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786 抗魔の指揮能力


 フランが抗魔の群れに躍り込み、剣士型を次々と斬り捨てていく。やはり下級抗魔は弱いな。


 周囲から繰り出される無数の刃を避けながら、踊るように剣を振るうフラン。その度に抗魔が斬り捨てられ、消滅していく。


「ガルッ!」


 ウルシも小型化状態で走り回り、抗魔の首を噛み砕いて回っていた。爪で頭部を砕かれる個体もいるな。


 こちらの思惑通り、抗魔たちがフランたちを囲み始めた。


『あと、魔砲型の遠距離攻撃を妨害する』

(どうする?)

『壁を作って、騎士たちの姿を隠す』

(なるほど)


 魔砲型の砲撃を遮るための防壁を造れば、彼らが一発で全滅するような事態は避けられるだろう。


 騎士たちを守るために、大地魔術のグレイト・ウォールを発動する。


 抗魔たちからは逃げていく騎士の姿が隠され、奴らから見えているのはフランだけだ。


 抗魔は魔力を感知できるから、これだけで騎士が安全とは言い切れないかもしれない。


 しかし、最も近い場所に、最も魔力の強いフランとウルシがいるのだ。最優先の狙いは、こちらに変わるはずだった。


『ウルシは、影から魔砲型を潰せ!』

「オン!」


 魔砲型さえ倒してしまえば、騎士たちの危険性は大幅に減るはずなのだ。


『俺たちは雑魚を削る!』

「ん! はぁぁ!」

『どりゃぁぁ!』


 俺たちの放った雷鳴魔術が、前衛の剣士型を一気に削った。それを見て、こちらの危険性をより理解したのだろう。


 抗魔の動きが変化する。


 剣士型がこちらを迂回するように左右に分かれたのだ。代わりに、騎士型が前に出てきた。


 群れに突入した囮役の騎士たちは、まだ頑張っている。この群れの後ろ半分がそちらに引きつけられている。


 ただ、フランの方が危険度が高いと判断したのか、向かってくる数はこちらの方が多い。


 いや、それだけではない。この抗魔たちは、壁の後ろの騎士たちも狙っているようだ。分かれた剣士型の一部が、壁を迂回するように動き出す。


 フランという極上の餌が目の前にいても、他の獲物も逃す理由にはならないということか。


 こちらの想像以上に指揮官個体が冷静なのか、予想を超えた食欲を持っているのか。ともかく、周囲にいる餌は、全て狙うのが奴らの基本行動であるようだった。


(師匠、どうする?)

『大丈夫だ!』


 俺は連続でグレイト・ウォールを発動し、大地を壁と化して剣士型の行く手を遮る。物理的に騎士たちの下へ行けなくしてしまえばいいのだ。


 しかし、これも相手に読まれていたらしい。


 俺の魔術によって巨大な壁が生み出された直後、魔砲型の砲撃が飛んできた。巨大な魔力弾を、山なりに放ってきたのである。


 こちらが一回だけ見せたグレイト・ウォールを予測し、魔砲型に無駄打ちさせずに備えていたことは驚きだ。


 指揮官個体の思考力は、人間と変わらないと思った方がいいかもしれない。


 ただ、相手の動きを予測しているのは、こちらも同じだ。


 魔砲型による攻撃もあり得ると考えて、念動を溜めていたのだ。


『させねーよ!』

「おお、師匠さすが」


 魔力弾による砲撃は念動によって軌道を大きく変えられ、荒野に大きな穴を穿つ。威力はかなりのものだ。あれが当たっていれば、グレイト・ウォールは砕かれていただろう。


『抗魔どもが混乱してる。今の内に進め! 壁は俺が守る!』

「ん!」


 行く手を遮られたまま、まごまごしている剣士型に魔術を叩き込んで蹴散らし、フランがさらに前に出た。


 それを迎撃するために、五体の騎士型が向かってくる。こいつらが予想よりも厄介な相手だった。


 単体では脅威度D相当ってところだろう。


 強いは強いが、今のフランなら問題にならない。だが、数が揃うと驚くほどに上手い連携を見せてくるのだ。


 こちらが攻撃を仕掛けようとすれば数体でカウンターを狙い、守れば前後左右から襲い掛かってくる。それらが、互いに補完し合う完璧なタイミングで連携するのだ。


 しかも、周囲にいる剣士型や弓士型からの援護も、信じられない精度である。ここしかないというタイミングで、しかけてくるのだ。


 全体の動きの練度だけで言えば、ドワーフの戦士団を超えるだろう。


 もしかしたら、精神的な部分で繋がっていて、全部が同調でもしているのかもしれない。


 そうでもなければ考えられないほど、群として完璧な仕上がりだった。


 だが、それでもフランは止まらない。雑魚がどれだけ連携しようとも、強者相手には意味がないのだ。


 それを体現するように、剣士型や弓士型の攻撃を完璧に捌きながら、騎士型を一体、また一体と葬っていく。


 そうしてフランは、未だに戦い続ける兵士たちに近づいていった。向こうもこちらに気付いたのだろう。驚愕の表情を浮かべている。


「えぁぁ? 子供?」

「だいじょぶ?」

「こ、子供がなんで……?」


 まだ生きている。


 仲間を逃がす時間を稼ぐために、できるだけ長く生き延びようとしていたのが良かったのだろう。


 5人全員怪我をしているが、まだ死んでいなかった。


 エリアヒールを連発し、命の危機を脱する。周囲の抗魔も回復するが、問題なかった。どうせ一撃で倒すのだ。


「ギイイイィィィィィ!」

『ウルシも仕事を果たしたらしいな』


 魔砲型から、耳をつんざくような悲鳴が発せられる。同時に、その姿が崩れていくのが見えた。ウルシが撃破したのだ。


「とりあえず、ここから抜け出す」

「し、しかし……」

「あなたたちがいると、範囲攻撃で殲滅できない」

「な、なるほど……」


 フランが無詠唱でエリアヒールを使ったのを見ていた兵士たちは、その言葉が嘘ではないと理解したのだろう。


 すぐにフランの言葉に従うように動き始めた。


『あとは、動きのない巨大騎士型がどう出るかだな』

「ん」


今月末に、「転生したら剣でした」の書籍が3種類発売されます。

原作小説10巻、コミカライズ8巻、スピンオフコミックス1巻の3つですね。

キャンペーンなどもあるようですので、ぜひよろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[一言] 守りながら攻撃はAランククラスじゃないと難しいだろうな
[気になる点] 魔砲型と砲撃型が混在しています(間違いでもないし、違和感もないので、誤字報告には入れていませんが)。 [一言] ここまでは順調ですが、なんか手の内を探られているようで不気味ですね。特異…
[良い点] 足止めの兵士達が無事で良かった [一言] この分だと、もし巨大騎士型が不利になったら配下が捨て身の攻撃とかして来そうだな…
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