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380 新たな職業


 王都ベスティアでの最初の2日間はあっと言う間に過ぎ去っていた。王都観光と、メアとの模擬戦を繰り返しただけだからね。


 王城の訓練場を貸してもらったが、地面も壁も穴だらけだ。大地魔術で直そうかとも考えたんだが、魔術を阻害する特殊な建材を使うらしく、上手くいかなかった。


「ふはは! フランとの模擬戦はやはり心が躍るな!」

「ん!」


 本人たちは濃い内容の模擬戦に満足気だけどね。


 そもそも、俺たちがスキルを操れるようになるための訓練だって言ってるのに、ヒートアップしてくるとメアが本気になりかけるのだ。火炎魔術もスキルもバンバン放ち始めるし、なかなかハードだった。クイナが止めてくれなかったら、王城への被害はもっと大きくなっていただろう。


 まあ、おかげでスキルの習熟度が大分上がった。特に肉体操作法に関してはかなり上達しただろう。あと、火炎に対する見切りが上手くなって、火傷耐性というスキルを習得したのはご愛敬かな。


 2日目の最大のイベントは、王都の神殿へと赴いたことだろう。久々に職業を変更するためである。


 正直、メアに言われるまでは全然忘れていたんだが、考えてみれば俺たちは様々なスキルを習得している。新たな職業が出現している可能性はあった。


 前回確認したのは武闘大会の前だ。その時は魔導戦士以上の職業は選ぶことができなかった。そもそも俺たちが職業について思い至らなかったのは、現在の魔導戦士が極めて有用な職業だったということもある。


 固有スキルである魔力収束は、比較的魔術を苦手とする――まあ、俺に比べてという意味だが――フランにとって、短所を補ってくれる有り難いスキルだった。また職業的にも物理、魔術双方に補正がかかるので、両方を操るフランにとっては不満な点など一切見当たらない職業でもあった。


 だが、今回の激戦で成長した今なら、もっと上の職業が選べる可能性もある。確認しておいて損はなかった。


 職業を変更するための部屋にはお布施をすると入ることができた。石板が置かれていて、そこに触れることで石板に転職可能な職業を選ぶことができるようになっている。この部屋には神殿を管理している人間でも掃除以外では入ることは許されず、プライバシーが完璧に守られる作りだ。


 魔術や魔道具でのぞき見することも可能かもしれないが、やる奴はいないだろう。何せ神殿なのだ。誰だって、下手な真似をして神罰を食らいたくはないだろうからな。


『色々と表示されるな』

「ん」


 見たことがある職業から初見の職業まで、50近いだろう。普通はどれくらいなのか分からないが、多いことは分かる。


『タッチすると職業の解説まで表示されるとは、至れり尽くせりだな。3000Gもお布施を払っただけあるぜ』


 さて、より取り見取りな状態だが、気になったのは5種類だ。


 1つ目は以前から狙っていた職業、剣王である。この戦いで成長したおかげか、選択できるようになっていた。腕力上昇、剣術強化、剣技強化に加え、固有スキル『剣神化』を得られるという、剣特化型――というか剣を極めた者だけが辿りつける職業だ。


 獣王が槍王という職業についていたが、それと同格だと思われた。つまり、ランクS冒険者が就くような職業だということだった。圧倒的な第一候補と言えるだろう。だが、他にも面白い職業があるのだ。


 その1つが聖戦士である。なんか、オーラ力で巨大化しそうな職業だが、そのスキルは中々面白い。破邪強化、邪人特攻という対邪人スキルを覚える上、固有スキル『聖鎧』というスキルを習得できた。固有スキルの詳しい内容までは分からないんだが、名前からして対邪人用のスキルだろう。


 今後、ゼロスリードと出会った時など、強力な邪人と戦う際には心強い職業である。


『あとは魔術全般に補正がかかる大魔導士も面白いよな。多重起動時の負担が軽減されるみたいだし』


 固有スキルはないが、フランでも魔術の多重起動を扱えるようになるだろう。


「この天忍もすごい」

『だな。敏捷が極大上昇な上、察知系、隠密系のスキルに補正。しかも固有スキル『時空察知』もある。転移などにも反応できるようになるだろう』


 速度特化型のフランには相性がいいし、スキルの安定度を欠いている今の俺たちには、察知系、隠密系への補正はかなり有り難い。


『で、最後の候補が天魔闘士な』

「ん」


 全ステータス上昇、威圧スキル効果上昇、武術、武技、魔術スキルへの補正という、かなりバランスの良い職業である。どうやら、戦士系、魔術師系、双方への適性が高いと出現する職業であるらしいな。全体の能力を満遍なく底上げしてくれる職業でもあった。


