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72 幽体の回廊

「――ハイ・アンデッド・サモニング!」


 すでに見慣れた感のあるジャンのアンデッド召喚。そして、魔石から現れたのは――なんだろう? 霧? 蒸気? なんか、白っぽい不定形の何かだった。


「雲?」

「これぞダンジョン攻略の秘策第2弾! カスタム・ガストのフライだ」


種族名:カスタム・ガスト:死霊:魔獣 Lv7

名称:フライ

HP:22 MP:401 腕力:8 体力:13 敏捷:36 知力:89 魔力:210 器用:19

スキル

希薄化:Lv7、地図作成:Lv6、通心:Lv3、影分身:Lv7、魔力吸収:Lv6、罠感知:Lv3、死霊、物理攻撃無効


 こいつも探索専門だな。


 フランが触ろうと手を伸ばすが、当然の如くスカっている。ウルシもフランを真似して咬み付こうとするが、煙のような体のフライを捕えることは出来ない。


「おおー」

「ワフー!」


 ただ、それが面白いのだろう。2人は白い煙に何度も何度もじゃれついている。ここがダンジョン内じゃなければ微笑ましい光景なんだけどな。


「フライは地図作成にて得た情報を、通心で我に送ることができるのだ! 何もせずとも、ダンジョンマップを手に入れることができるという訳である! くはははは、我が発想の閃きに、自ら戦慄を禁じ得ぬわ!」


 確かに、フライがいたら探索がサクサク進むだろうな。


「行け、フライよ!」


 ジャンの命令に、フライは20体ほどに分身を始める。1体1体は弱いが、まあ戦闘力は求められてないしな。そして、小さくなったフライたちが静かに動き出した。一見、白い煙が気流で動いている様にしか見えないな。


「さて、これで後10分もすれば、この先の地図も手に入るだろう」

「陣形は?」

「踏破の手順は変わらんよ。セルカンを先頭。君らには遠距離攻撃を担当してもらう」

「まかせて」


 まだまだ暴れたりないのだろう。雑魚ばかりだったし。フランはやる気に満ちた顔で、ムンと力こぶポーズをする。


「前回、我自身はこの階層までは下りなかったのだ。フライに先行させて、偵察しようとはしたのだがな」

『じゃあ、この階層の構造は頭に入ってるのか?』


 確か、この階層の情報は全然ないって言ってたよな?


「いや、この先のエリアをフライが突破できなかったので、構造は分からん。今回はさらに改良を重ねた故、問題はないがな」

「じゃあ、この先のことは分からない?」

「うむ。いや、1つだけ分かっていることがあったな。君たちがお探しの擬態霊だが、この先のエリアに出現するのだ。なにせ、フライの行く手を阻んだのが奴らだったからな」

『本当か? よっしゃ、気合入ってきた!』

「ん」

「オォン!」

「では、これを渡しておこう。戦闘前に、飲みたまえ」

「これは?」

「ふははははは。我特製の、滅霊ポーションである! 飲むだけで、死霊からのダメージ軽減効果があるし、精神支配などの特殊攻撃への耐性も上がる」

『すごい高性能だな! もしかしてけっこう貴重品か?』

「大したものではない。市場に流せば、1本20万ゴルド程であるな」

『高!』


 20万ゴルドなんて、今回の成功報酬と同じ値段だぞ? いいのか?


「我にとっては、はした金だ。気にするな! 材料は2万ゴルドもかかっておらんしな!」


 さすがランクB冒険者だな。20万がはした金とか。


「じゃあ、貰っておく」

「それと、渡してあるアイテムは自由に使ってくれて構わん。君たちが離脱して困るのは我だからな」


 太っ腹な依頼主で嬉しいよ。ただ、俺ってば貧乏性だから、アイテム使うの躊躇しちゃうんだよな。RPGでも、エリクサーとか世界樹の葉とか、最後まで残してクリアするタイプだし。フランが危険な目にあったら、そんなこと言ってられないだろうけど、普段はどうしてもね。



