764 違法村
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ゴルディシア大陸には、様々な人間がやってくる。
各国から派遣された兵士や、肉壁役の重犯罪奴隷。依頼や修行の地を求める冒険者に、逃げてきた犯罪者。
兵力を常に求めているゴルディシア大陸では、どんな人間でも歓迎される。いや、流石に犯罪者が大手を振って港を歩くことはできないけどね。アースラース級になると別だろうが。
名を変え、真面目に働きさえすれば、過去を蒸し返すような者はいないのである。
それ故、多くの犯罪者がこの大陸を目指すのだ。各大陸には犯罪者の輸送を行うブローカーまで存在し、日夜罪人をこの大陸へと運んでいるらしい。
ただし、ここでも犯罪を行おうとすれば、あっさりと捕らえられる。なにせ周囲は騎士と兵士ばかりなのだ。
ゴルディシアの各港は、ある意味世界で最も犯罪をしづらい場所と言えた。
「ただし、それは結界の外に限る。中に入ってしまえば、そこは法も完全には及ばぬ、魔獣の腹の内よ」
「……犯罪者が好き放題?」
「一部の地域ではな。結界の中に入った後は外に戻らず、中に勝手に住みついちまう奴らがいるんだ」
「結界の中に、住める?」
「不可能ではないな」
結界の内部には、深淵喰らいの体が満ちている。だが、半霊体であるため目には見えないし、物理的な干渉力もない。
結界外から空気が流れ込んでいるため、普通に人間が活動することができた。それどころか大地もあるし、植物や生物もいる。川や湖だってあるのだ。
「深淵喰らいは、なんでも食べちゃうんじゃないの? 動物とか草がある?」
「ああ。何でも食うと言っても、効率があるからな」
全てを食らうと言われている深淵喰らいだが、その食事方法は特殊だ。抗魔と呼ばれる魔獣を生み出し、そいつらが食らったエネルギーを吸収する。
抗魔は何でも食らう。土も生物も、魔力も邪気も関係ない。ただ、好みというか、優先順位があるらしい。
それが、魔力の多寡だ。魔力を多く持っていればいるほど、抗魔にとっては美味しいエサなのである。
それ故、深淵喰らいが生まれた直後、この大陸からありとあらゆる魔獣が姿を消した。竜や高位魔獣もいたはずだが、無限に湧き出す抗魔の前には太刀打ちができなかったらしい。
魔獣を食らい尽くした抗魔たちが次に狙ったのが、魔力の籠った魔樹や霊草。そして、人類であった。
「人間が全て消えてしまえば、奴らも大地や雑草を食い始めるのかもしれない。だが、我らがこうしてこの地で戦い続けている限り、抗魔たちは人間を求めて結界内外周へと押し寄せ、他には目もくれないのだよ」
人類が送り込む戦力が常駐し続ける限り、抗魔のターゲットは人間たちで有り続けるのだ。ゴルディシアの責務は、この大陸そのものを抗魔の食欲から守るための戦いでもあるらしい。
「そして、ここからが村の話だ。抗魔は深淵喰らいの内で湧く。つまり、この大陸のどこでも湧く」
「湧く……?」
さっきも湧くって言ってたな。考えてみれば、抗魔がどう生み出されるのか、考えたことがなかった。
「そうだ。俺たちからすれば。虚空から湧いて出るように見えるのだ。だが、その湧き出方には偏りがある」
大陸の中央になればなるほど、より強い抗魔が、より多く生まれ出るらしい。
「ただ、それだけではなく、湧き出る数の違いは、場所にもよるのだよ。何故か抗魔が全く湧かない場所があり、そこには我々によって町が築かれている」
なるほどね。抗魔が出現せず、農業が可能であるのなら、生活することも無理ではないのかもしれない。外から押し寄せる抗魔に対抗できる戦力があるのであれば、だが。
「しかし、管理委員会の手が及ばぬ町もある。抗魔の出現が少ない地域に、犯罪者や逃亡者たちが勝手に作り上げた町や村があるのだ」
「少ないってことは、少しは出る?」
