704 強敵たち
本日は1回戦2日目。C、Dブロックの試合が行われる。
「ヒルト出てきた」
「オン」
俺達は今日も、特別席で観戦中だ。
フランは自分の前にお座りするウルシを背後から抱きしめつつ、顎をウルシの頭に載せ、その毛のモフモフ感を全身で楽しんでいる。
『さて、どんな試合を見せてくれるかね』
「ん」
闘技場に現れたヒルトを鑑定する。やはり強い。
名称:ヒルトーリア 年齢:23歳
種族:人間
職業:魔闘拳士
ステータス レベル:61/99
HP:682 MP:582 腕力:410 体力:262 敏捷:589 知力:197 魔力:366 器用:314
スキル
足裏感覚:Lv4、威圧:Lv6、怪力:Lv6、格闘技:Lv3、格闘術:Lv3、危機察知:Lv5、拳聖技:Lv4、拳聖術:Lv6、拳闘技:LvMax、拳闘術:LvMax、硬気功:Lv8、剛力:LvMax、指導:Lv6、瞬発:LvMax、瞬歩:Lv3、状態異常耐性:Lv5、精神異常耐性:Lv5、挑発:Lv4、投擲:Lv4、デミトリス流武技:LvMax、デミトリス流武術:LvMax、物理障壁:Lv6、魔術耐性:Lv6、魔力感知:Lv5、魔力放出:Lv8、眠気耐性:Lv5、オークキラー、コボルトキラー、美食、分割思考、気力制御
ユニークスキル
気力暴走、食溜め
固有スキル
魔纏拳
称号
オークキラー、コボルトキラー、ジャイアントスレイヤー、デミトリス流を継ぐ者、撲殺者、魔獣の殲滅者、ランクA冒険者
装備
螺貫の殴拳、天魔蚕の闘衣、天魔蚕の肌着、水龍骨の戦靴、魔力抑制の腕輪、回生のペンダント
ステータスも強いが、やはりスキルが凄まじい。デミトリス流がレベルマックスということは、デミトリスと同様の技を使用可能ということだ。奥義的なものも使えるだろう。
去年戦った封印解除状態のコルベルトの上位互換という感じだろう。
『デミトリス流の技が少しでも見れたら嬉しいんだけどな』
「……無理」
「オフ」
《個体名・ヒルトーリアがデミトリス流の武技、武術を使う確率、2%》
フランとウルシどころか、アナウンスさんまで! まあ、俺もそう思うけど。
ヒルトの対戦相手は、斧使いの大柄な冒険者だ。顔は中々に厳つく、迫力満点である。町を歩けば皆が道を譲るだろう。
ただ、あまり強くはない。というか、弱い。その実力は、緋の乙女の3人と比べてもかなり低かった。
予選の組み合わせは完全ランダムなので、弱い奴ばかりのブロックを勝ち上がってくれば、微妙な実力の人間が本戦に出場してしまうことがあるのだろう。
試合は、予想通りの結末だった。牽制っぽく放ったヒルトのジャブで、あっさりと決着がついてしまったのだ。
ヒルトの攻撃に反応すらできず、ジャブを顎に食らって、崩れ落ちる斧使い。ヒルトの実力の片鱗さえ見れなかった。
『ま、まあ。次からはもう少しましな相手になるだろうし、そこでいろいろ見れるだろう』
「ん……」
そのまま観戦を続ける。次の試合には知人が出ていた。
「ラデュル」
珍しくフランが名前を憶えている。ウルムットの老魔法使いで、一緒にお茶をしたことがあるのだ。ランクはCだが、B並みの実力者で、オーレルとパーティを組んでいたこともあるらしい。
去年は試合を見ることはできなかったが、格下であるはずのクルスに敗北してしまっていたはずだ。多分、速さでかく乱されて、先に大技を当てられてしまったのだろう。
元宮廷魔術師なだけあって魔術のレベルは高くとも、高齢なせいで肉体的なステータスはかなり低かったからな。
今年はどうだろうか?
