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325 混沌の女神の眷属


 目に魔力を込め、何らかのスキルを発動したと思われるミューレリア。俺をじっと見つめていたかと思うと、興奮したように叫んだ。


「うふふふ! 凄いわね! なにこれ! インテリジェンス・ウェポン? しかも時空魔術だけじゃなくて次元魔術までもってるじゃない!」


 鑑定遮断仕事しろ! どうやら全部見られてしまったらしい。目を爛々と輝かせたミューレリアが、俺たちに向かって邪気を込めた手の平を突き出す。


『フラン! 俺のことがミューレリアにバレた! 何かしてくるぞ! 注意を払え!』

「ん!」


 転移が使えない今、フランの超反応が頼りなのだ。だが、次の瞬間に起きたことは、俺たちの想像の埒外であった。


「来なさい」

『なっ……!』


 気づいたら俺はフランではなく、ミューレリアに握られていた。何が起きたのか分からない。多分、何らかのスキルだろう。無詠唱を持たないミューレリアが一瞬で発動したところを見るに、魔術ではないと思うが。


「! 師匠!」

「師匠? ああ、この剣の名前ね。変な名前」


 俺を一瞬で奪われたフランが動揺してしまっていた。


『フラン! 隙を見せるな!』

「くっ!」


 フランがワルキューレの蹴りで吹き飛ばされた。障壁で防いだので大ダメージではないが、さらに攻め込まれている。どうしても俺が気になってしまうのだろう。


『フラン! これはチャンスだ!』


 強大な力を持ったミューレリアがわざわざ自分から俺を引き寄せてくれたんだ。近づく手間が省けたというものである。


『わざとミューレリアに装備させて、隙を作ったところを攻撃する! だから心配するな!』

(……わかった)


 俺の言葉に何とか自分を納得させたのか、フランは剣を取り出して構えると、ワルキューレと向かい合った。


「ほらほら! どうしたの? 動きが急に悪くなったけど! 魔剣が無ければ戦えないのかしら!」

「うるさい」


 フランの手数が減り、被弾が増え始めた。まだスキル共有は生きているが、俺の援護が無くなってしまい、先程までのように余裕がある戦いは出来ないだろう。だが、この千載一遇のチャンスは逃せない。俺はフランを信じて、ミューレリアの隙をうかがった。


「ふーん。さて、どう――」


 バリバリィィ!


 ミューレリアが何かをしようとした瞬間、その体を電撃が包んだ。俺を装備しようとしたらしい。これこそ俺の待ち望んでいた展開だ。これで隙を見せた瞬間、魔術と念動カタパルトで攻撃してやる!


 だが、ミューレリアに隙は生まれなかった。なんと、何事もなかったかのように俺を握ったままなのだ。


「あら? 何かピリッとしたかしら?」


 それだけである。まさかそれだけとは。覚醒しているわけでもないのに、雷鳴無効があるのか? 黒猫族である以上、雷鳴に対する高い耐性があってもおかしくはない。それとも、こいつが強すぎて全く効いていないのだろうか? どちらもあり得る。


 ただ、こいつは俺を装備しようとした。つまり、俺に興味を持っているという事だ。このレベルの相手を倒しうる機会というのは、絶対に逃すべきではない。分の悪い賭けだったとしても、わずかでも勝機があるのであれば乗るべきだ。


『……俺を装備するつもりか?』

「あははは! 凄い! 喋ったわ! まるで人じゃない! 魂を持っているのは見えたけど、これほどとは思わなかった! 欲しい! この剣欲しいわ!」


 まるで子供のようにはしゃぐミューレリア。だが、この性格であれば俺の誘いに乗るかもしれない。


『認められていない者が俺を装備しようとしたら神罰が下る。1回目の雷の比じゃない。まあ、お前なら神罰にも耐え、俺を装備できるかもしれないがな』


 自尊心をくすぐりつつ、装備を促す。神罰の情報もさり気なく教えてやった。これでミューレリアが俺を装備しようとすれば、罰が下るはずだ。雷撃に関しては防がれたが、神罰はいくらミューレリアでも防げないであろう。最悪、ダメージを与えるだけでもいい。


