38 ゴブリン討伐戦 帰還
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ダンジョンを攻略した俺たちは、町への帰途に就いていた。
冒険者たちの顔には、深い疲労と、それ以上の喜びが浮かんでいる。
冒険者に10名の死者が出ていたが、今回の規模の魔獣災害で、その程度の被害で済んだことは寧ろ幸運らしい。
俺たちがさっさとダンジョンを攻略し、魔獣を消滅させたおかげだと、冒険者たちから感謝された。まあ、悪魔の死体を独り占めしなかったことも、好意的に受け止められている要因だろう。というか、それがデカイ。
悪魔の素材は同ランクの魔獣の素材よりも相当高いらしい。なにせ、ダンジョンにしかいない固有種だしね。
取得できる経験値も段違いで、脅威度Aの魔獣に並ぶという話だ。フランのレベルが8もアップしたのも納得である。悪魔は美味しい相手のようだ。まあ、逆にこっちが食べられてしまう危険が非常に大きいわけだが。
あと、ドナドには1人で突っ走ったことをメチャクチャ怒られた。小1時間くらい説教を喰らっていたな。
世紀末覇者が獣人の少女を説教する図とか、犯罪的を通り越して喜劇的だった。笑ったらフランが拗ねるから、なんとか堪えたけどね。
出発前に絡んできた少年のとりなしが無かったら、もっと長かっただろう。フランに絡んできた傭兵たちは死んだが、自分がそうならなかったのはフランのお陰だと、弁護してくれたのだ。
『あいつら……結局、死んだんだな』
(いい声で言っても誤魔化されない)
『やっぱり?』
(師匠は怒られなかった。ずるい)
『まあまあ』
(私だけ怒られた)
『悪かったって』
(じゃあ、お肉)
『分かった』
(焼肉)
『いいだろう』
(ステーキと串焼きも)
『オーキードーキー』
ここのところ、俺の地球料理を食べ続けてきたせいか、フランが食いしん坊キャラになってきた気がする。まあ、それで機嫌を直してくれるなら、いくらでも作っちゃうけどね。悪魔という格上の相手を倒した記念でもあるし。食べたいものを好きなだけ食わせてやろう。
街にたどり着く前に、戦果の確認でもしておくか。
因みに、ランクアップ前はこうだった。
攻撃力:392 保有魔力:1650/1650 耐久値:1450/1450
スキル
自己進化〈ランク7・魔石値2599/2800・メモリ62・ポイント0〉
それが、こうだ。
名称:師匠
装備者:フラン
種族:インテリジェンス・ウェポン
攻撃力:434 保有魔力:2050/2050 耐久値:1850/1850
魔力伝導率・A
スキル
鑑定:Lv7、鑑定遮断、高速自己修復、自己進化〈ランク8・魔石値3099/3600・メモリ70・ポイント40〉、自己改変、念動、念動小上昇、念話、攻撃力小上昇、装備者ステータス中上昇、装備者回復小上昇、保有魔力小上昇、メモリ中増加、魔獣知識、スキル共有、魔法使い
ランクアップ毎の、ステータスの上がり具合が凄くなってきたな。最初は、攻撃力が30、魔力は100しか上がらなかった上、耐久値と魔力の回復もなかったのに。もっとランクが上がったらどうなるか、今から楽しみだぜ。
レベルアップしたスキル。ホブゴブもアーミー・ビートルも、スキルレベルがそこそこ高かったので、かなりレベルが上がったぞ。
風魔術:Lv7、剣技:Lv8、剣術:Lv9、眷属召喚:Lv6、硬化:Lv4、状態異常耐性:Lv3、土魔術:Lv5、毒魔術:Lv3
新たに入手したスキルだ。ホブゴブリンからも大量だったから、結構多い。
暗黒魔術:Lv1、弓技:Lv1、恐慌:Lv1、棍棒技:Lv1、心話:Lv1、短弓技:Lv1、短剣技:Lv1、調教:Lv1、刀技:Lv1、皮革:Lv1、魔工学:Lv1、魔力障壁:Lv1、闇魔術:Lv2、錬金術:Lv1、連携:Lv5、罠感知:Lv1、暗黒強化、暗黒無効、酸の牙、自動魔力回復、支配無効、皮膚硬化
エクストラスキル
スキルテイカー:Lv1
自己進化ポイントが40も入手できたのに、やりたいことが多すぎて少なくさえ感じてしまう。
