表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
321/1337

319 師匠とメア


「この剣の本当の銘は暴竜剣・リンドヴルム。世に名高い神剣の一振りだ」

「!」

「ふふん。驚いたか?」

「ん!」


 フランが高速でコクコクと頷く。いやいや、まじか? 鑑定には竜剣リンドとしか表示されないぞ? 俺には鑑定できない程、高位の相手という可能性もある。むしろ、神剣であれば当然だろう。メアも自信満々だ。


「本当だ。だが、使い手の技量不足のせいで、力が解放されていないのだ」


 神剣と言うのは、生半可な力では扱える物ではない。それ故、メアではリンドヴルムの力を引き出しきれていないんだとか。


 だが、それでも俺は信じ切れていなかった。だって、神剣だよ? 散々超兵器だの、国を揺るがすだのと聞いていたあの神剣が、目の前のテーブルの上にポンと置かれているのだ。信じられる訳がない。


 そもそも、能力だってそこまで凄まじくはない。いや、魔剣として考えれば破格の性能なのだろうが、噂に聞く神剣に比べたら可愛い物だった。


「本当ですよ。なにせ神級鍛冶師に直接見てもらいましたから」


 クイナがそう補足する。そう言えば、この国には神級鍛冶師がいるんだったな。ということは、やはり本当であるらしい。


『ま、まじか……!』

(凄い!)


 確かに、王女の身分などよりも、よほど重要な情報だったな。なにせ、神剣は世界的な軍事バランスとかに係わる様な情報なのだ。むしろ、こんなに簡単に教えられたのが驚きだ。それだけフランを信じてくれているということなんだろう。


『これは、こっちもちゃんと応えないとだめだろうな』

「ふむ? なんだ? 今、誰かの声がしたか?」


 どこからともなく聞こえた俺の声に、メアが驚いている。クイナは表情が分からんが。


「今のは、師匠が喋った」

「師匠? お主の師匠という事か? どこにいるのだ?」

「姿を消しているのですか? 全く気配を感じません……。本当だとしたら凄まじい手練れです」

「師匠はここにいる」


 フランがメアと同じ様に、俺を引き抜くとテーブルの上に乗せた。リンドの横に並んで置かれた形だ。そして、改めて俺を紹介する。


「この剣が師匠」

「剣が師匠なのか?」

「インテリジェンス・ウェポンの師匠。とてもすごい剣」

『どうも。ご紹介に与った、師匠という者だ。喋る剣と思ってくれればいい』

「おおおお! ほ、本当に目の前の剣が喋っておるのか?」

「驚きです」


 目を真ん丸に見開き、立ち上がって興奮してくれるメアと、相変わらず一切驚いた様子が無く驚いてくれるクイナ。


『まあ、よろしく頼むぜ?』

「凄い! 凄いなクイナ! なんとインテリジェンス・ウェポンとな? ははは!」

『いや、驚いてくれるのは嬉しいが、神剣持ちが大げさすぎじゃないか?』

「何を言うか! あのインテリジェンス・ウェポンだぞ? お伽噺の存在なんだぞ?」


 いやいや、神剣もそうだろ? むしろ、神話級の超兵器のはずだ。だが、そういう事ではないらしい。


「確かに神剣は凄い。だがな、数本しか実在が確認されていないとは言え、世界に26振りもあると言われているのだぞ? だが、インテリジェンス・ウェポンは存在そのものが未確認だったのだ! それを考えれば、むしろ師匠の方がレアと言えるだろう!」


 まあ、そう言う見方もできるのか。俺自身は性能面で上回る神剣に対して、引け目みたいな物があるからどうしても「俺の方がレアだぜ?」とは言えないけど。


「ん。師匠は凄い」

「うむ。あのクイナが驚愕している程だからな」

「はい。正直、フランさんにお会いした時よりも驚いていますね」


 相変わらずの無表情だが、ちょっとだけ頬が赤いか? マジで興奮しているらしい。


「それで、師匠との馴れ初めはどのような感じなのだ?」

「私が奴隷だった時――」


 フランが俺との出会いを語っている。それを聞いてメアは感動したらしい。大号泣しながら、クイナに渡されたハンカチで涙と鼻水を拭っている。


「そうかそうか! お前らは出会うべくして出会ったんだなー! ズビー!」


 この様子なら、俺の能力を明かしても問題なさそうだな。俺が魔石を吸収して強くなること、自分のルーツを知らない事、神級鍛冶師なら何かを知っている可能性があると言う事をメアたちに語って聞かせた。


「なるほど! だからか! マンティコアの魔石が綺麗に抜かれていて、疑問だったのだ」

「師匠さんが吸収したのですね」

『そういうことだ』

「しかし、さすがインテリジェンス・ウェポンだな。成長するとは」

「リンドも成長してる」

「あれは、我の成長に合わせて力が解放されているだけだ。厳密には成長した訳ではない。だが、師匠は本当に成長しているのだぞ? 今でさえあの強さだ。その内本当に神剣を超える日が来るのではないか?」


 そりゃあ、神剣は目標ではあるが、さすがに超えるというのは難しいんじゃないか? それこそ、今回の様に魔獣の群れを殲滅するようなことを繰り返さないと。だが、フランは自信満々でメアに言い放つ。


「当然。師匠は最高の剣。いつか最強にもなる」

「ふははは! では競争だな! 我がリンドの真の力を発揮できるようになるのが先か、フランが師匠を神剣を超える剣に育てるのが先か!」

「ふふん。当然わたしが勝つ」

「我とて負けぬ! いつかは伝承にある様な、城を叩き潰すという巨竜としてリンドを召喚して見せよう!」


 城を叩き潰す? それって何百メートルの竜なんだよ。だって、船よりもちょいとデカいサイズの水竜でさえ脅威度Bだったんだぞ? そのサイズの竜なんて、確実に脅威度A以上だろう。それを自在に呼び出せる様になったら、凄まじい戦力だろうな。さすが神剣、一筋縄じゃいかない。


 だが、フランが俺は神剣を超えると断言したのだ。だったら、俺がやる前から諦めるわけには行かない。フランの望み通り、いつかその域にまでたどり着いてみせよう。新たな目標だ!


「メアはリンドをどこで手に入れたの?」

「我はお主たち程、劇的な出会いであったわけではないぞ?

単に腕試しとして、発掘済みの遺跡を探索していたところ、未発見だった隠し部屋を偶然発見してな。そこにリンドが安置されていたという訳だ」

「その後、少々特殊な剣であると言う事から神級鍛冶師に鑑定してもらい、神剣であると判明したのですよ」


 いや、それって神剣に呼ばれてない? メアは偶然に手に入れただけの幸運者だと思っているようだが、選ばれたんじゃないか? クイナもそう思っている様で、誇らしげに――は見えないが、神剣を入手した時の話をフランに聞かせている。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