表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
201/1337

199 VSコルベルト決着

「ふぅ。いきなり決めに来るとは、せっかちだな」

「隙があったから狙っただけ」

「言うね~。まさかこれほどの魔法戦士だったとはな。素直に驚いたぜ。隠してたのか?」

「そっちこそ、急に魔力が増えた?」


 そう、フランが言う通りコルベルトが纏う魔力が急激に上昇していた。



名称:コルベルト  年齢:38歳

種族:人間

職業:鋼拳士

状態:平常

ステータス レベル:41/99

HP:381/508 MP:330/452 

腕力:299 体力:204 敏捷:253

知力:141 魔力:201 器用:239

スキル

格闘技:Lv6、格闘術:Lv6、危機察知:Lv3、拳聖術:Lv2、拳闘技:Lv9、拳闘術:LvMax、硬気功:Lv4、剛力:Lv8、瞬発:Lv9、水泳:Lv4、大海耐性:Lv2、投擲:Lv4、生活魔術:Lv3、デミトリス流武技:Lv8、デミトリス流武術:Lv8、物理障壁:Lv4、魔力放出:Lv5、眠気耐性:Lv3、麻痺耐性:Lv4、料理:Lv2、鷹の目、ビーストキラー、分割思考、腕力小上昇、気力操作

固有スキル

鋼拳



 これは封印を解除したか? ステータスが大幅に上昇し、デミトリス流、物理障壁、魔力放出、分割思考のスキルが増え、剛力、瞬発のレベルが上がっている。それにしてもステータスの上昇が半端ないな。以前はこんな感じだったはずだ。


HP:428 MP:202 

腕力:249 体力:154 敏捷:203 

知力:91 魔力:101 器用:189


 各ステータスが50ずつ、魔力に至っては100も上がっている。そこにデミトリス流だ。もう別人と思った方が良いかもしれない。


『封印を解いたぞ。気を付けろ』

「封印を解いた?」

「……気づかれたか」


 どうやら不本意らしい。表情を歪めて、ため息をついている。まあ、私欲のために封印を解放するのは御法度らしいからな。これは少しつついてみるか。


『フラン、俺の言う通りに喋れ』

「ん」


 多少でも動揺を誘えれば儲けもんだ。


「私欲のために、封印を解除したら破門?」

「……そうなる時もあるな?」

「じゃあ、コルベルトも破門?」

「かもしれん」

「どうして封印を解除した?」


 フランの言葉に、コルベルトは渋面を作って何やら葛藤している様だったが、直ぐに頭を振ってフランを見つめ返す。


「確かに俺は破門かもしれん。だが、そんな下らんことよりも、大事なことがある!」


 コルベルトがそう叫び、再び構えを取る。


「大事なこと?」

「簡単なことだよ。デミトリス流の誇りだ」


 なんか格好良さげに言ってるな。


「子供相手になりふり構わず封印を解いて本気を出すのは、誇りある行動なの?」

「うっ」


 ふふん、動揺してる動揺してる。


「誇り?」

「……そりゃあ済まなかった。ちょっと格好つけすぎた」

「そうだね」

「ぐっ……そうだよな、この期に及んで何綺麗ごと言ってるんだって感じだよな」


 あれ? ちょっとつつきすぎたか? 開き直っちまったかもしれん。


「済まないな。そうだ、誇りでも何でもない。俺の個人的な都合だ。俺が憧れ続けたデミトリス流が、ランクC冒険者相手にあっさりと負けるなんざ許されん。いや、俺が許せねー。なぜならデミトリス流は最強なんだ」


 コルベルトから放出されていた魔力が方向性を以って彼の全身を包み始めた。濃密な魔力がまるで鎧の様だ。


「俺のせいでデミトリス流が弱いと思われるのは我慢ならないんだよ! たとえ破門されようともな!」


 それだけ思い入れがあるってことか。まあ、この展開も想定済みだ。フランにも動揺はない。


「ゲイル・ハザード!」


 足止めに広範囲魔術を放つと、コルベルトに向かって突進した。強くなったと言っても、拳聖術のレベルは変わっていない。単純なせめぎあいであればフランがまだ有利なはずだ。


 注意しなくてはならないのはやはりデミトリス流だろう。そう警戒していたはずなんだが……。


「デミトリス流武技・阿修羅!」

「くぁっ」


フランの剣がコルベルトに受け止められ、カウンターで放たれた拳がフランを吹き飛ばした。


「おらぁ!」

「くっ!」


 さらに追い打ちをかけてくるコルベルト。攻撃を受けてからのカウンターである。2回戦のクルスと似た戦法だが、コルベルトの方が数段厄介だ。


 そもそも、属性剣を纏った俺を無傷で受け止めるとは思わなかった。凝縮した魔力を腕の様に扱う技があるようで、今のコルベルトは武技の名前の通り、阿修羅の様な新たな4本の腕を生やしているように見える。


