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48 ちょいと揉まれてしまいました

総合評価30000pt達成しました。

皆さんの応援のおかげです!

「はあぁぁ!」

「ふぃ!」

『あぶな! 今のまじでやばいぞ!』


 直前までフランがいた場所を、アマンダの鞭が薙ぎ払う。


 ドゴォ!


 あれが鞭の威力かよ! まるで巨大な戦槌でも叩きつけたみたいに、地面が陥没してやがる。


「あはははは! いいわよフランちゃん!」

「……っ!」


 完全にアマンダのペースだった。そもそも、その超絶鞭捌きに阻まれて、フランは近づくことさえできていなかった。


 さすがAランク冒険者だな。もしかしたらいい勝負ができるかもしれないなんて、舐めたことを思ってたよ。


『鞭がここまで厄介だとは』


 当たれば即アンチデス発動な上、どんな角度からも襲ってくる。変幻自在、千変万化。時には激しく打ち、時には岩さえ切り裂き、時には音もなく忍び寄る。はっきり言って、フランがここまで倒されていないのが不思議なほどだ。


『大丈夫か?』

(師匠、手出し無用)

『分かってるって』

(ん! 絶対一発入れる)

『おう、がんばれ』


 まあ、高すぎる目標だろうが。何せ、アマンダは開始位置から動いてさえいないのだ。


 鞭だけでも無双状態なのに、アマンダの職業は嵐闘士。風魔術の上位である暴風魔術まで使いこなす。しかし、ここまで全く魔術を使っていないな。使う必要がないってことか。


 魔法使いスキルで魔力を観察していても、全く反応がないしな。魔術どころか、鞭技さえ使っていないのだから、空恐ろしいぜ。


 ただ、フランだって並じゃない。次第に鞭の動きに慣れてきたのだろう。アマンダとの距離が詰まってきた。


「いま!」

「甘い!」

「予測済み」

「む! やるわね」


 今の惜しかったんじゃないか? もうちょっとで剣が届く位置だったぞ。


 そして、5分程攻防を繰り返し、ついにアマンダの脚を使わせることに成功した。フランの放つ殺気を感じ取ったのか、後ろに飛んで距離をとったのだ。


「ごめんなさい。甘いのは私だったわね」

「ん」

「……しっ!」

「あぶ」

「あら、初見で避けられたのは久しぶりね」


 鞭が蛇の様にうねると、フランめがけて飛びかかったように見えた。本気で蛇みたいな動きだな。今の技からは魔力の流れが感じられた。多分、鞭技なのだろう。


 そして、さらに激しさを増す攻防。フランの全身には大小の傷が刻まれている。魔力を帯びた鞭技の威力は凄まじく、ギリギリでかわすだけでは、魔力や風圧でダメージを貰ってしまうのだ。


 それでも、俺はあまり心配していない。実は、初めて会った日から、俺達はアマンダについて少し調べてみたのだ。分かったことは、アマンダが超お人好しの善人であるという事だった。


 まず、アマンダは30年以上孤児院を経営している。なんと、現在のアレッサにはその孤児院の出身者が500人近くおり、多くの人から慕われていた。


 なんでも昔のアレッサは、俺たちが今いるダンジョンを攻略しようとする冒険者で、今以上に賑わっていたらしい。その分、冒険者の両親に先立たれた孤児も多く、治安が荒れていたとか。それを改善し、子供に救いの手を差し伸べたのが、弱冠20歳、Dランク冒険者のアマンダだった。


 私財をなげうち、孤児院を建て、孤児を拾ってきては教育し、育て上げていったという。今では町の人々の手助けもあり孤児院の経営は順調だが、当時は苦しかったと笑顔で語るものも多かった。


