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300 先制攻撃成功?

誤字報告機能についてのお願いです。

これはその名の通り、誤字を報告していただくための機能です。明確な誤字脱字誤用のみ報告して下ると嬉しいです。文章添削や修正の提案などは、お控えください。

また、キャラクターの台詞は、あえて平仮名や話し言葉、ら抜き言葉に幼児言葉を使っている場合がございます。

「だいじょぶ」「へいき」「おねがい」等々、意味が通じる場合は修正していただく必要はありません。

お願いいたします<(_ _)>


 脅威度Cの魔獣5体に囲まれた俺たちは、奴らの隙をうかがっていた。ここで時間を取られては、先行した魔獣の群れがばらけてしまう可能性があった。そうなっては殲滅は難しい。


 黒猫族だけではなく、各地からグリンゴートへ向かっているはずの避難民が襲われてしまうだろう。


 だが、焦って戦って勝てる相手ではない。俺は焦る心を鎮めつつ、作戦をフランたちに伝えた。


『ウルシはクリムゾンウルフを押さえろ。できるな?』

(グル!)


 ウルシは神狼の眷属という称号を持っている。他の狼に対する威圧効果がある称号なので、同格のクリムゾンウルフ相手でも、ウルシの方が優位に立てるはずだ。


『フランは悪魔とやり合え。やつが一番厄介だ。温存とか言ってられん。危険だと判断したら、閃華迅雷も使うんだぞ?』

(ん!)


 魔術で他の魔獣をサポートされると厄介だ。出来れば、面倒なことはされたくない。フランが次元収納から幻輝石の魔剣を取り出して構えた。


 2体を押さえていてもらう間に、残りの3体は俺が倒す。


 魔獣どもはこちらを囲んで、隙をうかがっている。フランが新たな剣を取り出したことで、やや警戒を強めたらしい。


 慎重なことだな。だが、その逡巡がこちらに貴重な時間を与えてくれる。


『――行くぞ!』

「ん!」

『カンナカムイッ!』


 5匹がこちらの動きを窺っている隙に、集中を高め、魔力を練り上げる準備を整えることができたのだ。


 こちらの魔力が急激に高まったことを察知したのか、魔獣たちが襲い掛かって来ようとしたが、一瞬遅かったな。


 最も的が大きいグラファイト・ヒュドラに、その巨体さえ飲み込む巨大な白雷が降り注ぐ。厄介な高速再生能力を持っていようが、即死すれば意味をなさない。


 空間を白く染め上げる凄まじい雷光が収まった後、カンナカムイの直撃を受けた漆黒の多頭蛇の姿は、影も形も残っていなかった。残っているのは、大地に穿たれた巨大なクレーターだけだ。鱗も骨も魔石も、一切残さずに消滅してしまった。


 そして、カンナカムイの巻き起こした凄まじい爆風が他の魔獣たちにも襲い掛かる。巨大な魔獣とて、油断すれば体を持って行かれそうになるほどの暴風である。また、仲間が瞬殺されたことにも動揺したのか、残り4匹はその場で完全に動きを止めてしまう。


 だが、たとえ転びそうになっても、ここは動かなくてはならなかった。こいつら、もしかしたら実戦経験が浅いのかもしれない。戦場でいちいち動きを止めていたら命取りになると分かっていないんだろうか?


『もう1匹もらったぁ!』

「ガオオオオオオ――!」


 俺は転移からの念動カタパルトで、スティール・タイタンベアの肉体をぶち抜いて魔石を一撃で砕く。仲間の死に気を取られていた熊は全く反応することも出来ず、滅ぼされたのだった。


 普通の状態だったら、察知して急所を外すことも出来ただろうが、さすがに今の動揺状態では無理だったな。俺が一人で動くなんて思いもしてなかっただろうし。


 唯一反応できていた悪魔も、フランに邪魔されて仲間の救援には向かえなかった。


 ただ、完全に虚を突いたはずなのに、その防御力のせいで魔石に届いたのはギリギリであった。もう少し皮膚の分厚い場所に突っ込んでいたら一撃で倒せなかっただろう。改めて雑魚ではないと理解した。

 

 しかも、俺だけで動いてスティール・タイタンベアを仕留めた姿はバッチリ見られてしまった。同じ手はもう通用しないだろうな。


 その後、あえて魔獣たちを驚かせるため、スティール・タイタンベアの死体を次元収納に仕舞ってみるが、さすがにもう動きを止める様な真似はしなかった。


 だがすでに2匹を削ることには成功したぞ。当初よりは大分ましになった。俺は一旦フランの下に戻る。


『この調子で残りもやるぞ!』

「わかった」

「オン!」


 ウルシがクリムゾンウルフに攻撃を仕掛ける。そのまま少し離れた場所に誘導していくな。相手も、同じ狼型のウルシを意識しているらしく、あえてウルシの挑発に乗ったような印象もあった。


