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593 噂の目的


 思いがけずカーナから情報を仕入れることができた俺たちは、セフテントに戻ってロブレンと合流を果たしていた。


 そこで、カーナからの情報も彼に伝える。


「あの商会が、レイドス王国と繋がりが? 信じられないな……」


 ロブレンも相当驚いていた。緋水薬の販売を行っているメッサー商会は、古くからある商会で、信用度の高い商会であるそうだ。


「裏を取る必要があるね」

「ん。でも、ロブレンは気付いてなかった? 病気が本当は流行ってないって」


 そうなのだ。俺たちが一番気になったのがそこだ。風土病の流行がデマであるなんて、少し調べたら誰にでも分かりそうなものだが、国内で気づいている人間はいないのだろうか?


「そうだね。そもそも、そんなもの調べる人間がいないんだよね」

「なんで?」

「だって、困ってる人間がいないから」


 緋水薬が足りていないと言われているものの、流通が全くないわけではない。ある程度の数は国内に出回っている。それでも、全員分には足りないと思われていたわけだが……。


「実際、風土病が流行していないのであれば、患者さん全員にきっちり行き渡っているだろうね。つまり、不足していると騒ぎ立てる人間はいないわけだ」

「ん」

「値段も、例年通りだし」


 さらに、流通を一手に取り仕切っているのはメッサー商会という中規模の商会である。噂の出所がメッサー商会であるならば、物流のおかしさを指摘する人間もいない。


 結局「緋水薬が足りていない」と囁かれているものの、それで被害を受けた人間は多くないわけだ。例年よりも緋水草を多く採取することになった、湖近辺の冒険者たちが苦労をしているくらいだろうか?


「でも、そんな噂を流す理由は?」

「さてねぇ。実は流行っていない病気が流行ったとデマを流し、緋水薬の値段を釣り上げるっていうなら分かるんだけど……。そんなことはしていない。だとすると、緋水薬そのものが目的なのかもしれない」

「どういうこと?」

「国内に販売したように偽装して、他の場所に持っていく。例えばレイドス王国なんかにね。目的は分からないけどさ」


 つまり、緋水薬の入手が目的の可能性が高いってことか。


「どうやって調査する?」

「そりゃあ、商会の関係者に聞き込みをするのが一番かな」


 だよな。できれば幹部級の話が聞きたい。


「その商会は、どこ?」

「本拠地は商業船団だ」


 工房も商会本部も、商業船団に居を構えているらしかった。


「アポもなしで突撃して、話を聞いてもらえるかどうかが問題だね」

「だいじょぶ」

「何か秘策でも?」

「ウィーナレーンの名前を出せばいい」


 俺もフランも、この国におけるウィーナレーンの影響力の凄まじさはもう理解している。


 ウィーナレーンの名前を出して、逆らえる相手がいるとは思えなかった。もうね、黄門様の印籠レベル?


 しかも、多少のことは揉み消すという、有り難くも恐ろしいお墨付きももらっているのだ。


 乱用するつもりはないが、こういう時こそ権力を使わないとね。


「ははは。そうだった。君はウィーナレーン様の依頼で動いているんだったね。じゃあ、その作戦で行こうか」

「ん」


 商業船団へは船で向かうつもりだったのだが、ウルシに走ってもらうことにした。その方が圧倒的に速いからだ。


 迷わなければ、だけど。


 湖と言ってもそのサイズは小国規模。方角を見失えば遭難することも普通にあり得る。実際、何らかのトラブルで帰還できない船が、年に何隻も出るそうだ。


ただ、今回は商業船団が比較的岸から近くにおり、道案内――今回は湖案内か? まあ、航路などに精通しているロブレンもいるので迷う心配もない。


「見えた」

「はは! 速いね! 凄いよ!」

「オンオン!」


 セフテントを出発して3時間ほどで、俺たちは商業船団を見つけることができていた。


 空を駆けるウルシの背で、ロブレンがはしゃいでいる。空を往くという経験が、思いの外気に入ったらしい。


 褒められてウルシもご機嫌だ。


「あの中央の船の少し後ろにある船。あそこに降りてくれるかな?」

「わかった。ウルシ」

「オン!」


 上から見ると分かりづらいが、そこは冒険者ギルドの船であった。空から降下してくるウルシを見て、甲板の冒険者たちが驚いている。


 中には武器を構える者もいたが、背に乗っているロブレンを見てすぐに騒ぎは収まった。


 降りたのがここでよかった。他の船だったら大騒ぎになっていただろう。


「じゃあ、最初はメッサー商会に向かうとしようか」


 ここからだと、商会の方が近いらしい。商業船団は乱雑に船が並んでいるように見えて、実はそれぞれの船の細かい配置が決まっているそうだ。


 それ故、詳しい人間であれば何がどこにあるのか、分かっているらしい。


「どの船?」

「あれだ。あの赤い旗の掲げられた船だ」


 意外と近くに見えるんだが、行くまでには結構遠回りする必要があった。まあ、船から船へと移動していくのだから仕方がない。時には船同士をつなぐ簡易吊り橋を渡り、小舟で船を移る。


「ウルシに乗っていったらすぐだよ?」

「ダメだよ。騒ぎになるから。さっきのでも、あとでギルマスが怖いのに」


 まあ、それは仕方ない。商業船団は町みたいなものだ。その上をウルシで飛ぶってことは、町中をウルシに乗って駆けまわるみたいなものだからな。


少々仕事が立て込んでおります。

次回更新は3/7予定です。

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― 新着の感想 ―
[良い点] アニメ化おめでとうございます [気になる点] 読み返してるのだけど、毎回593回だけすごく違和感。 ここまでウルシは男を乗せてこなかったし、フランが男と二人乗りする描写は初だと思うのだけど…
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