 その腕で白刃取りの様に俺を受け止めたのだ。反応速度や視野の広さも強化されているようだな。しかも魔力で形作られた腕なので、多少の傷はすぐに元に戻ってしまう。


 そして、魔力腕は当然攻撃にも使われる。元々手数の多さで攻める格闘術だが、腕が増えたことでその攻撃の物量は倍以上となっていた。


 ついに繰り出された拳が直撃し、フランの肺腑を抉る。


「ふぐっ!」

『グレーター・ヒール』


 ダメージはすぐに回復させたが、鈍った動きが一瞬で回復するわけもない。その一瞬の隙のせいで、コルベルトのラッシュに押され始めてしまった。


 さらに、魔力腕が俺の刀身を掴んできた。掴んだ後は刀身を覆うようにまとわりつき、がっちりと挟み込まれてしまう。念動を使ってすぐに脱出できたが、僅かな間動きを封じられてしまったことは確かだ。こういう小さな積み重ねにより、次第に戦況がコルベルトへ傾いていく。


 それでもフランは連続での直撃を避けて応戦していたんだが、その顔は僅かに歪んでいる。以前エルザが言っていた、気を相手に流し込んで内部から破壊する浸透剄に似た攻撃。なんとコルベルトの攻撃は全てがその浸透剄だったのだ。


 俺で受けても刀身を伝わった衝撃で手が痛み、掠っただけでも内部にダメージが通ってしまう。障壁を展開しているんだが、それすら貫通してくる始末だった。


 フランが我慢強いと言っても、これ以上は危険だ。


『フラン、コルベルトの攻撃は物理攻撃だけじゃなさそうだ。ここは物理耐性と障壁、両方に振った方が良いかもしれん』

(ん。分かった!)


 事前に話し合っていた作戦を最終確認する。そして俺は、物理障壁に自己進化ポイントを18ポイント、物理攻撃耐性に18ポイントを振り分けた。


 そう、俺たちはこの武闘大会の為に出来得る限りの準備をしてきたのだ。かなりの無茶をしたが、俺はランクアップに成功していた。ポイントは全て温存してある。前回残していた分も合わせて、66ポイント。


 これがあれば、相手に合わせて様々なスキルをレベルアップさせられる。まあ、最強の後出しジャンケンだな。


〈条件を全て達成しました。物理障壁、魔力障壁スキルが完全障壁:Lv1に統合されます〉


 2つの障壁スキルが共にLvMaxに到達したことが引き金になり、新しいスキルに統合されたな。


 Lv1でも、その強度は魔力障壁、物理障壁:LvMaxに匹敵する様だ。完全障壁と言う名前だから攻撃を無効化してくれるのかと思ったが、物理、魔力双方に対応できると言う意味での完全と言う名前だったらしい。


〈物理攻撃耐性がLvMaxに達しました。物理攻撃無効に進化します〉


 こっちは予想通り無効化スキルをゲットしちまったか……。まあ、しょうがないな。


『行けフラン!』

「ん!」

「なんだ急に!」


 自分の攻撃が全く効いていないかの如く、急に前に踏み出してきたフランにコルベルトが目を見開く。当然コルベルトは攻撃を繰り出し続けている。だが、フランは突然防御を止め、その攻撃全てを真正面から全て受けたのだ。


 一瞬捨て身の行動に出たかのように見えるが、フランにはダメージが全く入っていなかった。物理攻撃無効と、完全障壁のおかげである。


 一見、これで無敵になったかのように思える。だが、俺の頭の中は焦りが支配していた。


『ちっ、ルミナに警告された通りだ! 無効スキルは消費がヤバイ!』


 物理攻撃無効スキルを得てからのほんの一瞬の攻防で、既に魔力を1000以上消費してしまっていた。無効化すると言うのは、それだけ消費が大きいのだ。


 そのことについては大会前、ルミナに会いに行った際に忠告を受けていた。





「師匠よ。主のスキル吸収能力は強力だが、気を付けねばならんこともあるな」

『どんなことだ?』

「例えば無効化スキルだな。魔獣の中には稀に持つ者もいるが、それを得た時には十分注意せよ」

「なんで?」

「無効化スキルは消費が極端に大きいのだよ。しかも自動で発動してしまうため消費を抑えることも難しい。それ故、場所や敵によってはあっと言う間に魔力が枯渇するぞ」


 なるほどね。例えば火に包まれた場所で火炎無効を使ってたら、直ぐに魔力を使い果たすだろう。


 そんな中で、ルミナが特に気を付けろと言っていたのが物理攻撃無効だった。このスキルは普通であれば霊体や気体系の体を持つ魔獣が所持するスキルらしい。それを普通の肉体を持つものが持った際、どのようなことになるのかルミナにも想像ができないんだとか。下手したら、歩く度に発動とか言う事にもなりかねない。


