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337 異常な光景


 ダンジョンを目指して出発してから4時間後。北上していたゴーレム馬車は、俺が考えていたよりもかなり早く境界山脈近くに到達しようとしていた。走る速度は遅いのだが、どんな地形でも疲れ知らずで走り続けるので、途中で休憩などが必要なかったのだ。


 1時間ほど前に熟睡から目覚めたフランも、幌から顔を出して、近づいてくる境界山脈を見上げて感嘆の声を上げていた。もっと寝ていればいいと思うんだが、どうやら色々と興奮しているせいで眠りが浅かったらしい。それでも十分に疲労は回復しているようなので、寝た甲斐はあったけどね。


「おお~、おっきい」

『まじで高いな……。頂上が雲で見えん』


 多分、エベレストよりも高いんじゃなかろうか? もうここまでくるといまいちサイズ感がつかめないので、正確な標高は分からないが。


 そんな高さの山々が、山脈となって連なっている姿は圧巻の一言だった。


 しかも普通の山と違い、裾野がほとんど広がっていない。遠目からでは、垂直に切り立つ巨大な壁に見えるほどだ。まるで天上から雲を突き抜けて地面に向かって流れ落ちる、岩の瀑布のようにも見えた。


 近寄って見ると、傾斜がきついだけなのだと分かる。それでも、普通の山に比べて崖に近い姿なのは確かだった。 


「もうすぐで到着だな。キアラ師匠、お体の調子はどうです?」

「もう大丈夫だ。ポーションも飲んだしな。それにしても早かったな」

「ん。あっと言う間」

「それは2人がずっと話をしていたからでしょう」


 メアが言う通り、キアラとフランは起きてからずっと話をしていた。まあ、戦闘の心得とか、閃華迅雷の使い方についてといった、とても老人と子供の話す内容ではなかったが。


 キアラが過去に倒した魔獣や戦士との戦いの話や、どうやって威圧を使えば効率的に相手の心を折れるかといった、殺伐とした会話をしていた。お婆ちゃんと孫のほのぼのとした語らいを期待した俺が馬鹿だったぜ。


 ただ、凄まじくためにはなったな。閃華迅雷にはやはり先があるようだった。フランが黒雷招来を自然と理解していたように、キアラは黒雷転動を誰に言われることもなく使えていたのだ。フランが使えないのは、やはり戦闘経験の差だと思われた。


 自身に「使える」と暗示をかけるような真似をしてみても、使えるようにはならなかった。


「難しい」

「なあに、その年でその域に達しているんだ。修行を怠らなければすぐに使えるようになる」

「ん。頑張る」


 内容は殺伐とはしているが、フランは楽しそうだ。やはり同族との会話は特別であるらしい。


「お嬢様」

「どうした? 何があった?」


 御者席にいたクイナがメアに声をかける。俺には普通の声に聞こえたが、メアにはその声に含まれる緊張が伝わったらしい。即座に臨戦態勢を整えて、クイナに聞き返した。


「異常事態です」


 その言葉を聞き、メアとフランが御者席側から首を出す。


「あれを」

「……な、何があった……?」


 クイナが前方を指差しているのだが、メアが驚くのも無理はない。馬車の向かう先に、大量の魔獣の残骸が散乱していたのだ。それこそ数百の魔獣の無残な死体が、広い範囲に散らばっている。


「ダンジョンの魔獣か? だが、この倒され方は……」

「はい、異常です」


 クイナが言う通り、魔獣は異常な殺されかたをしていた。全ての魔獣がまるで上から押しつぶされたかのように、ぺしゃんこに潰れていたのだ。


 小型の雑魚も、どう見ても強そうな竜に似た外見の魔獣も、邪人も、全てが同様に地面に押し付けられて圧殺されていた。しかも広範囲にわたって。荒野を見渡すと、辺り一帯は全て同じような状況であるらしい。


 馬車を下りて周辺を確認する。異常なのは魔獣の死骸だけじゃなかった。


「大地が平らすぎる」

「ん」


 メアが言う通り、辺りの地面がロードローラーで均したかのように、辺り一面が真平になっていた。街道と比べても、圧倒的にこちらの方が平らだろう。比べるのもおこがましいレベルだ。


 周囲を調べると、ちょうど平らな部分と通常の荒野の境目を発見することができた。まさに境界と言える見た目だな。石がゴロゴロと存在する荒野が急に途切れ、いきなり1メートル以上の深さがある段差になっているのだ。


 何と言えばよいだろうか。縦横100メートルほどの巨大な鉄の箱を、凄まじい力で大地に押し付けたら、こんな光景が生まれるかもしれない。


 さらに周辺を歩くと、似たような段差をいくつも見かけることができた。どうやらこの光景を生み出した存在は、さきほどの鉄の箱での圧縮(仮)を何度も行ったらしい。その際に押しつぶす魔獣の数や質によって、力加減を微妙に変えているのだろう。微妙に段差ごとの深さが違っていた。なので、段差と段差が重なる場所などは階段のように見えている。


 使える素材や魔石が無いかと思って、俺は結構真面目に探したんだが、まともな物は残っていなかった。素材はどうやっても再利用できそうもないほど潰れているし、魔石も一緒に粉々だ。


 大きなトカゲの魔獣だったと思われる死骸を、念動でゆっくりと持ち上げてみる。すると、まるでせんべいのような状態であった。固いはずの鱗はほとんどが砕け散り、残っている鱗にもヒビが入っている。


 フランが大地をコンコンと叩いてみると、押し固められて石のようであった。俺やフランだって、もっと狭い範囲だったら同じことをやれる。だが、どれだけの力を使えば、広範囲を一気に圧縮出来るのだろうか。


「これは、いったい何者の仕業だ……?」

『メアもわからないのか?』

「ああ、尋常の技とは思えん。クイナ、お前は心当たりはあるか?」

「ないですね」

「キアラ師匠! 師匠は心あたりが無いですか?」

「ある」


 メアもクイナも知らないようだったが、キアラには心当たりがあるらしい。さすが、長く生きてるだけあるな。メアも驚いている。


「ええ? これをやった存在に心当たりがあるのですか?」

「ああ、たった1人だけ、心当たりがある」


総合評価がついに100000ptを超えました! ありがとうございます。

しかも、「久し振りにランキングでもチェックしてみるか―と」思って総合ランキングを見てみたら、

なんと累計で100位以内に入っているじゃないですか。まあ、ギリギリなんですがwww

これも応援して下さる皆様がたのおかげでございます。

これからも頑張りますので、引き続き当作を読んで頂けたら幸いです。


因みに、もう一つの連載作品「出遅れテイマーのその日暮らし」は

信じられないことにVRゲーム部門で現在のところ年間1位に入っている様です。

本人が一番信じられないんですが……。

転生剣ともども、そちらもよろしくお願いします。

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