35 ゴブリン討伐戦 突入
まさかの日間1位です!
毎回言っている気がしますが、これも皆様の応援のお陰です!
2日連続、泣きましたよ。
たくさんの感想もありがとうござます。
ただ、そろそろ、返信が厳しくなりそうです。なので、大変申し訳ないですが、返信をストップさせていただきます。その分、執筆時間に割いて、お返しできればと考えています。全てに目を通していますので、ご安心ください。
あと、誤字のご指摘ありがとうございます。
自分のチェックの甘さに、衝撃を受けています。
できるだけ減らしたいとは思っているのですが……。
こちらも、ご指摘いただいた部分はその都度修正していきますので、見捨てないでいただければ幸いです。
「はぁぁ!」
「グギャーッ!」
『ファイア・ジャベリン!』
俺が発動の早い魔術をばらまき、接近するゴブリンの数を削る。そして、フランは抜けて近づいてきたゴブリンを始末する。自分たちのことながら、良い連携だ。
死体を全て収納するような真似はしない。後に来る奴らの取り分も残しておかないと、必要以上に恨みを買うかもしれんし。それに、収納の限界も分からないしな。いざと言うときに収納できませんでした、は嫌だし。ただ、魔石を吸収した死体は全部収納だ。
戦闘中に鑑定を使ってステータスをチェックし、ささっとスキルを確認して、有用なスキルを持っていたら魔石を斬り、魔石を吸収すると同時にその死体を証拠隠滅のために収納する。そして、持っていなければそれ以外の部位を斬って倒す。とっさの判断力が問われる作業だ。
そんなことを繰り返していたら、分割思考の使い方が異常に上手くなっていた。今では、魔術の2重詠唱も可能だ。魔術の詠唱はそれなりに集中が必要なので、分割思考スキルがあっても、同時に2つの詠唱は無理だったのだが……。
やはり、使用が難しいスキルは訓練して使いこなせるようにならないと、本当の能力は発揮できないらしい。
『はははは、ファイア・ジャベリン×2』
20本近い炎の槍が、ホブゴブリンの群れに降り注ぐ。
「師匠凄い」
『フランにだってそのうちできるようになるさ』
「頭痛くなる。キーン」
『それは、俺には分からない感覚だからな~』
脳みそがないおかげで、頭痛なんかないし。分割思考は俺の方が相性が良いようだ。あと、不本意ながら魔法使いスキルもあるしな。
「戦いながら、下級魔術の詠唱を目指す」
『俺の次の目標は、違う魔術を同時詠唱だな』
「がんばって」
『おう。まかせとけ』
幸い、ここは練習相手に困らんからね。
そうやって、フラン無双をしながら、ダンジョンを突き進んだ。
一応、反響定位で地形を調べているが、Lv1だとそこまで詳しくは調べられない。なので、気配察知、振動感知、熱源探知などでホブゴブリンの数が多い方向を割り出し、進んでいた。
「師匠、階段がある」
『2層目があったか』
ただ2層も、1層とほとんど変わらない作りだった。ホブゴブリンの密集具合が上がったくらいかね?
いいぞ、さらにスキルが集まるからな。
「師匠、あれ」
『おお、あれは……宝箱だ!』
行き止まりの通路に、目を引く箱が鎮座している。古びた木製の、電子レンジくらいの大きさの、箱だ。金具は錆びていて、逆に味がある。
『うんうん。これぞダンジョンの醍醐味だよな! な!』
「師匠たまにこうなる」
『はっはっは。どうする? 開けちゃう? 開けといちゃう?』
「良いけど、罠があるかも」
『うーん。そうだよな』
だが、俺なら問題ない。念動を使えば、離れた場所から開けられるからな。
『フラン、一応離れておけよ』
「ん」
『じゃあ、開けるぜ』
ギギィ……。
ヒュン!
宝箱の中から、1本の矢が飛び出す。人間が開けていたら、ちょうど頭に当たる軌道だ。
『矢の罠か』
「ベタ」
『さて、中には何が入ってるかね』
「わくわく」
中に入っていたのは、小さな黒い石だった。
鑑定の結果、『懐温石』というアイテムだ。魔力を込めると、少しだけ熱を発するという、ホッカイロ的な魔道具である。
街で、1000ゴルドくらいで買えたはずだ。出来立てのダンジョンじゃ、こんなもんかね?