 無効化スキルに関しての注意はもう一つあった。それは無効を無効にするスキルの存在だ。


 神が定めたこの世界の理において、無効スキルよりも上位の理で動くスキルがある。貫通属性の付いたスキルや、神炎などの神の力を持ったスキルなどがそれにあたるらしい。


 ルミナは煌炎剣イグニスが神炎というスキルで、火炎無効を持つ相手を焼き殺すところを目撃したことがあると言う。そして、獣王の持つ固有スキル「金炎絶火」は、そういった上位スキルに近い性質がある可能性があった。


「努々、無効スキルがあるからと言って油断せぬことだ」

「わかった」


 ただ、俺たちはスキルの着脱が出来るからな。必要な時にだけ付けるようにすれば何とかなるだろう。無効スキルはそれでも十分強力だからな。


 まあ、コルベルトの激しい攻撃を受けている今の時点では外すことができないが。




『フラン、とっとと決めるぞ!』

「ん!」


 フランが俺を大上段に構える。それが大きな隙を生んでいた。当然、コルベルトが見逃すはずもない。


「デミトリス流秘儀・体崩腑壊!」


 魔力が乗った上に強い捻りの加えられた正拳突きがフランの胴体を直撃する。だが、フランは顔色一つ変えなかった。


「くそっ! 効いてないのかよっ!」


 そう。効いていないのだ。ただ、今の一撃だけで1000近い魔力を失った。物理攻撃無効が無かったら、どれだけ恐ろしい攻撃だったのだろうか。やはりコルベルトは侮れない。


「ん!」


 フランは大きく飛び上がった。そして、真上から渾身の一撃を繰り出す。


 俺とフランの属性剣二重発動。そして振動剣、魔毒牙、重量増加からの空気抜刀術だ。剣王術により刀の扱いが完璧になったフランの空気抜刀術は、格段に鋭さが増している。


 勿論、いくら速くともこんな真正面からの攻撃、コルベルトなら簡単に躱せるだろう。


 だが、俺が逃がさない。念動と風魔術でコルベルトの体を左右から押さえつけて身動きを封じた。勿論コルベルトであれば直ぐに振り払えるだろうが、フランには一瞬の隙で十分なのだ。コルベルトはそれでも魔力腕を振りかざして盾にしようとしたのだが――。


「はあぁぁぁぁっ!」

「ぐぼぁぁ!」


 突き出された魔力腕を全て断ち切り、俺がコルベルトの左肩から腰近くまでを深々と縦に斬り裂いていた。腕こそ千切れてはいない。だが、内臓――特に肺へのダメージは深刻だろう。しかも属性剣によって傷が焼け爛れ、異臭と共に煙を上げていた。当然、片肺も消し炭状態だ。


 だが、これで決まったと油断するのは早計である。コルベルト程の強者であれば、この状態からでも起死回生の一手を打ってくるかもしれない。そして、俺たちは魔力が限界に達しようとしている。


『手を休めるな!』

「ん!」


 俺を腰だめに構え直したフランが、今度は横一文字に俺を薙ぐ。


 驚いたのは、深手を負った状態でコルベルトが回避行動を取ったことだ。後ろに跳んで、抜刀術を躱そうとしている。しかも渾身の魔力を込めて魔力腕を伸ばしてきていた。これを無効化したら、魔力が本当に限界だ。


 ここで決めないとまずい! 俺はとっさに自らの刀身を変形させて伸ばした。


「かわしきれ――」

『とどけぇぇぇぇー!』

「ぐがっ!」


 魔力腕がフランに届くのとほぼ同時に、俺の切先がコルベルトの胴体を抉っていた。コルベルトの腹が切り裂かれ、真っ赤な血液が噴き出してフランの顔を汚す。


ダメージによってコルベルトの集中が切れたせいなのか、魔力の腕が消え去った。


「く――そ――」


 コルベルトは悔し気に呻き、膝から崩れ落ちる。そのままピクリとも動かない。激しい出血で、舞台はあっと言う間に血の海だ。しかも内臓まではみ出している上、魔毒状態。これはヤバイな。だが、最後にコルベルトの攻撃を無力化したせいで俺たちにはヒールを使う魔力も残っていない。


 だが、そこはさすがにギルドが協賛しているだけあった。素早い対応で治癒術師が駆け込んできて、コルベルトを癒し始める。これで命は助かるだろう。


そしてフランの勝利が宣言され、会場が大歓声に包まれた。


「決まった決まった決まったぁぁぁ! なんと大番狂わせだぁ! 勝者は、魔剣少女フラン! これは今大会最大のダークホースとなるか!」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