少し心配しながら試合を見ていると、ラデュル爺さんはメチャクチャ強かった。大地、暴風、大海の3属性を使えるという話だったが、その使い方が絶妙だ。
強力な術を使うのではなく、簡単な呪文を上手く組み合わせているのだ。
大地魔術で相手の足場を崩し、派手な大海魔術で気を引き、不可視の暴風魔術で静かに攻撃する。
詠唱破棄から放たれる多彩な魔術を前に、相手の盾士は何もできずに沈んだのであった。
『クルスみたいな、速度重視なうえに相打ち狙いの特攻型は苦手でも、足が遅い相手だったらこんなに強いのか』
「ラデュルすごい」
「オンオン!」
フランも目を輝かせていた。決して派手ではないが、熟練の試合運びだった。モルドレッドと似たタイプだろう。こっちは魔術特化だけどな。
最終のDブロックは、知り合いがかなり多く出場していた。
まず登場したのはエルザだ。相変わらずの存在感に、巨大なメイスを担いだ姿は、子供なら悪夢に見てしまいそうな迫力である。
相手の攻撃を笑顔で受けつつ、数度の攻撃であっさりと勝利をもぎ取っていた。
次に舞台に上がったのがシャルロッテである。踊るように舞いながら、手に持った鉄の輪で戦う、かなりトリッキーなスタイルを得意とする少女だ。
輪っかで相手の槍を搦め捕って奪い、悠々と勝利を決めていた。
2人とも強かったが、次に登場した人物のインパクトも負けてはいない。それくらい、カマキリヘッドの半蟲人、ナイトハルトは目立っていた。
素手でありながら、鋼鉄の剣をぶった切って破壊してしまったのだ。剣に対して手刀で応戦した時には悲鳴が上がったが、次の瞬間には大歓声が起きていた。
名称:ナイトハルト 年齢:57歳
種族:半蟲人・蟷螂族
職業:双撃士
ステータス レベル:66/99
HP:897 MP:214 腕力:588 体力:317 敏捷:612 知力:138 魔力:167 器用:433
スキル
悪食:Lv3、足裏感覚:Lv4、暗殺:Lv4、隠密:Lv4、歌唱:Lv3、観察:Lv4、危機察知:Lv8、弓技:Lv4、弓術:Lv6、急所看破:Lv4、宮廷作法:Lv2、計算:Lv5、気配察知:Lv6、気配遮断:Lv5、剣技:Lv5、剣術:Lv5、拳聖技:Lv3、拳聖術:Lv3、拳闘技:LvMax、拳闘術:LvMax、硬気功:Lv4、交渉:LvMax、剛力:Lv3、指揮:Lv7、指導:Lv4、瞬発:LvMax、瞬歩:Lv8、消音行動:Lv6、状態異常耐性:Lv7、精神異常耐性:Lv3、双剣術:LvMax、遠見:Lv4、疲労回復:Lv6、魔術耐性:Lv2、魔力感知:Lv3、暗視、脚力強化、脚力上昇、気力制御、痛覚無効、不屈、敏捷中上昇
ユニークスキル
韋駄天
固有スキル
鎌刃術、双撃、蟲化
称号
ジャイアントスレイヤー、戦場の王、千人斬り、双剣士、敗残者、百人斬り、蟲の絆
装備
銀竜の双剣、銀竜鱗の拳甲、三頭魔犬の衣、オリハルコンの軽甲、三頭魔犬の戦靴、気力補充の腕輪、生命超回復の足輪
かなり強い。あと、年齢がかなり上だった。声がイケメン声優みたいだったから、てっきり20代だと思っていたのだ。長年戦場で戦い続けてきた故の強さなのだろう。
いくつか未見のスキルもあるし、本気で戦う姿を見るのが楽しみだ。
そんなナイトハルトの本気を引き出してくれそうなのが、最後に登場したフェルムスだろう。去年、俺たちと3位決定戦で戦った元ランクA冒険者だ。
糸を使った変幻自在の戦法には、本当に苦しめられた。今も、糸で相手の動きを封じ、拳で決着をつけている。観客には、フェルムスの相手が急に棒立ちになったようにしか見えないだろう。
俺たちは、大技での力押しでなんとか勝利したが、次にやっても絶対に勝てるかどうかは分からない。
あれから大分強くなった俺とフラン、ウルシであってもだ。いや、闘技場という限定された空間であれば、勝てる確率は高いだろう。
だが、森などでの殺し合いということになれば、正直自信はないのだ。
『今年も簡単には優勝できなさそうだな……』
「ん! 望むところ」
「オン!」
『まずは、モルドレッドに勝つぞ!』
「おー」
「オフー」
風邪が悪化してしまいました。
申し訳ありません。次回は12日更新とさせていただきます。




