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680 Side とある3人組 2


Side とある3人組 2


「もう! シビュラ様! あれだけ騒ぎを起こさないでほしいと言いましたのに!」

「いやー、まさかあんな騒ぎになるとは思わなくてねぇ」

「ここは我が国と違うのです! 平和ボケした国なのですから、中には魔獣と戦ったことがない人間もいるのですよ!」

「はぁ? そりゃあ本当かい?」

「本当ですわ。我が国のように対魔訓練を受けているわけではないのですから。そんなところでシビュラ様が威圧感を出せば……」

「いやいや、威圧なんてしてないぞ? 本当だ。なあビスコット」

「へい。屋台の娘とちょいと睨み合っただけですよ」

「……それでどうして、ああなるのですか……。私が少し目を離した隙に……」

「そういえば、何かを確認するとか言ってたよな? 何してたんだ?」

「有名な冒険者が食事をしているというので、軽く接触を試みましたの」

「へぇ? どんな奴だい?」

「ランクB冒険者、鉄爪のコルベルトですわ。挨拶して、軽く話をしただけですが」

「それで、お前の印象は?」

「そうですわね……。非常に社交的で誠実。依頼をするには好ましい人柄かと」

「冒険者っていうのは、欲深くて信義もなく、卑怯で愚かで弱き存在。だったかね?」

「何度聞いても酷いプロパガンダですわ。だったら、何故そんな冒険者を多数有するクランゼル王国がここまで栄えているというのでしょうか? 妄想と現実の区別もついていない馬鹿な上層部にこの都市を見せてやりたいですわ」

「それほどかい?」

「市場の大きさ、扱う品物の豊富さ。どちらも我が国の首都さえ超えていますわ。そこらの屋台の料理が、我が国の貴族料理並みですもの。冒険者の働きがやはり大きいようです。見たこともない冒険者を大したことがないと言い放つお馬鹿さんたちに、現実を見ろと言ってやりたいですね」

「だが、実際問題本物の冒険者を見たことがないんだ。国が言ってるんだからそうなんだろうって、信じちまうのも仕方ないんじゃ?」

「そう。ビスコットにしては珍しく鋭いことを言いましたわ!」

「珍しく……」

「問題は、国民だけではなく、騎士や兵士の中にもプロパガンダを信じ込んでいる者が増えている状況です」

「我が国こそが優良で優秀で、大陸を統べるに値する。冒険者などという野蛮な愚者に頼る他の劣等国は我が国に従うべきだって? くくく、南征公が言い出したんだったかね? 負けっぱなしの豚がよく言う」

「ですが、生まれた時からそう教育されては、疑うことさえ難しいのですわ。20年ほど前に兵士を集めることを目的に掲げられたプロパガンダですが、今では南部全域に広まってしまいましたから」

「そのせいでクランゼルを見下す風潮が加速して、南征公が軍部を抑えきれなくなってきたって話だが……。自業自得だろ」

「ですが、このまま南征公が勢いだけで戦を起こせば、我が国にどれだけの被害が出るか分かりません。今回の視察で、冒険者の力を見極めなくては」

「でもよ、最悪俺たちが出れば――」

「ビスコット!」

「う、うす」

「あたしらの理念を言ってみな」

「は! 赤き剣は民を守るためにのみ振るわれるべし! 誰にも侵されず、誰も侵さず! 我らが打ち砕くは魔と悪なり!」

「そうだ。あたしらの仕事は魔獣と賊から民を守ること。侵略なんて下らないことには関わらん。無論、クランゼルやベリオスが侵略してくれば話は別だがな。そこのところ、勘違いするんじゃないよ」

