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49 教えてアマンダ先生 ~いわゆる説明回~

 模擬戦で、アマンダに敗北してから1時間後。


 目を覚ましたフランは、アマンダと向かい合って座っていた。やりすぎたことを謝るアマンダが、何かお詫びをしたいと言うので、知りたい情報のいくつかをご教授願うことにしたのだ。


 訓練はフランにも得る物が多かったし、寝てる間の見張りはアマンダが代わってくれたので、そこまで謝る必要はないと思うんだがな。むしろ、こっちが得したんじゃないか?


「じゃあ、まずは戦技について説明するわね」

「おねがい」

「とは言え、私は理論派じゃないし、全部は無理よ?」

「それでいい」


 何も知らない俺たちには、それでも貴重な情報だからな。


「戦闘術は剣術みたいな、武器を上手く扱うためのスキルね。技術ともいえる。戦技っていうのは、剣技や拳闘技、私の鞭技みたいな、魔力を消費して発動する必殺技のことよ。それは知ってる?」

「ん。知ってる」


 剣技を覚えるには剣術が必須で、弓技を覚えるには弓術が必要となる。そして、対となる戦闘術よりも高レベルの戦技は覚えられない。つまり、剣術Lv5なら、剣技Lv5までしか覚えられないらしい。


「じゃあ、どうやれば戦技を覚えられるかだけど……」

「ん」

「詳しいことはよく分かってないわね」

「え?」

「いえ、修行法は分かってるのよ? でも、詳しい理屈とかは、全然分からないわ。もしかしたら、そういうのを研究してる人に訊けば、分かるかもしれないけど」

「修行法だけで良い」

「冒険者にしたらそうよね。ただ、これから話すことは気力操作、魔力操作が前提条件よ? こっちの修行は……。正直知らないのよね。私ってば、一応ハーフエルフでしょ? 物心ついた時には、両方できてたのよ。まあ、フランちゃんは問題ないだろうし。ここは省くわよ?」

「ん。構わない」

「戦技の修行法は、魔力を武器や全身に流すイメージをしながら、武器を振るい続けるの。すると、どこかで戦技を閃くような一瞬が訪れる。その閃きに逆らわずに、身を任せると、戦技が発動するわ。1回発動すると、スキルとして身に付くから、以降は問題なく繰り出せるようになるってわけ。フランちゃんも戦技を使えるんだし、覚えてない?」

「?」

「まあ、フランちゃんは小さいし。戦技を覚えたのはもっと昔でしょ? 忘れちゃってるのかもね。でもその年で戦技を使えるなんて、本当に天才的よね」

 

 危ない。フランが子供で助かったな。ただ、戦技の修行法に関してはめどがついた。これで、剣術だけではなく、剣技についての修行もさせてやれそうだな。


「一度戦技を覚えたら、あとは使い続けてスキルレベルを上げていけば、レベルが上がるたびに新しい戦技を覚えられるから」


 Lv1で習得するのが1番難しそうだな。


「じゃあ、次は魔術について、説明するわね?」

「ん」

「魔術には、土水火風の基本属性があるわ。そして、それらの上位に、大地、大海、火炎、暴風があるの」


 基本4属性は、既に使えるな。


「あとは、複合属性と呼ばれる魔術があるわね。雷鳴、氷雪、樹木、溶鉄、砂塵、生命の6つがあるわ」

「複合?」

「ええ。2種類の基本属性をレベルアップさせていくと、取得できる場合があるわ。樹木なら、水と土ね」

「習得できる場合がある? できない場合もある?」

「じゃあ、そこから説明しましょう」


 魔術の習得は、師匠に弟子入りして修行を行ったり、道具を使って覚えたりと、色々あるらしい。


 道具は置いておいて、アマンダは修行での習得方法を教えてくれた。ただ、その修行法が凄い。何が凄いかって、某狩人×狩人に出てきた、鎖野郎の修行に酷似していたのだ。


 水魔術であれば、毎日水に触れ、水を飲み、水に浸かり、水のイメージを体と精神に叩き込む。そして、夢にまで水が出てくるようになったころ、水魔術を習得できるのだという。


