表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
859/1337

857 ワンゴンとゲフ


 獣人と竜人の抗争現場へと到着した俺たちが見たものは、直径20メートルほどの広場で対峙する、総計50人は超えるであろうアウトローたちの姿であった。


 獣人よりも竜人の方が数が多い。20対30ほどだろう。


 広場を囲む建物に駆け上がり、そこから見下ろす。


 20メートル近い場所から見下ろすと、その布陣がよく分かった。


 どうやら、獣人たちはある建物の入り口を守るように壁を作っているらしい。


 竜人たちはそれを囲むように、広場中央に陣取っている。


 大声で罵り合うその姿は、小さな空き地でガンを飛ばし合う昭和ヤンキーのようだった。


「ドルーレイ、いない」

『そうだな。ただ、ベルメリアとフレデリックはいるぞ』

「ん」


 竜人たちの端っこの方で、できるだけ気配を消しているのが分かった。


 竜王会に潜り込んで情報を得ようとしているあの2人は、こういった抗争の時に付いてこないわけにはいかないのだろう。


 止めたいのは山々だが、大っぴらに動けば竜王会の信用を失う。そのため、逃げることもできず、小さくなっているしかないのだ。


 あれでは、戦闘を止めるどころではなさそうだ。力を貸してもらうわけにもいかないだろう。


 ガズオルとドルーレイがいれば。話を聞いてもらえたかもしれないんだけどな。


 獣人たちを率いているのは、犬の獣人だった。大剣を背負った、赤犬族の戦士である。かなり強いのが、ここからでも分かった。


「おう、蜥蜴どもぉ! ここは獣人会のシマだ! 何の用だゴラァ!」

「てめえらんとこに、うちの壁役が世話んなってんだろ? それを返してもらいにきただけだ!」

「はあ? 知らねぇよ!」

「嘘つくんじゃねぇ! 犬っころが! 調べはついてんだよ! キャンキャン吠えてんじゃねぇよ!」

「ああ? てめぇ、舐めた口利いてんじゃねぇぞ? 俺が、血牙隊第二席、ワンゴン様と知ってのことか? 今謝るなら見逃してやってもいいんだぞ?」


 強そうだと思ったが、血牙隊の第二席であるらしい。つまり、ドルーレイよりも格が上ってことなのだ。


 実際、凄まじい威圧感がここまで伝わってくる。


 だが、先頭に立つ竜人は、ワンゴンに怯えた様子はない。というか、竜人じゃなくて半竜人だな。


 この大陸に来て、竜人が半竜人を差別するようなことはないと分かったが、それでも竜人を率いている半竜人というのは初めて見た。


 黒髪の優男だが、ワンゴンと言い合いをするその口は非常に悪い。フランが汚い言葉を覚えなければいいんだけど……。


「見逃してやってもいいっていうのはこっちのセリフだ馬鹿野郎! とっとと腹見せて降伏しろや、ワンちゃんよぉ! このゲフ様が腹をなでなでしてやるよぉ!」


 こっちはガズオルの同僚、邪道のゲフだったのか。いったい、どんな理由で邪道なんて異名が付いているんだ?


「あれが邪道?」

『ああ、半竜人。しかも、フレデリックと同じ半邪竜人みたいだな。邪道の異名はそこから来てるのかもしれん』

「どんな戦い方するのか、楽しみ」


 フランが少しワクワクした顔で呟く。


 ゲフやワンゴンの戦闘力が気になっているようだ。だが、2人の強さをしっかりと確かめられるようなことになっていたら、完全に殺し合いに発展しているだろう。


『……できれば止めたいんだからな?』

「そうだった」


 忘れてたな。


 なんてやっているうちに、広場でひと際大きな怒声が上がっていた。


「ブチ殺す!」

「やってみろやぁ! 返り討ちにしてやるぜぇ!」


 両者の魔力が急激に高まる。


『まずい! フラン!』

「ん!」


 跳び上がったワンゴンが大剣を振り下ろし、低空で前に出たゲフが槍を突き出した。両者の攻撃には完全に殺気が乗っている。


 どちらが怪我をしても、それが抗争のきっかけとなるだろう。俺たちは、咄嗟に魔術を使っていた。


「ぬぁ? なんだぁ?」

「魔術か!」


 2人は攻撃をぶつけ合うことなく、その攻撃が宙で弾かれてしまう。


 俺とフランが両者の間に張った風の防壁が、その攻撃を防いでいたのだ。俺が4枚、フランが2枚である。


 かなりの魔力を込めた。簡単には突破できないだろう。


 竜人たちも獣人たちも、突如出現した風の防壁を軽く叩き、戸惑った顔だ。


 そのまま周囲を見回し、そして対峙する相手を睨みつける。


 俺たちの姿が発見できない以上、相手がやったと勘違いしたんだろう。


「トカゲェェ! 俺とやり合うのが怖くなったかぁ?」

「ああ? こっちのセリフだボケッ!」


 最初の攻撃を防いだくらいでは、大人しくならないか……。こりゃあ、このまま両者を分断し続けて、頭が冷えるのを待つのがいいかね?


 だが、ワンゴンとゲフは、俺たちの想像以上の実力を持っていた。


「覚醒ぃぃ!」

「竜人化ぁ!」


 当然ながら、どちらも進化している。防壁をぶち破る気か? だが、ちょっとやそっとの攻撃じゃ、破壊できんぞ?


 俺たちが自信満々であるように、向こうも自信があるのだろう。ワンゴンとゲフが同時にニヤリと笑うと、それぞれの構えを取った。


『いいぜ! やってみろよ!』


 ただ、少し補強しておこう。俺はさらに風の魔術を発動し、防壁をさらに4枚増やすのであった。



少し忙しく、次回は8日更新です。


レビューを2ついただきました! ありがとうございます!


作者のツリ文句に誘われてしまいましたか……。あらすじを修正した甲斐がありますね!

バトルシーンをお褒めいただき、とても嬉しいです。

だいたいが盛り上がりのシーンなので、気合を入れて書いておりますので!

他の部分のクオリティも高評価で、レビューを読みながらニヤニヤ笑いが止まりません!


あらすじのツリ文句に誘われたレビュワー第二号様です。いらっしゃいませ~。

読者さんに度々「あらすじがちょっと……。修正したら?」と言われていたのですが、本当だったようですwww

ウルシの進化シーンは、私も結構好きなんですよね。

そこを褒めていただくと、書いてよかったなーと思えます。

これからもウルシが大活躍する予定の当作品を、よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 主人公の守りvsワンゴン+ゲフの攻め になってて草
[一言] いつも読ませてもらっています。 書籍も全部買って読ませて頂きました。 とても面白いです(*^^*)これからも引き続き読ませていただきます。 頑張ってください(`・ω・)bグッ!
[一言] 単純な潰し合わせる策だけど脳筋種族同士ではなあ。 矢を放ったりガズオルさらって獣人会に罪なすりつけたりとやはりフランが感じる違和感はなんらかの方法で監視している黒幕の能力かなあ。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