表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
536/1337

534 名所

 モドキを倒した翌日。


 商業船団を離れた俺たちは、一路北東を目指していた。魔術学院に一直線のルートである。


『まさか成り行きで商業船団に関わるとは思ってなかったな』

「ん。凄かった」

「オン!」

『俺もあれだけの数の船が一ヶ所に固まってるのは初めて見たよ』


 出立する時に改めてヴィヴィアン湖を見たが、やはり大きかった。もしかしたら本当に琵琶湖を遥かに超えているかもしれん。


 まあ、本物の琵琶湖を見たことがないので、実際はどうなのか分からないが。鳥になるコンテストの時に、チョコチョコと全景が映っているのを見たことはあるんだが……。


 その後は、ウルシの背に乗りながら空の旅だ。ベリオス王国は山がちな国であるので、それなりに高低差があり、少し進むだけで風景がガラリと変わるのが楽しかった。


「……?」


 フランが遥か上空にある雲の彼方をじっと見つめている。


『どうした?』

「あれ、なに?」

『あれ? ああ、ついにきたか! あそこは浮遊島だよ』

「なんか変」


 フランが発見したのは、普通の雲よりもさらに上空に佇む、巨大な雲の塊だ。いや、その中に浮かぶ、島の影を見ているのだろう。


「浮遊島」


 死霊術師のジャンと共に探索した、あの浮遊島と同じものである。


 ただし、こちらはダンジョンではないが。アレッサの冒険者ギルドで、バッチリ調べてきてある。


「じゃあ、強い魔獣はいない?」

『いんや、そんなことはない。あそこはS級魔境、天龍の寝床。この世で最強クラスである、ランクA魔獣が住んでいる世界でトップクラスに危険な場所だよ』


 そうなのだ。むしろダンジョンよりも危険な場所であると言えた。


 どういう原理かは分からないが、あの浮遊島からは常に大量の水が滝となって流れ落ちている。


 島に到達した者の話では、幅100メートルほどもある川が島の端から大地に向かってそのまま落下していくらしい。だが、それらの水が大地に届くことはない。


 その前に、水蒸気となって霧散してしまうのだ。地球にもエンジェルフォールという滝つぼがない滝が有名だが、それと同じ原理なのだろう。


 あの浮遊島を取り巻く雲は、その滝が雲になったことで生み出されているのである。


「天龍? それがいる?」

『ああ。あの島に何頭かが住んでるそうだ』


 だが、その天龍たちがこの国に被害を与えたことはほとんどない。そもそも、地上では生きられないらしく、雲よりも下には下りてこないのだ。


 天龍の寝床に侵入した冒険者との戦闘時、天龍が放ったブレスが大地に降り注ぎ、街道を破壊したことがある程度だという。


『過去に討伐された記録がほとんどなくて、実際はどこまで強いのかは分からんらしいが』


 脅威度Aと言われているのは、他の龍種が脅威度Aにランクされているからだった。同じ龍だし、とりあえずAにしておけというわけだ。


 天龍の寝床には、ランクA以上の冒険者しか入ることを許されない。まあ、半分以上は島への上陸前に、雲海に生息する魔獣に叩き落とされるらしいが。


 そして上陸したとしても、大半の冒険者は天龍に挑まない。彼らの目的は、浮遊島にいくつか存在する巣穴だという。


 その巣穴で、抜け落ちた鱗や、生え変わった髭などを採取して、逃げ戻る。それが冒険者たちの目的だ。


 複数の天龍に襲われる可能性があるうえ、いざという時の逃げ場もない。はっきり言って、冒険者側に圧倒的に不利な場所だろう。そこで天龍たちと戦うなど、自殺行為でしかないのだ。


『運がいいと、雲の外を飛ぶ天龍が見れるそうだぞ』

「ほんと?」

『ああ』

「どんな姿なの?」

『体長200メートルくらいの細長い蛇みたいな姿らしい』


 そう。龍というのはドラゴンと違って、東洋風の龍であるのだ。竜を遥かに超える魔力を持っており、竜が戦士タイプとするなら、龍は魔術&スキルタイプと言えた。


 龍と竜。その生態は大きく違うらしい。


『金色の鱗をしていて、晴れた日はピカピカ光って見えるんだと』

「ん……見えない」

「オン……」

『まあ、本当に極稀だそうだからな。この国の東部にいる間はどこからでもあの島は見えるっていうから、運がよければ見れるさ』

「ん」


 龍が見えないか、天龍の寝床を見上げつつ進んでいく。ウルシも一緒に見上げているせいで進む速度が少し遅くなったうえ、時おり高度の維持に失敗してフランが落ちそうになったりしていた。しかも天龍は見られなかったし。


『お、町が見えたぞ』

「あそこが魔術学院? おっきい」

『違う違う。魔術学院は奥の塔があるあたりだ。いや、まあそれでもデカいが。手前にあるのは、普通に都市だよ』


 魔術学院を囲むように、町が発達したらしい。学院都市なんて呼ばれ方もするそうだ。


『あれが魔術学院を擁する都市、レディブルーだ』

「ぶるー? 青くないよ?」

『青の淑女。つまり、世界最強の大海魔術師であるハイエルフのウィーナレーンを称えた名前ってことだよ』

「なるほど」


やばいです。この一ヶ月くらいでレビューが超増えました。

やはり、あとがきにレビューのお礼の効果なんでしょうかね。

ともかく、拙作を評価してくださりありがとうございます。励みになります。


もう1つテンション上がる話が!

なんと新木伸先生が転剣を読んで下さっているそうです。どっかで呟いてくれたらしいですね。

私はSNS一切やらないし見ないんで、全然知らなかったんですけど、知人が教えてくれました。

中学生の時から読ませていただいていた作家さんに自分の事を呟かれるとは……。人生何があるか分かりませんねwww

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点]  こんにちはユウ先生  初レビューにして久々に1話から読み直している者です。  相変わらず(とは言っても書かれていることは変わっていないので当然なのですが)とても面白くて、ワクワクして………
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