 風であれば風を浴び、強風の中を裸で駆けまわったり。土であれば、土に埋まってみたり、石をかじってみたりするらしい。まあ、そこまで行き過ぎた修行をするのは、一部の魔術師たちだけだと言うが。アマンダの目が一瞬だけ泳いだのを見逃してないぜ? 風の修行ね……。


 ただ、剣術などと違って、絶対に習得できる保証はないらしい。才能の壁が存在するからだ。剣術などは、個人差はあっても、努力すればするだけ上達する。だが、魔術の場合、才能が無ければ習得することさえできないのだ。


「才能?」

「ええ。各属性との相性と言ってもいいかもね。火属性の才能がない者は、どれだけ努力しても火魔術は覚えられない」


 それって、才能が無かったら、修行が無駄になるってことか? 火に触れて火傷しても、何の成果もなしとか、最悪すぎるだろ。


「今のところ、才能の有無を調べる方法はないわ。ただ、全くどの才能もない人間はいないと思うし、頑張ればどれかは習得できると思うけどね」

「努力次第」

「そういうこと。因みに私は火の修行もしたけど、会得できなかったわね。風は才能があったみたいで、1週間くらいで手に入ったんだけど」

「なるほど」

「中には生後間もない頃から魔術を使える様な、天才もいるらしいわよ? っていうか、フランちゃんもその口かもね」

「ん?」

「それも覚えてないのね。まあいいわ。じゃあ、複合属性の話に戻るけど。これを習得するためには、2つの問題点があるの」

「まずは、2つの属性を習得できるか」

「そう。そして、複合属性に対する才能があるか」


 そりゃあ、複合属性がレアなはずだ。今までだって、樹木魔術以外に複合属性を見たことがないし。しかも、樹木属性を持っていたのはギルマスとフリーオン。2人ともウッドエルフだ。種族的に樹木魔術の才能があると思われる。だとすると、普通にはお目にかかったことがないという事になるな。


「だから複合属性はとっても珍しいの」


 フランの場合、才能はどうなんだろう。俺によって与えられた魔術は、問題なく使えている。基本4属性に、闇や回復も。だとすると、スキル共有によって与えられた魔術スキルに、才能は関係ないのかもな。いくらなんでも、基本4属性全ての才能があるとは思えないし。


「次は、その他の属性について説明するわ」

「闇とか回復」

「その通り。まずは光と闇ね」


 光と闇は、基本4属性には含まれない属性だ。修行法は4属性と変わらないが、才能の保有者は圧倒的に少ないらしい。


 基本4属性→複合属性→光闇の順だ。なんと、複合属性よりも珍しいとか、どんだけレアなんだよ。悪魔から取得できたのは、本当に運が良かったな。


「あと、光と闇には、派生属性っていうのがあるわ。光の浄化、幻影。闇の毒、死霊の属性ね」


 光の才能がある者は、もれなく幻影と浄化。闇の才能を持っていれば、毒と死霊の才能がほぼ確実に付いてくるので、研究者の間ではそれぞれの派生属性や、下位属性なのではと言われているらしい。また、派生属性の才能を個別に持っていることもあるので、毒の才能があるからと言って、闇の才能があるとは限らないそうだ。


 しかも、毒や浄化にも、上位属性である死毒や聖浄があるらしい。魔術の属性多すぎだろう。


「それ以外の属性は、特殊属性があるわね」


 特殊属性は、回復、補助、召喚、契約、時空、月光、精霊、鍛冶、無属等々がある。補助や回復はそこそこ使い手がいるらしいが、時空や月光になると、光闇以上に稀有なんだと。


