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46 顔合わせ

 ギルマスからの依頼を受けることが決まってから1時間後。


 俺たちは宿に戻ってきていた。


『じゃあ、魔石を吸収するか』

「ん」

『どんなスキルが入ってるか、分からないんだよな……』

「楽しみ」

『まあ、福袋っぽいけどさ』

「福袋?」

『ああ、なんというか、夢と希望と少しの絶望が詰まった袋のことだ』

「なんかすごい」

『それを手に入れるために、数多くの戦士たちが挑み、散ってゆくのさ』

「師匠は中を見たことある?」

『まあな』

「すごい!」


 はい、馬鹿なことやってないで、魔石を吸収しちゃいましょう。


 魔獣知識のおかげで、魔石のランクだけは判明している。もらった5つの内、3つはD、2つがCランクだった。


 Dランクは、要塞ヤドカリ、シーライオン、トライデント・シャークという魔物だ。今までで行った事のない海系の魔物を選んでみた。


 2つだけ含まれていたCランクの魔石は、レッド・コロッサス、オールド・イエティという魔獣のものであった。


「まずはDランクから」

『おう、こい!』


要塞ヤドカリからは魔石値39、空腹耐性:Lv1、水圧耐性:Lv1、水中呼吸:Lv1、重量減少

シーライオンからは魔石値79、水泳:Lv1、水流操作:Lv1、水弾発射:Lv1

トライデント・シャークからは魔石値43、水中音響:Lv1、水流噴射:Lv1、遊泳:Lv1


 色々入手できたな。狙い通り、水系のスキルが充実したぜ。次はお待ちかねCランク魔石である。


「はっ!」


 フランが宙に放り投げた魔石を、俺で一刀両断にする。うおー、来た来た。久しぶりに大物を喰らう感覚!


レッド・コロッサスからは魔石値196、狂化:Lv1、耐熱:Lv1、重量増加、腕力中上昇

オールド・イエティからは魔石値127、耐寒:Lv1、毒知識:Lv1、氷雪耐性:Lv1、知力小上昇


 そして、待望のランクアップだ! 5つの魔石を吸収する前の俺はこんな感じだった。


攻撃力:434 保有魔力:2050/2050 耐久値:1850/1850

魔力伝導率・A

スキル

自己進化〈ランク8・魔石値3146/3600・メモリ70・ポイント2〉、


 そして、今はこんな感じである。


名称:師匠

装備者:フラン

種族:インテリジェンス・ウェポン

攻撃力:478 保有魔力:2500/2500 耐久値:2300/2300

魔力伝導率・A

スキル

自己進化〈ランク9・魔石値3630/4500・メモリ79・ポイント47〉


 よしよし、これでまたスキルをいじれるぜ。特に今回気になっているのが、スキルスペリオル化だ。今まで余裕がなくて使ってこなかったが、1回は試しておきたい。


 そこで目を付けたのが、剣術LvMaxだった。これをスペリオル化した場合、剣聖術になるのか、それとも全く未知のスキルになるのか? 剣を振るだけなら剣聖術があるからどうとでもなるはずだが、剣技はどうなるのか? 対応する剣術が無くなったら、剣技も使えなくなるのか? それとも、剣聖術があれば問題ないのか?


 それらを試すチャンスが来たのだ。それに、剣術持ちのゴブリンなども多いし、自己進化ポイントさえあれば簡単にLvMaxで取り戻せるからな。


『今回の依頼。出来れば、剣術持ちの魔石を確保するぞ!』

「おー」



ということで、2日後。俺たちは冒険者ギルドに来ていた。


「では、改めて自己紹介させてもらおう。僕はクルス。Cランク冒険者パーティ『紺碧の守り手』のリーダーだ。こちらの二人がメンバーの、リグとアイゼール。今回の全体統括役兼試験官を務める」


名称:クルス・リューゼル  年齢:28歳

種族:人間

職業:瞬剣士

状態:平常

ステータス レベル:33

HP:256 MP:175 腕力:113 体力:119 敏捷:178 知力:80 魔力:91 器用:119

スキル

悪意感知:Lv3、隠密:Lv2、回避:Lv5、宮廷作法:Lv3、気配察知:Lv4、剣技:Lv5、剣術:Lv7、護身術:Lv4、指揮:Lv2、瞬発:Lv7、耐寒:Lv4、毒耐性:Lv5、罠感知:Lv2、気力操作

称号

正義漢

装備

火炎のミスリルロングソード、軽銀鋼の鎧、軽銀鋼の篭手、軽銀鋼の脚甲、百脚蜘蛛の外套、耐毒の腕輪


 イケメンだ。見紛う事なき金髪イケメンだった。しかも、若くしてCランク。装備は白くてピカピカだし、お金も持ってそうだ。家名もあるし、貴族出身だろう。なんとなく気品が感じられる顔立ちだし。きっとモテモテなんだろうな! ちっ! 


 でも、称号に正義漢か。悪い奴じゃなさそうだから、とりあえず呪わんとこう。まあ、フランに粉かけてきたら、即殺だけどな!