「……へえ? でも、神罰でしょ? 私だって学習してるんだから。そう言われて、装備するわけないじゃない」


 ちっ。思った以上に冷静で、物事を考えていたか。勢いで装備すると思ったんだが……。仕方ない、作戦変更だ。


『なんだ、怯えているのか? 期待外れだな。前言撤回だ。お前如きでは俺を装備することはできないだろう』


 今度はミューレリアを挑発してみた。こいつは妙なプライドがあるようだし、挑発に乗ってくる可能性はあるはずだ。


「ムリムリ。神罰はもう懲り懲りだもの。神は嫌いだけど、もう奴らを甘く見たりはしないのよ。それにしても神罰ね……」

『……ああそうだ』

「もしかして神剣? それとも神の眷属? いえ、神罰と謳っているだけで、実際は単なる防衛機構という可能性が1番かしら……。何か特殊な能力があるのは確かみたいね。まあいいわ。そんなことより少しお話ししましょう? インテリジェンス・ウェポンと話すなんて初めてよ」


 ちっ。挑発も失敗したか。だが、まだ装備させるチャンスはあるはずだ。今は機会をうかがうために、ミューレリアの言葉にあえて乗ってやろう。


『話す? 俺と? 何を話すつもりだ?』

「そうねぇ? 誰に作られたのか知りたいわ? 神級鍛冶師? それとも他の人間?」

『俺にも分からない。その記憶はないからな』

「ふぅん? じゃあ――」

『まて、今度はこっちの番だ』

「あら? 面白いわね。何が聞きたいのかしら?」

『お前は、ダンジョンマスターなのか?』

「違うわよ?」

『なに? じゃあ、どうして――』

「ダメ。今度はこっちの番でしょ?」

『……わかった』


 フランは落ち着きを取り戻し、ワルキューレと互角に戦っている。まだ余裕があった。だったら、ここは情報収集を進めよう。うまい具合に交互に質問をするという展開に持ち込めたからな。


「製作者は分からないと言っていたけど、どこまで覚えているのかしら?」

『俺の記憶は、つい最近からのものしかない。装備者であるフランと出会う直前からだ』


 あえて嘘をつかないのは、ミューレリアが嘘を見破るタイプのスキルを持っているかもしれないからだ。さっきの誰に作られたのかという質問に対して、製作者が分からないと言った時に疑いもせず納得したことからも、嘘看破系スキルを所持している可能性は高かった。


 こいつ相手に信頼云々というのもおかしな話だが、嘘をついたとばれてしまったら質問が続けられない可能性が高い。だったら、多少こちらの情報は与えることになっても、向こうの情報を引き出せる方が良いだろう。


「ふうん。造られたばかりなのかしら? それとも封印が解かれたばかり?」

『次は俺の番だ。ダンジョンマスターじゃないと言ったな? では何者だ? ダンジョンの力を利用できるようなことを言っていたが……』

「知りたい? まあいいけど。私はダンジョンサブマスター。マスターの権限の一部を利用できるのよ? ポイントを利用したりね」

『サブマスター? ポイント?』

「順番を守って。次は私。あなたのふざけた名前は何なの?」


 ふざけたって……。まあ、仕方ないが。今は慣れて、むしろ愛着もあるが、俺だって最初は変な名前だと思っていたからな。


『フランが付けてくれた名前だ。俺には名前がなかったからな』

「へえ? 名前が無かったの? やはり神剣ではないか……」

『俺の質問だ。ポイントっていうのは、なんのことだ?』


 ミューレリアが呟いた言葉だが、妙に気になった。まあ、俺も自己進化ポイントを利用するしな。


「そんな事が知りたいの? 別にいいけど、どうせ喋れないだろうし。ポイントっていうのは、ゴッデスポイントと、通称GPと呼ばれるポイントのことよ。ダンジョンを適切に運営していると、忌々しい混沌の女神から与えられるの。そのポイントをダンジョンコアを通じて使用することでダンジョンを拡張したり、魔獣を召喚したりすることができるわ。――え?」


