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327 邪神の支配?


 ミューレリアが哄笑を上げながら叫ぶ。


「糞爺の支配は解けた! あははは! あとはダンジョンの、混沌の女神の支配さえどうにかすれば私は自由よ!」

『自由になって、どうするつもりなんだ?』

「ダンジョンの力を逆に利用して、私が望む真の楽園を生み出してやるの! リンフォードの糞爺たちから提示された、ダンジョンの片隅に追いやられた紛い物じゃない! 粗野で愚鈍な獣人どもを皆殺しにして、私の理想の国を建ててやる!」


 やっぱりそっちか。静かに消えたいとか言うはずないとは思ってたが……。こいつは絶対に自由にさせちゃいけないだろう。


「だからあなたの力は私が使わせてもらうわよ? 拒否は許さないから」


 ちっ。どうする? ここで明確に拒絶したら、すぐにでもミューレリアは俺やフランたちを攻撃するだろう。だったら、ここは少し含みを持たせてみるか? そのまま装備するように仕向けるとか――。


 そんなことを考え、悩んでいる時だった。ミューレリアの手から黒い魔力――邪気が凄まじい勢いで吹き上がった。そして、まるでクラゲの触手のように、邪気が俺の刀身を這い上がってくる。


「ふふふ」

『ちぃっ!』


 咄嗟に全力の念動でミューレリアの腕を振り払おうとしたが、ビクともしない。どんな腕力してやがる!


『離しやがれ!』

「あははは! 無駄無駄!」


 雷鳴魔術、火炎魔術を発動するものの、それも防がれた。やはり雷鳴無効があるようで、雷鳴魔術に至っては防御さえしなかった。火炎魔術も、最も威力が高いインフェルノ・バーストを連打したが、ミューレリアの障壁を突破することはできない。


 時空魔術も発動しなかった。次元収納は使えたことから考えるに、ミューレリアの生み出した結界の中では、時空魔術の発動だけが阻害されてしまうらしい。


『くそっ!』

「うふふふ。苦しいでしょう?」


 ミューレリアがサディスティックな笑顔を浮かべながら、そう言ってくる。


「苦しくて、痛くて、恐ろしい? 解放してほしいかしら?」


 え? 別に苦しくも痛くもないが……。耐久値も特に変化はない。だが、俺が悩んでいる間にも、ミューレリアは返事も待たずに、勝ち誇った顔でしゃべり続けた。


「この苦痛から解放されたい? なーんてね。もう拒否するわけがないけどね! くくく。魂を持つものは何人たりとも邪神の支配から逃れることはできないのよ!」


 どういうことだ? 何かされたのか? さっきの触手みたいな邪気のことを言っているんだろうが……。でも、俺に何も変わりはない。それとも体の支配権が奪われたとか?


「さあ、私を称えなさい!」

『……』


 別に命令された通りに動いてしまうとかもなさそうだ。普通に拒否できる。精神が乗っ取られた感じもない。


「どうしたの? 私を称えなさい!」


 何が起きているのか分からないが、ここはミューレリアに支配されていると思わせておいた方がよさそうだな。


『えーっと、ミューレリア様?』

「それだけ? 魂があると言っても所詮は剣ということなのかしら? まあいいわ。自分で飛びなさい。念動があるのだから、自分で動けるのでしょう?」

『はい』


 俺は言われた通り念動で浮かびつつ、軽く体を動かしてみた。やはり体も思う通りに動く。左右に動かしたり。あえて念動を切って数秒間だけ自由落下したりもしてみた。


 何故かは分からないが、ミューレリアの支配は本当に失敗したらしかった。だが、俺を支配したと思い込んでいるミューレリアが、勝ち誇った顔で俺に命令してくる。


「何か狙ってたみたいだけど、私の下僕になった状態では何もできないでしょ? ああ、支配無効スキルを持ってるみたいだけど、そんなもの無駄よ? 邪神の力の前には無意味だもの! あははは! 自分の相棒であるインテリジェンス・ウェポンに攻撃されたら、あの娘はどんな顔をするかしら? さあ、行きなさい! あの小娘を刺し貫くのよ!」


