250 斬艦刀
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「だいじょぶ」「へいき」「おねがい」や、フランの「すごい強い」等々、意味が通じる場合も修正していただく必要はありません。
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ウルシの速度であれば、海賊船まではあっと言う間であった。
様子見がてら、空中から海賊船を観察してみる。海賊たちは呆気にとられた顔でフランを見上げているな。だがすぐに正気を取り戻したのか、弓を射かけてくる。ウルシがその程度の攻撃に当るはずもなく、余裕で躱したが。
『じゃあ、やるか』
「ん」
『今後の事も考えて、少し実験するぞ』
「どうするの?」
『効率の良い船の沈め方を知っときたいんだよ。だから5隻とも違う方法で攻撃したい』
この航海中に何度も海賊船と戦う機会があるかもしれない。だとしたら、ここで海賊船相手の叩き方を研究しておけば、後々役に立つだろう。
幸い、今眼下に見える海賊船の甲板からは強い気配は感じない。余程の事が無い限り、手痛い反撃はないだろう。
『まずは雷鳴魔術を試すか』
以前海賊船と戦った時は、岩を落とすくらいしか戦い方がなかった。だが、成長した俺たちなら、いくらでも方法があるのだ。
「カンナカムイ?」
『いや、さすがにあれはオーバーキルだ。それに、全ての海賊船相手に連発するわけにもいかないからな』
もっと密集していてくれれば一撃で5隻を消滅させることも出来るだろうが……。いや、この程度の範囲だったら全部巻き込めるか? まあ、どちらにせよそれでは今回の趣旨に反するからやらないけど。
カンナカムイでは強すぎる。ただ、サンダーボルト程度だとさすがに一撃は無理だろう。
『じゃあ、これだな』
俺は大技を放つため、意識を集中した。カンナカムイ程じゃないが、これも十分に超高位の魔術と言えるが、どうだろう。
『よし、行くぞ!』
「ん!」
『エカト・ケラウノス!』
俺が術を発動した瞬間、天から無数の雷が眼下の1隻に降り注ぎ、その船体を粉々に砕いた。そう、文字通り粉々だ。そこに船があった形跡などまったく分からない程に、徹底的に砕かれてしまった。
うーむ、やり過ぎたか?
この呪文は、100条の雷を広範囲に降らせる呪文なのだが、使いようによっては今の様に一点に集中させることも可能だった。
カンナカムイにくらべると10分の1程度の威力だが、小型の船に対してはこれでもやり過ぎの威力だった様だ。これだったら、通常通りに広範囲に雷を落とせば一発で全滅させられただろうな。
海賊船からの攻撃が止まった。仲間の船が一瞬で消滅させられてしまい、度肝を抜かれているんだろう。
ただ、フランの仕業ではなく、何か途轍もない自然現象のせいだと思っている者も多いみたいだった。一見すると、青天から落ちて来た雷が、船を砕いただけに見えるし。
「じゃあ、次は私がやる」
『任せる』
「ん。――トール・ハンマー!」
だが、次の術を見れば分かるだろう。フランの仕業であると。
フランの声に応えて、次の獲物に選ばれた海賊船の真上に、巨大な魔法陣が描かれる。武闘大会でフェルムスに防がれてしまった、Lv8の雷鳴魔術だ。
高威力の極太雷撃が魔法陣から降り注ぐ。船体は中央から真っ二つに砕かれ、直撃した部分は炭化して燃え上がった。その光景はまさにトール・ハンマーという名前に相応しく、雷神の振り下ろしたハンマーによって打ち砕かれたかの様であった。
『この術ならバッチリだな』
「ん」
にしても、小型とは言え海賊船を一発で沈める魔術を、フェルムスは完璧に防ぎきったんだよな。しかも糸で。改めてその強さの異常さが分かるぜ。
『今度は力押しじゃなくて、搦め手を試そう』
「どうするの?」
『船を沈める方法と言えば、やっぱり船底に穴を空けるやり方だろ?』
「そうなの?」
『おう。ということで、こうだ』
俺はLv4火炎魔術、フレア・エクスプロードを海中に向けて放った。巨大な火球が爆発を起こす術なんだが――。
ドゴオォン!
