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835 合魔討ち検証

『フラン。いいか? 相手が闇奴隷商人だったとしても、無暗に斬り殺しちゃだめだからな?』

「わかってる」

『本当に分かってるか? 無茶して、組織全体を敵に回すようなことになったら、最悪なんだからな?』

「ん」


 夜の平原を背に、フランを乗せたウルシが駆けている。


 目指すのは、違法都市センディア。闇奴隷商人たちが巣くうと言われる、アウトローたちが作り上げた町。


 ただ、字面ほど凶悪な場所ではなく、ほとんどの者たちは重犯罪を起こすこともなく、普通に抗魔を狩って日々の糧を得ているらしい。


 冒険者ギルドの支部もあるというし、衛兵などもいて、独自ではあっても外の都市と似た法が適用されているとも聞いた。


 元々は違法な犯罪都市だったとしても、何百年も経つうちに変貌を遂げているのだろう。


 まあ、ヤクザ者の組織が大きな顔をしているというから、普通の都市と同じには考えられないだろうが。


 今日は、カステル救援戦から4日目である。


 フランの体調は、激戦とスキルの反動のせいで、まだ万全ではない。


 本当なら1ヶ月くらいは安静にしていてほしかったが、フランがセンディアへ向かうと言ってきかなかったのだ。


 ただ、さすがにあの激戦の翌日というのは無茶すぎる。そこで、魔術などを無理なく使えるように回復するまでは休むようにと、フランを説得したのだった。


 いや、3日じゃ、俺が目標としていた水準までは全く届いていなかったけどね。フランがおとなしく寝ていられなかったのだ。


 仕方なく、ゆっくりリハビリをしながらセンディアに向かうことにした。


 それに、今の完全に回復していない状態は、これで悪くないことかもしれない。


 センディアではあまり派手に立ち回ることはできないだろう。


 普通の町だったら犯罪者をしらみつぶしにするような方法が使えるが、センディアでそれを始めたら町全体を敵に回すのだ。


 今の状態でそれは絶対に避けなくてはならない。おいそれと負けるつもりはないが、この大陸は戦えるもののレベルが高い。


 犯罪組織に所属している強者がいないとも限らないのだ。


 だが、フランが隠密行動に向いていないのは、分かり切ったことである。正直不安もあった。


 しかし、今の調子を崩している状態だったら、フランも無茶はしないだろう。しないよな?


「む。師匠」

『抗魔の群れか。100くらいだな』

「強いのもいないし、肩慣らしにちょうどいい」

「オン!」


 病み上がりで暴れたいフランと、やはり数日間狩りができなくてフラストレーションがたまっているウルシが、やる気満々で俺を見る。


 だが、俺にも試しておきたいことがあるのだ。


『待った。あれは俺にやらせてくれないか? スキルの検証がしたいんだ』

「オーバーグロウスやっつけた時のやつ?」

『ああ。合魔討ちだ』


 まだ検証できていない合魔討ちというスキルを、ここで使っておきたかった。


『だからあれは譲ってくれ』

「ん。わかった」

「オン」


 不承不承ではあるが、頷くフランたち。


『じゃあ、いってくる。フランたちは気配消して隠れていてくれ』

「がんばって」

「オン!」

『おう!』


 俺自身も気配を消して、抗魔の群れへと近づく。


 100体ほどの下級抗魔の群れだ。試し切りにはちょうどいい相手だろう。


『よし、まずは何もしない状態で攻撃だ!』


 念動と風魔術で速度を上げ、抗魔数匹をまとめて貫いた。その後も数体を斬り捨てるが、特段変化は感じられない。


 ステータスも確認したが、攻撃力も魔力も魔石値も、変化はなかった。


 ただ、ダメージが上昇している気がした。雑魚相手なので分かりづらいが、今までよりも抗魔に対する攻撃力が増している。何度か検証してみたが、間違いないだろう。


 オーバーグロウスのように、抗魔から力を吸い取る能力はないっぽいが、抗魔に対する特攻効果は残っているようだ。ただ、その力は非常に弱い。


 1割は上昇していないだろう。


 次は、スキルを意識してみる。この世界では、パッシブスキルでも自ら使えば、効果が上昇するのだ。その分消費は重くなるだろうが、どの程度変化があるだろうか?


『合魔討ち、発動! どりゃあぁ!』


 おお! こいつはすごい!


 やはり、自動発動よりも効果が上昇しているぞ! 魔力消費は予想通り重いが、俺なら長時間使い続けるのでなければ気にはならない。


『ただ、吸収能力は残ってないみたいだな』


 どれだけ合魔討ちに魔力を流し込んでも、抗魔から力を吸収する感覚はなかった。抗魔に対するダメージ上昇効果だけっぽい。


 多少残念だが、安心もできた。


 抗魔の力を奪い過ぎて、自身が抗魔になってしまったナディアを見た後だからな。フランがあんな風になってしまうリスクを考えれば、吸収能力はむしろ必要ないのである。


『じゃ、サクッと抗魔たちを殲滅してフランの下に戻りますか』


 残った抗魔を斬撃と魔術で倒していく。その間に気づいた。抗魔の動きが微妙に予想できる。あと、抗魔の位置を探りやすくなっていた。


 合魔討ちは探知系にも恩恵があったらしい。討つというからには、相手を探せねばならないってことなのだろう。


『センディアで活動するから、しばらくは抗魔と戦う機会はないかもしれんがな』


 この大陸にいる限り、役に立ってくれるスキルだろう。


今年初レビューを貰っちゃいました!

web版だけではなく、書籍版やコミカライズの宣伝まで、ありがとうございます!

おすすめするのに、威圧スキルまで使っていただいて……。

フランと同じやり口ですね!

今後も当作品をよろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[一言] 最初にフランが経験した大規模戦闘は確かゴブリン百匹…… それが今じゃ抗魔百匹相手に病み上がりの肩ならしに丁度いいとは。成長したなあ
[気になる点] そういえば、主人公が食べた破棄神剣て、 制作者が鍛えるために何百年もかけて人に使わせてきたんだよな? 破壊することで、その長い間かけてきた成果が無に帰したわけで、 神級鍛冶師のかたはさ…
[一言] ナディアと別れの挨拶の場面が無いのは、ナディアも3日で意識を取り戻さなかったって事なんですかね? なかなか目を覚まさないのはちょっと心配になりますね・・・。
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