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164 Lv45とランク12

 ボールバグの甲殻が爆散して俺たちに襲い掛かる。至近距離で放たれた超高速の散弾だ。


 まさか、これ程短い間隔で魔力放出スキルを使用できるとは。ここまでの戦いではそんなそぶりは全く見せていなかった。ボールバグの奥の手なのだろう。


 クロノス・クロックによって時間差があるはずの状態でも、かなりの速さで礫が飛んでくる。実際にはどれほど速いのか。恐ろしい威力だろう。一発でも直撃すれば、フランは大怪我を負うはずだ。


 まずい、障壁の全力展開も間に合わん! 俺が反射的に張り巡らせた魔力障壁、物理障壁も、あっさりと吹き飛ばされてしまう。俺は念動カタパルト用に溜めていた念動を、前方に向かって一気に解き放った。だが、フランを守る様に広い面で発動させた念動は、力がそれほど強くない。散弾の威力を相当減衰させたはずだが、止めるには至っていなかった。


 フランは既に限界ギリギリまでスキル、魔術を同時発動し、自身も高速で突撃している。とっさに回避する余裕はないだろう。


「くぅ!」

『ショート・ジャ――』


 フランの悲鳴と共に、俺は慌てて空間跳躍を発動しようとした。


 一旦距離をとって逃げないと!


(だめ!)


 だが、俺の魔術はフランによって止められた。なんとフランは攻撃を諦めていなかったのだ。あえて左半身を晒し、利き手である右手を守っていた。いくつかのスキルを中断し、とっさに障壁を張った様だ。そして、吹き飛ばされない様に空中跳躍を使って、その場に踏ん張っている。


 だが、無傷でいられるわけがない。障壁と念動で威力が下がったとはいえ、人の肉を貫く程度の威力はまだ持っている。それを証明するかのように、フランの体には無数の小さい欠片が突き刺さっていた。


 大の大人でも激痛で泣き叫ぶであろう無数の傷。しかし、フランは短い悲鳴を上げただけで、歯を食いしばって堪える。歯が軋むギリッという音が俺まで聞こえてきた。


「バーニアァァァッ!」


 火炎魔術によって再び加速したフランが、全力で俺を突き出す。その攻撃は、甲殻を失い無防備にさらされたボールバグの体に、何の障害もなく吸い込まれていた。


 今までの様な硬い甲殻ではなく、確かに柔らかい肉を斬り裂いた感触がある。


「……はっ……ぐぅ」


 ボールバグの体内に半ば飲み込まれるような状態で、フランがぐったりとしている。


『フラン、もう少しの辛抱だぞ!』

「これで、とどめ……!」

『おう!』


 フランの為にも、ここで決める!


 イメージはある。


 俺はありったけの魔力を刀身に纏わせながら、属性剣・風、振動牙を発動させた。そして、形態変形を全開で使用する。イメージは、以前見たアナウンスさんが使っていた形態変形。鋭く細い糸でスケルトン達の魔石を貫き、吸収していたあの姿だ。