 そして俺たちは、2階層の入り口に延びる、幽体系の敵ばかりが襲ってくる長い回廊へと突入していた。


『うらぁ!』

「オオオオォォォォォ……」

『くそっ! こいつも違う! じゃあ、お前かぁ!』

「オオゥゥ……」

『こいつでもない!』

「オオオ」

「オウオオ」

『あーっ! もう! 鬱陶しい! どれが偽装霊だ!』


 レイスにゴースト、スペクターなどが前後左右、時には壁や床を抜けて襲ってくる。


 だがこの回廊こそが、俺たちが待ち望んだ場所だった。襲ってくる敵の中に、擬態霊がいるのだ。擬態霊の上位種である偽装霊も混じっているかもしれない。


 幽体系にダメージが通るよう、常に炎の属性剣を発動しながら。幽体系死霊を次々と切り伏せていく。俺という魔力タンクが居なければ、不可能な戦法だな。実は、魔力吸収のレベルを上げたんだけどね。


 幽体系の死霊たちはその体が魔力で構成されているため、魔力吸収に弱かったのだ。なので、攻撃兼魔力補給のため、魔力吸収スキルをLv3まで上げたのだ。


 これで、残りのポイントは1まで減ってしまったが、今後も、長期戦では有利になるスキルだし、上げておいて損はないと思う。


 結果、属性剣と合わせればほとんどの死霊が1撃で倒せるようになっていた。俺の保有魔力も未だに1500程度をキープできているし。後は、偽装霊から鑑定偽装を奪えれば完璧だ。


 いや、本当は広範囲魔術で殲滅すれば、もっと簡単なんだけどね。それじゃあ、魔石まで破壊してしまうし。鑑定偽装だけはどうしても手に入れたいのだ。


『ジャン! 偽装霊は見つからないか?』

「うむ、まだだな」

「本当にいる?」

「分からん!」

『いると信じて戦うんだ!』

「オンオン!」


 フランたちにも相当な負担をかけている。なにせ、擬態霊だと思って攻撃したら偽装霊の可能性があるのだ。魔石の破損を防ぐには、俺が擬態霊を攻撃するしかない。


 フランたちは範囲の狭い攻撃で擬態霊以外の死霊を1体1体始末していくしかなかった。


 ジャンから貰った滅霊ポーションのお陰で、死霊たちの放ってくる精神状態異常系の攻撃は完璧にシャットアウトできている。物理攻撃は大したことないし。なので、フランたちにとってはただただ鬱陶しいだけだろう。

 

 そうして戦う事30分。


『今のは……』


 擬態霊にしては吸収する魔力が多かった気がする。俺は慌ててスキルを確認してみた。


ユニークスキル

鑑定偽装


『よっしゃあ! 来たぞ!』

「よし! ではもうよいのだな!」

『おう!』

「ようやく」

「オウウゥ」


 その後は、30分も戦い続けていたのが馬鹿らしくなるほど、あっさりと決着がついていた。皆で広範囲魔術を連発したら、それだけで殲滅が完了してしまったのだ。


「ん?」

「オウ?」


 いや、俺の方見られてもさ。ゴメンって。鑑定偽装が欲しかったんだ。まあ、必要な苦労だったと思って、諦めてくれ。


「おめでとう」

『セットしてみたけど、どうだ? 魂魄眼で鑑定できるか? スキルを隠して、ステータスを実際より低く見える様に念じてみたんだが』

「ふむ……。うむ、成功だな。以前見た時よりも、ステータスが半分ほどに見えている」

「スキルは?」

「スキルも全く見えていないな。ただ、使い方はもう少し研究したほうが良かろう。スキルを1つも持っていないのは、逆に怪しいからな。無難に見える様に調整するべきだ」

『ああ、分かってる』


 どんな風に偽装するかな?


 いやー、色々楽しくなってきたな。これでフランを鑑定してきた敵に嘘のステータスを見せて、「戦闘力たったの5か、ゴミめ」と思わせておいて、「私の戦闘力は53万です」ってやることも可能なわけだ。


『くくく。今から楽しみだぜ』

「師匠、悪い声」

「ワウン」


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― 新着の感想 ―
ラ○ィッツさんは、そうやってやられそうですわ。
ゲームの対戦で偽装されたら勝てないよね リアルでやられたらもっとやばいね
これは初めて対峙する者にしたらかなりヤバいスキルですね…そして違和感に気付いた時には手遅れ?(笑)
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