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381 王級職


 炎の制御に関してクイナにチクチクとお説教をされるメアは、話の矛先を逸らすためか、慌てた様子でフランに話を振った。


「それで、フランはどんな職業に就いたのだ?」


 メアに聞かれたフランは、いつもの何気ない調子で応える。


「ん。剣王」

「ぶっ!」


 フランがコクリと頷き、自らの職業を口にした瞬間だった。メアが口に含んでいたお茶を盛大に噴いた。あーもう、フランの顔がお茶で汚れたじゃないか。


 俺がフランの顔を布でふきふきしてやっていると、メアが軽く震えた声で、フランに再度尋ねる。


「ど、どんな職業に就いたって?」

「剣王」

「き、聞き間違いではなかったかっ!」

「まさか王級職とは……」


 メアだけではなく、クイナも俺が表情を読み取れてしまう程度には驚いている。


『王級職っていうのは何だ?』

「戦闘系職業の中で、最上級に位置する職業のことです。剣王や槍王などの戦士系の職業以外にも、火炎王や暴風王といった魔術職も存在しているそうです」

「父以外で実際に目にしたのは、お主で2人目だがな……」


 想像以上に高ランクの職業であったらしい。王級職か……。


「剣王ということは、剣神化を得たな?」

「ん」


 やはり知っているか。というか、即座に聞いてくるあたり、無視できない強力なスキルということなのかね? メアの目は、恐ろしく真剣である。


「いいか? 使う時は細心の注意を払え。特に初めて使う時は、周囲に人がいないことを確認するのだ」

『そんなに危険なスキルなのか?』

「危険だ。制御に失敗すれば、自分も仲間も只ではすまん」


 メアがそこまで言うほどに強力な上、危険なのか……。


「系統で言えば、自己強化スキルになるのだろう。だが、あまりにも強力過ぎて、制御が至難の業なのだ。父も、それで失敗をしたことがあるらしい」

「失敗?」

「獣王陛下は、槍神化を初めて発動させたときに、当時パーティを組んでいた仲間を一人、殺めてしまっておいでです」


 おいおい、仲間殺しとは穏やかじゃないな。いったいどんなスキルなんだ?


「剣神化と槍神化が同一のスキルであるという前提で話を進めるぞ?」


 そうか。名前は似ていても、効果が全然違うことも考えられるか……。でも、同じ可能性が高いわけだし、槍神化の話はぜひ聞かねばならないだろう。


「槍神化は、一時的に使用者を強化し、同時に装備する槍に神属性を付与するスキルだ」

『神属性?』

「うむ。我もそこまで詳しいわけではないが、この世のありとあらゆるモノに対して、優位を持つ究極の属性だという」


 神属性。神の属性ってことか? そういえば、火炎無効化を持っていても、神炎は無効化できないという話をどこかで聞いたな。


「神属性を持った武器であれば、普通は斬ることの出来ないはずの幽体を斬り、破邪でしか倒せないはずの邪鬼を倒し、物理無効化を持つ粘精も真っ二つにできる」


 どんな耐性、無効化でも無視できるってことか? それは破格の能力だな。言ってしまえば、どんな相手でも剣で倒せるようになるということだ。


「だがな、神属性の凄まじい所は、耐性の無視だけではないぞ。先程言ったな? ありとあらゆるモノに対して優位を持つと。つまり、まるで弱点属性で攻撃したかのように、大ダメージを与えられるのだ」


 耐性無視だけではなく、常時相手に対する弱点付与ってこと?


「父は仲間が竜に飲み込まれてしまい、止むを得ず試運転もしていなかった槍神化を使用したらしい。そのスキルに一縷の望みをかけたのだろう。そして、父の攻撃は見事に竜を屠ることに成功した。飲み込まれてしまった仲間もろとも、であるがな」


 槍神化があまりにも強すぎて、獣王が投擲した槍は竜をあっさり貫通し、そのまま仲間の半身をも吹き飛ばしてしまったんだとか。それが今でも痛恨の出来事となり、獣王は周囲に仲間や部下がいる状態では槍神化を使えないらしい。まあ、無理もないがな。


「その当時、父が使っていたのはオリハルコン製の槍だったそうだ。それで、脅威度Bの魔獣を瞬殺したのだぞ? 師匠が剣神化の効果で強化された場合――どうなるか想像もつかん。それこそ、周辺の地形が変わるような事になっても不思議ではないだろう」


 うーむ。寸止めのつもりが、余波で殺しちゃいましたとか平気で有り得そうだった。


「ああ、あとは耐久値にも気を付けるのだ。武器に絶大な負荷をかけるそうだからな。オリハルコン製の槍でさえ、3秒ほどの使用で粉々に砕け散ったらしいぞ。しかも、その後数秒でさらに何本も槍をダメにしたらしいしな」


 な、なるほど……。だが、当然と言えば当然かもしれない。無理やり強化されるってことは、それだけ負担がかかるということなのだ。


『長時間の使用は避けないとヤバいってことか』

「うむ。いかな師匠とは言え、油断すればただではすまんだろう。もっとも、使用者にもかなりの負担があるそうだ。長時間は使おうと思っても使えんだろうがな」


 結局、勝負を決める瞬間に一瞬だけ発動するような使い方になりそうだな。まあ、それもこれも1度使ってみてからだが。


『どこかで試さないとダメだな』

「ん」


 にしても、潜在能力解放と閃華迅雷に続き、また身を削るタイプのスキルか……。


 しかも、俺たちの場合は一般的な過程をすっ飛ばしてスキルを習得してしまっている。そのせいで、体もスキルも制御力も、必要な水準を満たせていないのだろう。普通に習得に至った者たちに比べると、負担が大きいのだ。結果、身を削る結果となってしまっている。


 それでも、フランと俺を同時に強化できるというのは素直に有り難い。場合によって、閃華迅雷と使い分ける形になるかね?


『早速試運転をしてみよう』

「ん」



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