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531 ダゴール


 ウルシに叩きのめされた冒険者たちの肉体と精神の立て直しに少し時間がかかりそうだということで、休憩を挟むこととなった。


 この後は、ウルシと希望者の模擬戦などが行われる予定だ。下級冒険者だけではなく、上位の冒険者にもその力を見せつけるのが狙いである。


 試験官の依頼とは少し外れてしまうが、追加報酬を出してくれるというし、ウルシがやる気満々なのだ。どうやら、さっきフランによくやったと褒められたことで味をしめたらしい。


 ただ、フランは全く疲れていないので暇そうである。それが分かったのか、ある冒険者がフランに声をかけてきた。


「某、ダゴールというランクC冒険者でござる。フラン殿、一手お手合わせ願えないだろうか?」


 フランがチラリとギルマスたちを見ると、むしろ嬉し気にうなずいている。


「いいぞ。むしろ、野次馬共も全員ぶっ飛ばすくらいしてくれて構わん」

「わかった。やる」

「おお! 忝い! 胸を借りることになるだろうが、失望させぬように精一杯努めさせていただこう!」


 武人タイプだな。あと、この名前。受験者が槍の師匠として名前を出していた冒険者だ。実際、それなりに槍の技術が高い。槍聖術、槍聖技を持ち、銛術、投擲などのレベルも高かった。さらに、不思議なスキルとして『水切り』という物がある。どうも攻撃を水中に放つ際、水の抵抗を弱めるというものであるようだ。やはり湖特化型だ。


「では、お願い致す!」

「ん!」

「しいいゃあぁ!」


 初撃から殺す気の攻撃だ。それを俺で弾きながら、フランは笑った。ダゴールも笑っている。


「はっはっは! 凄まじい!」

「いい一撃」


 そして、激しい攻防が開始される。ダゴールは本気で、フランは様子見という違いはあるものの、両者ともに楽しそうだ。


 また、時おりヒヤッとする場面もあった。それは、ダゴールの使う槍の形状にある。先端に銛のような大きな返しが付いているので、突いた後に引くと、小鎌のように扱うことも可能なのだ。


 この武器特有のこの動きは今までに見たことはなく、何度かフランに掠ることがあった。


「面白い」

「おお! 黒雷姫殿にそう言っていただけるとは、光栄の極み!」


 すると、ダゴールが戦闘しながら詠唱をし始める。動きながら魔術を使うとは、やはりこいつはかなりの手練れだな! まだレベル等の関係でBには至っていないが、スキルの鍛錬を日々続けているのだろう。その習熟度は、かなりのものだ。


「はぁ! アクア・クリエイト!」


 使ったのは一番簡単な水魔術だが、高速戦闘中には中々馬鹿にならない。顔にかかれば動きが阻害されるし、足を取られる可能性もある。


 今回はフランが躱したが、さらに楽し気なのは気のせいではないだろう。ちゃんと強い相手との模擬戦だからな。


(師匠、炎の結界張って)

『おいおい、火炎で決めるのかよ?』

(ん。ここで使われるって思ってないはず。わたしもお返しする)

『了解……はぁ!』

「うおぉ!」

「きゃああ!」

「ぎゃぁぁ!」

「火、火魔術をここで……熱くない?」


 フランを中心に一気に広まった炎のヴェールに飲み込まれて、周囲の冒険者たちが悲鳴を上げながら恐怖の表情を浮かべた。だがすぐに、熱くないことに戸惑い始める。


 俺が使ったのは火炎魔術、フレイムバリアであった。これ自体には攻撃力はなく、触っても熱くはない。


 本来は術者を包み込み、火炎を無効化する魔術だった。だが、今の俺の制御力にかかれば、この術を変形させて部屋をすっぽり覆う程度は可能である。


『よしよし、スペリオルスキル化した魔力統制の成果が出ているな!』

「ん!」


 そうなのだ。しばらく死に能力と化していたスペリオルスキル化。これによって魔力統制をSPスキルに変化させたのである。これはアナウンスさんの助言であった。


 俺が眠っている時、フランがアナウンスさんにポイントの使い方を相談し、このスキルの強化を教えてもらっていたのである。


 より俺の魔力の制御が上昇するメリットだけではなく、魔力操作を育てれば、魔力統制を再度取得し易いというメリットもあった。当然、共有スキルとしての魔力統制も魔狼の平原で既に再ゲット済みだ。まあ、魔力操作を自己進化ポイント使って育てたので、結構ポイントを消費したけどね。


「ば、馬鹿な……。これほどの術……! 魔術師としても一流? は、はは、目が節穴なのはあたしも一緒だった様だねぇ」


 この凄さを理解できているのは純粋な魔術師であるジル婆さんだけらしい。地味だから仕方ないが。その顔は蒼白だ。


「これで終わり! はぁ!」

「やはり無詠唱でござるか! く、これはぁ!」


 フレア・インパルス。まあ、広範囲に爆炎をまき散らす術だな。バースト・フレイムの上位魔術である。殺傷能力は低いが、爆音と閃光が追加され、多人数制圧力は高い。


 炎が晴れた後、室内にはフラン以外に立っている人間はいなかった。


 ギルマスたちまで、煤塗れで呻いている。


『……やり過ぎだ』

「でも、野次馬もぶっ飛ばせって言ってた」

『ぶっ飛ばせっていうか、強さを見せつけろって言ってただけだが。いや、だったらこれでいいのか?』


 強さを見せつけるのであれば、十分だろうからな。



 その後、そのまま流れで休憩となっていた。ダメージは大したことないはずなんだが、やはりやり過ぎだったらしい。


 ウルシショックから立ち直りかけていた参加者の心を再びへし折り、立ち直るのに時間がかかりそうだったのだ。


「いやー、凄い魔術だったね」

「うむ。感服でござる」


 野次馬をしていたロブレンや、当事者であるダゴールは全く平気そうなんだがな。他にも数人、ピンピンしている冒険者たちとともにフランは世間話をしている。


 力を示したことで、一気に受け入れられたらしい。


 そんな中、訓練室に1人の冒険者が駆け込んできた。大分慌てているようだ。


「大変だ! 誰か……え? めっちゃいる!」


ご感想で指摘していただいた、515話の矛盾を修正したました。

この時点で、貴族の令嬢であるとは明確に分かっていない形になります。


またまたまたまたレビュー頂いちゃいました。

ここでレビューのお礼をする → お? レビューなんてあるのか? 書いてみるべ → レビュー増える。またお礼。

というループなんでしょうか?

ともかく、私は褒められて伸びるタイプなので、本当に嬉しいです。

ありがとうございます!

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― 新着の感想 ―
十、二十人ぐらいがせいぜいだと思って誰かぁっ‼︎って駆け込んできたらそこら中に人がいるのおもろいな
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