「しょぼい」
フランの猫耳がペタンと寝ている。本当に残念なんだろう。
『金銀財宝に強力マジックアイテムは、でかいダンジョンまでお預けか』
「ん。せめて経験値を稼ぐ」
『その意気やよし! 行こうぜ』
そこからのフランは、残念さをホブゴブリンにぶつけるかのごとく、さらに無双状態だった。いつの間にか、ホブゴブリンどもがフランの姿を見ただけで、逃げ出すようになっている。情報が広まったんだろうか。だが、フランは逃げるホブゴブたちを追い、背中からバッサリだ。
キングとクイーンもあっさり狩ってしまった。まあ、多少強いと言っても、所詮はホブゴブリンだしな。これって、依頼完了なのかね? だが洞窟はまだ続いている。
『ここが終わりじゃないのか』
「先がある」
『ダンジョンマスターがいるんだろうな』
「いくとこまでいく」
『よし、行ったるか!』
そうやって2階層目を突き進んでいると、扉を発見した。
「大きいドア」
『いよいよボスか? 一応転移の羽を準備しておくぞ』
「ん」
ギギギィィ
俺の念動に押された扉は、軋んだ音を立てて、ゆっくりと開く。その先には、少し広めの空間が存在していた。中には、何もいない? いや、小さい魔獣の気配がある。蟲系の魔獣か?
『気を抜くなよ?』
「もちろん」
バタン!
おおう! いきなり扉が閉まってしまった。あれか、定番の、ボスを倒さなきゃ出られない系の罠か?
『罠はないっていう話だったんだが』
「閉じ込められた?」
『フラン、落ち着けよ』
「大丈夫。全部倒せばいい。やることは変わらない。問題なし」
肝が据わってらっしゃる。
ブブブブブゥゥ
「?」
『おいでなすったぞ』
部屋に湧き出したのは、青い甲殻を持った虫型の魔獣だった。角の生えた、ソフトボールサイズのテントウムシだ。ただ、裏側はダイオウグソクムシチックで、非常に気持ち悪かった。
種族名:アーミービートル・リーダー:妖蟲:魔獣 Lv5
HP:8 MP:20 腕力:4 体力:3 敏捷:22 知力:5 魔力:12 器用:11
スキル
風魔術:Lv1、眷属召喚Lv5、指揮Lv1、連携Lv1、酸の牙
種族名:アーミービートル:妖蟲:魔獣 Lv2
HP:6 MP:10 腕力:3 体力:3 敏捷:20 知力:2 魔力:4 器用:10
スキル
硬化Lv1、酸の牙
種族名:アーミービートル・メディック:妖蟲:魔獣 Lv4
HP:10 MP:15 腕力:1 体力:7 敏捷:20 知力:4 魔力:8 器用:10
スキル
回復魔術Lv2、酸の牙
種族名:アーミービートル・シューター:妖蟲:魔獣 Lv4
HP:3 MP:18 腕力:2 体力:2 敏捷:20 知力:3 魔力:10 器用:10
スキル
風魔術Lv3、酸の牙
雑魚だが、数が多い。100は優に超えているだろう。しかも、リーダーは眷属召喚を持っている。さっさと全滅させないと、雪だるま式に増えていくぞ。
「面白そう」
フランは順調にバトルジャンキーの道を歩み始めているようだった。気色悪い蟲の大軍に突っ込むと、喜々として戦い始めた。俺は念動を使い、虫たちの動きを封じて、アシストだ。
このくらい小さければ、最小限の念動でも動きを封じることができる。もっと大きいと、念動を使うよりも、普通に魔術でも放って倒した方が遥かに消費が少なくて済むからな。
「しっ! はぁぁ!」
俺が動きを止め、フランが魔石をひたすら貫く。一応珍しい魔獣らしいので、素材も半分くらいは収納しておこう。
最も厄介なのはシューターの風魔術だが、威力が非常に弱い上、MPが低いせいで数発撃ったら放てなくなる。正直、気が散る程度のものでしかなかった。
リーダーたちが次々と配下を召喚していくが、むしろご褒美だ。魔石値が溜まっていくぜ。
30分後。扉の外に、人の気配があった。
「くそ! 開かないぞ!」
ドナドたちが到着したらしい。
『仕方ない。終わらせよう』
「ボーナスステージ……」
『まあまあ、残念なのは俺も同じだ』
「ん……」
殲滅を開始だ。火魔術と広範囲剣技を連発する。あっという間だった。5分もかからず、残っていた200匹ほどを殲滅できてしまった。
いつの間にか、風魔術がLv7まで上がっている。それだけの魔石を吸収したという事だろう。
ガシャン
『あれ? あっちが開いたな』
ドナドたちがガンガン叩いている入り口の扉は、相変わらず閉まったままだった。そして、反対側の壁に隠されていた、もう1つの扉が開いた。
「凄い強い魔力」
『この魔力の強さ……、C級魔獣並……。いや、それ以上だな』
今まで出会った中で、最も魔力が強かったのは、グラトニー・スライムロードだ。だが、扉の向こうから発せられる魔力は、それを超える。
『まさか、できたばかりのダンジョンに、こんな魔力を持つ奴がいるなんて……』
「腕が鳴る」
『まて、今回の敵は本当にヤバイ。準備をしっかりするぞ』
アンチデスに、ステータス上昇系、リジェネレーションに、一定時間状態異常無効化等々、できる限りのバフをかけ、俺たちは部屋に乗り込んだ。