 刀身から鋭い毛が突き出す様なイメージで、自らの体を変形させていく。100本以上の鋼糸と化した俺の刀身が、内側からボールバグをズタズタに切り裂いていく。


 俺は操糸スキルを併用して、鋼糸をボールバグの体内で走らせた。やはりアナウンスさんの様に自由自在とはいかないな。


「ん!」


 さらにフランが最後の力を振り絞り、雷鳴の属性剣を発動させた。


「ギギ……ギィィィィィ!」


 フランの属性剣が止めとなったらしい。ボールバグは断末魔の叫びを上げると、ゆっくりとその動きを止めたのだった。


〈自己進化の効果が発動しました。自己進化ポイント60獲得〉


 ランクアップしたが、今はフランだ! 俺は念動を使ってフランを床に横たわらせる。


『グレーターヒール!』

「うぅ……」

『フラン、大丈夫か!』

「師匠……」


 何とか、生命力は回復したか。目立った外傷も残っていないし、上手く癒すことができたようだ。


「……勝った?」

『おう。勝ったぞ』


 俺がそう告げると、フランは寝っ転がったまま両手をグッと突き上げた。


「久しぶりの勝利」

『どういうことだ?』

「強い敵に、正面から戦って勝ったの久しぶり」


 フランの言葉に、俺は過去の戦いを思い返す。


 悪魔は力を発揮しきれず、半ば自滅の様な形での棚ボタ勝利だった。


 アマンダには模擬戦で手も足も出ずに、ボコボコにされた。


 リッチには完全に負けていた。アナウンスさんがいなければ死んでいただろう。


 ミドガルズオルムは仕留めきることが出来なかったし、フランは直接戦っていない。


 リンフォードには、アマンダ達の助力が無ければ負けていただろう。


 そう考えると、脅威度C以上の相手に、俺たちだけで正面から力で打ち勝ったのはレジェンダリースケルトン以来かもな。


〈フランのレベルが45に上がりました〉

「ん!」

『おお! ついに来たか!』



名称:フラン  年齢:12歳

種族:獣人・黒猫族

職業:魔導戦士

状態:契約

ステータス レベル:45/45

HP:551 MP:432 腕力:286 体力:220 敏捷:275 知力:192 魔力:231 器用:190

スキル

隠密:Lv4、風魔術:Lv2、宮廷作法:Lv4、気配察知:Lv5、剣技:Lv7、剣術:Lv7、瞬発:Lv6、火魔術:Lv4、料理:Lv2、アンデッドキラー、イビルキラー、インセクトキラー、気力操作、ゴブリンキラー、邪気耐性:Lv1、精神安定、デーモンキラー、剥ぎ取り上手、不退転、方向感覚、魔力操作、夜目

固有スキル

魔力収束

特殊スキル

黒猫の加護

称号

アンデッドキラー、一騎当千、イビルキラー、インセクトキラー、解体王、回復術師、ゴブリンキラー、殺戮者、スキルコレクター、スキルマニア、ダンジョン攻略者、超大物喰い、デーモンキラー、火術師、風術師、料理王

装備

黒猫シリーズ(名称:黒猫の闘衣、黒猫の手袋、黒猫の軽靴、黒猫の天耳輪、黒猫の外套、黒猫の革帯)剛力の腕輪、身代りの腕輪、魔術師の首飾り


 Lv45。ついにフランの種族レベルが上限に到達した。


『――』

「――」

「オン……」


 俺とウルシはドキドキしながらフランを見守る。フランも掌を閉じたり開いたりして、何か変化が無いか確認しているようだが……。


『何もないな』

「ん」

「オウン……」


 特に変化は起きない。フランが進化するような気配もなかった。予想通りとは言え、やはり落ち込むな。


『フラン、あまり気落ちするなよ?』

「大丈夫。わかってる」

『そうか?』

「ん。それよりも、師匠もランクアップ?」

『あ、そうだった。戦闘に夢中だったからな。どれどれ』



名称:師匠

装備者:フラン

種族:インテリジェンス・ウェポン

攻撃力:622 保有魔力:4150/4150 耐久値:3950/3950

魔力伝導率:A+

スキル

鑑定:LvMax、鑑定遮断、形態変形、高速自己修復、自己進化〈ランク12・魔石値6689/7800・メモリ112・ポイント62〉、自己改変〈スキルスペリオル化〉、念動、念動小上昇、念話

攻撃力小上昇、時空魔術:LvMax、スキル共有、装備者ステータス中上昇、装備者回復小上昇、天眼、封印無効、保有魔力小上昇、魔獣知識、魔法使い、メモリ中増加

ユニークスキル

虚言の理:Lv5、次元魔術Lv1

スペリオルスキル

剣術:SP、スキルテイカー:SP、複数分体創造:SP



『自己進化ポイントが62も貯まったぞ。これでまた強化が進むな』

「ん」


 それと、地味に嬉しいのが攻撃力が600を超えたことだろうな。過去に見た剣の中でも、600超えの攻撃力を持つ剣は少なかった。


 これで俺も、スキルなどなくても十分名剣と言える領域に踏み込んだという事だ。ふっふっふ、ガルス爺さんの打った剣を見て、凹んでいた頃の俺とは違うのだよ!


「おめでとう師匠」

「オン」

『ありがとうな。次こそは、フランの進化だ!』

「ん!」


 そのためにも、フランが進化するためのヒントを手に入れなくては。オーレルが知っているかどうかは分からないが、自身も進化している長老だ。全く情報が無いという事はないだろう。


『よし、オーレルに話を聞くためにも、ダンジョンマスターに会わないとな』

「ん」

「オン!」


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― 新着の感想 ―
[一言]今更だけど漫画版と大分流れが違うのね。原作は読みやすくて良い!漫画版はアマンダとの別れ回想シーンとかが良い!双子王子の海の国編ぽいの無かったっけ?それの後邪人騒ぎだったっけ?順序が違うだけか……
[一言] 新直前まで行けましたね。すごいです。でも、これからどうやって進化するのでしょうか?たのしみです。
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