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288 村長フラン?


 フランによる魔術講座が終了すると、集まった黒猫族たちは松明や団扇で、火と風を感じようと頑張っている。一応、水と土に関してもレクチャーはしておいたので、そのうち魔術を使える黒猫族が出てくるだろう。だが、俺はもう1つ重要なことに気づいた。


『なあ、そう言えば魔力操作も必要なんじゃないか?』


 アマンダは魔力操作を覚えたら魔術も身に付く可能性があると言っていた。だが、師匠もいない状態で、魔力を感じたこともない黒猫族たちに魔力を操ることができるだろうか? 自然の魔力を感じ取っているだけで、簡単に身に付くとも思えない。


「村長」

「はい、なんですかな?」

「ん。ちょっとそこに立って」

「わかりました」


 フランに呼ばれた村長が、指示されるがままにフランの前に立つ。そんな村長にフランが手の平をかざし、軽く集中した。


「お、おお? なにか変な感じが……」

「ん。村長の中にある魔力を、私の魔力で動かした」


 魔力操作を使い、村長の体内魔力に干渉してみたのだが、上手くいったようだ。軽くかき混ぜる程度はできるようだな。


「分かる?」

「何となくですが……何かが起きておることは分かりますぞ!」

「ん。それが魔力」

「なるほど!」


 この方法は悪くなさそうだ。


「じゃあ、他の人も並べて」

「はい!」


 村長に言われた黒猫族たちが、2列になってフランの前に並んだ。一糸乱れぬ整列だ。


 そして、俺とフランが1人ずつ、彼らの体内魔力を動かして、魔力の感覚を教えていった。どこまで役に立つかは分からないが、全く魔力の感覚が分からないよりはマシなんじゃなかろうか?


 全員に魔力操作を行うのは少々時間がかかってしまったが、どうせ他にやることもないし、黒猫族のためだからな。


「黒雷姫様、ありがとうございました」

「大したことはしてない」

「そんなことはありません! 進化だけではなく、魔術に関してもご教授頂き、どれだけ感謝してもしたりませぬ!」


 普通は門外不出とか、秘伝にされる類の情報だからな。周りの黒猫族たちも、一斉に頷いている。


 また、皆がさっそく魔術の修行を始める中、剣の扱い方を質問してくる者もおり、臨時の剣術講座まで始まってしまった。


 握り方や振り方、鍛錬の仕方などを教えてやる。この大陸に渡ってくるときに、新人たちを指導してやった経験が生きているな。あの時よりも教え方が様になっている。


 魔術だけではなく、剣の扱い方まで教えたことで、フランの人気が上がり続ける一方だな。


 今なら村長になりたいって言えば、簡単になれてしまうかもしれん。


「できれば我が村を長として導いてもらいたいくらいですが……」

「数日で出てく」

「そうですか……」


 なれてしまうかもじゃなくて、本当に村長になって欲しいと思われていた。フランに断られて、村長も皆も全員が残念そうな顔だった。


「いる間は、何でも言って」

「おお、恐れ多い事ですじゃ」


 またも拝まれてしまった。この状況で平然としていられるフランを改めて尊敬するね。


 その後、再び魔術の修行をしている最中だった。


「そ、村長!」

「む、どうしたのじゃ」


 赤犬族の兵士が広場に駆けこんで来た。息を荒げており、なにか緊急事態が起きたのだと一発で分かる。


「またゴブリンが出た!」

「なんと! またか? 数は?」

「今度は10匹だ。だが、おかしい」

「うむ。これ程立て続けにゴブリンが現れるとは……」


 ゴブリンなんて、どこにでもいるだろ? 繁殖力も高いし、何を驚いているんだ? フランが質問したら、そもそもこの辺りは邪人の数が少ないのだと言う。


 この村で生まれ育った若者の中には、昨日初めて見たと言う者も多かった。なのに、2日連続でゴブリンが出没したのだ。これは異常事態と言って良かった。


「どこからか群れが流れてきたのかもしれない」

「うむ。キングが居たら厄介じゃな」

「ああ。巣を探さないと……」


 昨日は20匹でも絶望を漂わせていたのだ。より多くのゴブリンが居るかもしれないとなったら、本当に村存亡の機だった。


 まあ、今はフランがいるから平気だけどね。このタイミングで村に来れて、本当にラッキーだった。


「村長、私がこの辺を探す」

「お、お願いできますか?」

「ん。でも、今度は皆を連れて行けない」

「分かっております。足手まといですからな」


 村長は黒猫族を守りながらの戦闘が厳しいのだと考えた様だ。だが、彼らを連れて行けない理由は少し違う。


 今の俺たちなら、100程度のゴブリンを殲滅するのに10分もかからない。黒猫族たちを守りながらでもだ。


 ただ、ゴブリンの巣を探すのには速く移動できないと時間がかかるし、空間跳躍なども使いたい。その時に、ノロノロ動かれると邪魔なのだ。


 なので、今回は俺たちだけで動く方が良いと判断したのだった。ゴブリンの巣なんて、出来るだけ早く潰さないといけないからな。


「新しいゴブリンの群れはどこ?」

「ぜ、前回と同じ場所です」

「わかった。皆は村から出ないで。今村の外にいる人もすぐに呼び戻して」

「はい! わかりました!」


 こういう時に素直に言う事を聞いてくれるのは有り難い。安心してゴブリン退治に行ける。


「じゃあ、行って来る」

「御武運を!」

「ん」


 どうでもいいけど、御武運って言葉がゴブ運と聞こえてしょうがない。まあ、ゴブリンの巣を探したいわけだし、ゴブ運でも間違ってないんだが。


『さて、ゴブリンの巣が簡単に見つかればいいんだけどな』



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― 新着の感想 ―
[一言] ゴブリンがゴキの群れに見えてきた。殲滅。
[気になる点] より多くのゴブリンが居るかもしれないとなったら、本当に村存亡の機だった。
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