309 新たな影
フランと邪人たちの戦いは、先程とは全く違う様相を見せていた。
こいつらを早く殲滅して避難民の救助に向かいたいフランと、それを邪魔するワルキューレたちという構図だ。
「どけぇ!」
「ギャギャ!」
「ギョアァ!」
剣神の祝福を得たフランは、邪人たちを凄まじい速度で葬りながら、一直線にワルキューレへと向かっていく。転移と閃華迅雷を併用した今のフランの速度は、ワルキューレたちをも大きく上回り、度々目の前までは接近する。
だが、フランの攻撃はどうしても大振りの、威力を重視した物になりがちで、デュラハンに防がれることが増えてしまっていた。そして、デュラハンがフランの攻撃を身を挺して防いでいる間に、ワルキューレは大きく距離を取ってしまう。
それがさらにフランの焦りを加速させていた。また、無理な攻撃をすることによって生まれた隙は、ワルキューレの格好の餌食である。致命傷は避けてはいるが、明らかに被弾率が増えていた。
「ぐぅぅ! この!」
『フラン、落ち着け!』
(ごめん……でも!)
ダメージの移し替えさえ無ければ短期決戦を挑めるんだが……。
その絡繰りが完全には解明できていなかった。一応、当たりはつけている。奴らのダメージを部下に肩代わりさせる謎の現象、あれは盾技によるものだと思うのだ。
鑑定したところそれっぽい効果の道具は持っていないし、スキルにも身代りや移し替えが出来そうなスキルはない。ならば、称号か、武技の効果だと思われた。事前に魔術などでその効果が付与されていた場合、それも特殊な状態として表示されると思うし。
となると、最も怪しいのは盾技、盾聖技である。これまでダメージを食らっていたミノタウロス・ダークパラディンは盾聖技、ハイオーク・シールダーは盾技を持っていた。盾系であれば仲間を庇ったり、ダメージを肩代わりするスキルがあってもおかしくはないだろう。
実際、現在デュラハンへの致命傷を肩代わりして命を落としているミノタウロス・ハイソードマン、ハイオーク・ウォリアーも、共に盾技を持っていた。
ただ、この予想が当たっているとすると、かなり厳しい戦いが予想された。残った邪人の半数ほどが、盾技を持っているのだ。どの程度のレベルがあれば、肩代わりする技を使えるかは分からないが、残った奴らが全部使えるとしたら? あと何十回攻撃を成功させればいいか分からない。
普通の剣技の傷で何十体も同時に殺せるのであれば話は別だが、1、2体が肩代わりをして死んで終わりである。
先に邪人を殲滅しようかとも思ったが、ワルキューレとデュラハンがそれを許してはくれない。奴らから目を離した瞬間を絶対に逃さず、手痛い攻撃を繰り出してくるのだ。
本当に追い込まれて来た。もう、スキルと魔術を全力で使い続けていても、生命力の回復が追い付かなくなってきた。だが、閃華迅雷を解いたら、一気に均衡が崩れてしまうだろう。無理をしてでも、使い続けなくてはならない。
しかし、忌々しいことにワルキューレの攻撃は熾烈さを増してきた。なんと、デュラハンごとフランを攻撃するという暴挙に出やがったのだ。だが、デュラハンの傷は他の邪人が肩代わりしてしまう。ダメージを負ったのは大爆発を起こした矢によって吹きとばされた、フランだけであった。
即座に立ち上がって身構えるフランを、ワルキューレが愉快そうに眺めている。
「あはははは! 焦っているな! お前がそうやって苦戦している間にも、仲間が殺されているかもしれんぞ?」
『フラン、奴の挑発だ! 無視しろ!』
「……ぐ」
憤怒の表情でワルキューレをにらみつけるフラン。強く噛みしめられた歯の擦れる音が聞こえてくる。これ以上時間をかけていたら、フランが本当に暴走してしまいそうだった。
仕方ない。ここはもう、奥の手を使うしかないだろう。スキルテイカーだ。これで、奴らのスキルを奪う。ここまで使用を躊躇っていたのは、どのスキルを奪ったらいいのか迷っていたからだ。ワルキューレもデュラハンも、基本スペックが高い上に、スキルのバランスもいい。正直言ってこれさえ奪えば無力化できるというスキルが存在していなかった。
それでもあえて候補を挙げるとしたら、ワルキューレの弓聖技か、デュラハンの盾聖技である。無力化とまではいかなくても、戦力を大幅に削れるだろう。そして、スキルを奪われて混乱している内に、勝負をかけるのだ。ダメージを邪人が肩代わりするのであれば、それが出来なくなるまでとにかく攻撃を叩き込み続ければいい。
『問題はどっちのスキルを奪うかだが……』
俺がフランにどちらにするか相談しようとした、その時だった。
(師匠、何か来るっ)
『ああ、俺も感じた!』
南西の方角から、かなり強い魔力を持った何かが高速で近づいてきていた。その速度はウルシの全速疾走よりも速いだろう。向こうの援軍か? だが、北からではなく南西からなんだよな。
ワルキューレたちを観察してみると、奴らもこの魔力を捉えて動揺している様であった。どうやらワルキューレたちへの援軍ではなさそうだ。
「くる!」
『上だ!』
両者が攻撃を止めて身構える中、それは蒼空より舞い降りた。
「クオオオオオォォォンン!」
「ワイバーン……いや、ドラゴンだと?」
ワルキューレが呟く通り、それは赤い鱗のドラゴンであった。大きさは体が2メートル強、翼長は7、8メートル程だろう。
赤竜は空中で力強く羽ばたきながら、戦場を睥睨している。その金色の瞳は、まるで獲物を探すかのように鋭かった。
最初の咆哮を聞いた時点で、魔獣たちが怯えて縮こまってしまっている。邪人たちも騒然とした様子で、その動きを止めていた。それでもすぐに正気を取り戻して、対空用と思われる陣形を取ったのはさすがだな。
竜としては小型の個体だろう。ステータス的には脅威度C程度だ。しかし、その存在感は強烈だった。脅威度以上の、目を離せない何かがある。
だが、俺もフランも、その竜に対して必要以上の警戒心は抱いていなかった。フランはむしろ笑みさえ浮かべている。
何故ならば――。
「焼き払え! リンド!」
「クオオオオォォ!」
邪人に対して炎を浴びせかけた赤竜と、その上に騎乗している人物たちに見覚えがあったのだ。
「苦戦しているようだなフラン! 援軍はいるか?」
「メア!」
残念ながらアニメ化の話はありませんが、アニメ化してほしいという感想を頂いてちょっと嬉しかったですwww
もしまかり間違ってアニメ化するとしたら、フランと師匠の声優さんは誰になるんでしょう。
フランなんて、可愛くて格好よくてクールで、でも子供でと、中々難しいですよね~。
そんな妄想してるだけお酒が飲めますwww