「私が知ってるのは、それくらいだけど、世界を見れば他にもたくさんの特殊属性があると思うわ。魔獣の固有属性なんかもあるらしいし」

「例えば?」

「噂だと、竜だけが使える魔法とか、邪人だけが使える魔法もあるらしいわね。人類と魔獣を比べたら、魔獣の方が魔術を扱える個体数が圧倒的に多いし」

「なんで?」

「そもそも魔獣って、人類以上に日常的に魔力を使ってるの。城よりも大きい魔獣とか、魔力で肉体を強化してないと、あっと言う間に潰れて死んじゃうのよ? 人間が呼吸するのと同じくらい、当たり前に魔力を扱えるんでしょうね。だから、魔獣は人間と違って、魔力操作が無くても魔術を使えるのよ。多分、魔石が関係してるんじゃないかって言われてるわ。勿論、魔力操作がある方が、効率はいいんでしょうけど」

「なるほど」

「戦技も同じ。気力操作と魔力操作って、肉体の内外の差はあっても、魔力を操るためのスキルじゃない? だから魔獣は、気力操作がなくても、戦技みたいな現象を簡単に起こせるのよ」


 振動牙とかは、その口なんだろうか?


「そんなだから、魔獣には複合属性とか、光闇属性を使う個体も結構多いわ。人類よりも才能があるってことでしょうね」


 そう言えば、1つ気になったことがある。


「闇魔術は、悪い人が使う魔術?」


 悪魔が使ってたし。毒や死霊なんて、どう見ても悪役だ。俺だったら、初対面の死霊魔術使いに、気を許したりはしないだろう。絶対に悪人だし。いや、イメージ的にね。


「それはないわね。まあ、魔獣が使うこともあるし、一般人にはそう思っている人もいるかもしれないけど。冒険者にしてみたら、有用な魔術と言う認識でしかないわね。死霊魔術なんかあると、ダンジョン探索ではとても役に立つわよ?」


 良かった。暗黒魔術を使うのに、問題はないみたいだ。暗黒強化まで取得して死にスキルとか、目も当てられんからな。


 最後に、複合属性の組み合わせを聞いてみた。


 水+土=樹木。水+風=氷雪。水+火=生命。

 風+火=雷鳴。風+土=砂塵。土+火=溶鉄。


 という組み合わせだ。


 光闇や特殊属性での複合属性は、未だに確認されていないらしい。


「ま、私が知らないだけかもしれないけどね」

「複合属性、欲しい」

「フランちゃんはさっき土と風を使ってたし、火も得意なんでしょ? だったら、雷鳴、砂塵、溶鉄は狙えるかもね」

「ん。頑張る」


 よし、フランのご要望である。是非にもかなえなければ!


 複合属性を吸収か、自分で習得するかだな。火魔術をLv10にしたら火炎魔術が習得できたし、魔術のレベルを上げていけば、複合属性が生えてくる可能性も高い。


『今だと……火の次に高いのは風か』


 ゴブリンの巣で、アーミー・ビートルから風魔術Lv3を吸収しまくったからな。やはり、吸収するスキルレベルが高い方が効率が良いみたいだ。


 ゴブリンたちからスキルLv1の剣術を奪い続けた時よりも、蟲どもからスキルLv3の風魔術をいただいた時の方が、圧倒的にスキルのレベルアップが早かった。


『どうするか……レベル、上げちゃうか?』


 自己進化ポイントは47残っている。剣術のスペリオル化実験をするには、28残ってればいいんだし。


『どうする?』

(どうしよう?)


 という事で、ポイントを6消費してレベルを上げてしまったのでした。ちゃんと雷鳴属性がゲットできたし、後悔はしていない。暴風属性や風術師の称号も手に入ったしな。


(はやく使いたい)

『ここじゃダメだ。俺たち、複合属性は持ってない体でアマンダさんから話を聞いたんだぞ。昨日の今日で、いきなり使えるようになったりしたらまずい』

(分かった……)

『アレッサに戻ったら、実験しよう。な?』

「ん」



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[一言] 風の修行について詳しく( ゜д゜)クワッ
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