6 ゴブ・即・斬!
『魔石いただき―!』
「シュギャギャー!」
『やっぱ、巣穴は美味しいぜ』
今、俺がいるのは、ゴブリンどもの巣穴だ。
自力では全然発見できなかったのだが、下っ端ゴブリンの後をつけて、ようやっと見つけたのだ。
少し泳がせて、巣穴に案内させる。そして、一網打尽にするという、素晴らしい作戦だ。
俺は低空を飛びながら、ゴブリンの後をつけた。抜き足差し足忍び足。いや足はないけど、気分はそうだった。
1時間ほどストーキングしただろうか。ゴブリンたちは急にその場で踊り出したり、蟻の行列に夢中になったりと、時間を無駄にしまくりだった。
そもそも、こんなに長い間、ゴブリンを観察したことなかったが、いちいち癇に障るというか、イラつかせてくれる。遅々として進まないその歩みに、何度も殺っちゃおうか迷った。
『俺ってば、ゴブ・即・斬が染みついちゃってたからな』
よく我慢したと、自分を褒めてやりたい。
そして、ゴブリンの巣穴でアサシンプレイを続け、現在に至るという訳だ。
すでに、30匹以上は始末しただろう。それにしては、騒ぎが起きていない。まだ気づかれていないのか?
『お、広い通路に出たな』
そのまま進んでみる。すると、角を曲がった先に、広い部屋があった。奥行きは20メートル以上あるだろう。天井も、10メートル近い。
その広場にひしめき合う、ゴブリン、ゴブリン、ゴブリンだ。50匹以上いるだろう。1匹1匹は雑魚でも、あれだけの数が集まれば、相当な脅威だった。そこらへんの中型モンスターでさえ、簡単に圧殺することができるだろう。それが集団としての力だ。
あとで知ったことだが、集団戦法を使うことができる魔獣は、群れになるとその脅威度が跳ね上がる。
ゴブリン1体では脅威度G。だが、10匹でF、100匹を超えるとEになるらしい。
ちなみに、脅威度Eというのは、レッサー・バジリスクや、オーガなどと同等だ。村が滅びるレベルである。
そして、その部屋の奥に、一際目を引く存在がふんぞり返っていた。顔にはたくさんの傷が刻まれ、体格も他のゴブリンに比べて2倍近い。正に歴戦の勇士といった風貌だ。冒険者からでも奪ったのか、身に着けているのは鉄製の鎧だし、その傍らには、巨大な剣が立てかけられている。
『おお! ビンゴ!』
種族名:ゴブリン・キング:邪妖:魔獣 Lv21
HP:87 MP:26 腕力:47 体力:39 敏捷:26 知力:17 魔力:16 器用:29
スキル
威圧:Lv1、剣技:Lv2、剣術:Lv4、指揮:Lv4、士気高揚:Lv3、盾術:Lv2、挑発:Lv1、投擲:Lv1、覇気:Lv1、気力操作
装備
折れた粗鉄鋼の長剣、割れた粗鉄の鎧、革の盾、革の腰巻
他のゴブリンとは、比べ物にならない程のステータス。ゴブリン・キングだった。
『侵入者に気づいて、王の守りを固めたってことか』
俺はステータスをチェックしながら、歓喜に震えていた。まるで、食べ放題のバイキング料理を前にした時の様な、高揚感がわき上がってくる。
しかも、奴らの中には、上位種が複数確認できた。ソルジャー、アーチャー、ナイト、に加え、メイジ、シーフ、ウォリアー、モンク、メディック、シャーマンという、未確認の種族も見える。
『やってやろーじゃないか!』
俺は、じっくりと力を練り上げる。念動も、イメージ次第では力の加減が可能だった。最大に魔力を込めて、念動の力を爆発させれば、凄まじい加速を生み出すこともできる。
名付けて、念動カタパルトアタック! くっくっく、まずはお前だ! ゴブリン・キング!
俺は曲がり角から飛び出すと、ゴブリン・キングに照準を合わせて、力を解き放った。0から最高速へ。ノータイムで到達した俺は、ふんぞり返るキングへと一瞬で到達する。
念動は無音。なので、ゴブリン・キングは全く反応できていなかった。
俺が、ゴブリン・キングの顔面に突き刺さる。
ドボン!
そして、キングの頭部を爆散させた俺は、そのまま壁に突き刺さった。
我ながら恐ろしい威力だ。もはや大砲だね。
遅れて、ゴブリン・キングの体が傾ぎ、ゆっくりと倒れた。
広場を支配する、一瞬の静寂。
そして、ゴブリンたちの悲鳴とも、怒声とも思える叫びが、ドォォと湧き上がる。
『ギャオオオオオォ!』
『グルウウァァァァ!』
『ゴルルゥゥアァァ!』
オロオロと慌てふためく奴。キングの死体に駆け寄る奴。ただただ、その場で咆哮する奴。反応は様々だ。
すると、キングの傍らに侍っていた、副官的な奴が、何事かを叫ぶ。そして、5匹のゴブリンが、通路に向かって走り出す。
剣が勝手に動いているとは思いもしないゴブリンたちは、通路の奥から、誰かが剣を投擲したと考えたようだ。
全てのゴブリンの視線が、通路に向かっている。
馬鹿め! そっちに行ったって、誰もおらぬわ!
