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225 ルート確保

 さて、一度獣王の泊まってる宿に行くか。もう日が落ちているけど、今日中に話を通しておきたい。


 あのせっかちそうな獣王だったら、もう用が無いとか言っていきなりウルムットを出て行っちゃいそうだからね。


 問題は、こんな時間に取り次いでもらえるかだよな。結構高級宿だし、仮にも王族が宿泊している所に、侵入するような真似はできないだろう。


 ただ、心配するまでもなかったようだ。宿で名前を出したら直ぐに取り次いでくれた。獣王からの最優先で取り次げという指示はまだ有効だったらしい。


「よう、フラン嬢ちゃん。また会ったな。どうした?」


 部屋に入ると、獣王が片手をあげて鷹揚に挨拶してくる。こうやって見ただけじゃ、ちょっと軽いおっさんにしか見えんね。


「俺になんか用か?」

「ん。獣人国に行くために、船を探してる」

「おお! 早速うちの国に来るのか? だったら俺たちと一緒に戻れば速えーぞ!」


 おいおい、あっさりしてるな。仮にも王族のお忍び旅に、そんな簡単に部外者を同行させて良いのか? そう思っていたら案の定、ロイスが苦言を呈した。


 ただ、それはフランの同行を渋るという感じではない。


「リグ様、帰る前にクランゼル王都へ向かう話をお忘れですか? さすがに他国へ来て、王族へ全く挨拶無しと言う訳にはいきません」

「む、やっぱりそうか?」

「当たり前でしょう」


 やっぱそういう王族としての仕事はあるのか。俺たちも王都には行く予定だが、まだオークションまで時間がある。さすがに王都まで同行するのは無理だ。護衛として雇ってほしいと頼めば、雇ってくれそうだけどな。


「じゃあ、どうやって嬢ちゃんをうちの国に連れて行くんだよ?」

「別に私たちがわざわざ彼女を連れて行く必要ないでしょう? ゴドに勝つほどの凄腕冒険者ですよ? 面倒を見る必要はないでしょう」

「まあ、そりゃそうだがよ」

「そもそも、船を探していると言う話だったはずです」

「あー、そうだったか?」

「全く、姫様と齢も近いですし、気になるのは分かりますがね」

「姫様?」

「おう。俺には15になる娘がいてな。どうしてもお嬢ちゃんと被っちまうんだよな~」


 だから獣王はフランに甘いのか。娘と齢が近いフランを娘とダブらせている様だった。


「私もフランさんに獣人国へ来てもらうのは賛成です。師匠も喜ぶでしょうし」

「だろ?」

「色々と利用価値もあります」


 面と向かって利用価値とか言われた! ただ、これはわざとだろう。ロイスは、うちの国に来たら色々と政治的に利用することになるけど、良いのか? と言外に聞いてくれているのだ。


 ロイスは獣王の側近だし、進化した黒猫族であるフランを、ただ放っておくことはできないだろう。獣人に対しては計り知れない影響があるだろうしな。国を預かる者であれば当然のことだ。


「嫌なら逃げる」

「はっはっはっは。嬢ちゃんが本気になったら、俺くらいじゃなきゃ追いつけねーだろうな!」

「はあ、それで構いませんよ。家臣になれと言っているわけではありませんから。ギブアンドテイクと行きましょう。フランさんが獣王と仲良くしているという姿を国民に一回見せるだけでも、十分お釣りが来ます」


 まあ、そのくらいなら構わないよな。


「では、これをお渡しします」

「これは?」


 ロイスがフランに手渡したのは、小さな金属の板だった。何やら紋章のような物が刻まれている。


「リグ様と私の名前が彫られた身分証です。それがあれば、獣人国の船などに便宜を図ってもらえるでしょう。現在、我が国の商船が幾つかバルボラに出入りしているはずです。それを見せれば問題なく乗れると思います」

「ほんと?」

「ええ。その身分証と同じ紋章の描かれた旗を掲げているはずなので、すぐわかるはずです」


 なんか理想通りに話が進んでしまったな。でも、これで獣人国に行けるぞ。


 ロイスの話だと、バルボラ~獣人国間を結ぶ航路は、かなりの商船が利用しているらしい。3日に一隻は有るはずだと教えてくれた。特に、獣人国の紋章の上に王冠のマークを掲げている船は王家直轄の商船であると言う事なので、この身分証を見せれば賓客待遇で乗せてくれるらしい。


 思った以上の便宜を図ってもらってしまった。


「しかも、君の名と姿は確実に獣人国の商人に伝わっているはずです。身分証などなくてもあなたが声をかければ、絶対に乗せてくれるとは思いますよ?」


 まあ、確実に船に乗れるなら何でもいいさ。


 それと、もう一つ聞いておかなければならないことがある。神級鍛冶師についての詳しい情報だ。


「あと、獣人国のどこに神級鍛冶師が居るの?」

「うーむ、それもうちの国に行けば分かるさ」

「国元には、貴方に紹介状を渡すように指示を出しておきましょう。まあ、紹介状があっても会えるかはわかりませんが」

「ただ、お前があの人と仲良くなったら、俺たちの仕事を受けるように口利きしてくれりゃいいからよ」


 かなりの自由人で、王からの依頼でもあっさり断られてしまうらしい。


 まあ、確約は出来ないが、仲良くなれれば口利きくらいはしてやってもいいさ。守れるかどうかも分からない口約束だがな。


「ん」

「頑張ってくれよ。色々とな」

「師匠は王城に逗留されておりますので、まずは獣王都を目指すとよいでしょう」

「わかった」


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[良い点] 三毛猫族なんていたらおもろそう
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