「武器は剣を使う。よろしく頼む」


 Cランク相当の実力はあると思うけど、ドナドには及ばない。むしろ、ドナドはCランクの中じゃトップクラスなんだろう。


 仲間二人も、似た様なステータスレベルだな。リグは水魔術師、アイゼールは探索系のシーフだ。完全にクルスの引き立て役な感じだけど、仲は良好そうだった。クルスをリーダーに上手く纏まっているんだろうな。


「俺らは、Eランクパーティ『竜の咆哮』。俺はリーダーのクラッドだ。俺の得物は槍だな。まあ、ダンジョン探索なんざ、俺らにかかればあっと言う間よ!」


 クラッドは、灰色ツンツン髪に小麦色の肌をした、気合入りまくりのヤンキー系青年である。背丈は180以上あるだろう。


名称:クラッド  年齢:23歳

種族:人間

職業:戦士

状態:平常

ステータス レベル:20

HP:127 MP:97 腕力:67 体力:56 敏捷:47 知力:50 魔力:46 器用:42

スキル

運搬:Lv2、軽業:Lv4、危機察知:Lv3、空腹耐性:Lv3、拳闘術:Lv1、槍技:Lv1、槍術:Lv4、恫喝:Lv3、登攀:Lv3、気力操作

称号

なし

装備

上質の鋼鉄の槍、岩石牛の甲鎧、岩石牛の腕甲、大蜘蛛のブーツ、石蜘蛛の外套、自然治癒の腕輪・微


 それほど強くはないが、ランクEならこんなものか。どうやら、戦技を使えるかどうかが、ランクD以上に上がれるかどうかの分かれ目らしい。他の4人のパーティメンバーも、槍使いで似た様なスキル構成だ。柔軟性はなさそうだが、ハマれば強い。そんな印象である。


 今まで見てきた感じ、ランクCでレベル35前後、ランクDでレベル25前後、ランクEでレベル15前後、ランクFでレベル10前後。ランクGはそれ以下。そんな感じのレベル帯になっているようだ。


 まあ、例外もあるけど。例えば、初めてギルドに来た時に絡んできた、フランに手ひどくやられた元傭兵たち。レベルは15程度だったが、実力はそれ以下だった。スキルレベルの低さからも、明らかにパワーレベリングを行い、見せかけの強さを得ていたことが分かる。


 あとは、オーギュスト・アルサンド元子爵。レベルはCランク相当の30だったけど、戦えばEランクにも負けるだろう。


 その点、クラッドはまあまあだ。確かに、ランクDに足を踏み入れてもおかしくないステータスだった。


 性格はあまり良くはなさそうだけどな。ずっとフランを睨んでるし。こんなに可愛いフランを睨むなんて、頭おかしいとしか思えん。


「私はフリーオン。ランクEパーティ『樹海の目』のリーダーです。武器は得意ではありませんが、精霊魔術などを使えます」


 金髪糸目エルフ。それ以外の何物でもないな。ギルマスよりは若々しくは見えるけど。


名称:フリーオン  年齢:49歳

種族:ウッドエルフ

職業:精霊使い

状態:平常

ステータス レベル:26

HP:71 MP:233 腕力:36 体力:34 敏捷:60 知力:91 魔力:111 器用:69

スキル

弓術:Lv1、採取:Lv2、栽培:Lv4、邪悪感知:Lv3、樹木魔術:Lv3、植物知識:Lv7、眠気耐性:Lv3、精霊魔術:Lv5、土魔術:Lv3、水魔術:Lv4、薬草知識:Lv4、精霊の加護、魔力操作、森の子供

装備

黒斑楡の杖、赤猿の胸当て、森蜘蛛糸の服、森蜘蛛糸の外套、産水の指輪


 ギルマスと同じウッドエルフか。スキル構成も似ている。ただ、強くないか? 少なくとも、クラッド君たちよりは総合力が高いと思う。特に、エルフ特有の魔術系能力の高さは、目を見張るな。


 彼の仲間は、戦士が2人、レンジャーが1人という構成だった。こちらもバランスが取れている。


「じゃあ、次は私ね? アマンダよ。よろしく」


 ランクも何もない、簡潔な挨拶。しかし、それで十分なんだろう。彼女を知らない冒険者なんて、3日前までのフランだけだったのだろうし。


 ランクE冒険者たちは、言葉もなく驚いている。たかがランクDの依頼に、ランクAが出張ってくるなんて、前代未聞だろうしな。


 ただ、クラッド君だけが、何とか言葉をひねりだした。


「意味分かんねー」

「どういう意味かしら?」

「Aランク様が低ランク依頼を受ける意味が分かんねーって言ってんだよ! あんたには片手間の依頼だろうが、俺たちはランクアップかけてるんだ! お遊び気分で邪魔すんなよ!」


 うわー。アマンダ相手に言ったよ。まあ、強がっているだけなのは、強張った顔を見ればわかるが。強い奴に咬み付きたいお年頃なのかね?