自然に抜け落ちた風を装い、壁から抜け出る。その勢いのまま、副官を襲った。
むしろ、俺的にはこいつが本命と言っても過言ではなかった。
『魔術スキルよこせぇ!』
キングは、戦術目標として最初に狙ったが、俺が一番倒したかったのは、このゴブリン・メイジだ。最初に鑑定した時から、こいつのスキルが欲しくてたまらなかった。
種族名:ゴブリン・メイジ:邪妖:魔獣 Lv9
HP:27 MP:36 腕力:14 体力:15 敏捷:20 知力:16 魔力:19 器用:12
スキル
鉱物学:Lv1、指揮:Lv1、杖術:Lv2、戦杖術:Lv1、火魔術:Lv3、魔力小上昇、魔力操作
装備
割れた樫の杖、毛皮のローブ
『ふはははははは! これで俺も魔術が使える!』
異世界で魔術。オタクの憧れの1つだろう。俺だって、ぜひ使って見たかった。
その魔術が、今まさに手に入ったのだ。ちょっとだけはしゃいでしまったとしても、仕方ないだろう。
『魔術を試す前に、こいつらを片づけないとな!』
そこからは、一方的だ。
キングの持っていた士気高揚スキルが失われた反動なのだろう。ゴブリンたちが恐慌をきたして、メチャクチャに騒ぎ始めたのだ。指揮するメイジもいなくなり、もう混乱を鎮める者もいない。
上位種はさすがに反撃をしてくるが、個別に行動していては、俺の敵ではない。ノーマル・ゴブリンでは、クリティカルでも出ない限り、俺にダメージを与えることさえできない。
集団としての特性を失ったゴブリンたちは、烏合の衆でしかなかった。むしろ、固まっていたせいで、互いの動きを阻害してさえいる。
『よし、こいつが最後のアーチャーだな!』
遠距離攻撃ができそうな奴は、全て先に片付けた。後は、天井近くにいる俺に手を出すことができず、ただ見上げることしかできない、経験値の群れだ。
俺は群れの周辺を飛び回りながら、ゴブリンたちを倒していく。逃げ出したものを優先的に狙い、逃がさないように気を付けながら。かなりの数のゴブリンは逃がしてしまったが、それでも30匹は狩っただろう。
驚いたのが、スキルのレベルアップだ。ゴブリンの魔石を吸収した際、剣術、棍棒のスキルが立て続けにアップしたのである。
スキルを持っている敵の魔石を吸収すると、その熟練度のようなものも吸収できるらしい。もしくは、敵のスキルLvによって、一定の熟練度が溜まっているのか。ともかく、スキルをレベルアップさせられるというのは、非常に嬉しい情報だ。
『ふははははは! 経験値をよこせぇ!』
今日のステータス!
名称:不明
種族:インテリジェンス・ウェポン
攻撃力:212 保有魔力:400/400 耐久値:200/200
スキル
鑑定:Lv6、自己修復、自己進化〈ランク2・魔石値185/300・メモリ・12・ポイント0〉、自己改変、念動、念話、攻撃力小上昇、装備者ステータス小上昇、装備者回復小上昇、保有魔力小上昇、スキル共有、魔法使い
セットスキル
隠密:Lv1、回避上昇:Lv1、警戒:Lv1、剣術:Lv1、衝撃耐性:Lv1、振動感知:LV1、投擲:LV1、魔力吸収Lv1、痺れ牙、鷹の目、毒の牙、浮遊
メモリスキル
穴掘り:Lv1、解体:Lv1、脚力上昇:Lv1、弓術:Lv1、棍棒術:LV1、採取:Lv1、指揮:Lv1、狩猟:Lv1、盾術:Lv1、生存術:Lv1、槍術:Lv1、体術:Lv1、短弓術:Lv1、短剣術:Lv1、天候予測:Lv1、登攀:Lv1、毒耐性:Lv1、病気耐性:Lv1、斧術:Lv1、麻痺耐性:Lv1、罠作成:Lv1、嗅覚強化、吸収強化、コボルトキラー、コボルト語、消化強化、痛覚鈍化、味覚強化
Newスキル
威圧:Lv1、運搬:Lv1、回復魔術:Lv1、歌唱:Lv1、恐怖耐性:Lv1、曲剣術:Lv1、曲芸:Lv1、契約魔術:Lv1、気配遮断:Lv1、剣技:Lv1、眷属召喚:Lv1、拳闘術:Lv1、鉱物学:Lv1、士気高揚:Lv1、柔軟:Lv1、瞬発:Lv1、浄化魔術:Lv1、杖術:Lv1、小斧術:Lv1、掏摸:Lv1、精神耐性:Lv1、誓約魔術:Lv1、製薬術:Lv1、戦杖術:Lv1、戦槌術:Lv1、長弓術:Lv1、挑発:Lv1、逃走:Lv1、土木:Lv1、眠気耐性:Lv1、覇気:Lv1、腹這行動:Lv1、棒術:Lv1、補助魔術:Lv1、木工:Lv1、薬草学:Lv1、料理:Lv1、暗視、気力操作、敏捷力小上昇、魔力小上昇、魔力操作