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393 侯爵家の噂


 孤児院でイオさんの料理を堪能したフランとウルシ。その後、食材などを色々と寄付して、俺たちは孤児院を後にした。次の目的地は竜膳屋である。


「おや、フランさん。お久しぶりです」

「ん。フェルムスも」


 相変わらずのイケメン老紳士が出迎えてくれた。厨房から出てきたフェルムスを見て、おばさま方が黄色い悲鳴を上げている。


「本日はお食事ですか?」

「ん!」

「ふふふ。前回は私がいない時にご来店されたようで、本日は精一杯、腕を振るわせていただきますよ。あと、あの狼の従魔は一緒ではないのですか?」

「影に入ってる」

「宜しければご一緒にどうぞ。邪人と一緒に戦った仲ですので」

「オンオン!」


 あ、出ていいって言う前に出やがったな。まあ、前回は竜膳屋の食事を食べ損ねたし、今回は絶対に食べたかったんだろう。


「では、何をお持ち致しましょうか?」

「全部」

「ふふ。了解いたしました」


 フェルムスはフランが大食いなのを知っていたらしく、驚くこともなく厨房へと下がっていった。以前は弟子の料理を食べたんだが、今日はフェルムスのお手製だ。


 最初に以前もいた女性店員さんが持ってきたのは、看板メニューの竜骨スープだ。だが、少し色が黄色い。


「新作の、カレー竜骨スープです」


 どうやらカレー風味のアレンジをしたらしかった。


『どうだ?』

「ごくごくごくごく」


 メッチャ美味しいらしい。


「どうですか?」

「最高。ちょっと酸っぱいのもいい」

「オンオン!」

「そうですか。あなたにそう言っていただけると嬉しいですね!」


 どうやらインドカレーよりは、タイカレーに近い風味であるらしい。カレーからヒントを得て、ここまでの料理を作り上げるとは、さすがフェルムスだな。


 次々に出てくる美味しい料理に、フランたちのテンションは上がりっぱなしだ。10品目に出てきたのは、以前も食べた肉料理だな。フランは1口食べると大きくうなずき、次に首を傾げる。


『どうした?』

(美味しいけど、フェルムスのよりも美味しくない)

「あ、あの、いかがでしょうか?」


 悩んでいるフランに声をかけてきたのは、フェルムスの弟子の男だった。これは彼が作った物であるらしい。なるほど、それを食べただけで感じ取るんだから凄いな。フランは弟子の料理を以前よりも美味しいと褒めつつ、フェルムスとの違いを指摘しまくって凹ませていた。まあ、これからも精進してくれ。


 その後も様々な料理に舌鼓をうち、フランたちは満足いくまで食事を堪能したのだった。


 次はバルボラで最後の目的地、ルシール商会の本部だ。


 さすが大商会なだけあり、フランが建物に入った瞬間にその正体を察したらしい。それとも何度か来たこともあるから、覚えていたのだろうか?


 受付にいた女性が立ち上がって、丁寧に頭を下げて出迎えてくれた。さらに、丁稚らしき少年がササッとそばに寄ってくる。


「お久しぶりですフラン様。本日はどのようなご用件でしょうか?」

「レンギルはいる?」

「ただいま確認してまいりますので、少々お待ちください」


 受付のお姉さんがそう言った瞬間、丁稚の少年が駆け出していった。レンギルにフランの来訪を伝えに行ったのだろう。


「こちらへどうぞ」


 受付のお姉さんがソファへ案内してくれる。すると、ほぼ同時にメイドさんの格好をした従業員が、お茶とケーキを持ってきてくれた。ティーカップとソーサーには美しい絵が付けられ、ケーキはこちらの世界では珍しいデコレーションケーキだ。


 他の商人の前には質素なカップでお茶だけなのを考えると、好待遇なのだろう。お茶請けにお菓子が出てきたことにちょっとした物足りなさと、安堵感を覚えてしまった。やっぱ獣人国のステーキがおかしいんだよな?


