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75 圧倒的

 広間に激しい剣戟の音だけが響いていた。フランとスケルトンが打ち合わせる剣の音だ。


 ひたすら地味な、しかし見る者が見れば瞠目せざるを得ない、人間離れした者同士のぶつかり合い。


 しかし、ステータスではフランが圧倒的に負けている上、技量は同等。魔術とスキルで能力を底上げしつつ、俺のサポートがあって、ようやく互角だった。


 それ以外にも、戦いが膠着気味なのには理由がある。


 まず、奴の持つ感知妨害:Lv6。これのせいで魔力感知を使っても、魔石の位置が判別できない。当初狙っていた、念動カタパルトを使っての奇襲もできなかった。適当に当たりを付けて、連発する手もあるが……。


『また回復してやがる!』

「ふっ! はっ!」

「カカ!」


 そこで厄介になるのが、スケルトンの持つダンジョンの守護者という称号だった。どうやら、ダンジョン内で戦う限り、HP、MPの高速回復が付くようなのだ。


 凄まじい再生力を持った相手に、闇雲に消費が大きい攻撃を繰り出し続けるのは勘弁したい。一発撃って念動カタパルトがあるとばれたら、いざと言う時に対処されるかもしれないし。なので、地道に削らなくてはいけないのだが……。


 もう1つ厄介なのが、自動魔力撃:Lv6スキルである。その名の通り、スキルが自動的に魔力の弾丸を打ち出して相手を攻撃するスキルだ。自動なのでスケルトンの動きに関係ない。相手の動きを崩した瞬間などに、こちらの呼吸を乱す様なタイミングで打ち出されることも多かった。しかも、結構な威力があるのだ。ダメージを喰らった瞬間の僅かな硬直が、危機を招く。


 俺達は対抗して、魔力障壁のレベルを上げることで、ダメージを無効化できていた。そのおかげで、自動魔力撃以外の攻撃まで防ぐことができるようになったのは嬉しい誤算だろう。


 しかし、せっかく獲得した自己進化ポイントがガンガン減ってくな。


「はぁぁ!」

「カカカ!」


 ギィンガイィ!


 10分近い削り合い。


 キィン


 時折、剣同士が響かせる鋼の音とはまた違う、ガラスの鈴が鳴り響いたかの様な甲高い音が聞こえる。このキィンという音は、即死に抵抗した証らしい。つまり、スケルトンの持つ魔剣・デスゲイズの即死能力が幾度か発動し、黒猫の加護によって防がれている音なのだ。


 ガルス爺さんありがとう! ウルムットで再会したら酒でもおごるよ!


 だが、即死無効を持っていたとしても、この戦いはフランが不利だ。相手は疲れを知らないアンデッドだからな。体力的にも、精神的にも、長引けば長引くほど押されていくだろう。だが、俺達だってただ無駄に戦っていたわけではない。


『フラン、多分頭だ』

「ん!」


 俺は攻撃をフランに任せながらも、スケルトンを観察していた。そして、その動きから、魔石を探していたのだ。


 痛覚もなく、直ぐに再生する故だろうか、奴は無視しても良い攻撃は特に防がない。だが、頭部への攻撃だけは、絶対に防御をしていた。


『その不死身さが、逆に仇になったな!』

「はぁぁ!」

「カカカカカ!」


 とは言え、簡単に急所を攻撃させてはくれない。


 両者の攻防はさらに激しさを増していった。ダメージ覚悟で急所を狙うフラン。急所以外の守りを捨て、カウンターを狙うスケルトン。


「ふぅっ!」

「カ!」

「そこ!」

「カッカカ!」


 だが、スケルトンの注意は完全にフランに向いているな!


