34 ゴブリン討伐戦 開戦
日間ランキング6位?
2度見どころか、5度見くらいしてしまいました。
昨日、目指せ日間50位と言っていたのに、もう達成とか。
しかも、ブクマも1000件突破しました。
自分でも、何が起きているのかわからない……。
まじで涙出ました!
ありがとうございます!
「ゴブリンどもだ!」
見張りの叫び声が上がる。
今は、運んできた資材を使って、ダンジョンの前に簡易的な拠点を構築している最中だったはずだ。
ダンジョンの入り口から、ゴブリンが出現したようだな。俺たちは周辺の見回りに出されていたので、駆けつけるのが遅れてしまった。
「師匠、あれ」
『拠点の構築が終わってないじゃないか。完璧に乱戦だぞ』
冒険者たちとホブゴブリンたちが、入り乱れて戦っている。あれだと、範囲系の火魔術を叩き込むこともできん。冒険者側は、ドナドを中心に応戦しているようだ。
「いく」
『おう。ダンジョン突入前に、ある程度表の奴らを減らしておかんとな。冒険者が全滅したりしたら寝覚めが悪いし』
「師匠は寝ない」
『比喩だよ、比喩!』
フランが俺を抜き放つと、駆け出した。まずは、ピンチに陥っている、駆け出しどもの救援だな。フランは走る足を止めず、当たるを幸い薙ぎ倒していく。まあ、背後からの奇襲だし、ほぼ一撃だ。
「弱い」
『ホブゴブリンと言っても、1匹ずつはたいして強くないから』
とりあえず、今倒した個体のステはこんな感じだった。
種族名:ホブゴブリン・ソードマン:邪妖:魔獣 Lv8
HP:69 MP:38 腕力:34 体力:33 敏捷:25 知力:19 魔力:19 器用:23
スキル
威圧:Lv1、回避:Lv1、剣技:Lv1、剣術:Lv3、指揮:Lv1、瞬発:Lv2、連携:Lv2、気力操作
ゴブリン・キングと同じくらいか、やや弱いステータスだ。スキルは、経験豊富なキングの方が多彩だったが。ただ、こいつらは連携スキルも持っているし、集団だと厄介だろう。
出発前にフランに絡んできた傭兵崩れたちは、もう倒れて動かなくなっている。功を焦って前に出過ぎたのだろう。全身滅多刺しで、もう助からないことは見ればわかる。連携が上手い相手に、策もなく突っ込めばああなるだろう。
フランは見向きもしないが。下手したら、顔も忘れてるかもね。
「はっ!」
『入れ食いだな!』
俺はフランに振るわれながら、周辺にオーラ・ブレードなどの不可視攻撃を放ち、目立たぬようにホブゴブを削っていく。
「あ、ありがとう!」
「まじであんな可愛い娘が、こんな――」
「え? だれだ――」
「嘘だろう――!」
お、さっきの少年もいるな。無理をせず、堅実に戦っている。まあ、フランの姿に驚きすぎて、一瞬ピンチに陥ったけどね。先輩に助けられている。
他のC、Dランク冒険者は、洞窟の入り口を抑えるために必死で、拠点付近で強い冒険者は少ない。なので、ホブゴブリンたちの注目は自然と、無双をするフランに向いていた。
「大漁」
『向こうから寄ってくるしな。他の冒険者たちの助けになっているからいいが』
ただ、ここでは魔石の吸収を控えている。フランが倒したホブゴブリンから魔石がなくなっていると分かったら、色々面倒そうだし。
なので、鑑定で確認して、どうしても欲しいスキルを持っているホブゴブだけ、魔石を吸収している。
『そろそろいいか? さっさとダンジョンに入っちまおう』
「ん」
ダンジョン内なら、人目を気にせず魔石を吸収できるし、死体を収納しちまえば証拠も隠滅できる。
ダンジョンに向かうフラン。入り口付近は、人とゴブリンが押し合いをしている。
「情報通り、洞窟型」
ダンジョンには、迷宮型や洞窟型、自然型など色々な種類がある。洞窟型は、できたばかりのダンジョンに多くみられ、罠などがほとんどない代わりに、蟻の巣の様に複雑な造りの物が多いらしい。
使い魔を放って探査できる術師が、ダンジョンを調べた結果、内部に罠の類はないとのことだった。大量のゴブリンが往来するのに、罠は邪魔だしな。
あと、特殊空間の類もないという話だ。特殊空間というのは、転移封じや、回復封じ、魔力吸収などの特殊な効果のあるフィールドのことで、気づかずに入り込むと、全滅の危険さえある。それらを探知する方法があるらしく、特殊空間がないことは確定だそうだ。
俺たちにとっては朗報だ。罠を気にせず、ただひたすら戦ってればいいんだからな。
『行こうぜ!』
「ん」
『ひゃほーっ!』
洞窟の入り口を固める冒険者たちの壁を、フランは天を駆けて越えていく。それを見たドナドが驚いているな。目を丸くして、フランを見上げている。おいおい、もしフランがスカートだったら、ギルティだぜ?