 どうしたんだ? 説明を終えたミューレリアが、何故か自分で驚いているんだが? だが、ミューレリアの言葉は止まらない。


「ポイントを得る方法は色々とあるわ。例えば、ダンジョン内で生物を殺すこと。しかもより強く、経験を多く積んだ個体の方がもらえるポイントが高いの。ダンジョンマスターがわざわざ冒険者を呼び込む理由がそこね。他には地脈から魔力を吸い上げてポイントに変換することも出来るけど、あまり効率は良くないわね」


 そこまで説明して、ミューレリアが驚いたように目を見開いていた。いや、実際にかなり驚いているらしい。


「やっぱり! やっぱり喋れるわ! あははははははは! なんで?」


 ミューレリアが今度は喜びに満ちた表情で、哄笑をあげた。まじで意味が分からん。


「ねえ、あなたは何者? ダンジョンの関係者なの?」

『なに?』

「神剣かと思ったら違うようだし……。混沌の女神の眷属?」

『いや、俺こそ知りたいんだが』


 前に混沌の女神と邂逅した時に眷属だと言われたが、結局詳しい説明はなかった。


『なぜ、そんな事を聞く?』

「ダンジョンの眷属は、ダンジョンに縛られる。そのせいでダンジョンについて、他者に語ることはできないわ。制限なく話せるのは他のダンジョンの眷属くらいかしら?」


 そういえばルミナがそんな事を言っていたな。でも、こいつは俺に対して普通に喋れてるぞ。それとも、この程度では制限に引っかからないってことか? だが、かなり詳しい話だったが。


 それにルミナからはその制限とやらのせいで、ダンジョンの詳しい話は聞けなかった。ただ、考えてみるとあの場にはフランもウルシもいた。2人が制限にかかってしまっていたのかもしれん。


「私は元々ダンジョンに属する存在じゃなかった。数年前にダンジョンの力と邪術師のリンフォードという男の力を合わせて、邪神様の御許から召喚された存在だわ。リンフォード! あの忌々しい爺! たかが邪術師が、邪神の巫女たる私を支配したの! そして、今になってダンジョンのサブマスターなんかにされた! 私たちを滅ぼした憎むべき神々の眷属にさせられたのよ! あの盗賊上がりの雑魚にも、マスターというだけで逆らえない! ダンジョンの誓約にも逆らえない! 何もかも忌々しい! でも、あなたとは喋ることができる! この理由が分かれば、私はダンジョンの支配から抜け出すことができるかもしれないわ!」


 待て待て。何やら狂喜しているようだが、俺にとっても聞き逃せない名前が出てきたぞ! 何て言った? リンフォードって言わなかったか? 邪術師の老人で名前がリンフォード。そんな存在が複数いるはずがないだろう。


『お前の言う邪術師とは、リンフォード・ローレンシアのことか? 100歳を超えた、化け物みたいな爺さんだった』

「あらあら? 知っているのかしら?」

『奴なら他の大陸で死んだぞ?』

「ああ! やっぱり! 私を現世に縛る力が急に弱まったから、何かあったと思ったのよ! あははは! ざまあみろ!」


 ここに来てリンフォードの名前を聞くことになろうとは思わなかった。つまり、奴がバルボラに来る前に、この国で悪巧みをしていたってことなんだろう。


『いったい、お前らは、リンフォードは何が目的なんだ?』

「ふふふふ! いいわ! 気分が良いから、特別に教えてあげる!」


腕が痛いので、今回の分は音声入力で執筆してみたんですが、ダメですね。私には合わないようです。

喋った言葉がダラーッと羅列されるので、文章にまとまりが無くなる上に妙に長くなる。これでもかなり削って短くまとめたんです。

それにファンタジー用語の変換にも難がありますし、途中で何を書いていたのか忘れるし。

しかもメチャクチャ疲れるんです。執筆後に頭が痛くなりましたwww

今後は普通にタイピングで執筆します。まあ、腕折ったりしない限りは……。

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― 新着の感想 ―
作者さんが、並行思考とかを習得すればよきよき。
[一言] つまり……FGOのサーヴァントか……祖霊召喚や英霊召喚そのものはインディアンの文化からあったけど……神の反逆者も召喚可能とかロックすぎるだろ。混沌の女神
[一言] 生きてたんじゃなくて召喚されたのか
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