剣技、剣術のレベル上げに、魔術のレベル上げ。暗黒強化を手に入れたからには、暗黒魔術を上げるか? 眷属召喚が有用なら、レベルを上げてみたい気もするし。以前に諦めた、瞬間再生、状態異常耐性。さらに、今回手に入れたスキルテイカーも候補に入るだろう。ここにスキルスペリオル化も入ってくるのだから、悩みは尽きない。
しかも、フランはレベルが25に達している。悪魔戦では、奴を倒しただけで8も上がっている。普通はパーティに分散されるであろう膨大な経験値が、フラン1人に集中してるわけだしね。
名称:フラン 年齢:12歳
種族:獣人・黒猫族
職業:魔剣士
状態:契約
ステータス レベル:12→25
HP:189→304 MP:115→215
腕力:92→150 体力:74→129 敏捷:82→140
知力:50→95 魔力:62→117 器用:63→108
スキル
ゴブリンキラー、精神安定、剥ぎ取り上手、不退転、方向感覚、夜目
〈New〉インセクトキラー、成長効率上昇、デーモンキラー
称号
一騎当千、解体王、回復術師、ゴブリンキラー、殺戮者、スキルコレクター、火術師、料理王
〈New〉インセクトキラー、超大物喰い、ダンジョン攻略者、デーモンキラー
インセクトキラー:同一戦場内において、蟲系魔獣を300匹以上葬った者に与えられる称号。
効果:スキル・インセクトキラー獲得
超大物喰い:圧倒的強者に単身で挑み、打ち勝った者に与えられる称号。
効果:HP+20、全ステータス5上昇、スキル・成長効率上昇を獲得
ダンジョン攻略者:ダンジョンマスター殺害、もしくはダンジョンコア破壊で与えられる称号
効果:ダンジョン内において、HP、MPの自動回復速度が上昇
デーモンキラー:デーモンを葬った者に与えられる称号。
効果:スキル・デーモンキラー獲得
またまた来たよチート称号。超大物喰い? 一騎当千並の強力な称号だ。おかげで、フランのステータスがおかしいことになっている。もう、ステータス合計では、ドナドロンドと互角だろう。
フラン! 恐ろしい子! いや、俺のせいなんだけどね。フランは向上心もあるし、天狗になることはないだろうけど、今後さらに危険な場所を求める可能性がある。俺も、もっと気を引き締めてフランをサポートしないとな!
そのためにも、スキルのレベルアップは急務である。
『なあ、フランはどのスキルのレベルを上げたい?』
(剣技と剣術)
『だよな』
今回感じたが、魔術は格上に効きづらい。だが剣であれば、不利な局面も逆転できるチャンスがある。高い魔力伝導率と、魔力保有量を誇る、俺であればこそだが。
『とりあえず、剣技と剣術を上げちゃう?』
「ん」
『よし、やっちゃうか』
はい、やっちゃいました。
自己進化ポイントを6消費して、剣技LvMax、剣術LvMax。さらに、剣聖技Lv1、剣聖術Lv1、属性剣:Lv1、が発生しました。
剣聖技、術は分かるが、属性剣? 魔術との複合スキルで、剣に魔術の属性を一定時間付与することができるらしい。使ってみないと、分からんな。
さて、後はどうする? やはり気になるのはスキルテイカーだ。
スキルテイカー:Lv1・対象の持つ、レア度1以下、かつLv1のスキルを1つ選択し、50%の確率で奪う。同一対象に1度のみ使用可能。スキル再使用には1日必要。射程はスキルレベル×1メートル
スキルのレア度ね。鑑定のレベルが足りていないのか、今までレア度が表示されたことはない。
これがあれば、よりスキルの収集がはかどるだろう。それに、相手のスキルを封じることができたら、戦闘もより楽になる。なにより、いままで手出しの出来なかった、魔石のない相手――つまり人類種からもスキルを得ることができる。
どうしよう。いや、俺としてはもう完全に乗り気なんだが。フランはどうだろう。
『なあ、スキルテイカーなんだが――』
俺は、一通りのことをフランに説明した。
(いいと思う)
『そうか』
(エクストラスキルだし。きっと凄い強い)
『よしよし、じゃあ、レベルアップさせよう』
お言葉に甘えまくってしまおう。とりあえず、Lv2にしてみた。
スキルテイカー:Lv2・対象の持つ、レア度2以下、かつLv2以下のスキルを1つ選択し、60%の確率で奪う。同一対象に1度のみ使用可能。スキル再使用には2日必要。射程はスキルレベル×1メートル。
なんと、Lv2で60%? よ、よし、もっと上げよう!
