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205 混沌の女神

 俺は混沌の女神と名乗った女性を呆然と見つめていた。


 だって、俄かには信じられないだろう。混沌の神様って言ったら、ダンジョンとかを創り出したかなり凄い神様だったはずだ。


 見た感じ、銀髪褐色肌の色っぽいお姉さんにしか見えん。薄布を幾重かに巻いただけの、煽情的にも見える格好をしたボンキュッボンの超絶美人だ。


 だが、俺以外の時間を止めるとか、神にしか出来そうもない大技である。


 まじで神なのか?


 もう厄介事の匂いしかしないんだけど!


「厄介とはひどいわね」

『え?』


 も、もしかして心を読むのか?


「読むわねー」

『す、すんませんしたー』


 やべー、神罰がある世界で、神様を怒らせるのだけはやべー! いや、すいません! やばくないです。まじで尊敬してますから! 本当です! 女神さまの様な美しい方に拝謁する機会を頂きまして、感激の極み! そのあまり少々取り乱してしまったようです!


「くふふふふ。幾ら美辞麗句を並べようとも、魂を見ることのできる神には通用しないわよ? なにせ本心が見えるのだから」

『えーっと、そのー』

「神をここまで敬わない者も珍しいわね」

『いや、敬ってますよ? 本当です!』

「別にかまわないわ。その程度で怒るような小さい器じゃないしね」

『じゃ、じゃあ、不敬の罪で神罰とか……』

「心配しなくても良いわ」


 よ、良かった! 黒猫族への神罰の事とかあったから、勝手に怖い人たちだと思いこんでいた!


「まあ、本来はもう少し威厳があって恐ろしい姿なのだけれどもね。降臨する際にはこうやって、自らの一部だけを人に似せて送り込むのよ。だから、外見で神に見えないのは仕方ないわね。言葉とかも、相手に合わせてるし。正直、こんなに砕けた言葉遣いをするのは初めてだけど」


 つまり目の前にいる女神さまは、本体から分かれた分体みたいなものなのかな? 地球でも神様を見たら目がつぶれるとか、正気を失うなんて話もあるしね。わざわざこちらに合わせて人の姿をとってくれているようだ。


「そもそも、異世界から喚ばれたあなたに、私達への信仰など求めていないから」

『え? 俺が元々異世界人だって知ってるんですか?』

「勿論。まあ、そのことは今は置いておきましょう。それよりも、話さなくてはいけない事案がありますからね」

『フランの進化について……ですよね?』

「ええ」


 うーん。わざわざ神様が現れるなんて、やっぱり黒猫族が進化できない理由は神罰だったのか?


「その通り。黒猫族は大罪を犯したわ。その罰として進化に枷をかけられたの」

『それを、俺が特殊な方法でフランを進化させてしまったから……?』

「話が早いわね。そうよ。まさかあんな方法で黒猫族を進化させるなんて、正直予定外なのよね。そして、問題でもあるわ」


 正規の手段ではないのは分かってたけど、わざわざ神様がお出ましになるなんて……! もしかして、フランを――。


「安心なさい、あの娘をどうこうするつもりはないわ。進化を取り消したりもしないから」


 そ、そうか、最悪の事態は避けられそうだな。ピンチには違いないけど。


「今回の事、何が問題か分かるかしら?」

『えーっと、ズルして進化したことですか?』

「いいえ。そこだけが問題じゃないわ」

『え? そうなんですか?』

「ええ、それだけなら、私が降りてくることもなかった」


 だとしたら何が問題なんだ?


「勿論。貴方の言うズルが、全く問題ないわけじゃない。この世の理を無視していることですもの」

『この世の理?』

「そうよ。貴方風に言えば、世界を運行するシステムとかプログラムってところかしら?」


 そういう感じの管理システムがあるんだな。アナウンスさんも、そっちに関係する人?なのかね?


「普通の獣人族の進化と言うものは、レベルの上限に達した時に覚醒スキルを習得。その覚醒を使うと血の中に眠る力が解き放たれ、結果として進化する」


 レベル上限→覚醒ゲット→覚醒で眠った力が引き出される→進化って感じかな。


「黒猫族の場合はレベルだけでは覚醒を習得できない様に呪いが掛けられているの。これは貴方もよく分かっているわね?」

『そりゃあ、フランがそうですからね』

「でもね、あの娘はその理を無視して覚醒を手に入れ、進化してしまった。しかも、黒猫族の高い潜在能力故かしら? 一度使っただけで覚醒を習得してしまったわ。そして、今後同様の事が起きてしまう可能性が出てきてしまった」

『そうか、俺を装備すれば誰でも覚醒を手に入れて、進化できるかもしれない……!』

「ええ、その通り。さすがに、何度も何度も理を無視することは許容できない。それに、貴方を装備しただけで安楽に進化できてしまっては、神罰の意味もなくなってしまう」


 そう言って女神様は、俺をジッと見つめた。あれ? これって、俺がピンチとか言う話じゃないよね?



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