 そう言ってミューレリアはフランを指し示す。明確な命令だったが、特にその通りに体が動いてしまったりはないな。


 ただ、ミューレリアは俺を支配できたと思って油断しきっている。これはチャンスだ。この幸運をどう生かすか、俺は様々なパターンをシミュレーションした。このままミューレリアを攻撃するか、支配された振りをしてフランの下に戻るか。


 だが、フランの下に戻ったとしても、またさっきの引き寄せ能力で奪われたら同じことだ。むしろ無防備な今こそ、千載一遇のチャンスと考えるべきだ。


 ではどうやって攻撃をするか。雷鳴無効を持っている可能性が高いので、カンナカムイはダメだ。念動カタパルトでは仕留めきれるか分からない。さっきから探っているんだが、魔石の位置が分からないのだ。いや、そもそも魔石があるのかもわからなかった。


 元々黒猫族であり、現在は邪人となっているようだが、もしかしたら魔石が無い可能性もあるだろう。だとすると頭や心臓が狙い目なんだが、それで殺しきれるか? それすらも怪しかった。


 どうする? 考えろ! 高速思考と同時演算をフルに発揮して考える。何秒も時間をかけていたら怪しまれる。早く決めないと! 最適な攻撃方法は何なんだ?


 雷鳴魔術以外の魔術をカンストさせて、極大魔術を放つか? そもそも、ミューレリアにダメージを与えられそうなのが、その選択肢しかないのだが。


 剣王技が何らかの条件を満たしておらず進化させられない以上、物理的なスキルでダメージを与えるのは難しかった。剣王技・天断はフランの助けなしに使ったところで、ミューレリアに通じるかも分からない。


 ならば魔術となる訳だが、残りの自己進化ポイントは11だ。これでカンストさせられるのが火炎魔術か大地魔術である。他に使えそうな魔術が無いか再度確認したところ、光魔術だけでなく樹木魔術、砂塵魔術もこの戦いでいつの間にか習得していたが、現状ではLv1なので選択肢には入ってこない。


 いや、待てよ。フランを攻撃する振りをして、ワルキューレを攻撃できないか? 操られているせいで思考能力が低下して、ワルキューレも巻き込んで攻撃してしまいました的に。うまくすれば、自己進化できるところまで魔石値が溜まるかもしれない。自己進化ポイントを再度得ることができれば、複数の魔術をカンストさせる事も出来るだろう。


 だが、それで警戒されてしまったらもう2度とミューレリアに近づけるか分からなかった。魔術を幾つカンストさせたところで、ミューレリアが本気で防御しようと思ったら、防がれてしまう可能性が高い。だとしたら余計な真似はせずに、このまま隙をついて攻撃をした方が良いだろうか?


『くそっ、どうする……?』


 その時だった。その間も何か有効なスキルが無いかと自分のスキルを検索していたのだが、奇跡的にあるスキルを発見したのだ。


 それは、鑑定遮断や魔獣知識などのように、ポイントを消費することで新たに得られるスキルの一覧の中にいつの間にか追加されていた。多分、俺のランクが15に達したからだろう。他にも色々なスキルが一気に追加されているようだな。


破邪:邪神の眷属に対して、与ダメージ倍化。邪気封印効果あり。


『破邪……。邪人特効スキルか!』


 イチかバチか魔術のレベルをカンストさせるよりも、有効な手段に思えた。


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― 新着の感想 ―
ここでミュレーリアの支配が効かなかった理由は後に判明します
[一言] おおぉ、これはまさかこの前に神様から師匠さんに施した処理が意外に役立ったんですね!神様、ちゃんと真っ当な仕事もしてくれたね。
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