「へい。すいやせん」

「例外は、ゴルディシアへの派遣くらいだ」

「ですが、第六騎士団の動きが少々怪しいようですわ。どうも、南征公に協力している可能性があると」

「ちっ! あいつら! 一度潰してやったのに、まだ懲りてないのかい?」

「団長がシビュラ様に討ち取られ、その後代替わりしましたから」

「まあ、あそこはまだ手柄も少ねーから舐められがちですし、そもそも南部領が主戦場ですからねー。南征公の要請を断れないんじゃないですかい?」

「赤の騎士団が、権力者の私欲で動かされてどうするよ。嘆かわしい」

「第六――現朱炎騎士団は例の死霊術師によって大打撃を受けております。その名誉を挽回するためにも、打って出たい気持ちが強いようですわ」

「うちはともかく、他は大丈夫なんだろうね? 場合によっちゃ、一度締め付けをする必要があるよ」

「紅旗、緋眼は問題ないでしょう。茜雨は代替わりしたばかりですが、安定しているようです。血死騎士団は相変わらずですが、国外に出る気はなさそうです」

「つまり、朱炎のクソガキだけが問題か。まあ、いざとなったら潰せばいいか」

「そうですわね。あそこの団長は、シビュラ様と比べれば弱いですから」

「嘆かわしいもんだよ。前の団長は性格は腐っていたが、戦闘力は一級品だったのにねぇ」

「シビュラ様が満足できるクラスの人間、そうそう出てはきませんわ」

「そういう意味じゃ、今回の旅には期待してるんだが……。あんたが接触したっていう冒険者、腕はどうだったんだい?」

「私から見ても、相当な手練れかと。確実に勝てるかどうかは分かりませんね」

「なに? クリッカから見てそうなのかよ?」

「ええ。そうですわ。ビスコットなら勝てるかもしれませんが、楽勝とはいかないでしょう」

「ほう? そりゃあ、中々じゃないか。で? それでもランクBなんだね?」

「はい。まだ接触はできていませんが、その上にランクA、ランクSというランクがありますわ」

「クランゼルにはランクAや、元ランクAがゴロゴロしてるって話だったが……。そうだ、それこそあの屋台の獣人の娘! あれはどうなんだい?」

「姉御が楽しそうにしてましたからねぇ。まさか屋台の売り子の娘っ子があんな強いとは思いもよりませんでしたよ。正直、顔が引きつってなければよかったんですが」

「くくく。ありゃあ、上物だったよぉ。是非やり合ってみたいもんだ」

「シビュラ様がそこまで言うほどですか」

「ああ! 少なくとも朱炎のクソガキよりも楽しいだろうねぇ。間違いない。ありゃあ、ランクA冒険者って奴だろう?」

「なるほど、そりゃあ頷ける。冒険者っていうのは実力主義だって聞いてますし。この国に入ってから出会った、数少ない俺よりも強そうな相手ですから」

「うんうん。どうだいクリッカ?」

「……残念ながら、違いますわ。あの屋台にいて、獣人でまだ幼い娘。それは間違いなく、黒雷姫という異名持ちの冒険者のことでしょう。確かに強いとは言われているようですが、ランクはBですわ」

「……あれだけ強くてかい?」

「シビュラ様とビスコットの話を聞いた感じ、コルベルトという男よりも大分強いのでしょう。しかし、それでもBなのですわ」

「ま、まじかよ……。あ! それじゃあ、もう1人いたあのオッサン! あれはどうなんだ?」

「ああ、スープ屋の店主か。あれも震えるほど強そうだったよ。迫力では黒雷姫。でも、不気味さではスープ屋の親父だったね」

「スープ屋……。それは、竜膳屋という店ではありませんでしたか?」

「そうそう! そんな名前だった! ねえ姉御?」

「嘘か真か、竜を使ってるって話だったよ」

「では、そこの店主である竜狩りのフェルムスでしょう。元ランクA冒険者という話です」

「あれで、元?」

「はい」

「えーっと、つまり、現役のランクAとなったら、黒雷姫や竜狩りよりも強いってことなのか? いやいや、マジかよ?」

「くくく! こりゃあ、ますますランクA冒険者に会うのが楽しみになってきたねぇ!」

「お、俺はちょっと怖くなってきましたよ。劣等国どころか、人外魔境なんじゃ……」

「くれぐれも!くれぐれも、騒ぎは起こさないでくださいまし!」

「分かってる分かってる!」

「……はぁ。私たち、無事に国へ帰れるでしょうか……?」


こんどはイングランドの方からレビューいただきました。

いやー、読者さんがこんなにワールドワイドだとは……。驚きですね。

Thank you for the review from England


軽く風邪気味です。次回は30日更新でお願いします。

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― 新着の感想 ―
[一言] レイドス。やっぱり戦争に突入した大○○帝国を彷彿とするなあ……戦争に突入する前に偵察にいって 「この国やべぇ、絶対に敵対しちゃいけねえ」って意見を聞き入れられなかった件とかカブる
[良い点] 私が読んだ「なろう」の生まれ変わり系転生物の中でも5本の指に入ると思っています。 (他は本好きの下剋上、蜘蛛ですが何か、転生したらスライムでした、無職転生) 1000話を超えて続く作品だ…
[良い点] ひど良ランク詐欺だ。 同じ Bランクが聞いたら泣くぞ。
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