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809 集う縁


 ヤーギルエールが丁寧に一礼すると、こちらに向かって歩いてくる。そして、フランの前で口を開いた。


「あなたの出した依頼に同行したいのですが、いかがでしょうか?」

「なんで……?」


 突如現れた騎士たちに対し、喜びよりも戸惑いが勝っているらしい。


 フランが目を白黒させている。


「我らは冒険者ではありませんが、共に戦うことをお許しいただけますか?」

「……いいの? 騎士なのに……」

「だからこそですよ。受けた恩義は返さねば、我が国の品位が疑われます」


 そりゃあ、命を救ったが……。国に貢献するために、仲間を犠牲にしてまで生き延びようとしていたんじゃないのか?


 ここで、団長が少数の部下を引き連れて危険な依頼に参加するっていうのは、違和感があるんだが……。


 だが、次の説明で、俺たちの疑問は解消された。


「実は、前回あなたに救われた時に、我が国の第1王子が同行していたのですよ」

「そうなの?」

「はい。現在は国元へと帰還するため、港へと移動されましたが」


 セギルーセル王国の男性王族は、この大陸で一定期間戦うことが義務付けられているらしい。身分を隠して活動し、騎士の苦労を知るというのが元服の儀式的な扱いであるようだ。


 その王子様が、先日までは騎士団の中に紛れていたという。


「あの方は、いずれ名君となられるだろう。絶対にお守りせねばならん」


 なるほど、そりゃあ部下を囮にしてでも逃がそうとするだろうし、恩にも感じてくれるだろう。


 試練の期間が終わった王子様は帰還の途に就いたが、彼らはまだこの大陸に残って抗魔狩りをしていたらしい。帰還中の護衛は、違う騎士団の役割だそうだ。


「我ら騎士12名、受け入れてもらえますか? 選りすぐりの者を連れてまいりました」

「ん! ありがと」

「おーっと、その依頼、俺たちも受けさせてもらうぞ!」


 騎士たちの後ろから姿を現したのは、見覚えのある男女であった。なんと、デミトリス流の面々である。


「コルベルト! ヒルトも!」

「間に合ったようね」


 コルベルトとヒルトだけではなく、他の弟子たちも全員揃っていた。


「ぜー……ぜー……」


 死にそうな顔のフォボス君もいる。


「一昼夜……走りっぱなしは……」

「軟弱な。鍛え直しね」

「ぐふ……」


 話を聞いてみると、昨日依頼を発見したらしい。そこからブルネンに離脱する許可をもらい、あとは一晩かけてここまで走ってきたそうだ。


「私たちも一緒に行くわよ? そろそろ強い相手とも戦ってみたかったしね」

「お嬢さん。フランの手伝いにきたって、素直に言いましょうよ?」

「ち、違うわよ! せ、雪辱を果たすまでは、死んでもらっちゃ困るってだけよ!」


 相変わらずのツンデレだ。ただ、コルベルトとの仲がちょっとは進展しているからか? 前よりも微妙に丸くなっているというか、可愛らしさが増している気がする。


 ちっ、リア充め!


 まあ、これで途轍もなくデカイ戦力が手に入ったから! 許してやるけどさ!


「ん! 大歓迎!」

「ああ、私たちだけじゃないから」

「どういうこと?」


 ギルドの外に団体さんがいるのは分かっているが、他に誰か連れてきたのか?


「入ってきなさい!」

「うむ。久しぶりだな。フラン殿」

「久しぶりですー」


 ヒルトに呼ばれてギルドに入ってきた2人の女性は、竜人の戦士長チェルシーと、カメリア傭兵団の団長であるツァルッタであった。


「なんで?」

「特殊個体が出現する可能性が高いと聞いた。ならば、我ら竜人戦士団の出番! さすがに部隊全てを連れてくることはできないが、精鋭だけでやってきたぞ」

「私たちは単純です。なにせ稼ぎ時ですから~」

「傭兵団は私が雇ったわ」


 ヒルトがカメリア傭兵団を雇って連れてきたらしい。そこから竜人たちにもわたりが付き、戦士団まできてくれたようだ。


「デミトリス流と友好関係を結べるのであれば、格安で依頼を受けるのも吝かではありませんよ」

「……ありがと」


 これは凄い戦力じゃないか? 竜人の戦士は10名ほどだが、それぞれがコルベルトとやりあえるんじゃなかろうか? 最低でも、ランクCくらいはあるだろう。


 カメリア傭兵団も馬の関係で20名ほどしかいないのだが、その分精鋭揃いだった。


 これで、およそ50名。戦力的にはかなりのものだが、人数的には目標の半分程度だろう。


 その時、再びギルドの扉が開き、今度は大勢の冒険者がズカズカと入ってくる。


 やってきたのは、黄色い熊の獣人を先頭にした、15人程の冒険者たちであった。


「ディギンズ?」

「お久しぶりでやすね! 黒雷姫さん! 募集依頼、見やしたぜ!」


 冒険者たちを率いてやってきたのは、西の港で活動するランクB冒険者のディギンズだ。


 一緒に抗魔の群れと戦った時に、フランを慕ってくれてるような感じではあった。強者に憧れる、獣人特有の感覚なんだろう。だが、まさかここまで駆けつけてくれるとは……。


「わざわざノクタに?」

「へい! あの黒雷姫さんが助けを求めてるとあっちゃぁ、見過ごすことなんざできやせんぜ! 冒険者の仁義にもとるってぇもんだ! なあ?」

「「「おう!」」」

「ありがと」

「はははは! 戦友のために命を惜しむような腰抜けにはなりたかないですから!」


 戦友ていうか、舎弟って感じ? いや、彼らは頼もしいし、有り難いけどね。


 これで、約65名。足りんな……。このまま行っちまうか?


 そう思っていたら、背後から声が上がった。


「……腰抜けと言われちゃ、俺たちも黙っているわけにはいかんな」


コミカライズの最新話が公開されております。

本編コミカライズでは、フランが大活躍!

スピンオフではいよいよ黒幕が姿を現します!

どちらもよろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
こういう仲間が集まってくる展開好きよ
[一言] 今までの人助けは今のために会ったんやな(´;ω;`)
[良い点] いいね戦友つながりは
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