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371 戦利品解体


 アースラースが去っていった後、俺とフランはアリステアの館の一階にある作業部屋の一つを借りて、解体作業にいそしんでいた。


 今回の騒動で手に入れた大量の魔獣の死骸が、次元収納に溢れているのだ。まだまだ収納が一杯になる気配はないが、死蔵しておくわけにもいかない。


 それに、中には結構貴重な魔獣の素材もある。防具の改造に使える物もあるかと思ったので、アリステアに提供しようとしたんだが、改造に関してはアリステアの手持ちの素材で間に合うらしい。


 というか、神級鍛冶師の持ち出し素材って、どんだけ貴重なのか聞くだけでも恐ろしいんだが……。まあ、その辺は仕上がってから聞くとしよう。


 ただ、物によってはアリステアが使える素材もあるかもしれないので、解体が終わったらリストを見せてほしいと言われていた。


 なので、とりあえず脅威度が高い魔獣から解体を始めている。だって、脅威度の低い雑魚魔獣の素材なんて、神級鍛冶師には必要ないだろうし。全てを解体するには時間も足りないので、優先順位が高いものから選別して解体する必要があった。


 最優先で解体するのは、邪人の軍勢と戦う前に戦った、最初の魔獣の群れのボス的存在であった、5体の魔獣だろう。グラファイト・ヒュドラ、クリムゾン・ウルフ、スティール・タイタンベア、アダマス・ビートル、男爵級悪魔の5種である。


 まあ、グラファイト・ヒュドラは俺のカンナカムイで跡形もなく消滅してしまったけどね。俺たちを最も苦しめてくれた、アダマス・ビートルと幻像魔術使いの悪魔はすでに解体が終わっている。


 邪人などを倒しまくったおかげか、悪魔のような人型の魔獣の解体も特に忌避感を覚えない。あれだけ殺しておいて、今さらという感じだ。まあ、悪魔の場合は血の色や内臓なんかが人とは全然違うので、人っぽくないのも大きいだろうが。


「師匠、これどうする?」

『うーん、毛皮はボロボロだが……』


 フランが次に取り出したのは、ウルシと激闘を繰り広げた脅威度C魔獣、クリムゾン・ウルフの死骸である。ウルシの死毒魔術によって全身を蝕まれたため、毛皮は禿げ、骨は脆くなり、肉は異臭を放っている。無事に残っている部分がほとんどない。


『でも、一応解体はしてみよう。無事に残っている部分があるかもしれないし』

「わかった」

『俺はこっちを解体するか』


 俺が取り出したのは、スティールタイタン・ベア。それなりに広いはずの作業部屋の半分以上が埋まってしまったな。なにせ体長10メートルを超える巨熊である。魔石を一撃で砕いたため、素材は完璧な状態で残っていた。


 そのせいで解体がメチャクチャ大変そうだけどね。皮を剥いで、肉を分け、内臓を個別に次元収納に仕舞う。こいつを解体するだけでも30分近くかかったな。解体スキルがマックスで、念動で自在に動ける俺でさえこれだぞ? 普通の冒険者とかだったら半日がかりの重労働になっていただろうな。


 他にも、ドラゴンリザードという、ドラゴンぽいオオトカゲや、樹木魔術を使用するドライアドライオン、ハイ・オーガの特殊個体など、それなりに強い、脅威度Dクラスの魔獣を解体していく。


 フランは途中でおネムになってしまったが、俺は夜通し解体を続けた。そのかいもあってか。全部で50体くらいは解体出来ただろう。肉も大量に確保が出来て、今後のフランの食事が豪華になることは確実だ。



 翌朝。俺はまだ寝ぼけているフランとともに、アリステアに必要な素材があるかどうか聞きに行ってみた。


「解体が終わったのか?」

『まあ、目ぼしいものはな。これがリストだ』


 書き出したリストを見せてみたが、やはり神級鍛冶師にしてみたらそこまで食指を動かされる素材はないみたいだった。ただ、俺たちの解体速度に驚いたらしい。


「本当にこの量を一晩で? 早いな」

『2人でやったから』

「ほとんど師匠がやった」

『3割くらいはフランがやってるよ』


 雑談しながらも、アリステアがリストを読み込んでいく。そして最終的に、クリムゾン・ウルフの食道とか、スティール・タイタンベアの牙などは使い道があるそうなので、それらを譲ることとなったのだった。


『あとは魔石がそれなりにあるんだが、吸収して平気だと思うか?』

「うーむ、どうかな……。スキルがどう統合されるかも分からんが……。やってみなけりゃアタシにもわからん」

『だよな』

「じゃあ、とりあえず吸収してみる」

「ああ、それがいいだろう」

『わかった』


 ということで、実験の開始である。俺は邪人の魔石をいくつか取り出してみる。魔石を鑑定しても宿るスキルは分からないが、ホブゴブリン・スピアラーの魔石はヴァルキリーに率いられていた邪人の物しかないはずだ。

 

 あの時の鑑定結果は覚えている。ほぼ全てのホブゴブリンが長槍術を所持していた。これを吸収するとどうなるか?


『来い』

「ん」


 フランが俺の刀身にホブゴブリン・スピアラーの魔石を押し当てると、問題なく吸収される。この辺の機能には大きな違いはないみたいだな。いや、少しだけ魔石を吸収した時の満足感が増したか? 改修で、より深く謎の魂さんとつながったからかもしれない。


『スキルはどうなったかな?』


 スキルを確認すると、長槍術、長槍技はない。多分、槍王術・地に吸収統合されたのだと思う。あと改修で消えたはずの技能スキル、穴掘りが追加されていた。


『穴掘りが得られたな』

「では、消えたスキルは、再度魔石から吸収した場合は復活するのか」

『これって結構マズくないか? せっかくスキルを減らせたのに』

「ふむ……。ちょっと待て」


 アリステアが俺を解析している。そして、再び魔石を吸収するように言ってきたので、今度はホブゴブリン・アーチャーの魔石を吸収してみた。


 やはり長弓術、長弓技は手に入らないが、大工という技能スキルが手に入った。


『どうだ?』

「ふむ……多分だが、改修によってスキル特化型に生まれ変わったおかげだろう。スキルの所有数はかなり余裕が出来たようだ」

「つまり?」

「あと120~150程度であれば、スキルを増やしても大丈夫だと思う。まあ、スキルの質などにもよると思うが……」

『それは朗報だな』


 何が恐ろしいって、無駄スキルがまた増えてきて、そのせいでまた動けなくなることだからな。


「だが、限界ギリギリまでスキルを溜めこむのはやめろ。出来ればその前に私のところに来い」

「勿論」

『わかってるよ。ただ、また改修するのか……』

「それは我慢するしかないな。まあ、何度かやれば慣れるんじゃないか? それに、スキルを消すだけなら今回ほど酷くはならんだろう」

『だったらいいんだけどな』


 その後俺はアリステアに見守られながら、魔石を吸収していった。何かあればすぐに対処してくれる相手がいるっていうのは、安心できる。


 最終的には100程度の魔石から魔石値を2203。スキルを15程度得たのだった。スキルに関しては、全て技能スキルだ。穴掘りと大工がレベル2に達している。


 ダンジョン産の邪人たちは、戦場での陣地構築用にこれらのスキルを与えられていたんだろう。


『……次の自己進化までは、先が長そうだな』


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― 新着の感想 ―
[一言] スキルイレイザーがあると楽になるかな
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