に戻すように伝えた。フランが攻撃態勢を解くと、竜人たちも多少落ち着いたらしい。


 息を荒らげた状態ではあるが、半狂乱ではなくなった。やはり、邪水晶への攻撃態勢がトリガーだったらしい。


『邪水晶を破壊するのは後にしておこう。竜人たちが暴れたら尋問もできんし。まずは尋問して、情報を引き出すのが優先だ』


 無視して破壊してもいいんだが、その時に竜人たちがどうなるか分からないしな。正気に戻るならいいが、半狂乱しっぱなしになってしまったら今度こそ尋問不可能になるのだ。


 俺たちは大人しく、部屋を調べることにする。すると、奥で再び隠し扉を発見した。多分、竜人たちの脱出通路なんだろう。


 後でこの先も調べよう。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 尋問が先なの? [一言] 前回どんな事があったのか忘れたのか?そんな奴らの証言より破壊が優先だろ普通。これから先の展開を面白くしたいのは分かるが、日本人的発想で証言がどうのとか証拠云々…
[良い点] 楽しすぎる 誤字も少ないので良く練って見直したりしてるのかな?って思いながら見させてもらってます。読みやすい。 [一言] 本編900話おめでとうございます!
[良い点] 話さなければ邪水晶を壊すって言ったら、竜人達は 精神崩壊しそうですねw 命令に優先順位があったら、すぐ話してくれそうだけど。
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