表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/1329

2 I Can Fly


 さて、まずは周辺の状況を確認するか。


 まず、俺がいるのは、古びた遺跡の様な場所だ。屋根なんかなく、だだっ広い大平原に、ぽつんと存在している。遠目から見たら、大きめの噴水みたいに見えるかもしれない。


 俺は、その中心に設置された台座に、宝剣よろしく突き刺さっていた。これはあれか? たどり着いた者に与えられる、伝説の武具的ポジションなのだろうか? にしては、周辺にダンジョン感はないが。


 台座のせいで振り向くことができないので、背後のことは認識できない。だが見渡す限り、高い木の存在しない、茂みと低木だけの平原が続いていた。目を凝らせば、遠くに時折動く影もある。動物だろうか。


『人っ子一人見当たらないんだが』


 自力で動けないか。


 いやまて、スキルに確か念動があったはずだ。もしかして、これで動けたりしないか?


『むん』


 集中だ。念動念動。


 すると、俺の体がふっと軽くなった気がした。台座から刀身が僅かに離れた感覚がある。その感覚を大事に、剣が空を飛ぶイメージを思い浮かべた。


『おおお! 浮いたぞ!』


 イメージすれば、自由自在だ。台座を離れた俺は、空中をスイスイと動き回った。


『アイ・キャン・フラーイ!』


 速さはあまり出ないが、今はこれで十分だ。自力で動き回れることが分かったしな。


 台座の周辺を動き回ってみた。やはり、遺跡みたいに見える。元は煉瓦の様に茶色いブロックで組まれていたのだろう。だが、長年風雪にさらされてきたせいか、色は黒ずみ、所々を苔が覆っている。


 広さは直径20メートルくらいだ。


『一体誰が作ったのか。俺の制作者だとは思うが……』


 これだけ古そうだってことは、俺は相当長い間放置されていたのだろうか。


 剣に転生と言っても、何もないところから剣がオギャーと生まれる訳もない。俺の体を作った人間がいるはずだ。まあ、肉体が何かの事故で剣に変質したとかじゃなければ、だが。


 その製作者が、使用者の第一候補ということになるのだろうが、製作者がすでに死んでいたりしたらその可能性は消えてしまう。


 だが、俺の体である剣自体には、苔やほこりが付着していない。まるで、昨日今日ここに差し込まれたみたいに。


 周辺を観察しながらいろいろ考えていたら、体に違和感が走った。


『……あれ?』


 なんか、疲れが……。力が抜けていく感覚が、剣の体を襲う。


 そして、落ちた。


『まじか!』


 必死に念動を使おうとするが、全く反応しない。高さは、推定で10メートルはある。


『浮け! 浮いてくれ!』


 だが、奮闘虚しく、俺は地面に思いきり叩きつけられた。


 ガイイィィィーン! という、大きな金属音が響く。


『いー……たくはないけど。どっか割れたりしてないか? ひびとか』


 慌てて体を見てみるが、どうやら無事なようだった。体の感覚にも、おかしなところはない。あれだけの高さから落ちて無事とは、やはり名剣なのかもしれない。


『でも、どうして落ちた?』


 急に倦怠感の様なものが生まれ、念動が使えなくなった。


 異変の原因を探るべく、ステータスをチェックしてみる。


 原因はすぐに分かった。


『保有魔力がなくなってるな』


 保有魔力:0/200となっていた。多分、念動を使っている間、魔力を消費し続けるのだろう。倦怠感の原因もこれに違いない。魔力切れになっても、意識を失わないのがせめてもの救いか。


『5分は飛んでなかったよな。多分3分くらいだったはずだけど』


 俺は石畳の上で、しばらく待ってみた。すると、魔力が僅かに回復する。どうやら、1分で1回復するらしい。一時間待って60まで回復させると、俺は再び念動を唱えた。


『よし、浮くな』


 問題なさそうだ。俺はそのままステータスをチェックした。ガンガン魔力が減っていく。


『念動を使っている最中は、1秒で1消費かな? それだと、200で3分程度っていう計算も成り立つし』


 また地面にたたきつけられてはたまらない。俺は、魔力がなくなる前に、急いで台座に戻った。刺さってみると、妙に落ち着く。


『ふぅ。戻ってこれたか』


 だが、これで下手に動きまわるのは危険だと分かった。暫くは台座周辺から出るのは避けて、平原を観察して過ごすとしよう。


 平原を見ていると、色々な生物の姿がある。地球のサバンナの様に、哺乳類ばかりかと思いきや、どう見ても昆虫だったり、不定形だったりするやつらもいた。しかも、その大きさはまともじゃない。


 例えば、最初に見つけた蟻っぽい姿の影は、大型犬くらいの大きさがあった。


 剣でよかった。少なくとも、襲い掛かられることはなさそうだし。


『改めて、地球じゃないな』


 もっと遠くを見ると、より大きな獣の影もあった。目測でしかないが、10メートル近いだろう。少なくとも、象よりはでかいと思う。


『いわゆる、魔獣ってやつか?』


 それらを見ていて、1つ気になることがあった。


『あんなデカイ魔獣がいて、人間がここにたどり着くこととか、あるのか?』


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