『剣王、聖戦士、大魔導士、天忍、天魔闘士か。フランはどれがいい?』

「……剣王!」


 まあ、だよな。普通に考えたら剣王だよな。フランは魔術よりも剣術が好きだし。


『じゃあ、剣王にしよう』

「ん」


 フランが剣王を選択した瞬間だった。その全身が白い光に包まれる。凄まじい魔力が吹き上がっているな。ただ、嫌な感じはしない。優しく包みこむような温かい魔力だ。


「おおー」

『大丈夫か?』

「ん。力が湧いてくる」


 鑑定してみると、職業がきっちり剣王に変更されていた。ステータスも上昇している。固有スキルの剣神化も覚えた。


 ただマイナス面も勿論ある。魔力がわずかに減少し、固有スキル魔力収束を忘れてしまった。剣士としての能力が大幅に強化された代わりに、フラン自身の魔術使用能力は確実に下がっただろう。


 まあ、俺とフランの役割がより明確になったと考えればいいか。当面はフランが物理、俺が魔術面を担当する形になるだろう。


『さて、こうなると剣神化の効果を知りたいところだが……』


剣神化:使用者に剣の神の力を降ろす


 鑑定してみてもいまいち剣神化の威力が分からん。神の文字が入るスキルは全部こうなのかね?


 ただ、詳しい話を聞けそうな相手がいる。メアだ。彼女の父親である獣王リグディスが、槍神化スキルを所持しているからな。知っている可能性は高いだろう。


 フランが剣王の職に就いたことをバラす形にはなってしまうが、構わないだろう。そもそもフランはメアと職業を教え合う約束をしてるのだ。実はフランの前にメアが職業を変更しており、職業を教え合いっこしようと提案され、承諾していた。


 職業変更部屋を出ると、メアがワクワクした顔で出迎えてくれた。


「フラン! 良い職はあったのか?」

「ん。最高のがあった」

「おお! それは楽しみだ! とりあえず王城へ戻るとしようか!」


 さすがにこんな場所で話す内容じゃないだろう。他にも人がいっぱいいるからな。


 王城へ戻ると、早速お互いの新職業を明かし合う。秘密を教え合う感じに憧れているみたいだな。2人とも楽しげだ。まあ、内容は殺伐としてるんだが。


「我が職業は焔滅騎士という上位職だ」

「かっこいい」

「だろう! 操る火炎の威力が上昇し、騎士としての能力も大幅に上昇する、我に相応しい職業だ!」


 元は火焔騎士という上位職だったらしい。この焔滅騎士というのは、それよりもさらに高位に位置する職業であるようだった。


 その顔に喜色を浮かべるメア。だが、クイナが相変わらずの冷静な口調で、その喜びに水を差した。


「しかし、注意も必要です」

『注意?』

「滅の字が付く職業に見られる特徴ですが、攻撃力が上昇するにもかかわらず、制御力が追い付かないのです。結果、誤爆や自爆の危険性も高まります」


 うわー、超迷惑な職業なんだけど。メアって、ただでさえ炎の制御が甘いイメージだったのに、より不安定になったってことだろ?


「お嬢様、今後はより慎重な行動をお心がけ下さい」

「わ、分かっておるわ!」


フランの現在のステータスです


名称:フラン  年齢:12歳

種族:獣人・黒猫族・黒天虎

職業:剣王

状態:契約

ステータス レベル:54/99

HP:639 MP:510 

腕力:381 体力:281 敏捷:347

知力:237 魔力:274 器用:237

スキル

威圧:Lv2、隠密:Lv6、風魔術:Lv5、宮廷作法:Lv4、気配察知:Lv7、剣技:Lv9、剣術:Lv9、邪気耐性:Lv3、瞬発:Lv7、精神耐性:Lv2、挑発:Lv2、火魔術:Lv7、火傷耐性:Lv1、雷鳴魔術:Lv5、料理:Lv2、罠解除:Lv2、罠感知:Lv2

アンデッドキラー、イビルキラー、インセクトキラー、気力操作、剣技強化、剣術強化、ゴブリンキラー、精神安定、デーモンキラー、剥ぎ取り上手、不退転、方向感覚、魔力操作、夜目

ユニークスキル

剣神の祝福

固有スキル

覚醒、剣神化、閃華迅雷

特殊スキル

黒天虎の加護

称号

アンデッドキラー、一騎当千、イビルキラー、インセクトキラー、解体王、回復術師、剣王、ゴブリンキラー、殺戮者、邪人討滅者、スキルコレクター、スキルマニア、ダンジョン攻略者、超大物喰い、デーモンキラー、土術師、火術師、風術師、魔獣の殲滅者、雷鳴術師、料理王

装備

黒天虎シリーズ(名称:黒天虎の闘衣、黒天虎の手袋、黒天虎の軽靴、黒天虎の天耳輪、黒天虎の外套、黒天虎の革帯)剛力の腕輪、身代りの腕輪、魔術師の首飾り

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