「お遊びのつもりはないわ? それに、ギルドマスターの許可は取ってあります」

「ちっ」

「まあまあ。じゃあ、次はお嬢さん、どうぞ」


 悪くなった空気を変えようと、クルスが間に割って入った。ただでさえ我儘そうなアマンダだけではなく、我の強そうなクラッドまでいるのだ、気苦労が多そうなポジションである。明らかに試験官の役割を越えてるよな。ご愁傷さまです。


「フラン」

「……それだけかい? 他にもっとあるんじゃ?」

「ランクはD。獣人。好きな物はカレー。嫌いなものは特にない」


 クラッド君の視線が怖いね。相当フランが気に入らないようだ。何せ、ぽっと出のランクDだし。こんな小娘が自分たちよりもランクが上なのが、許せないのだろう。


「いや、そうではなく、武器なんかを……」

「おいクソガキ。さっきも言ったが、俺たちはマジなんだ。遠足気分なら、帰ってママのおっぱいでも吸ってろ!」


 いやー、咬み付くねクラッド君。人間だけど狂犬の様だ。しかも、これは恫喝スキル使ってるね。泣かせる気満々だ。フランには全く効かないんだけどさ。


「母親は死んだ」

「……ちっ」


 うん。最強の言葉だよね、それ。これで何か言い返したら、本気で人間性が疑われそうだし。それに、アマンダさんが放つ殺気を感じ取ったのもあるだろう。


「大の大人が子供に怒鳴るなんて! まったく。大丈夫? フランちゃん?」

「ん。全く問題ない」


 あんな恫喝、悪魔の威圧感に比べたらキャンキャン煩い子犬の威嚇みたいなものだ。言外にそう言われたことに気づいたのだろう。クラッド君が、挑発に乗ってきた。いや、フランに挑発する意図はないけどね。


「てめぇ! どういう意味だ? あぁ?」

「えー。それでは、自己紹介も終わったので、説明に移らせてもらう」


 これ以上の騒ぎは勘弁してもらいたいのか、クルス君が強引に話を終えさせた。頑張れクルス君。俺は何も協力できないし、今以上のもめごとが起きるのは最早決定した様な物だけど、頑張るんだ。多分、いいことあるよ!


「くれぐれも、仲良くお願いしたい」

「ふん」

「けっ」

「問題ない。仲良し」

「そう願いたいものだね!」


 クルスはやけくそ気味に叫ぶと、説明に移った。


「依頼の内容は、アレッサの冒険者ギルドが管理している、攻略済みダンジョン『蜘蛛の巣』の調査だ。また、生成されている魔鉱石の回収も同時に行う」


 ダンジョンは6層まであり、内部には昆虫系魔獣が多く生息している。特に、5、6層に巣くう蜘蛛系の魔獣は、数も多く厄介らしい。


「魔鉱石は、ダンジョンコアルームで生成されるので、そこまでは到達する必要がある」

「回収アイテムとは、魔鉱石だったのですか」

「なあ、中の魔獣は、ぶっ殺しちまっていいのか? 確か、わざと住まわせてるんだろ?」

「ああ、そこは構わない。ある程度魔獣を減らすのも依頼の内だからな」

「へへへ。そりゃ楽しみだ」


 蜘蛛の巣にいるトラップ・スパイダーという蜘蛛の魔獣は、脅威度F。下級の冒険者が経験値を稼ぐには、悪くない相手だろう。


「忠告しておこう。蜘蛛どもは単体では弱いが、罠を使う知能もあるし、群れでの連携も脅威だ。くれぐれも油断するな」

「けっ、ランクF程度の魔獣に、負ける訳ねーじゃねーか。経験値にしてやんよ」

「……それに、ダンジョンで気を付けなくてはいけないのは、魔獣だけではない。このダンジョンにあるほとんどの罠は大したことないが、転移の罠だけは気を付けなくてはならない」


 転移の罠と言うのは、引っかかった相手をダンジョン内の任意の場所に飛ばしてしまう罠だ。発動すると防ぐのが難しく、熟練者でも危機に陥ることがある。


 蜘蛛の巣に設置されている転移の罠は、場合によってはモンスター部屋に飛ばされる物もあり、気を付けなくてはならないらしい。


「転移の罠は、仲間を巻き込む場合もある凶悪な罠だ。くれぐれも慎重に頼む」

「はいはい。了解了解」


 こいつ、絶対了解してないよな。不安だわ。無能で無謀な仲間とか、足を引っ張られる可能性大だし。フランの身は俺が守らないとな。




現在のフランのステータス


名称:フラン  年齢:12歳

種族:獣人・黒猫族

職業:魔剣士

状態:契約

ステータス レベル:25

HP: 304 MP: 215 

腕力:150 体力:129 敏捷:140

知力:95 魔力:117 器用:108

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― 新着の感想 ―
「ああ、なんというか、夢と希望と少しの絶望が詰まった袋のことだ』 この表現好きです(笑)
[気になる点] アマンダのレベルが他の面子と比較すると、スキルレベルとか称号のわりには低いような気が。
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