『俺たちは悪魔と蟲を相手にする』

「ん!」


 そして、フランが俺を構えた。やはり、魔術を使いこなす悪魔の方を先に仕留めたいところだ。だが、悪魔たちは距離を取りつつ、魔術などでこちらをけん制してくるばかりだった。


 向こうもこちらの攻撃力を警戒しているのだろう。一気に勝負を決めに来てくれる方が有り難いんだがな。


「ゴルアアアァァ!」

「グルルアァァ!」


 ウルシの手助けがあれば楽になるんだが、ウルシとクリムゾンウルフの戦いはかなり膠着していた。


 魔力ではウルシ、体力ではクリムゾンウルフに軍配が上がる。総合的に見たら、ほぼ互角だろう。ウルシは影潜りと俊敏さで距離を取りつつ暗黒魔術で削り、クリムゾンウルフは広範囲の火炎と防御無視の突進で一発逆転を狙う。


 一見するとウルシの方が押している様だが、クリムゾンウルフは攻撃力特化型なため、一撃をもらうと危険であった。


 こっちはこっちで、どうにかするしかなさそうだ。


「ギイイイ!」

「キシャァ!」

「はぁっ!」

『ウィンド・シールド!』


 アダマス・ビートルと悪魔。どちらも動きが速い上、飛行能力があった。そいつらが連携してくるのだ。片方を追えば片方が攻撃してくるので、かなり厄介だった。


 しかも、悪魔よりも脅威度が下だと思っていたアダマス・ビートルがかなり厄介な相手だった。魔力を背後に放出して推進力を得ることができる様で、静止状態から一転して凄まじい速度で突進してくる。


 見てからでは完全な回避が間に合わない程の速さだ。スキルで魔力が放出された瞬間を察知して、全力で躱さなくてはいけなかった。


「シャア!」


 だが、そっちばかりも見ていられない。


 一瞬、アダマス・ビートルに視線が向いたのを隙だと考えたのか、悪魔が斬り掛かってくる。手には毒魔術で作り出した武器を持ち、同時に毒魔術を放ってきた。死毒魔術で生み出した毒が厄介なのは、ウルシの攻撃を見て理解しているし、あまり速くはないのでフランなら躱せる――はずだったのだが。


「ギイイィィ!」

「ぐぁぅ!」

『フラン!』


 悪魔に気を取られた一瞬の隙に、アダマス・ビートルの突進を食らってしまった。突然湧き出た様なアダマス・ビートルの気配を察知して、フランはとっさに体をよじったんだが……。


 アダマス・ビートルは魔力を放出して推進力を得るだけではなく、角などに圧縮した魔力を纏わせて攻撃力を高めることもできるようだった。戦闘中張り続けていた障壁を完全にぶち抜かれてしまった。


 フランの右腕、右足がおかしな方向に曲がり、頭部からも大量出血がある。だが、そこはまだましだ。最悪なのが、腹に空いた巨大な穴だった。右わき腹からへそ辺りまでが、アダマス・ビートルの角に持ってかれてしまっている。


 俺は大慌てでグレーターヒールをかけた。しかし、傷が大きすぎて塞がりきらない。


『フラン! 瞬間再生を使うんだ!』

「ごぷ……っ」

『聞こえてるか? 瞬間再生だ!』


 フランは激痛に顔を歪めながらも微かに頷く。その直後、フランの傷が一瞬で再生し始めるのだった。よし、間に合ったらしい。


 だが、かなりの魔力を消耗してしまった。このスキルも、物理無効と同様にフランとは相性が悪いスキルなのだろう。まあ、俺の様な無機物や、スライムの様な粘体生物と違い、人体は複雑だからな。それを無理やり一瞬で再生する訳だから、そりゃあ魔力の消費も大きいんだろう。 


 荒い息を吐くフランに障壁を張りながら、声をかける。


『平気か?』

「……ん!」

『何が起きた?』

(急に、出て来た)


 やはりフランにもそう見えていたか。今の攻撃は、死角を突かれたとかそういうレベルではなく、突然湧いて出た様な感じだった。


 一瞬、転移したのかとも思ったが、アダマス・ビートルはそんなスキルは持っていない。隠密を持っているが、俺たちの眼を欺けるほどの高レベルではない。


『さすが高ランクの魔獣だな。一筋縄じゃいかん』

「でも、勝つ」

『ああ』


 フランの闘志は全く衰えていない。この心の強さがフランの一番の武器だからな。頼もしい限りだ。


『最大限、警戒しろ!』

「ん!」


本編300話達成! ここまで来れたのも応援してくださる皆様のおかげです。

これからも当作をよろしくお願い致します。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 最新話がこのくらいだった頃から読んでるけど、やっぱファンタジー冒険モノはいいな、何度も読める。
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