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67 原因判明

 俺の念話がばれた? どういうことだ!


「……」

「ほう。だんまりかね? だが、私の目は誤魔化せん。我がスキル魂魄眼は、対象の魂を見ることができるスキル! そして、魂を直接見ているのだ! 鑑定遮断など、無意味無意味! ふははははは!」


 まじか! 鑑定遮断でも防げない鑑定だと? ガルス爺さんと言い、こいつといい、魔眼系のスキルは厄介だぜ!


 くっ! どうする? 口封じ? いや、早まるな俺!


 緊張感を高める俺を余所に、ジャンは顎に手を添えてふむふむと暢気に頷いている。


「しかし、珍しい物を見たな! インテリジェンス・ウェポンか。性能も十分なようだし、君らの力が借りられれば、我が悲願の達成も近い!」

『悲願?』

「おお、ようやく喋ったな。剣と喋るなど、なかなかできる経験ではないな! 愉快愉快!」

『ああ、そう』


 テンション高すぎて疲れるわー。


「さて、君たちに手伝ってもらう依頼の説明をさせてもらおうか」

 

 うーん? 何か、俺が欲しいって感じじゃないな。単純に、俺が本当に喋れるか知りたかっただけ、みたいな?


『なあ、俺がインテリジェンス・ウェポンだってことを知って、他に何もないのか?』

「どういうことだね?」

『いや、俺が欲しいとか?』

「欲しいと言えばくれるのかね?」

「あげない」

「なら、いらんよ。興味もそこまでないしな」

「本当に欲しくない?」

「うむ。別にいらん」


 虚言の理を発動したが、ジャンの言葉は嘘じゃない。本当に大した興味はないらしい。まじでいらないって思っている。うーん、少し悔しいような、安心した様な?


「気が済んだかね? なら、依頼の説明をさせていただこうか? くっくっく」


 さて、どんな無理難題を吹っ掛けられるのか。人体実験や暗殺といった、物騒な単語が頭の中で踊っている。


「依頼の内容は、我の探索の補助だ!」

 

 普通の依頼だった。え? まじで?


「探索? どこかに行く?」

「うむ。乗り気なようで嬉しいぞ。探索場所は、そう遠くない。我に任せておけば、30分もかからず到着できよう」


 結構な近場だな。じゃあ、ダンジョンではないか。そんな近場にダンジョンがあるなんて話、聞いたこともないし。


 だが、ジャンの言葉は俺の予想を大きく裏切ってくれる。


「目指すはダンジョン。アンデッドの巣窟だ」

『え?』


 いやいや、この辺にダンジョンがあれば、アレッサで情報を聞けない訳がない。どういうことだ?


「アレッサで教えてもらえなかった」

「それはそうだろう。なにせ、我しか知らん事だからな」

『え? ダンジョンの情報を隠匿してるってことか?』

「そうだ。言っておくが、ダンジョンの報告は義務ではないぞ? 災害の危険性があるため、報告は推奨されているが、黙っていたとしても罪にはならん。この国ではな」

「初耳」

「報告すれば報奨金が出るので、大概は報告するがな。それに、ダンジョンの場所は正確にはこの国ではない。というより、どこの国の物でもない。故に、報告の義務もない」

「?」

『どういうことだ?』


 どこの国にも属さない場所? どっかの緩衝地帯とか、そういうところなのか?


「ふっふっふ。悩んでいるな」

『場所を教えて欲しいんだが』

「まあ、待て待て。すぐに教えてはつまらんだろう?」


 いや、全然教えてもらって構わないんだけど。


「では、我がそのダンジョンを発見した経緯から教えてやろうではないか! 静聴するがよい!」

「ん」

『手短に頼む』

「無理だな!」


 ということで、ジャンが無駄に身振り手振りを交えて語り出した。


「あれは10年ほど前のこと! 当時、この地域ではアンデッドの出没が頻繁に報告されていた。ネール村周辺では、どういう訳か他の魔獣よりも、アンデッドの発生率が高くなっていたのだ」


 それはアーゲンからも聞いた。だから、死霊草が重宝されていると。


「元々は、死霊術師としてさらなる高みに上るため、我はこの地域の調査にやってきた。そして、地道な研究を続けた。時に折れそうになる心を叱咤し、我は血のにじむ努力を続けたのだ!」

「おー」


 フラン、拍手なんてしなくていいから!


「その結果、我は大発見をした。妙な魔力溜まりを複数発見したのだ! ふははは!すごいであろう!」

『魔力溜まり?』

「うむ。自然界の魔力が様々な要素により一か所に溜まってしまう現象だ。そうやって、澱んだ魔力溜まりから魔獣が生まれるわけだな」

「ほう」

「ただ、我が発見した魔力溜まりには、最初から死霊魔術に似た属性が付加されていたのだ。無論、属性が偏った魔力溜まりと言うのは、無いわけではない。火山などの火属性が強い場所の魔力溜まりでは、火属性の魔獣が生まれやすいし、海では水属性が生まれやすい」

「じゃあ、この辺にある死霊属性が強い魔力溜まりからは、死霊が生まれる?」


 だからアンデッドが多いんだな。


「そうだ。だがな、それがそもそもおかしいのだ」

『何がおかしいんだ?』

「ここは、単なる平原だぞ? 古代からの記録を調べたが、古戦場の跡と言う訳でも、地下墳墓がある訳でもない。地脈や植生を調べたが、死霊属性を強める様な要因は全くと言って良い程見当たらなかった。では、何故死霊属性の付加された魔力溜まりが発生する?」

「うーん?」

『ふむ?』


 言われてみたらそうだな。なんでだ?