『フラン、さっきは腹いっぱいだったみたいだけど、食べれるか?』


 食べ歩きと孤児院での食事、最後は竜膳屋で満腹まで料理を食べたことで、お腹ポンポコリンだったはずなんだけど。


(ん? もちろん)


 食べられないなら次元収納に入れておこうかと思ったのだが、フランは嬉しそうにケーキを口に運んでいる。


『無理しなくてもいいんだぞ?』

(甘い物は別腹)


 まあ、美味しく食べられるならいいけどさ……。最近、食いしん坊に磨きがかかってきている気がする。とは言え、フランは普段から激しく動くので太る気配は一切ないんだよね。ちょっとでもおデブの気配がしたら、俺がなんとかしなくては。


 フランがケーキを美味しくいただいていると、すぐに案内の女性がやって来て、レンギル船長の部屋へと通してくれた。


「バルボラに戻っていたのですね」

「ん。すぐに出発するから、挨拶しにきた」

「おお! それは光栄ですね」

「あと、香辛料がほしい」


 現在は香辛料が多少高騰しているようだったが、今の俺たちはお金持ちだからね。問題なく欲しい分を購入することができた。


「では、お帰りの際にお渡ししますね」

「ん」


 レンギル船長はフランが次元収納持ちであることを知っているので、運搬を心配する話にはならない。


 その後、俺たちはガルスのことだけではなく、ゼロスリードの話についてもレンギル船長に聞いてみたんだが、どちらも知らないということだった。


 ただ、アシュトナー侯爵家については幾つか興味深い話を聞くことができた。


「彼の侯爵家は、現在かなりの苦境にありますね」

「苦境?」

「アシュトナー侯爵には、冒険者をやっていた、セルディオという名前の息子がいたのですが、その彼が冒険者ギルドから告発されたのですよ。ランクA冒険者ながら、黒い噂の絶えない疑惑の人物でした。既に命を落としているのですが、死後に様々な悪事を働いていたことが分かったのです」


 ランクA冒険者のセルディオって、ウルムットで俺が殺した奴だ! フランに絡んできて、俺をカツアゲしようとした挙句、フランを愛妾にするとか言い始めたから天誅を下してやったのだ。まあ、俺を装備した者に降りかかるという天罰を利用したので、剣の呪いで自爆したという扱いになっているはずだが……。


 ウルムットのギルドマスターであるディアスが、セルディオの罪を暴いて他のギルドマスターを引きずり落とす的な話をしていたが、本当に告発したらしい。相手は侯爵家だろ? 大丈夫なのか?


「ギルドと侯爵家の仲が悪くならない?」

「なりましたね。ですが、国がギルドの肩を持ちましたので、侯爵家は賠償などに応じたようです」


 冒険者の中でも特に信用度の高いランクA冒険者の証言や、魔薬という証拠もある。また、国は冒険者ギルドとの仲が壊れるのを嫌い、全ての罪をセルディオに被せる方を選んだらしかった。


 さらにセルディオの従者がアシュトナー侯爵家から神剣の探索を命じられていたという証言をしたこともあり、侯爵家は単にスキャンダルによる信用の低下だけではなく、国から疑惑の目を向けられることになったという。


「最近は財力的な面でも陰りが見られます。我が商会も侯爵家と商売上の関係がありましたが、いくつかの支払いが滞っております」

「なるほど」


 セルディオの死にフランが関わっているという話をレンギル船長は知らなかった。どうもディアスが厳しく情報統制をしてくれたようだな。だが、かなりの人間が目撃した訳だし、完全にフランの関わりを隠すことは難しいだろう。アシュトナー侯爵家にも知られているかもしれない。


 となると、単にガルスの行方不明に関係している相手というだけではなく、フランを恨んでいると考えた方がいいかもしれなかった。アシュトナー侯爵家と関わる時には慎重に行動した方がいいだろう。


 バルボラの次はウルムットに行く予定だし、ディアスに少し話を聞いた方がいいかもしれないな。


コミカライズ最新話が公開されました。


また、今月24日に発売される4巻の続報です。

特装版には缶バッヂが2つと、冊子が付属します。

取扱店様はGCノベルズの転生したら剣でした特設ページに一覧が掲載されておりますので、

興味がおありの方はそちらをご覧ください。

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― 新着の感想 ―
知人と再開するのいいね
[一言] 仮にフランが戦えなくなっても舌で一旗あげられるかもしれないなw
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