『ウルシ!』

「ガウ!」

「カ?」


 ウルシは目まぐるしく動く両者の動きについていけず、目立った援護が出来ていないでいた。なので、途中からは援護を止めさせ、こっそりと影に潜ませていたのだ。最も効果的な瞬間を狙うために。それが今だ。


 影から首だけを出したウルシが、スケルトンの足に咬み付き、動きを封じる。


「師匠! いま!」

『くらえ!』


 ここまで温存してきた切り札を放つ。超至近距離の念動カタパルトだ。


『おりゃぁぁ!』


 いくら強くたって、この距離で念動カタパルトは防げないだろ! よしんば反応できたとしても、奴は動きを封じられている――はずだった。


「カカカ――!」


 ドォォオォォォ――――――ギィン!


「キャイン!」

「くぅ」

『ぐぁ!』


 勝利を確信した瞬間、スケルトンの全身から光が放出され、俺達は吹き飛ばされていた。凄まじい魔力だ!


 状況を確認するため、俺は即座に周囲を見回す。奴は――いた!


「カカカカカカカ!」

「うぁ!」

『フラン!』


 消えたのかと錯覚するほどの速さ。次の瞬間には、奴は倒れているフランの目の前にいた。フランは咄嗟に幻輝石の魔剣を取り出して受けるが、一撃で剣を弾き飛ばされてしまう。


 俺は全力でフランの下に飛んだ。その間にも、スケルトンがフランを攻撃している。転がって躱しているが、捉えられるのは時間の問題だろう。


『ううううらぁ!』


 ギィン


 間一髪、割って入る。だが、俺だけでは踏ん張りがきかず、簡単に弾かれてしまった。それでも、フランが起き上がる隙は作れたようだ。


『行けるか?』

「ん!」


 何とかフランの手に収まったが、スケルトンの攻撃は続いていた。


「カカ、カカカ!」

「くぅ! あぁ!」

「カ!」

「うぁ!」

『――ミドルヒール!』


 くそっ。フランが押され始めた! 回復する以上にダメージを受け、蓄積していく。魔力障壁の常時展開のせいで、魔力もジリジリ減ってきた。いきなり有り得ないパワーアップをしやがったが、何が起きてる!


 鑑定!


種族名:レジェンダリースケルトン・ソーサリーファイター:死霊:魔獣 Lv24

状態:守護者・潜在能力解放

HP:1229/1663 MP:988 

腕力:637→1137 体力:713→1213 敏捷:436→936 

知力:289→789 魔力:521→1021 器用:550→1050



 は? 全ステータスが+500だと? 腕力、体力、魔力、器用が1000を越えている。チートすら超えてるだろう!


 状態が潜在能力解放となっている。エクストラスキル、潜在能力解放の仕業なのだろう。


潜在能力解放:使用者の潜在能力を解放する。上昇する能力は、使用者の潜在能力に依る。また、潜在能力を無理やり解放するため、生命力が減少し続け、加えてさらに大きな代償を必要とする。代償は使用者によって異なる。


 確かに、奴のHPが凄い勢いで減っていく。だが、このままでは向こうのHPが尽きるよりも早く、フランが力尽きる!


「カカカ!」

「う!」


 くそ、馬鹿力め! 攻撃を受けるたび、フランの手から俺が弾き飛ばされそうになる。念動で堪えなければそうなっていただろう。


「ガル!」

「カカ!」

「ギャン!」


 知覚力も上がっているのか、影から飛び出したウルシも一瞬で切り倒された。


『ウルシ! 逃げろ!』

「オ……ゥ」


 ウルシが力を振り絞って、影に潜る。よかった、いくら何でも影の中までは攻撃できないようだ。


「――リバース・アンデッド!」


 その隙をついて、ジャンの声が響く。アンデッドを消滅させる冥府魔術だ。高位のアンデッドでさえ塵に返す高等魔術のはずなんだが――。


 魔法防御も上昇しているんだろう。スケルトンは避ける素振りさえ見せなかった。


「くっ、やはり我が魔術は効かぬか!」

「はぁぁ!」

「カカカカカカカカ!」


 その間にも、スケルトンと打ち合うフランのHPがガリガリ削られていく。俺たちは次第に追い詰められていた。


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