「では、考えられる要因は何だと思うかね?」


 何か、ジャンが急に立ち上がって、ウロウロと歩き出したぞ。身振りもよりでかくなっていく。テンション上がりすぎだ。


「誰かわざとそうしてる」

「うむ! 我も初めはそう考えた。例えば、北のレイドス王国やベリオス王国の軍事作戦の一環であるとかな」

『その言い方だと、違ったのか?』

「そもそも、魔力溜まりを人工的に作り、さらに属性を付加するなど、不可能だ。研究している者は多かろうが、成功したという話は聞かん」

「なるほど」

「次に、我は魔力溜まりに何か共通点がないか調べてみた。そして、あることに気づいたのだよ!」


 ジャンがバッと振り返り、ビシーッとこちらを指差す。なんか、探偵が推理を披露している時みたいな感じだ。


「あること?」

「うむ。その前に、君らはこの近辺を回遊する浮遊島の存在は知っているかね?」


 知ってるも何も、バッチリ目撃したぞ。それどころか、上陸できないかチャレンジ済みだ。結局無理だったけど。


「この辺には、時折浮遊島から落下物が降ってくる。浮遊島上部に生えている植物であったり、岩石であったり、その時々でいろいろだな」

『その言い方だと、その落下物がアンデッド発生の原因なのか?』

「……君という奴は……。はぁ、そうだよ。死霊属性の魔力溜まりと、浮遊島からの落下物が落ちた位置が同じだったのだ」


 うわー、俺が先に結論を言ったら、テンションだだ下がりだよ。きっと、自分で発表したかったんだろうな。スッと椅子に座って、淡々と語り出したぞ。いや、これはこれでウザいな。


「で、浮遊島が怪しいと感じたので行ってみたら、何やかんやでダンジョンを発見したという訳だ」


 完全にやる気をなくしてしまった! まあ、静かになったからいいか。


『落下物に死霊属性が付いている理由は?』

「ダンジョンがアンデッドメインのダンジョンなのだ。そのせいか、浮遊島全体が死霊属性に包まれている。故に、落下物にも死霊属性がこびり付いているという訳だな」

「浮遊島はダンジョン?」

「それは違うな。空中に生まれたダンジョンコアが近くの浮遊島を取り込んだのか、偶然浮遊島の内部にダンジョンコアが発生したのか。我が知る限り浮遊島のダンジョンはあれだけだ」


 ダンジョンコアって、大地の上だけじゃなくて、そんな場所にも発生するんだな。空中に生み出されたコアとか、落っこちて割れちゃわないのか? いくらコアが障壁に守られているとはいえ、高高度から落ちたら無事じゃ済まないだろう。


「それはないさ。ダンジョンコアは不思議な力が働いているらしく、特殊な理由がない限り、生み出された地点から動くことがない。空中であれば浮いたままだし、海中でも水に流されるようなことはないのだ」 

「特殊な理由?」

「例えば、今回の様に移動する浮遊島にコアが存在する場合。大昔の記録だが、超巨大なゴーレムの内部にダンジョンコアが発生し、動くダンジョンと化したことがあるらしい。なぜそういう場合は例外となるのか、それは分からん」


 さすが混沌の神が直々に生み出す不思議物体。まだまだ謎が多いね。


「浮遊島にどうやって行った?」

「我ほどの魔術師になれば、色々方法はあるのだ」

『浮遊島はどこの国の物でもないのか?』


 さっきそんなことを言ってたよな? 俺たちが今いるクランゼル王国の管轄じゃないのか?


「あの浮遊島の回遊ルートが、ほんの僅かにレイドス王国、ベリオス王国にまたがっていてね、所有権を主張し合っているのだ。なので、まだどこの物でもないという訳だ。だからこそ、どの国も上陸部隊を送り込めず、ダンジョンの存在がばれていないのだがね」

「なるほど」

「しかし、厄介なことだよ。ダンジョンは危険だが、金の卵でもある。地上への危険が少ない浮遊島にダンジョンがあると分かれば、何としてでも手に入れようとするだろう。それこそ、軍事的な行動を起こしてでもな」

『それって、俺達が勝手に行ってもいいのか?』

「ばれなきゃ構わんさ」


 ばれたらやばいってことか?


「さて、改めて聞くが、依頼を受けるかね? 我と共に浮遊島のダンジョンに赴き、内部の探索を行う」

『探索はどのくらいまでと考えてるんだ? 攻略を目指すのか、他に目的があるのか』

「無論、目指すは攻略だ。我が攻略してダンジョンを消滅させてしまえば、国家間の火種を消し去ることになるからな」


 確かに、ダンジョンコアを破壊してダンジョンを消滅させれば、それを巡って戦争が起きることもないだろうな。


 え? 実はいい奴? そんな馬鹿な……!


「だが、難しそうな場合は、とある魔獣を捕獲して地上に戻る」

『魔獣の捕獲?』

「どんな?」

「その魔獣の名前は死霊喰らい。アンデッドでありながら、アンデッドを喰らう、脅威度Bの魔獣だ。今回の探索で攻略が出来なかったとしても、死霊喰らいを配下に加えれば、今後の攻略がはかどるからな」

『脅威度Bか』

「元々は死霊草のポーションを使い、攻略を進めるつもりだったのだが、君たちほどの手練れが手伝ってくれれば、ポーションなどより余程確実だ」

「腕が鳴る」


 うーん、どうするか。危険は危険だ。ただ、それに見合った価値はありそうだ。それに、浮遊島へ行けるっていうのがデカイ。


『どうする?』

(ダンジョン行きたい)


 だよな。俺もだよ。しかも、手つかずのダンジョンなんだろ? 浮遊島に連れて行ってもらえるのも大きい。フランと相談した結果、俺達は依頼を受けることにした。


「そうか! では、よろしく頼むぞ! ふはははははは! 楽しくなってきたではないか!」



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