「そうだ。時おり外壁の中に現れる抗魔を自力で排除しながら、住みついているのだよ。新しくできる場合もあれば、知らぬ間に滅ぶこともあり、我らも把握しきれていない」
それが違法村や違法町と呼ばれる、アウトローたちが勝手に作り上げた町村だった。
「カステルも、そんな違法村の1つだろう」
「なるほど……。じゃあ、そこに行くのは犯罪になる?」
「いや、ならんな。そもそも、違法村は黙認状態だ。冒険者たちが活動する場合、必要になってくるからな。それに、中で生活しながら、抗魔を狩り続けていることは確かなんだ。必要悪として、誰もが触れないようにしているのさ」
結局、問題がないわけではないが、利の方が大きいので黙認されているような状態であるようだった。ゴルディシア大陸で活動する冒険者たちにとっては、中継地点として利用されることも多いらしい。
「冒険者が行って、違法村に入れる?」
「奴らにとっては情報源だし、物々交換のチャンスでもある。それに、悪さをし過ぎればさすがに討伐の対象にもなる。場合によっちゃ、宿屋なんかがある村もあるぞ」
犯罪者の巣食う危険な村というよりは、世捨て人の隠れ村くらいに思っておく方がいいのかもしれない。
フランの両親は、何でそんな村にいたのだろうか? 2人が犯罪者だったという話は聞いていないが……。
「ねぇ、この大陸から闇奴隷として他の大陸に売られることはある?」
「……なんでそんなことを?」
ウィリアムが探るような目つきでフランを見た。ここにきて、初めて警戒されたかもしれない。しかし、フランはその問いかけにあっさりと答えていた。
「私がそうだった。私はこの大陸の村で暮らしてて、お父さんとお母さんが殺された後に捕まって闇奴隷にされて、クランゼル王国に連れていかれた」
吹聴することではないが、フラン自身が犯罪に加担した訳ではないのだ。奴隷時代の記憶は忌まわしい物ではあるが、奴隷だったことでフランの価値が下がる訳じゃない。
フラン自身も、そう思っているらしい。特に卑下する様子もなく、奴隷だった過去を告げる。
「それは……。なるほど、だからカステルか」
「お墓参り」
「分かった。出来る限りの協力をしよう。冒険者ギルドへの紹介状を書く。それがあれば、地図などは最新の物を見せてもらえる。それと、奴隷商人についてだが……」
ウィリアムが僅かに口籠る。しかし、意を決したように口を開いた。
「大規模な奴隷の売買の組織が、大陸内に入り込んでいるということは突き止めている。どうやら、複数の国と組んで、違法奴隷を大陸外に連れ出しているらしい」
「船を調べたりしないの?」
「その権限がない。そもそも、危険を冒して持ち出すような価値があるもの、ほとんどないんだ」
魔法金属は抗魔たちに食らい尽くされ、魔獣はおらず、霊草の類もない。抗魔は結界外に出すことができない。
密輸するだけの価値がある品物がゴルディシア大陸には存在していない以上、密輸を警戒することもなく、規制する法もなかった。
また、結界内に不法に留まる人間たちは黙認されているとはいえ、所詮は違法滞在者。そんな者たちの人権を守ろうとする国はないし、管理委員会としても各国と揉めてまで守るほどの価値はないのだった。
違法奴隷の密輸は、その隙間を突いているらしい。
「青猫族に気を付けることだ」
「……奴らが、違法奴隷を?」
「確証はないので、これ以上のことは言えん。そこら辺は、冒険者ギルドの方が詳しいだろう」
「わかった」
フランの内に、やる気の炎が灯ったのが分かった。
『フラン。一応言っておくが、安全第一だからな?』
(わかってる)
これは、ただの墓参りにはなりそうもないか?
いつも誤字報告をありがとうございます。とても助かっております。
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