『ありゃ、失敗だな』
「でも、穴空いたよ?」
『いや、もっと下で爆発させるつもりだったんだよ。あれじゃ船底って言うか、側面だ。少しは水が入っていってるけど、即沈没するレベルじゃない。やっぱ火炎魔術は海中じゃ制御が難しいな』
「じゃあ、どうする?」
『いや、少し工夫してみよう』
俺は再びフレア・エクスプロードを放った。だが、今度は周囲に風魔術で壁を作ってある。これで海水に直接触れることはないはずだ。
そして、俺の目論見通り、今度こそ船の真下で大爆発を起こし、その船体に穴を穿ったのだった。ただ、穴はそこまで大きくはないな。やはり海中では威力も下がるし、即効性は低いだろう。
一応、位置的にも推進魔道装置を破壊できたはずだ。沈没までは多少時間はかかるだろうが、もう動くことも出来ず、沈没を待つしかないだろう。ただ、これだと船員が逃げる猶予があるな。
『もう何発かやっておこう』
「わかった」
俺たちはさらに5発のフレア・エクスプロードを放ち、徹底的に船底を破壊しつくした。これだけ穴ぼこだらけになれば、その沈没速度はかなり早い。あっと言う間に沈んでいく。
ただ、これは時間もかかるし、接近する必要もある。あまり実用的じゃないな。
『次だ』
「どうする?」
『念動カタパルトを試してみよう。久々に本気でぶっ放すぞ』
「わかった」
念動に、属性剣、フランの風魔術による補助なども合わせた、本気の念動カタパルトだ。魔力を最大限込め、刀身への負荷も限界までは無視する。さて、どの程度の威力が出るか。
「いくよ?」
『おう!』
「ん!」
フランが風魔術を使って、俺を高速で投擲する。そこからさらに念動で加速だ。
『ひゃっはー!』
久々に全力全開でぶっとばす! 気持ちいいね!
ドボバァァァン!
海賊船の2本マストのうち、前方の一本を半ばからへし折り、そのままもう一本の根元付近に突き刺さる。だが、俺はまだまだ止まらない。
海賊船の船体内を、柱や壁を破砕しながらひたすら突き進んだ。そして、最後には海賊船を貫通し、船底後部に大きな穴を穿っていた。
まあ、俺的にはフランに投げられた直後にはマストに直撃し、その後は色々な物にガンガンぶち当たりながら直進して、気づいたら海中にいた感じだけどね。
フランの下に戻りながら、海賊船を観察してみると、結構大きな穴が船体を貫いている。思ったよりも威力が高かったぜ。
ただ、やはり属性剣のオーバーブーストは耐久値も大幅に減るし、海賊船を潰すために使うのは勿体ないかもな。
「後一隻。どうする?」
『うーん、もう逃げ始めてるし、さっさと沈めないといけないんだが……』
他に海賊船に効果がありそうな攻撃は何だろうな? 風魔術で横風を当ててみるか?
「じゃあ、わたしがやって良い?」
『いいけど、どうするんだ?』
「師匠にお願いがある」
その後、フランが俺に頼んできたことは驚くべき発想だった。なんと、形態変形スキルの限界まで、とにかく大きくなれと言うのだ。
言われてみると、糸や盾は試したことがあっても、ただ巨大になると言うのはやったことが無かった。
俺はそのまま全力を振り絞り、自身の刀身のサイズを大きくしていった。柄まで大きくするとフランが持てなくなるので、巨大化させるのは刀身と鍔だけだ。
ただ、思った以上に大きい。もはや斬馬刀なんざ目じゃないだろう。刀身だけで10メートル近いはずだ。某ロボットゲームに出て来た斬艦刀を彷彿とさせるサイズであった。
『どうだ? これでいいか?』
「ん。ばっちり。じゃあ、いくよ?」
『おう! あまり長時間はもたないからな、早めに頼む!』
「大丈夫!」
やることは、空中跳躍からの空気抜刀術とそれほど変わらなかった。空から海賊船に向かって降下しながら、空気抜刀術、重量増加、剣技、属性剣を使って斬撃の威力を増加させる。
「はぁぁぁぁ!」
そして、海賊船が真っ二つに斬り裂かれた。衝撃によって船体の材木が派手に舞い散り、同時に属性剣によって船体が激しく燃え上がる。前後に分かたれた海賊船は、そのまま海中へと沈んでいくのだった。
色々と試してはみたが、トール・ハンマーあとは斬艦刀モードが良いかな。少数であればトール・ハンマー、相手の数が多ければ、斬艦刀で斬りまくれば良い。
「終わった」
『おう』