 さらに子供の守護者と言う称号だが。幼い子供を多く救い、慕われていないといけない上、称号に相応しくない行動をすると失われてしまうのだという。


 そんな称号を持つアマンダは、紛れもなく善人で、子供であるフランの味方だろう。


 模擬戦で怪我を負わせるのはいいのかという話だが、互いに納得していれば平気なのではないだろうか。もしくは、悪意が無ければとかかも知れないな。


「はっ!」

「くぅっ……」


 とは言え、ここまで激しいとさすがに心配になってきた。


 フランは次第に防戦一方になっていく。あれ? このままだと、本当に不味いんじゃ? アンチデスは即死を防いでくれるが、絶対ではない。出血や毒で継続的にダメージを受けている状態で発動しても、直ぐにまた死んでしまうのだ。


 止めるか?


 いや、少し様子を見よう。フランが何かするつもりみたいだしな。


「いま!」


 フランが動いた。何と、アマンダの放った鞭技に合わせて、無理やり前に出たのだ。やけくそになった様に見えるが、そうではないことは分かっている。


「ぐっ!」


 突き出された鞭がフランの脇腹を僅かに抉り、血が舞う。だが、風魔術で自分の背を無理やり押して前進するフランは、顔をしかめながら足を止めない。


「さすがね!」

「はっ……!」


 残った魔力の半分を俺に伝導させ、渾身の突きを放つ。剣技でこそないが、その鋭さは剣技並だろう。


 そして、ほぼカウンターに近いタイミングで放たれたので、鞭を引き戻す暇はない。


「ウィンド・シールド!」


 ギャイン! という甲高い音とともに、フランの渾身の一撃は防がれた。ここまで使っていなかった風魔術だ。それを使わせただけでも、十分アマンダを追い詰めたのだと分かる。だが、フランの目的は一矢報いること。これで満足はしていない。


 そして、フランが溜めに溜めたフレア・ブラストを放った。


 防御に魔術を使った直後だ。いくらアマンダでも、ノータイムで再発動はできないようだった。


『上手いぞ!』


 戦いながらも分割思考で詠唱を行い、ずっと放つタイミングを狙っていたことは知っていた。俺からしても、最高のタイミングだったと思う。


「くぅ!」


 ガゴォオン!


 フレア・ブラストがアマンダに直撃し、大爆発を起こした。爆風と共に砂煙が舞い上がり、辺りを覆い隠す。地面は一部が溶けて、溶岩みたいになっていた。どんだけ高温なんだ。


 死んでないよな? いくらAランクでも、今の爆発はヤバかったんじゃ……。なんて思っていた時期が俺にもありました。


 どうやったら、今の魔術を無傷で防げるんだ? って言うか、無傷って何だよ! いくら何でも規格外すぎる! 火炎耐性があるのは知っていたが、それにしたって、だろう?


「危なかったわ……」

「ん……むねん」


 ドサ


 フランが悔しげな顔で、倒れ込んだ。出血過多で、意識が朦朧としてきたのだろう。遂に体力の限界を迎えたフランは、その場で意識を手放した。


『残念だったな……。まあ、お疲れさま』


 あの化け物相手に、ここまで戦ったことがすごいのだ。しかも、俺の助けなしで。


「フランちゃん! ごめんなさいね」


 倒れたフランに慌てて近寄ってきたアマンダが、取り出したポーションをフランに振りかける。間違いなく1等級のライフポーションだ。


「頑張ったご褒美に、1撃喰らってあげたかったんだけど、精霊の寵愛は自動発動スキルだから」


 なるほど、精霊の寵愛ね。どうやら、ある程度のダメージを受ける攻撃を、自動で無効化してくれるスキルのようだ。極めて強力なスキルだが、再使用には24時間かかるらしい。


 フランは納得できないかもしれないが、俺的には一矢報いたと思って良いと思う。相手の絶対防御を発動させたわけだし。


 まあ、今は少し休んでくれ。見張りは……他のやつがやってくれるさ。多分。



今後もご指摘いただいた部分に関しては、コッソリと修正させていただきますので、気づいたことがあれば感想にて御寄せいただければ幸いです。

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