「あれは、空中跳躍? 天騎士の固有スキルのはずだぞ!」
あれ? ちょっとマズったかな?
『天騎士? 名前からすると、結構上位っぽい感じだが』
天騎士って、どれくらい上位の職業なんだろうか。それによっては、空中跳躍の使用を、人前で控えなくてはいけないかもしれない。なにせ天だしね。強そうだ。
「師匠、今更」
『む……。それもそうか?』
まあ、フランの言葉も一理ある。というか、今後も似た様なことは有るだろうし、隠すだけ無駄か。だったら、開き直って使っちまったほうがいいか。
「それよりも、今はゴブリン」
『おっと、そうだったな』
「師匠は魔術を。着地したら、私が追い討ち」
『わかった』
フランが浮遊も使い、ひときわ高く跳躍する。それに合わせて、俺はトライ・エクスプロージョンを発動した。
ドドドォン!
入り口付近にひしめいたホブゴブリンを、まとめて吹き飛ばす。ドナドには目くらまし位の効果しかなかったけど、ホブゴブ相手なら必殺の威力だ。そして、着地したフランが、すかさず追い打ちをかけた。
「ソニック・ウェイブ!」
Lv5剣技、ソニック・ウェイブ。衝撃波を放つ剣技だが、ホブゴブリンたちをまとめて倒すには、良い技だ。
「チャンス」
ゴブリンが減った洞窟入り口に、フランがサッと駆け込んだ。
「あ、待て! ダンジョンに突入するのは、ランクD以上の冒険者だけだ!」
無論知っている。なので、誰にも邪魔させない様に、抜け駆けをしたのだ。ドナドたちは、まだホブゴブリンと戦っているし。
「くそっ! お嬢ちゃんを追うぞ!」
「そうっすね。自業自得とは言え、あんな小さい少女を見殺しにするのは寝覚めが悪い」
「馬鹿! そうじゃねーよ!」
「は?」
「あの嬢ちゃん放っておいたら、美味しいところ全部持っていかれちまうぞ!」
「まさか、あんな少女が?」
「さっきの空中跳躍に、魔術を見ただろうが! あの嬢ちゃんに関しては、外見は無視しろ。子供の皮をかぶった、凄腕冒険者だと思え!」
今回、掃討戦終了後にギルドが回収した素材に関しては、換金後にギルドがマージンを抜き、あとは等分して冒険者に分配される。だが、戦闘中に自分で仕留めて、自分のアイテム袋に収納した分に関しては、所有権が認められることになっていた。
つまり、倒せば倒すほど、実入りが上がるということだ。冒険者たちのやる気をアップさせるための措置だろう。まあ、場合によっては、抜け駆けや仲違いを引き起こすと思うがね。俺たちが勝手にダンジョンに突入したみたいに。
「師匠」
『こりゃ……経験値の群れだな!』
ダンジョンの中は、ホブゴブリンの寿司詰め状態だ。
「お願い」
『おう! フレア・ブラスト!』
Lv1火炎魔術、フレア・ブラスト。炎を収束させた、熱線を放つ魔術だ。範囲はさほど広くないが、威力は火魔術を大きく超える。
キュイン――ボボォン!
熱線がゴブリンたちを貫き、爆風が残った奴らもなぎ倒す。洞窟の様な狭い場所にぶっ放せば、その威力は絶大だった。
フランはさらに突き進む。
『有り金はたいて転移の羽も買ったし、行けるところまで行っちまおうぜ!』