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489 空でも吸われる!

 一旦空に逃れた俺たちは、ワイト・キングからの圧力が弱まるのを感じていた。やはり空を飛ぶ俺たちに効果的な攻撃は難しいらしい。


 いや、ワイト・キングの魔術はかなり精度も高かった。しかも視力も高い。だが、配下のワイト・ハイウィザードたちではそこまでの能力はないのだ。


「このまま上にいく」

『分かった』

「オン!」


 俺たちはフランの指示通り、さらに高度を上げていった。すでに100メートル以上は昇ってきただろう。


『あとはガストを振り切れば――お?』

「逃げていく?」

「オン!」


 凄まじい速さで俺たちに追随してきていたグレーター・ヴェノム・ガストだったが、あるところで急にその動きを止めていた。


 どうやら限界距離に達したか?


『最初から空を行けばよかったな』

「ん」

「オフ」


 このままもう少し高度を上げて、中央を目指そうか。そんな話をしている最中だった。


「え?」

『こ、これは……! マズい!』

「オ、オン!」


 俺たちは急にバランスを崩してしまう。俺は浮力を失った紙飛行機のように急激に高度を下げ始め、フランはそのせいで体をグラつかせている。


 ウルシはさらに危険な状態だ。空中跳躍を発動させようと何度も足を動かしているのに空を踏むことができず、一気に落下していく。


 一瞬足をばたつかせ、そのまま落ちていく様子はギャグアニメのワンシーンのようですらあった。ただ、こちらはギャグではないので非常に危険ではあるが。


 フランが空中跳躍で追いかけようとしたのだが、やはり発動しなかった。


「む」

『ちょ、フラン!』


 ヒューンという音が聞こえてきそうな勢いで落下していくウルシとフラン。


 俺は大慌てで転移を発動させようとするが、ダメだった。


 まるで枯渇の森にいるかのような感覚だ。いや、実際に枯渇の森と同じ現象に見舞われているのだろう。


『ガストが逃げたのは高度の問題じゃなくて、このせいだったのか!』


 多分、上空に行けば行くほど、魔力吸収現象が襲ってくるのだ。


 その推測を裏付けるように、ある程度落下して高度が下がると、多少消費が多いものの念動などを発動させることができた。


 フランとウルシも再び空中跳躍を使ってバランスを立て直している。


 以前この平原にいた頃は、目立つことを恐れてあまり高くは上がらなかったからな。まさか空でも魔力吸収現象が起きるとは……。


『フラン、大丈夫か?』

「ん! でも煙来た!」

「ガルウ!」

『もう一度上昇しよう!』

「え? でも……」

『ギリギリを見極めるんだ!』


 空へ逃れるという作戦は悪くなかった。考え方は枯渇の森を退避場所にする戦法と同じだ。ガストが追ってこれず、それでいて俺たちがギリギリ魔力を使える高度を見極める。


「わかった」

「オン!」


 俺たちは再び高度を上げた。実のところ、全く同じ高度をずっと維持することは難しい。何せ目印も何もないからな。


 それでも何度か落下を経験しつつ、俺たちはギリギリの高度を見つけ出していた。ガストが上がってこれず、俺たちはかなり消耗してしまうもののなんとか落ちない高度だ。


 転移で距離を稼ぐことはしない。いや、最初はやろうと思ったんだが、短距離転移じゃないと出現地点が結構ずれるのだ。元々中距離以上の転移は制御が難しいうえ、魔力吸収現象のせいか精度が相当下がっている。


 転移直後にスキルなどが一切使えない状態で、上下逆さまになっていたときにはさすがのフランもかなり焦っていたからな。より大きな事故にもつながりかねない。


 短距離転移はそこまで制御が乱れることは無いが、ともかく消耗が凄まじい。大人しく空中跳躍で進む方が無難であろう。


 最初はガストも俺たちの下を執拗に追ってはきていたが、5分もすると追跡を諦めていた。もしくは、エリア的に追ってこれないか。まあ、とにかく厄介な魔獣を振り切れたのは有り難い。


