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56 コアルーム

 蜘蛛殲滅後。


 一行はダンジョンコアルームにやってきていた。


「あれが魔鉱石ですね」

「ほう。これほどの純度の魔鉱石ですか。凄まじいですね」

「お宝の山じゃねーか!」


 クラッドが目を輝かせて魔鉱石に駆け寄る。


「ぷっ」

「笑うな! 誰のせいだと思ってやがる!」

「命の恩人」

「ぐっ」

「命の代償」

「わ、わかってるっつーの!」


 クラッド君。フランの放った火魔術で髪が焼け野原になってしまったので、髪の毛を全部剃り落としたのだ。短剣で四苦八苦しながら剃ったせいで所々剃り残しがあるその頭は、何度見ても面白い。実はグレーター・ヒールを使えば治せたことは秘密だ。


「ぷぷっ」

「くそっ」


 アマンダもフランも、見るたびに笑いを堪えようとして失敗している。


「はいはい。そこまでにしてくださいアマンダ様。まずは魔鉱石の回収をしてしまいますよ」

「了解」

「では、皆このアイテム袋を使う様に」

「ん」


 しかし、量が多いな。コアルームが高純度の魔鉱石インゴットで埋め尽くされているし。魔鉱石って、結構貴重な物だろ? たしか、武器を作るときに役立つはずだ。


「分かっていると思うが、ここは部外秘だぞ。言いふらせば、誓約ですぐばれる。ギルドだけではなく国からも目を付けられることになるから、気を付けることだ」

「我らは許可があったので問題ないが、部外者が入り込もうとすれば、入り口の結界ですぐばれる」

「フランちゃんも、気を付けた方がいいわよ? ギルマスがうるさいから」

「なんでそこまで?」

「この魔鉱石の量、ちょっと多すぎると思わない?」

「そうなの?」

「そうなのよ。ダンジョンコアにもそれぞれ特性があって、同じものを生み出すのにかかる魔力が違うの。それで、このダンジョンでは、他ではありえないくらい少ない魔力で、高純度の魔鉱石が生み出せるってわけ」


 なるほど。だからこそ、普段は開放してないんだな。


 魔鉱石を詰め終わったら、クルスがコアの設定を見直し始めた。やはり、リポップにはトラップ・スパイダーの設定しかなかったらしい。


「どうするのですクルス殿。トリック・スパイダーを殲滅するのですか?」

「だとしても、1度報告に戻らねば」


 かなり数を減らしたが、ダンジョン内のトリック・スパイダーを全滅させたわけじゃない。このまま放っておけば、またトリック・スパイダーが繁殖を始めるだろう。トリックスター・スパイダーがまだいる可能性もある。そうなれば、ダンジョンの難易度が上がってしまい、魔鉱石の回収が難しくなる。


 だが、良い点もある。トラップ・スパイダーに比べ、トリック・スパイダーの素材の方が、高価で有用なのだ。それが定期的に回収できるというのは、悪くない話だ。しかも、上位種のトリック・スパイダーからは、より多くの魔力が得られる。魔鉱石の生産にも良い影響があるだろう。


「まあ、ギルドの判断に任せれば良いんじゃないかしら?」

「そうですね。あの人骨の報告もしなくてはなりませんし」


 実は、蜘蛛の群れを殲滅した後、あの広間で真新しい人骨を発見していた。しかも、10人近くのものを。どの骨も、ここ1、2ヶ月内に死亡したものだと思われた。


 クルスの話ではここ数年、このダンジョンで冒険者の死亡は確認されていないらしい。


 では、あの大量の人骨はどこから来たのか。このダンジョンの入り口にある侵入者感知結界は、結界屋という異名を持つ、ランクA冒険者が張った物らしい。それがある以上、人が勝手に入り込むことは難しいはずなのだが……。うーん、謎である。


「さて、帰還しましょう」



 帰りの道中は、特に問題は起きなかった。フランがアマンダとの模擬戦で叩きのめされたくらいか。


 あと、模擬戦には途中からウルシも加わった。まあ、揃ってアマンダに叩きのめされていたが。連携は大分向上したようだ。最後は、アマンダも結構驚いていたよな。


 ウルシの戦闘法は、かなり幅があって汎用性が高そうだ。まずは魔術。闇魔術と毒魔術を使いこなすので、直接攻撃、搦め手、どちらでも活躍できる。また、牙闘技という戦技を身に着けており、直接攻撃も強かった。


 そして、特に恐ろしいのが影渡りだろう。悪魔が使っていた奇襲攻撃だが、ウルシはそれをより使いこなす。なんせ、相手の影の中から本体を晒さずに闇魔術で攻撃をしたり、フランの影を利用して意表を突いた転移を行ったりと、実に嫌らしいのだ。転移できる距離は短めだが、戦闘では問題ないだろう。


 あの悪魔がこれくらい魔術を使いこなしてたら、俺達はほうほうの体で逃げ出すしかなかっただろうな。


 あと、訓練に付き合ったお礼として、〈名付け〉に関して教えてもらえた。ウルシの進化の切っ掛けは、間違いなく名付けだろうし。だが、以前に俺とフランは互いに名前を付け合っている。その時に何もなかったのは何故か?


 それも、アマンダの説明で何となく分かった。


 名付けと言うのは、上位者が配下や眷属に名前を与える行為だ。単に名前を付けるだけではなく、それにより魂の繋がりを強化する、契約に近い面もあるらしい。


 名前を付けてもらった者は、潜在能力が解放されたり、ステータスがアップしたりと、名付け相手の格によって様々な特典がある。


 俺とフランはどちらが上位者と言う訳ではなかったし、名前を付け合っただけなので、儀式としての名付けと言う行為にはならなかったようだ。


 ウルシの場合は潜在能力が解放され、進化したのだろう。そして、暴走するほどの過剰な魔力を受け入れる器を獲得したという訳だ。あそこで名付けを後回しにしてたら? 多分暴走して、アマンダに討伐されて終わっていただろう。すまんなウルシ。結構ピンチだった。


 あと、一番知りたかった、ウルフ系魔獣が眷属召喚のリストに載っていた理由は、全然わからなかった。多少の推論は立つが、情報が足りなすぎる。


 魔術についても知りたいし、また資料室で調べ物をしてみるか? ただ、フランがああいう場所でジッとしてるの苦手なんだよな。


 食べ物で釣れば、何とかなるかね? カレー食べ放題とか言えば、大抵のことはやり遂げそうだし。


 うん、最近さらに食べる量が増えてきたんだよな。このまま食いしん坊キャラの道を驀進しなければいいんだが……。いや、俺が食べさせる量を減らせばいいんだけどさ。


 あの目で見つめられると、弱いんだよね。今はウルシとコンビで、ウルウルした瞳が二倍だしな~。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 「結界屋」の設定この頃からあったんだな。 [一言] 投稿お疲れ様です。 読み返してもやっぱり面白いですね。
[良い点] 読み返して初めて結界屋が既に登場してた事に驚きです!!!本当に凄い!!! 改めて全話、読み返して他にどんな伏線が見つかるか楽しみです。
[良い点] 読み返していたら「結界屋というランクA冒険者」の記述を発見! 二つ名が被ることはまあ無いだろうから、あの人なんだろう。 こんな序盤から設定はあったんですね^^
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