エクストラスキルをレベルアップさせるには、1レベルにつき3ポイント必要らしい。残り自己進化ポイントが7まで減ってしまったが、後悔していない。
スキルテイカー:LvMax・対象の持つ、レア度10以下、かつLv10以下のスキルを1つ選択し、100%の確率で奪う。同一対象に1度のみ使用可能。スキル再使用には18日必要。射程はスキルレベル×1メートル。
再使用には18日も待たなきゃいけないのか。使う場合を、よく考えないとな。まあ、俺たちの場合、俺とフランの2回チャンスがある。普通よりは、気軽に使えるだろう。あと調べなくてはいけないのが、レア度10がどの程度なのかってことだ。鑑定のレベルを上げるか? もし、エクストラスキルやユニークスキルも奪えるのであれば、有り得ないくらい強い。はっきり言ってチートだ。
早速使いたい。ただ、周りには味方ばかり。山賊でも出ないかな? まあ、冒険者の集団に向かってくる山賊なんて、居る訳ないけど。
結局、何もないまま、ギルドまでたどり着いてしまった。
ギルドはお祭り騒ぎだ。勝利した喜びと、支払われる報酬で、皆の顔も明るい。
「嬢ちゃんはちょっとこっちへ来てくれ」
「ん」
フランがドナドに連れられて、ギルドマスターの部屋に向かう。だが、周辺の冒険者は驚いていなかった。フランが最大の功労者だと理解しているからだ。
色々な噂を聞いて、フランの実力に懐疑的だった冒険者たちも、今日の活躍で分かったのだろう。
「いいな、きっとボーナスだぜ」
「しかたない、大金星だったんだ」
「俺も命を救われた」
「どうやったら、あの年であれだけ強くなれるんだ?」
「化け物だよ。化け物」
「うちのパーティに入ってくれないかな」
「はぁはぁ、フランちゃんカワイイ」
好意5割、嫉妬4割、嫌悪1割ってところか。ていうか、最後の奴、ちょっと怖いぞ!
「やあ、フランさん。お待ちしていました」
「ん」
「まずは、お礼を。あなたのおかげで、被害が少なく済みました。あの程度のダンジョンに悪魔がいたとは……。まともに攻略していれば、死者はもっと増えていたでしょう」
軽い礼から入るが、その眼は笑っていない。この人はドナドと違って、油断できないんだよね。未だにこっちを疑っている感じだ。
「正直、1人で抜け駆けされると困りますが、今回はそのおかげで助かりましたし、命令を聞かなかったことは不問としましょう」
様々なことを天秤にかけた結果、とりあえずお咎めなしとなったらしい。
「貴女が倒したという、悪魔の死体を見ました」
ドナドが見せたんだな。
「はっきり言って、あれは脅威度Bの個体でした。それを、あなた一人で倒したのですか?」
「ん」
「それが本当であるなら、貴女はランクA相当の実力があるという事になってしまうのですがね」
評価されるのは嬉しいが、下手にランクA認定とかされて、危険な依頼を割り振られるようになっても困る。
「運が良かった」
「ほう? どういう意味です?」
なので、ここは本当のことを言っておくことにした。
「なるほど、ダンジョンマスターを狙って牽制し、不意を突いて倒したと……」
「ダンジョンマスターが馬鹿だった」
「それでも、瞬殺されなかっただけでも十分おかしいんですがね。それに、あの悪魔の死体ですが……」
「?」
「致命傷となった心臓への攻撃。強靭な魔力障壁を貫いて、悪魔を倒すことができる者がどれほどいるとお思いですか?」
「さあ?」
「はぁ……。それはまあ、いいでしょう。では、本題なんですが」
やっぱり、何か言われるか。
「悪魔の魔石はどうされました?」
「消滅した」
「……あれだけの個体です。魔石は凄まじく有用だ。国が欲するレベルです」
「ん」
「本当にないのですか?」
「もうこの世に存在していない」
俺が吸収しちまったからな。
「はぁ。分かりました。信じましょう」
嘘は言ってないんだし、一応誤魔化せたかな?
と、安心したその時だった。
「待ちたまえ! それで見逃すつもりかね!」
部屋の扉をバーンと勢いよく開けて、誰かが乱入してきたのだった。