 それに、このギリギリ高度作戦は、道中の魔獣たちも避けて進むことができるので、かなり楽だった。鳥型の雑魚魔獣に何度か遭遇したが、脅したらすぐに逃げていったしね。


 移動しながら、俺はインビジブル・デスから入手したスキルを確認していた。


 光魔術や雷鳴魔術、鱗再生に突進などはすでに持っていたが、面白いスキルを4つもゲットしている。まあ、1つは本当に面白そうというだけで、役には立ちそうもなかったが。


 1つが魔力撹乱。多分、水晶鱗の魔力を乱す能力がこのスキルなのだろう。使ってみると、確かに周辺の魔力が乱れるのを感じた。


 ただ、問題もある。魔力強奪など、自分で使うスキルにまで干渉してしまうのだ。また、俺がフランに魔術をかけようとした場合などに影響があるかもしれん。常時装備しっぱなしはやめた方が良さそうだ。


 2つ目が射撃補正というスキルである。これは単純に遠距離攻撃の命中率などを上昇させるスキルであるようだ。念動カタパルトの威力や命中率がアップすることは間違いないだろう。


 パッシブスキルであるようだが、装備してみると確かに違っている。視界が急によくなったとかそういうわけじゃないんだが、明らかに遠くの的に対する感度が上がっている。軽く狙いを付けるとその的が鮮明に見える気がするし、当たるという自信が湧き上がってくるのだ。


『面白いなこのスキルは』


 3つ目のスキルが光撹乱膜。半円状のフィールドを生み出し、その表面に当たった光を反射させるらしい。ただ出力は低く、光魔術の威力を下げたりはできないようだ。あくまでも自然光や弱い光に対するスキルなのだろう。


 光学迷彩はこのスキルを応用していたらしいが、俺が真似するのはめっちゃ難しい。だって、光を反射する量とか角度とか、全部細かく計算しないといけないんだぞ? 適当に反射させるだけでもある程度効果はあるようだが、インビジブル・デスと同じレベルの完璧な光学迷彩は真似できそうもない。


 それを野生の本能で補完できてしまうのが、高位魔獣たる所以なのだろう。ただ、応用はできそうなスキルではある。


 最後のスキルが水晶変形のスキルだ。その名の通り水晶の形などを任意に変形させるスキルだった。


 多分、自らの鱗をこのスキルで変形させて弾丸にしたり、こちらの攻撃に合わせてあえて脆く変形させたうえで魔力放出で弾けさせ、リアクティブアーマーのように使用していたのだろう。面白いが、俺には使い道がないスキルでもある。


 今思えば、巨大な電磁砲にレーザー兵器、リアクティブアーマーにレーダージャマーに光学迷彩。魔獣というよりはゾ〇ドみたいな相手だったな。


 それに色々と勉強にもなった。特に念動カタパルトの威力上昇は大きな収穫だ。まあ、どこでも使えるわけではないだろうがな。


 言ってしまえば威力が上がったことで、より制御が難しくなってしまったのだ。発射される自身を暴れないように安定させるだけでも、凄まじい威力の念動が必要になるのである。これ、もう少し使うスキルを取捨選択する必要があるかもしれん。


 念動を姿勢制御などに使ってしまうと、肝心の射出速度が落ちてしまう。それを魔術やスキルで補おうとすると、余計に制御に使う力が増してしまい、消耗も増す。最悪、今までの何倍も消耗しているのに、威力は1割も増さないということがあり得るかもしれなかった。


 俺がそんなことを考えている間にも、目指す場所が見えてきていた。思考を中断して、思わず叫んでしまう。それくらい、懐かしく感じてしまった。


『フラン! 見えてきたぞ!』

「あそこ?」

『ああ、あの遺跡っぽい場所が、俺の始まりの場所だ』


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